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小さな領の妃が国を動かした


ミンスタ軍が撤退した翌朝。


一夜にして国中が動き出した――


その中心にいたのは、小さな領の一人の妃だった。


ミンスタ軍が去ると同時に、これまで滞っていた手紙が一気にレーク城へ届いた。


あまりの量に、重臣たちは急きょ集められ、判読作業に追われることとなった。


「ミンスタ領が撤退した理由がわかった」

グユウがつぶやき、ジムが補足する。


「留守のあいだに、他の領主たちがシュドリー城へ出陣したようです。

ゼンシは、自領を守るために帰還を余儀なくされたのでしょう」


その場がどよめいた。


「これは・・・反ゼンシの動きが、本格化しているということか?」

チャーリーが身を乗り出す。


「はい。リャク領、キク領、ミル領・・・六つの領が、ミンスタ包囲網を形成しようとしています」

ジムの報告に、重臣たちはざわめきを抑えきれなかった。


「しかし、なぜ今? なぜこれほど一斉に・・・」

グユウが首を傾げる。


「答えはこの手紙にあります」

ミル領の手紙を持ちながらオーエンが答えた。


「・・・シリ様の離婚協議が、多くの領主の心を動かしたのです」


「シリの・・・!」

グユウは言葉を失くした。


小さなワスト領の后が、巨大なミンスタに毅然と立ち向かった――


この話は国内中に広まった武勇伝だった。


そのとき、扉がノックされた。


「国王からの機密文書です」

ジムの声は、わずかに震えていた。


封蝋には、王家の花弁の印。

重々しく、格式ある封筒を手にしたグユウは、静かにそれを開いた。


文を読んだ彼は、わずかに眉を上げ、淡々と口を開く。


「・・・国王が、ゼンシの討伐を要請している」


その一言に、重臣たちは一斉に立ち上がった。


「国王自らが?!」

「ゼンシと国王は、盟友のはずでは?」


「いや、違う」

グユウが静かに首を振る。


「文面を読む限り、国王は表向きゼンシと親しいふりをしているが、内心ではゼンシの台頭を恐れている」


「国王が・・・操られていることに、ようやく気づいたのですね」

オーエンの声に、ジムが続けた。


「これは、ワスト領にとって追い風です」


「確かにそうだ」

グユウは頷く。


「だが、この戦いがどれだけ広がるのかは、誰にもわからない」


しばしの沈黙のあと、グユウが口を開いた。


「皆、昨日の戦で疲れているはずだ。今夜はしっかりと休め。・・・次の動きに備えて」


その言葉で会議は締めくくられた。


グユウは、急ぎ廊下を進む。

このことを、シリとトナカに伝えねばならない。


国王が、ゼンシへの攻撃を認めた。

目の前の危機は去ったが、もっと大きな渦が始まろうとしていた。


一夜にして国中が動き出した。


その中心にいたのは、小さな領の一人の妃だった。


ミンスタ軍が去ると同時に、これまで滞っていた手紙が一気にレーク城へ届いた。


あまりの量に、重臣たちは急きょ集められ、判読作業に追われることとなった。


「ミンスタ領が撤退した理由がわかった」

グユウがつぶやき、ジムが補足する。


「留守のあいだに、他の領主たちがシュドリー城へ出陣したようです。

ゼンシは、自領を守るために帰還を余儀なくされたのでしょう」


その場がどよめいた。


「これは・・・反ゼンシの動きが、本格化しているということか?」

チャーリーが身を乗り出す。


「はい。リャク領、キク領、ミル領・・・六つの領が、ミンスタ包囲網を形成しようとしています」

ジムの報告に、重臣たちはざわめきを抑えきれなかった。


「しかし、なぜ今? なぜこれほど一斉に・・・」

グユウが首を傾げる。


「答えはこの手紙にあります」

ミル領の手紙を持ちながらオーエンが答えた。


「・・・シリ様の離婚協議が、多くの領主の心を動かしたのです」


「シリの・・・!」

グユウは言葉を失くした。


小さなワスト領の后が、巨大なミンスタに毅然と立ち向かった――


この話は国内中に広まった武勇伝だった。


そのとき、扉がノックされた。


「国王からの機密文書です」

ジムの声は、わずかに震えていた。


封蝋には、王家の花弁の印。

重々しく、格式ある封筒を手にしたグユウは、静かにそれを開いた。


文を読んだ彼は、わずかに眉を上げ、淡々と口を開く。


「・・・国王が、ゼンシの討伐を要請している」


その一言に、重臣たちは一斉に立ち上がった。


「国王自らが?!」

「ゼンシと国王は、盟友のはずでは?」


「いや、違う」

グユウが静かに首を振る。


「文面を読む限り、国王は表向きゼンシと親しいふりをしているが、内心ではゼンシの台頭を恐れている」


「国王が・・・操られていることに、ようやく気づいたのですね」

オーエンの声に、ジムが続けた。


「これは、ワスト領にとって追い風です」


「確かにそうだ」

グユウは頷く。


「だが、この戦いがどれだけ広がるのかは、誰にもわからない」


しばしの沈黙のあと、グユウが口を開いた。


「皆、昨日の戦で疲れているはずだ。今夜はしっかりと休め。・・・次の動きに備えて」


その言葉で会議は締めくくられた。


グユウは、急ぎ廊下を進む。

このことを、シリとトナカに伝えねばならない。


国王が、ゼンシへの攻撃を認めた。



だがその瞬間から、ワスト領は逃れられぬ戦の渦に呑み込まれていく。


そして最初に犠牲を払うのは――誰なのか。


目の前の危機は去ったが、もっと大きな渦が始まろうとしていた。


――これが、吉と出るか。凶と出るか。


今はまだ、誰にもわからなかった。




次回ーー

「国王が兄を攻撃するよう要請を?」

安堵と葛藤に揺れるシリは、夏の夜にグユウと肩を並べた。


束の間の静けさ。

けれど、それは嵐の前の一夜にすぎなかった。


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