完結『政略結婚と無表情な夫　―戦乱の世を生き抜く姫シリの物語―』

嫁いだ先は、
貧しい小領の古びた城。

兄の命令で送り出されたミンスタ領の姫シリ（20）が嫁いだ相手は、
二度目の結婚となる無愛想な領主グユウ。
そして彼には、前妻との幼い子どもがいた。

「知らない男と結婚して、すぐ母親になれだなんて。不条理だわ」

愛も温かさもない新婚生活。
城主として忙しく働く夫は、無表情で、心を開こうとしない。

だが、
勝ち気な姫と、寡黙な男の距離は、
ゆっくり、確かに変わり始める。

そして――2年後。
兄ゼンシの軍勢が小領に迫る。

圧倒的な兵力差。
援軍なし。
頼れるのは、城に残るわずかな兵と民だけ。

「守り抜く。本当に大切なものを」

戦費を集め、罠を仕掛け、城を支え、民を導く。
もう、守られるだけの姫ではいられない。

これは、
奪われた人生を自らの手で切り開いた、ひとりの女性の物語。
そして、
不器用な夫婦が、血と涙の中で愛を知る物語。