54 座敷わらし、妖精騒ぎの顛末を聞く
静水館に戻ってから十也とネコには孤児院での出来事を全て話しておいた。
それを聞いた十也はフェルミに起きた出来事にとても同情していた。話の最後の方で『人外と付き合う大変さはよーくわかる』と小さく呟きながら私を見たことは納得できない。
私は温和な妖精なのでエウリュアレ様と一緒にされては困る。あの方ほど恐ろしい存在では全くないのだから。
遅くなったが夕飯を食べるため食堂に降りて行った。すでに混雑の時間帯が過ぎていて食堂で食事をしている宿泊客は二人だけだった。静水館では酒を出さないので飲みたい宿泊客は外に飲みに行く。
ベルナさんに手招きされたので、私たちはラトレルさんと同じテーブルに座った。ラトレルさんとベルナさんは孤児院の話をしている最中だったようだ。
ラトレルさんはわりと遅い時間に夕飯を食べるので他の宿泊客がいなくなったあとベルナさんとこうやって話をしていることが多い。
「妖精の正体は小さな女の子だったんだってー。孤児院の子が匿っていたそうよ」
「フェルミの遠い親戚が訪ねてきて置いてっちゃったらしいんだよね。とりあえず解決したから大丈夫だってクリプトンさんがわざわざ話に来てくれたんだ。みんなで騒いじゃったからフェルミが怖がっちゃって言いだせなかったんだって」
私がもう一度孤児院に行ったことは院長には黙ってもらっている。その代わり幼女妖精(エウリュアレ様)のことは私も知らないことになっている。
「二人も騒ぎに巻き込んで悪かったね。ほら、具合が悪いって寝ていた子がフェルミって子でね、勝手に預かった子どもをどうしようかと思っていたところに、妖精じゃないかなんて俺が騒いで話が大きくなっちゃたから、誰にも相談できなくて悩んでいたみたいなんだ。かわいそうなことをしたよ」
「ラトレルさんのせいじゃないですよ。ラトレルさんはみんなの心配していただけでしょ。子どもたちにすごい好かれているじゃないですか」
「うん、ありがとうな。念のため明日、様子を見てくるよ。明後日からまた狩りに行くけど一緒にどうかな」
「お願いします。ラトレルさんが一緒だと勉強になるから有難いです」
「私からも頼む。十也、だったら明日は休息日にしないか。私はセンターで調べ物をしたいんだが」
明後日はやっと山奥へ狩りに行けるので明日は魔物の生息地を確認するつもりだ。
「そうだね。僕も魔物図鑑とか見たいから一緒に行くよ」
ラトレルさんは私たちの会話を聞きながら嬉しそうにしていた。先ほど別れた時の私たちはとてもひどい状態だったからな。
それを思うとエウリュアレ様の乱入は悪いことだけではなかったかもしれない。




