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53 座敷わらしと孤児院の妖精 7

「嘘おっしゃい。召還する時はたいていが夜、御不浄に行く時ばかりじゃないの。怖いから私に付き添わせているのはわかっているわよ」


「そ、それもなくはないけど、エウが独りぼっちで可哀そうだと思ったのは本当よ」


 フェルミは自分と重ね合わせたのかもしれない。それにしてもエウリュアレ様ともあろうお方がトイレの付き添いとは……。


 エウリュアレ様を呼び出すための魔力だが、エウリュアレ様と繋がりさえすれば、さほど必要ないらしい。


 そう言ってもそれができる人間は限られているそうだ。「ここはそういう場所なのよ」


 孤児院の外壁にあるリレーフの女性は言われていみればエウリュアレ様と似ていた。


「わたくしたち姉妹は魔除けにもされているの。昔はここみたいな儀式に使用する建物も多かったから頻繁に召還されていたのよ。なのに人間ときたら壊したらそのままなんだもの。他に誰も呼んでくれないんだからフェルミに応えるしかないじゃない」


 そして頻繁に召還していたため孤児院の子どもたちに姿を見られてしまった。


 最初に私が訪れた時は人間ではない存在をエウリュアレ様が感知したので念のため還ったが、私たちが帰ってからフェルミが召還し今日有ったことをエウリュアレ様に伝え、私の残した言葉通り静水館に話を聞きに来た。


 エウリュアレ様の行動範囲はフェルミの魔力が届く範囲だそうだが、どこまで届くかはまだ試してないのでわからないそうだ。


「悪魔祓いが呼ばれるかもしれないと思ったら食事が喉を通らなくなったの。だって呼び出したのが私だとわかれば悪魔付きとして罰を受けるかもしれないでしょ」


「お前はわたくしが祓われることはどうでもいいの? 冷たいんじゃなくて」

「エウは悪魔祓いじゃ無理でしょ。神様なんだから」

「やはりエウリュアレ様は神格化されていらっしゃるんですね」


「神――――――――みたいなものよ」

「「……」」


 神ではないらしいが、神に近しい存在なのは確かなので突っ込むはやめておいた。


 さて、これからの対処法だが私の経験を元に提案をしてみることにした。


「人間は小さな者には甘くなります。エウリュアレ様がもっと幼い姿になれるのであればその姿で院長に必要な部分だけ打ちあけてはいかがでしょうか。この世界では、危険でなく、有益な召喚獣であれば人間はどちらかというと歓迎しているようですし。それにフェルミが神童として有名だったのであるなら人型の召喚獣を召喚できても問題はないかと思います」


「わたくし獣扱いはいやよ。他の言い方に変えてちょうだい」

「えっと、召還蛇?」

「フェルミ、わたくしを馬鹿にしてるの? 蛇は大嫌いなのよ。今度言ったら麻痺させるわよ」

「ごめんなさい。だったら何ならいいの。自分で決めてよ」


「召還美女」

「「……」」


「小娘と木っ端には伝わらないのね。昔は男どもが群がり跪いてわたくしの愛を乞うていたのに、ああ、嘆かわしい」


「それでは、召還※※で」

「え、え、オラクちゃん、どうゆう意味?」

「エウリュアレ様は言葉では言い表せないということでいかがでしょうか」


「もういいわよ、それからフェルミ、こんな端くれでも術が使えるからあまり近づかないように」

「え? えーと、そういえばオラクちゃんて何者なの? エウの知り合いなんだよね?」

「「……」」


「なんで二人で無言になるのよ!」


 エウリュアレ様は一応私の正体は黙っていてくれるようだ。


「「……」」


「いいよもう。相談に乗ってもらったんだし、追及しないよ」


「では、さっそく院長をお呼び致しましょうか」 


 フェルミが院長に頑張って説明したおかげで、エウリュアレ様は五歳の幼女として孤児院においてもらえることになった。


 院長はエウリュアレ様のことをフェルミが召還した幼女妖精だと思っている。実際に目の前で返還、召還を繰り返したので納得してくれた。騒ぎになるのも困るのでとりあえず孤児院の子どもたちには召還の話はせず、家族が増えたとだけ伝えたらしい。


 夜の子どもはフェルミが勝手に連れてきて匿っていた『エウ』を子どもたちが見ただけの話、と終わらせることにしたらしい。


 テリルやエルシーは幼女ではなかったと反論したそうだが、しっかり見たわけではないそうだし、夜の子どもはもう出没することはなくなったので、だんだんと忘れていくだろう。


 エウリュアレ様のことは院長にすべて任せた。これですべて解決だ。


 私がここへ来ることは二度とない。


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