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妃の望んだ褒美は、ドレスでも宝石でもなく


「国王とゼンシの蜜月が終わろうとしている」


レーク城の書斎で、グユウは国王から届いた手紙を見つめていた。

部屋では重臣会議が始まっていた。


国王は表面上ゼンシと親しくしながらも、水面下で各地の領主に“ゼンシ討伐”を求めていた。

同時にゼンシも、国王の政治に次第に口を出し始めていた。


その内容は、オーエンの言葉を借りれば「無茶苦茶」だ。


「・・・国王にそんな意見を伝えるとは・・・ゼンシの余裕のなさを感じる」

天井を見上げながら、グユウはぽつりと呟いた。


この二年間、ゼンシは絶えず戦っていた。

疲労と焦燥が、彼の判断を鈍らせているのかもしれない。


ゼンシの口出しに国王は激怒をし、ついにゼンシ打倒に本腰を入れ始めたのだ。


二人の関係は終わりに近づいていた。


「これから、どんな状況になるか・・・全く見えないな」

グユウのため息が書斎に落ちた。


その空気を変えるように、ジムが少し興奮した声で口を開いた。


「グユウ様・・・まさかアオソ布のシャツを着れるとは・・・ありがとうございます」


アオソ布は高級品だった。


「シリの提案だ。ジム、よく似合う」

グユウの瞳は優しげに揺れた。


「・・・シリ様には・・・何か・・・」

こんな事を言うのは、不躾ではないかと思いながらカツイは口を開いた。


「・・・シリは衣類に頓着がない」

グユウが話した。


「しかし・・・」

ワスト領が潤ったのはシリの活躍が大きい。

カツイは自分達だけ良い待遇を受けることに引け目を感じていた。


「シリに褒美を聞いたら北の砦を大きくすることを希望していた」

グユウの発言に、重臣達は驚いた表情で顔を上げた。


「北の砦ですか?」

サムが驚いた声を出した。


「あぁ。争いが起きたら領民達が避難する場所を希望している。

金額はかかるけれど・・・オレは褒美として着工したいと思っている。・・・いいか?」

グユウは真剣な眼差しで重臣達に話した。


領主とはいえ、大きな金額を動かすには重臣達の許可が必要だった。


滅多に要望を口にしないグユウが、必死で言葉を紡いでいた。


「砦を大きくするって・・・ドレスや宝石よりも高額ですね」

オーエンが吹き出した。


「あぁ・・・城下町の領民のために作りたいと願っている」

グユウも口元を緩めた。


「素晴らしい提案だと思います」

ジムが静かに話した。


「・・・それでは、堀が完成したら北の砦を着工してもいいか?」

グユウが重臣達を見渡す。


「もちろんです」

オーエンが力強くうなづき、カツイは何度も首を縦にふった。


シリの要望に、誰1人反論をするものはいなかった。


グユウが立ち去った後、オーエンは独り言をつぶやいた。


「相変わらず・・・敵わない」

オーエンは少し悔しそうに濃い鳶色の髪の毛をかきあげた。


◇◇


チク島から戻ったシリは、辛そうに椅子へ腰を下ろした。


「シリ様、体調が悪いのですか?」

エマが心配そうに尋ねる。


「船酔いをしたみたい。すぐに良くなるわ」

青ざめた顔で、シリは笑った。


だが、エマは首を傾げた。

何度もチク島を訪れているが、船酔いなど一度もなかった。


ーーそして、翌日も、さらにその次の日も。

「船酔い」は治らなかった。


エマは静かに、けれど確かな違和感を覚えた。

シリの頬に触れた指先に、かすかな熱が残った。


ーー本当に、船酔いなのだろうか。


次回ーー

シリが考案した五段堀がついに完成。

仕切りの上を歩こうとして、オーエンに抱きとめられる。

その光景を、グユウが見ていた――。


雪国の休日は除雪です…

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