52 座敷わらしと孤児院の妖精 6
フェルミは現在十四歳だ。
十一歳から孤児院で暮らしていたらしい。魔力量も多く小さなころから魔法の扱いに長けていたため将来は名を残せるほどの魔法使いになれるのではないかと噂されたほどの神童だった。
フェルミの両親は冒険者で、子育ての間、休業していた母親もフェルミが冒険者登録したのを機に復帰し家族三人で冒険者稼業で生計を立てていた。
三年前、フェルミはDランクになった。それでも両親はフェルミを連れている時は絶対にEランクの狩場より先には行かなかったそうだ。いつものように三人で狩猟をしていた時、他の冒険者がハイロウ【灰狼】の群れに追われたままEランクの狩場まで逃げ帰ってしまったためフェルミの家族も巻き込まれてしまう。
両親はフェルミだけを守るために必死に反撃したが、何故かその日のハイロウは異常なほど荒ぶれており、なすすべもなく討死してしまった。
目の前で両親が倒れていくのを見たフェルミは発狂しながら無意識のうちに風魔法を発動しハイロウを切り刻んだため自分だけは助かったそうだ。
この時逃げて来た冒険者もすべてハイロウによって殺されたのだが、フェルミ達以外にも巻き込まれた冒険者が数名いたらしい。あとの調査で、逃げて来た冒険者がハイロウの仔狼を手に掛けたことが原因だとわかったそうだ。
放心状態のままフェルミは見つかり、他の冒険者が町へ連れてきたが、他に親族もなく頼る人間もいなかったため孤児院で暮らすことになった。
少しづつ精神も回復していったが、何も考えたくないからと農園で朝から晩まで働き続けていたそうだ。
ある日、農園で使役虫の召還魔法を目にしたフェルミは、死者の魂を召還する魔法があることを思い出した。それから時間があればセンターに行って召還魔法の本を読み漁っていたが禁忌のためかどこにも記述は見つからない。
召還魔法とは『どこかに存在する、自分の魔力と釣合がとれたもの』を召還するので相当の魔力量がなければ成功しないと言われている。そのため農園で使役されているものは蜂などの昆虫が多い。
とにかく両親に会いたいがために、ある日フェルミは自分の出しえるすべての魔力を込めて方法もあやふやなまま両親を呼び出すための召還魔法を発動させてしまった。そして現れたのがエウリュアレ様だったそうだ。
大人のエウリュアレ様の姿は恐ろしい。
召還後フェルミが卒倒したため、フェルミの前では子どもの姿でいるそうだ。ちなみに子どもの姿の時には髪は蛇ではない。この歳のころはまだ神の怒りを買っていなかったので美しい髪をしていたのだとか。
エウリュアレ様は長い間、召還されず封印された空間にひとりで過ごしていたために返還を拒んでいた。
エウリュアレ様の身の上話を聞いたフェルミは、元の空間に閉じ込めるのが可哀そうになり、人気のない夜の間だけエウリュアレ様を呼んでいたそうだ。




