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遠く離れても、君の強さを信じて


数日後、リャク領の城に届いた一通の手紙が、グユウの手に渡った。


椅子に深く腰を下ろした彼は、疲れた指先で封を切り、分厚い紙束に目を通した。


「・・・」


目を通すうち、彼の表情が僅かに変わる。


「どうされましたか」


傍らに控えるオーエンが、小さく問いかける。


「シリが・・・鉄砲玉を作っているらしい」


ぽつりと、呆然としたような口調で言うと、部屋にいた重臣たちの間にざわめきが広がった。


「鉄砲玉・・・?」


「それも、自分たちで木を伐って、弓矢まで製造している」


淡々と語りながら、グユウの目の奥にはどこか誇らしげな色が揺れていた。


「相変わらず、予想がつかないことをする」

グユウは少しだけ笑ったような気がする。



「まったく、敵いませんね」


オーエンは呆れたように息をつきながらも、笑ってうなずいた。


「カツイの息子も手伝ってるそうだ。まだ13なのに、立派なことだ」


「ありがとうございます」


思わぬ話にカツイの顔がほころぶ。


グユウは一枚の紙を見つめたまま、椅子の背にもたれた。


その目に、微かに優しい光が宿っていた。


シリはあの城で、泣かずに、立ち上がり、皆を巻き込んで前に進んでいる。


自分の手の届かない場所で。


けれど、確かに繋がっていると、グユウは感じていた。


ーー遠く離れていても、シリの強さを、オレは信じている。


彼はそっと手紙を折り、懐にしまった。


争いの始まりに向け、再び立ち上がるその背には、揺るぎない信頼と静かな決意が宿っていた。


けれど、その決意を試すように――戦場には、容赦ない冷たい風が吹き荒れようとしていた。


次回ーー 


城に残された人々をまとめ、シリは畑を耕し、保存食を作り、皆と夕食を囲むようにした。

小さな国のような生活が息づき始め、子どもたちの笑顔も戻っていく。


けれど――空席の椅子が告げるのは、夫が戦場にいるという現実。

明日のことすらわからぬ未来に、シリの胸は不安で満ちていた。


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