49 座敷わらしと孤児院の妖精 3
「孤児院の中を案内するから俺についてきて」
院長室を出ると三歳くらいの小さな幼児が二人ラトレルさんの足に抱きついた。
「らとれるしゃん、あそぼー」「あしょんでー」
「はいはい、あとでね。このお兄ちゃんたちを食堂に案内してくれるかな」
「はーい」
「こっちだよー」
私は服の裾を幼児に引っ張られながら孤児院の食堂まで歩いて行った。
「お楽、何かわかった? 何かいるの?」
「さっきまで、確かに何かはいた。でも今はわからない」
幼児に連れていかれた食堂は大きな丸テーブルが二台置かれており六脚ずつ椅子が置いてあった。そこで七、八歳ほどの男児が二人と十歳くらいの女児が三人で文字の書き取りをしていた。
「ラトレルさんこんにちはー、最近毎日来てるよね。仕事大丈夫なの?」
「そろそろ、木苺の季節だよ。一緒に取りに行ってよ」
「ウラニは去年も行ったじゃないか。今年はボクとだよね」
ラトレルさんは大人気だ。昔から子どもたちと遊んであげているんだろうな。
「はいはい、木苺だね。考えておくよ。テルリの心配はしなくても大丈夫だから。それより“夜の子ども”の話をお兄さんたちにしてあげてよ」
テルリは身体は大きいが七歳で赤毛を三つ編みにしている娘だ。ウラニは八歳の金髪の男児、もう一人はモリブという名の七歳で水色の髪をしている。幼児もそうだが何故かみんなキノコみたいな髪形をしていて兄弟に見える。
「お前ら四人そっくりだな」
「えー、だからエルシーに髪切ってもらうの嫌だったんだよ。最悪だ」
金髪が机に突っ伏してしまい、機嫌が悪くなった。気にしていたらしい。
「エルシーが一番上手なんだから仕方ないじゃない。あたしが切ったらもっとひどくなるけどいいの」
「それも嫌だ!!」
「ウラニはどんな髪形しててもカッコいいんだから気にしなくても大丈夫だよ」
「ボクはー」
「モリブもカッコいいよ。将来もてて困るかもしれないな」
「ラトレルさん、みんなにカッコいいとか可愛いとかいうよね。オレ、信じられない」
「本当に君たちのことはそう思っているんだよ。信じてくれよ」
早く妖精の話を聞きたいのだが、話が進まなくなってしまった。トウヤも苦笑いしている。
「あ、ごめんなさい。夜の子どものことよね。あたしも一度見たわ」
三つ編みがこちらに気づいて話を始めてくれた。
「夜、廊下に立っていたのよ。私くらいの身長で頭から白いベールを被っていたから顔は見えなかったけど女の子だと思う。ふわって消えたの」
「オレが見た時も同じだ。なんか薄着でさ、肌が青白かったんだよ。怖くてすぐ部屋に戻っちゃったから、その後どうなったかわかんない」
「ぼくはないけど、みんなが話してるの聞いて夜は廊下に出られなくなっちゃたよ」
「一番見てるのはフェルミとエルシーだと思う。最近フェルミは具合が悪くてお仕事をお休みしてるの。食堂に出てこれそうか聞いてくるわ」
フェルミとは十四歳の娘だそうだ。三つ編みが確認しに行ったが体調がすぐれないので、話もしたくないらしい。寝込んでいるところ悪いが一部屋ずつチェックさせてもらうぞ。




