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いつか終わる世界に  作者: 作者です
魔界の侵攻
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8話  ラファス防衛戦①


 当初より激戦の地になると予想されていた外壁の大門付近は、ルドルフォ組を中心にとりあえずは安定した戦いを続けていた。


 戦争が始まった現状だと、もう非戦闘員を前線に出すことはできない。その理由から現在出現している〖岩柱〗は、事前に町の民へお願いして発動させたものが多い。



 ラファスに限らず、防衛戦の中核となっている神技は、やはり召喚系統になるだろう。


 〖土狼〗の召喚時間はかなり長く、一体または複数体を造りだし、徐々に数を増やしていく。大型は壊されると同時にクールタイムが始まるので、しばらくは召喚ができなくなる。



 〖光の戦士〗は一定数を越えた時点で再召喚までの時間は伸びなくなり、今は〖岩柱〗で普段よりも消費する神力は抑えられている。

 四人が一名ずつ使用できるのなら、召喚の隙間時間はほぼ無くなると考えていい。



 〖種吐き花〗は熟練によって召喚できる数も違ってくるが、発動させた時点でクールタイムに突入しているため、第一世代が土に帰る頃には再召喚が可能となっていた。


 ただし気をつけなければいけない点もいくつか。


 A地点で召喚したら、次は隣のB地点で第一世代を使う。


 その間にA地点の土を休ませ、〖肥料の雨〗などで下準備を進める。


・・

・・


 同じ宿場町方面の外壁でも、大道から距離があれば、森から出てくる鬼の数に違いはでてくる。


 それでも〖花〗の援護が得られなければ、〖土狼〗を前に出して探検者が地上に降りる必要があった。


 この場を受け持つ探検者たちは水の加護者が足りているため、〖聖域〗の間隔は他よりも広くとられていた。



 仲間が戦っている隙を見て、水使いが田畑に〖雨〗を降らす。


 少ないとはいえ〖聖域〗のお陰もあり、回復役は少しばかりの余裕ができていた。しかしそれはあくまでも、傷に対する治療のみ。



 風使いが肉鬼の金棒を〖両手剣〗で受け止めたが、飛び散った涎に汚染されてしまう。


「あ”ぁ ったく、汚いな!」


 ただでさえ力負けしていたのに、細菌が身体を蝕んでいく。


「とりあえずこれで凌いで!」


 水の加護者が〖消毒薬〗を〖噴射〗する。


 〖聖域〗は雨の代わりにはなってくれず。〖消毒〗の雨中でなければ、水の治癒は瘴気に抗えない。


「わかった」


 〖薬〗の〖噴射〗で少しは症状が改善したらしく、風使いは肉鬼の金棒に集中できるようになった。


「あと少しで〖肥料の雨〗も終わるから!」


 今は魔物との交戦中なため、荒らされた土を(くわ)で慣らすといった作業は無理だが、この過程を挟むかどうかで〖発芽〗率が違ってくる。


「これで、どうだっ!」


 〖風刃の鎧〗を発動させたことにより、なんとか相手を怯ませたがまだ足りず。もうすぐ〖風の鎧〗自体が停止してしまう。


「俺が姿勢を崩す」


 風使いの斜め後ろから、槍使いがオークの足を突き刺す。


「よしっ!」


 〖無風無断〗を発動させ、鬼の金棒ごと両手剣で叩き斬った。



 周囲には味方の探検組もいるが、それ以上の魔物が続々と現れる。


 対峙していた個体が灰になったのを確認してから、風使いは森の方面を睨みつけ。


「また来やがった」


 田畑に骨鬼が出現。


「すまん、風の鎧が切れちまった」


「俺は自分でなんとかできるから、まあ大丈夫だ」


 〖伸〗で小型と中型の鬼を遠ざければ、槍使いは防護膜をまとう。それに〖一点突破〗はクールタイムが短い。


 別の組が召喚した〖土狼〗たちは、どうやら周囲の鬼に手一杯で、骨の弓兵にまわる余裕はない。



 彼らのリーダーは水使い。


 壁上の仲間を見あげ。


「走らせてっ!」


「間に合うかわかんないよ」


 雑魚の対応をさせていた〖赤光玉〗を操作して、整列を始めた弓兵へと飛ばす。


「それにもうけっこう萎んでる!」


「みんな念のため盾を装備しとこっ!」


 この探検組は水・火杖・風剣・槍・盾。



 風の加護者は〖盾〗を装備するため、片手剣へと交換。


 しかし専門とするのは大剣か両手剣なため、この武器だと〖風の剣〗しか発動できず。


 槍使いも防護膜をまとっていたが、念のため〖短槍〗と〖盾〗で矢に備える。


「一応、かけ直しとくぞ」


 皆が盾を装備したのを確認してから、〖お前らの盾〗を発動させた。



 火杖の使い手が〖赤光玉〗から〖炎球〗を放つも。


「やっぱ残弾不足!」


 もとから〖炎人・炎翼〗を発動させられる熟練はなく、ずっと壁際の雑魚を対応させていたこともあり、骨の弓兵を怯ませるのは難しかった。


 別組の〖岩亀〗が上空より泥を落とし、骨鬼の妨害に入ったが間に合いそうもない。



 水使いは周囲を見渡し。


「あれで魁は狙える?」


 発動条件。


 ・戦争やイベントが始まって一番槍を決めれば、超広範囲の味方にバフ。


 ・何処とも交戦していない、五体以上の集団に突っ込めば、周囲の味方にバフ。


 彼女が指さした方向には、まだ〖土狼〗と接触していない数体。肉鬼は一体だけで、それ以外は小鬼だった。



 水使いはギョ族の〖鱗薬〗を準備する。これは〖火心〗以外の防護膜を強化してくれた。


 別の組を含め、この場にいる全員に使うため、いつでも発動できるよう瓶を天に掲げておく。



 槍使いは半身の構えを整え。


「横断での援護を頼むっ!」


 両足が銀色に光れば、先頭を走る肉鬼に〖一点突破〗で接近。


 風使いが装備を〖両手剣〗にもどし、彼を守る位置に盾使いがつく。


 背後から〖横断〗がくるので、その方向を〖盾〗で守りながら、〖短槍〗の切先が大盾に突き刺さる。



 〖魁〗をするときは注意しろと教わってきた。


 この敵集団が〖狼〗に狙われていなかったのは、先頭を走っていた肉鬼が、すぐさま土に帰していたから。

 そいつは受ける瞬間、大盾を斜めに構え、〖一点突破〗の威力を流そうと試みていた。



 槍使いはその動作を見逃さず、魁を中断して〖波〗を発動させる。


 見事な判断だったと言えるだろう。



 角度をつけた大盾は〖波〗の衝撃もいくらか流したが、それでも片腕を弾く事には成功。


 〖波〗だけでなく、〖横断〗の風圧が小鬼どもを吹き飛ばす。


 盾使いがこいつはやばいと判断。


「警戒っ!」


 まだ武具や防具は瘴気に覆われていない。


 短槍の〖波〗で大盾は弾かれたが、肉鬼はそれを無視して大剣を振り下ろす。


 水使いは頭上に掲げていた青瓶を前方に向け、〖ギョ族の鱗薬〗を〖一点突破〗の防護膜に〖噴射〗する。


 槍使いは背後の〖盾〗を動かし、肉鬼の大剣を横から叩き退けた。


 

 迷いの森で問題なく活動できるなら、その組は上級の序盤でも戦える。


「いったん下がれ!」


 だとしても、一人でボス級と斬り合う技量はない。




 その時だった。外壁の誰かが叫ぶ。


「骨鬼が矢を放ってきますっ!」


 リーダーは〖盾〗で身を守りながら、空間の腕輪を使い笛を取りだす。


 甲高い音色が戦場に鳴り響く。


「ボス級出現、確認をお願いしますっ!」


 初級はゴーレムなのであれだが、練習や中級にもボスはいる。


 〖紫の狼煙〗を上げるかどうかは、壁上の団員が判断しなくてはいけない。




 後退した槍使いを逃すまいと、肉鬼は追い打ちを仕掛けようと地面を蹴るも、風使いが〖縦断〗を放つ。


 骨鬼の矢が敵味方に関係なく降り注ぐ。


 肉鬼は全身に矢が突き刺さりながらも、大盾で突き抜ける斬風を防ぎ切る。



 壁上の炎使いが杖を操作すれば、新たに発動させた〖赤光玉〗が、肉鬼の死角から〖炎球〗を放つ。


「もう倒れてよっ!」


 そいつは咆哮で耐え凌ぎ、距離をとった槍使いへと飛びかかる。



 別組の味方が叫ぶ。


「〖君たちの鎧!〗」


 風使いは防御姿勢を即座に整え。


「行け!」


 盾使いが槍使いの前に出て、肉鬼の斬撃を〖盾の打撃〗で受け止める。


「まだだっ」


 〖突進〗でその大きな肉体を後退させた。




 もともと彼らには救援が駆けつけるまで、持ちこたえられるだけの実力はあった。


 前回の侵攻とは状況が違う。


 油断しきって壁上で待機しているのと、本格的な攻勢を受けている現状。


 なによりルドルフォ組を筆頭に、あの場面を直接その目に焼き付けた連中には、何かしらの思う所があったのだろう。



 水使いは〖酸の雨〗を降らせ。


「私たちだけで何とかしようっ!」


 別組の鎧使いが、周囲の小鬼どもに〖鎖〗を放ち。


「雑魚は私たちが喰い止める、お前らはそいつに集中しろ!」


 救援を呼ぶべき相手は上級のボス級であり、この肉鬼は違うと判断した。



 土使いが〖花の鎧〗での援護をする。


「厳しくなったら交代しますので、笛でもなんでも合図をください!」


 闘争心の祝福を胸に、全員が意気込んだ。


 



 地面に〖足場〗が展開される。


「良く耐えたわね、もう大丈夫よ!」


 黒い影が降り立ち、次の瞬間には肉鬼が衝撃と共に弾け飛び、そのまま灰に帰る。


「私が来た、来ちゃったわっ!!」


 狼煙は上げてなかったので、笛の音が耳に届いたのだろう。


「恨むな・憎むな・妬みましょう」


 決め台詞と一緒に決めポーズを決め。


「日光仮面がここにありっ!」


 まだ序盤なので、彼らには引き続き戦意を保ったままでいて欲しい。




 敵は宿場町方面から雪崩れ込んでくるので、ルカを含めた救援組の多くはこちら側で待機していた。


 まだ紫の狼煙は上がっていない。


 劣勢を意味する赤の狼煙も。


 序盤なので物資の支給を要求する青は当分ないだろう。



 強い個体は最初から黒い靄をまとうのもいれば、戦闘態勢に入った時だけ瘴気を発生させるのもいる。


 見極められるかどうかは運や経験しだい。


 雑魚に紛れ込んで外壁を抜けていたのなら、救援が到着するまでは兵士たちに任せるしかなかった。


 彼らの訓練はダンジョンで行うこともあるが、基本は地上界が主とされる。


 土狼の扱いや近接戦闘もしているけれど、やはり探検者と比べれば数段劣っていた。



 人間同士で争っていた時代は過ぎた。


 戦いの形も時世で変化していく。




 時刻は午前十一時。


 探検者たちは外壁の上で目撃する。


 この日。


 最初に上った紫の狼煙は町壁からだった。






とりあえず二話投稿予定です。


ルドルフォ組は上級探検者の部類に入るので、戦力の中心になる鉄塊団の中級組を描いておきたいと思いまして。迷いの森で活動している。


これまでの話で登場させてなかったから、モブの探検組になったのですが。


実力としてはモニカ組やルチオ組と同等だけど、経験は彼らの方が上です。

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