この手で織る、戦の準備
冬の間、レーク城では来るべき争いに備え、武器製造に励んでいた。
買った鉛を弾丸にし、矢の製造に力を入れた。
女性達は戦費を稼ぐために、城内で軟膏作りと布織り作りに励んでいた。
「こちらです」
シリが案内した作業部屋は、広く明るい西の部屋。
暖炉の火が灯り、外の吹雪が嘘のようにぬくもりがあった。
棚には、アオソから取られた糸が端から端まで整然と積まれている。
部屋には女中だけでなく、近隣の年配の女性たちの姿もあった。
糸車を回し、糸を紡ぎ、奥では機織り機を使って布が織られていく。
「あの草から布ができるのか。すごいな」
グユウは、完成した布地を触りながらつぶやく。
「雪が溶けたら・・・商人のソウに販売してもらいたいわ。これは良い布だわ」
シリの声は、兵を率いるときと違い、母のように穏やかだった。
窓の外は一面の雪景色だった。
窓からは、シリとグユウの散歩コースが見える。
レーク城を降りたところに穏やかな丘があり、その先にはロク湖が見える。
ロク湖の中に、ぽっかりと凍りついたチク島が見える。
「ここの景色が一番好き・・・」
もう何回も話した言葉をシリがつぶやく。
シリの肩をグユウはそっと抱く。
「お取り込み中、すみません」
甘い空気が漂う二人の背後から、エマがコホンと空咳をしながら声をかける。
「ここの窓からは、お二人の散歩中の様子が丸見えなんです。
お子様達は、何度も踏み台を使ってお二人の様子を見ています」
エマの忠告に、思い当たる節があるのだろう。
シリは真っ赤な顔で振り向き、グユウの表情筋は石のように硬くなった。
「お子様達の教育のためにも、節度ある振る舞いをしてくださいね」
エマは釘を刺した。
二人はしばらく、無言で凍った湖を眺めた。
やがて、シリが小さく笑い、グユウもその頬に手を添えた。
冬の静かな日々は、そんなふうに、あっという間に過ぎていった。
そして春――
厳しい寒さが少しずつ緩み、雪解けの水音が聞こえ始める頃、城に新しい風が吹いた。
それは、再び始まる争いの足音でもあった。
春の訪れ、それは争いの始まりだった。
雪国の休日は除雪 除雪 たまに小説書きです
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除雪頑張れます。
次回ーー
春が一斉に咲き乱れる頃、レーク城では穏やかな収穫と子供たちの笑顔が芽吹く。
だがユウの瞳に宿る父の影──それを知る者はごくわずか。
一方、南砦のキヨは笑顔の裏に野望を膨らませ、ワスト領を内側から蝕み始める。
明日の17時20分 必ず手に入れる




