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籠城の一週間と、燃える根

籠城の準備を開始して1週間。


「その木の根っこは捨てないで!石はここに置いて欲しいの!」

シリの澄んだ声が現場に響く。


城の外では着々と準備が進んでいる。


城内に水を引き、木を伐採して、土地を開拓し、食材の買い付け、


家臣、領民達が力を合わせて作業を行なっていた。


きつい仕事だけど、褒美があり、少しだけ豪華な食事が出るので、皆の士気は上がっていた。


石は敵が来た時に投石などで武器になる。


「シリ、木の根っこを集めてどうする?」

グユウが疑問に思い質問をした。


「数年間、乾燥させて燃料に使うのです」

シリは答える。


この言葉を口に出すことが、どれほど怖いか――。


でも言わなければ、皆が戦いの中に呑まれてしまう。


「数年・・・籠城を数年続けるつもりか」


「はい。兄上は、この争いを一刻も早く終わらせたいと思っているはずです。

正面から戦えば、ミンスタ領には敵いません・・・。籠城して生き残りを・・・」


そこまで話して、シリは唇をギュッと噛み締めた。


「シリ、トナカが応援に来る」

グユウが優しく話す。


「シズル領が参戦してくれるのですか?」

シリの瞳に力が宿る。


「あぁ。昔からシズル領とワスト領は協力していた。

トナカとは父の代からの盟友だ。幼い頃は何度か会っている」


「心強いです」

シリは心底ホッとした。


ーーワスト領の兵だけでは戦に勝てない。


シズル領が応援に来てくれれば・・・ほんの少しは可能性がある。


「シリ、あまり無理をするな。身体は大丈夫か?」

グユウの瞳は心配で揺れている。


「今、頑張らないと。いつ頑張るのですか」

シリはグユウの瞳を強く見つめる。


「・・・頼りにしている」

グユウは目の前の熱心な活気あふれた顔に目を細めた。


誰よりも非力に見えて、誰よりも強い意志を持つ。



その日の夜。


少し肌寒い風が、古い廊下を吹き抜けていた。


シリは、リネン室へ向かっていた。


籠城戦に備え、包帯や替えの寝具、古布の在庫をもう一度確認しておきたかったのだ。


昼間の雑多な喧噪から解放された石廊下は静まりかえり、

灯したろうそくの灯りが、揺れる影を壁に映していた。


「包帯は足りるかしら・・・できればもう少し、古布が欲しいけど・・・」


そんなことを考えながら、シリはリネン室の重い扉を開けた。


奥へ進もうとしたときだった――。


どこかで、足音。


廊下の向こうから、人の気配と、低く押し殺した声が近づいてくる。


「こんな場所で大事な話って・・・」

「グユウ様の前では話せない」


聞き覚えのある声に、シリは反射的に息を呑んだ。


咄嗟にろうそくの火を吹き消し、棚の影へ身を隠す。


天井の高い窓から、ぼんやりと月光が差し込んでいた。


その明かりの中、数人の男たちがリネン室に入ってくる。


グユウの重臣たち――ジム、サム、ジェームズ、チャーリー、ロイ。

そして・・・オーエンの姿もあった。





明日の17時20分 ーー


「グユウ様は、戦場の最前列に立たれる」

重臣の言葉に、シリの心は張り裂けそうになる。


夜、耐えきれず彼に抱きつき、ただ願った。

「必ず、私の元に帰ってきてください」


「戦場に行かないでとは言えなくて」

月光に照らされた寝室で交わされた約束は、

二人を結ぶ何よりも強い絆になっていく

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