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いつか終わる世界に  作者: 作者です
警戒期まで
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8話 初級大ボス戦 天上界特別コース



 大神殿は谷底の岩肌を削り、くり抜かれた内側に建設されている。


 その入り口に協会の係員が待機しており、到着順に整理券を渡されるので、並んでいる人の列はそこまで多くない。


 これから大ボス戦を控えているので、ある程度の準備運動が出来るようにとの配慮だろう。


 係員の傍らには協会が持ち込んだ置時計があり、指定された時間に整理券と引き換えに神殿内への入場が可能となる。


「あんま奥行はないんだな」


 外見だと岩の神殿だが、内部は大理石といった感じで、出入口から差し込む光を反射させていた。


 順番を待って階段をのぼり、中央の祭壇まで行けば、差し込み穴が3つ。


「わたしらいつも直接大ボスの空間に転移してるから、ここ来る機会はあんまないんだよね」


 どこからか石玉を一つ取りだせば、それを窪みへと。



 時空紋が出現。


 本当はここで残った穴にも差し込むのだけれど、それではこの三人にとって訓練にはならない。


「俺からすりゃ上級のボス並みってのは、検証にしてはちと強すぎるんだがね」


「大丈夫だいじょうぶ、やばいようならこっちで止めるから。ちなみに今回は特別コースだから、楽しみにしてておくれよ」


 マジかと顔を引きつらせるオッサン。


 だがこれでも一応は歴戦の騎士。


「なるようになるか」


 ラウロの軽鎧は王鋼も使っているが、主とした素材は王革だった。腕もガントレットではなくグローブ。

 鎧下は鎖帷子となっているも、使われているのが王鋼だから軽い。


 〖化身〗が法衣鎧にも適応された理由から、素手での使用を事前に想定していたので、武具屋を経由して職人が改良を済ませてくれている。


「よし」


 装備の鎖を使い、軽鎧から法衣鎧へと交換する。



 血塗れの聖者を一周すると、古の聖者は満足気に。


「ちゃんとサイズも測れなかったので、少し心配だったけど問題はなさそうですね」


 二足の草鞋。


 王鋼の軽鎧。その上から神布の法衣を羽織るが、鎧の隙間に一部がはめ込まれているので、動いているうちにずれる心配もなさそうだ。


「グレースさんだったか。あんたの作だったのか?」


 どこか馴染みのある名前。


「専門は鎧や盾なので、法衣と鎧下は別の職人さんです」


 胴体は胸当だけで腹部はない。腰当と膝から下の脛当に鉄靴。

 肩当は動作の邪魔にならないよう最小限のつくり。

 肘からの腕当だけで、手首から先は素手となっている。

 兜ではなく、鎖頭巾を神布で包んでいる。


 鎧下は鎖帷子ではなく、王革と王布で出来ているので、動きやすさは此方の方が断然良い。防御面で不安はあるかも知れないが、〖聖鎧〗を使えば耐久も増す。


「すまんね。ありがたく使わせてもらう」


「……いえ。現状、私にできるのはこのくらいですので」


 グレースの顔に影が差した気がする。


「ほらほら、湿っぽくなってないで、そろそろ行くよ」


 祭壇に出現した時空紋にマグが立って、おいでおいでと手を振っている。


 ラウロは両手を合わせ。


「よっしゃ、いっちょ頑張るか」


「はい」


 三人が並んで立つ。


・・

・・


 マグ一行が飛ばされたのは、いつぞや罠の時空紋で転移させられたのと同じ場所。


 四方が崖で囲われていた。


「まずは私かグレースで引き付けするから、ラウロは感触を確かめといて」


「おうよ」


 特別コース。


 最初は群れとの戦いだと聞かされていたので、【土狼】が召喚されるものとばかり思っていた。


「これは……予想外だったな」


 召喚神技の仕組みは偽の魔物と同じだったりする。


 感情豊かな存在(ゴブリン)や、精霊または妖精などは【人形】の方が向いており、ゴーレムや骨鬼は【像】との相性が良い。


 光の天使や神は個々で【像】を所持しており、それを大本にして召喚している。


「実は天空都市の大教会は、これらが敵として召喚されるんだよね」


「マグちゃん、それ言っちゃダメだよ!」


 三人の前方に無数の光紋が出現し、そこから百体を越える【光の戦士】が召喚された。


 神殿内の中ボスあたりでは、【光剣】を扱う【戦士】になるのだろうか。


「うぅっ ごめんよ」


「記憶の操作は勘弁してくれ」


 全ての個体が鎧をまとい、盾と戦棍を装備している。


 聖神さまが元気をなくしてしまったので、古の聖者が前にでる。


 バランス型の〖聖域〗が展開される。


「私が引き付けを担当しますので」


 装備の鎖をつかったのだろう。フードが消え、法衣鎧(神鋼・神布)をまとい、長棍(神木)をもった姿となった。


 〖聖なる鎧〗 鎧または法衣鎧の専用。耐久強化。痛み緩和。秒間回復。発動時間は長く、停止後はクールタイムあり。


 続けて〖威光〗と〖化身・回避〗を発動。



 【光戦士】たちは古の聖者へと駆けだした。


 ラウロとマグは〖足場〗を使い、一旦その場から上空へと避難する。



 迫ってくる【光戦士】の軍団を、〖化身〗と協力して〖聖十字〗と〖聖壁〗で受け止める。


 横並びの壁といっても、戦場の端から端へは繋げられない。



 回避型の〖化身〗は召喚者とは別々に戦う。


 〖壁〗を回り込んできた【光戦士】の武器を、〖聖拳〗により頑強となった前腕で防ぐと、そのまま払い退け、空いた脇腹に拳打を叩き込む。


 〖聖拳〗は〖光拳〗と違い、打撃の強化が常時付く。


 そして〖化身〗の〖聖拳〗は、〖聖拳士〗よりも熟練が圧倒的に高いので、光る鎧の装甲を一撃で粉砕した。



 数は敵方が断然有利。


 別の個体が回り込んで脇腹を狙ってくるが、〖化身〗は肘と膝で挟み止めると、勢いよく地面に靴底を叩きつける。


 その衝撃で【戦士】は光るメイスを落としてしまう。手放してしまえば武器は消える。


 復元するまで〖化身〗は待ったりしない。片手で盾のふちを掴み、横にずらして〖拳〗を兜に減り込ませた。


・・

・・


 現在〖威光〗を使っているのはグレースだから、彼女を狙う【戦士】の方が多い。


 ラウロは兵鋼の短剣と、将鋼の片手剣に〖夕暮〗を発動させ、〖空刃斬〗を交互に放ち上空から援護する。


「もしかして〖古の聖者〗って、あっちの方だったりするのか?」


 質は【光戦士】より〖化身〗の方が断然に高い。そして回避型は回復型よりも、具現させられる時間は短く、なにもしなければ五分ほどで消滅する。


「大本とする像は同じだけど別の神技だよ。拳だけじゃなくて、彼女みたいに武器も使ってたでしょ」


 〖聖長棍〗 耐久強化。攻撃が命中すると対象が一定秒間光り、聖耐性が低下。


 〖聖絆〗 召喚者が〖威光〗で引き付け役を担っているあいだ、〖化身〗の残り時間が停止する。両者が攻撃を受けると、そのダメージが共有される。



 長棍は槍よりも自由自在に扱える。


 〖化身〗を無視して背後より迫ってきた【光戦士】には、脇に柄を滑らせながら突いて押し返す。そのまま姿勢を低くとり、腰を捻って側面にいた個体の足を長棍で薙ぎ払う。


 柄を脇から外し、棒先を地面に固定する。その位置を軸に回転すれば、迫ってきた敵を蹴りと一緒に巻き上る。


 聖者が蹴りの反動を利用して、空高く飛び跳ねた。


 上空で棍を手放すと、〖足場〗で姿勢を整えてから、自分の身体を地面に向けて発射させる。


 〖拳〗での着地で〖土紋・地聖撃〗が発動し、周囲の【戦士】が動きを止めた。



 自分の神力であれば、物を引き寄せることが可能となる。使い込んだ品であるほど、引き寄せる力は増加していく。


 グレースが手をかざすと、未だ落下途中の長棍が、勢いよく掌へと収まった。


「あんなこと出来んのか?」


「自分の神力ならね」


 グレゴリオが現役であれば、ものすごく有効な技術だったろう。




 〖地聖撃〗で動けなくなっている今が攻め時。


「すまんね」


 聖なる弓はまだ開発してないので、マグは普通に矢を放ちながら。


「気にすることはないさ」


 斬撃判定を聖神に与え、暗闇(弱)のデバフを付ける。



 〖聖鎧〗を発動してから地面に着地すると、ラウロは〖化身・回復〗を召喚した。


 全身に〖聖痕〗を刻む。



 身動きの取れない【光の戦士】たちを、〖夕暮〗と〖儂〗の剣で斬っていく。


 〖地聖撃〗の発動時間は短いので、少しでも多くの敵を沈めたい。


 【戦士】は光る鎧を装備しているので意外と硬い。旧式の〖一点突破〗や〖無断〗を使う時は、確実に仕留めなくてはいけない。



 〖化身・回復〗が自分と重なるのを待ってから、ラウロは周囲を見渡す。


「そろそろか」


 〖地聖撃〗の効果が消えた。


 近場の敵は片づけたが、敵の数はまだまだ多い。


 【光の戦士】は何組かで〖化身・回避〗を攻めるが、残りはグレースの〖威光〗に集まろうとする。


「後ろからのは俺が受け持つ」


「お願いします」


 ラウロが彼女への接近を阻止。


「相棒、そっちの〖壁〗を補強してくれ」


 最初に彼女が【戦士】の突撃を受け止めた〖聖強壁〗も、そろそろ限界を迎えていた。これが壊されると、四方から相手をしなくてはいけない。


 もしそうなればもう二人一組を止め、敵は数で雪崩れ込んでくる。


 


 ラウロの〖化身〗が横に並んだ〖壁〗の後ろに、新たな〖壁〗を展開させた。


「来たか」


 正面から【戦士】がメイスで殴りかかってきたので、〖化身〗に〖聖十字〗を展開してもらい、〖夕暮〗の片手剣で斬り止める。〖残刃〗が発動。


 別の個体がラウロの側面に回り込む。



 恐らく【戦士】もゴーレムと同じく、目という部位は持たない。ただこの敵は光その者だった。


 〖夜入〗の闇で染めることは出来ずとも、うす暗くさせる程度なら可能なはず。



 〖無月〗を発動させ、正面にいる【戦士】の背後に転移して回避する。


 靴底で背中を蹴って転倒させ、儂の短剣を首あたりに突き刺す。


 ラウロを見失った個体は、相棒が沈黙したことを確認し、本来の狙いであるグレースに向けて走り出す。


「させっか!」


 その進路を阻止するようにV字で〖聖強壁〗を出現させれば、短剣を手放して〖土紋・地聖撃〗を発動させた。


「俺のも聖強壁の技名で使えたわ」


 断魔装具としての強化。


 喜んでいたのも束の間。ラウロの〖地聖撃〗は拳打の威力が足りず、背後から別の個体が足を引きずりながら迫っていた。


 だが自分の〖化身〗とはすでに合流済み。


 オッサンはグレースの方を向いているが、〖化身〗は逆向きに重なっていた。メイスが鎖頭巾に直撃するも、その一撃は〖聖十紋時〗を通り抜けていたので、〖聖鎧〗のお陰もあって痛みは皆無。



 短剣を突き刺した【戦士】は、すでに物理判定が消え、もう存在を保てないようだ。


 振り向きざま。背後に立つ個体の足を将鋼で斬って転倒させる。


 グレースを狙う【戦士】に〖一点突破〗で接近し、自分の〖聖強壁〗ごと兵鋼の切先で突き刺す。


 〖無断〗もクールタイムを終えていたから、新たに迫ってきた敵の盾ごと前腕を破壊した。


「〖化身〗と離れてりゃ、剣の神技も十分に使えるな」


「流れは良い感じです!」


 彼女としても背後の憂いがなくなったので、より安定して敵の数を減らしていく。〖長棍〗で聖耐性を低下させているので、二撃目からはより一層に脆くなる。


 〖威光〗のお陰で意識がそちらに縛られ、敵の動きも単調となってきた。


「うんうん。このままなら行けそうだね」


 マグは暗闇のデバフ付きではあるけれど、弓でも急所を狙いやすい。


・・

・・


 二体の〖化身〗と協力しながら戦いを続けていると、上方より声が聞こえる。


「ラウロは一回こっち戻って!」


「どうした?」


 〖無月〗で聖神の横に転移すると、〖足場〗に着地する。


 彼の〖化身〗は召喚者と合流するよう設定されているが、今は二つの〖壁〗で【光戦士】を喰いとめているので、こちらに来ることは難しい。


「新手だよ」


 指さした方をうかがえば、そこには長い年月をかけて苔むした、二体の【岩鎧】が召喚されていた。


 地面より中身の土が補充されろば、戦う者となって立ち上がる。



 出現した位置は【光の戦士】たちとは逆の方面なので、遮る者もなくこちらに接近できてしまう。


「もうすぐ夜が明けるから、【岩鎧】の足止めくらいは出来るぞ」


 暮夜であれば一体を確実に仕留められるが、初級に夜はないのでどうしようもない。


「さっきからこの位置で矢しか放ってないから、岩の戦士は私がなんとかするよ」


「引き付けはどうする?」


 このままでは一体と戦っているうちに、残りの【岩鎧】はグレースを狙うだろう。


 聖神はうなずくと。


「あっちは無我で倒しまーす!」


 地上で戦っていた彼女はオッサンと違い、【岩鎧の戦士】が出現したことに気づいていたのだろう。


 自分の〖聖域〗と〖威光〗を停止させ。


「わかった。法陣を欲しい時は合図してね」


 現在ラウロが乗っているのはマグの〖足場〗だから、自分の〖足場〗へと移る。


「そんじゃ、俺はグレースさんの援護にまわるからよ」


「できるだけで良いから、私への接近も喰い止めてね」


 聖神は交互に〖足場〗を出現させ、上空から【岩鎧の戦士】へと近づいていく。



 オッサンは呼吸を整えてから。


「さて」


 今から〖儂〗の短剣を〖夕暮〗にしても、こちらを〖夜明・刃〗に変化させるのは難しい。


 ラウロは兵鋼を装備の鎖に戻すと、将鋼の片手剣に神力を一層に沈め、上段の構えをつくる。


 振った〖刃〗は抵抗を受けてから、空間の歪みに消えた。


・・

・・


 聖神は靴音もなく地面に着地する。


 続けて〖威圧〗を【岩鎧の戦士】に放てば、二体は意識をこちらへと切り替えた。


 引き寄せ弱でも熟練の高さゆえか、【光戦士】の数組がマグに向けて走り出す。


 〖夜明〗の刃がそれを次々に阻止していく。



 土の眷属神。


「これは君の召喚かな?」


 マグと刻印の契約を交わした友。


 装備の鎖を操作して、灰色のローブから白い衣へと服装を変化させる。


 〖聖なる法衣〗 回避または受け流すたびに、素早さ関係が強化され、残り時間も延長していく。


 展開した〖聖域〗は防御特化。自分の身を守るというよりも、相手へのデバフを優先させているのだろう。


「さあ、鍛錬の時間だよ」


 【岩鎧・攻】が大剣を横に薙ぎ払えば、その風圧に身を任すよう、ふわりと宙を舞って避ける。


 着地した瞬間を狙い、【岩鎧・守】が側面から大きな盾で突進してきた。



 盾の表面に手の甲を添え、肘を折り曲げると同時に肩から背中へと威力を流し、クルっと回転しながら身をかわす。


 【岩鎧・守】はそのまま通り抜けて行き、マグは【岩鎧・攻】と見つめ合う。


 つま先だけでトントンと飛び跳ねながら、大剣での連撃をひゅんひゅんと避ける。



 本体から人間の身体へと、徐々に神の力が注がれて、金色の癖毛が光を帯びていく。


 ふわふわの髪が上下に揺れ、一寸先を大剣が通り過ぎるたび、まとう法衣が輝きを増す。


「おいで」


 神の〖化身〗が降臨した。


 聖者や天使のそれよりも、よりクッキリと形を成せば、マグの手をつかんでぐるぐる回してから放り投げた。



 相棒と一緒に詩を口ずさむ。


「風の神ではないけれど」


『疾風のように素早く駆けろ』


 飛ばされた先に足場を展開させ、着地と同時に角度の調節。


「精霊とは違うけど」


『林の中に身を隠せ』


 〖聖なる化身〗の背後に〖威光〗が差す。


「火の神ではないけれど」


『灯火となって、みんなを照らす』


 全ての敵がラウロとグレースを無視して走りだした。


「土の神ではないけれど」


『大きな岩をぶち壊せ』


 【岩鎧・守】の背後からマグが貫き抜ける。石核の破壊には成功したが、まだもう一体残っているので、この個体が活動を停止することはなかった。



 〖化身〗が聖神を受け止めれば、次はお返しとばかりに自分が一回転すると、遠心力で〖化身〗を宙に投げ飛ばす。


 〖威光〗はその場に残り、マグの背後で輝く。


 聖神のもとには【光の戦士】たちが到着しようとしていた。



 地上と空中に四つの〖足場〗が展開され、二人はその間を何度も飛び交う。


 マグと〖化身〗の〖威光〗が、輝いては消えるを繰り返す。


 いつしか全ての敵がその場で立ち止まり、呆然と辺りを見渡していた。



 本来だと引き付け神技は同じものでも、人によって熟練に差が産まれるので、こういった現象は起こらない。

 そもそも効果時間やクールタイムというのがあるので、〖威光〗を交互に使うといった芸当もできず。



 マグは〖足場〗に着地すると、指を咥えてピーっと音を鳴らした。


 〖聖なる領域〗の範囲は広く、その真中に〖聖なる紋章〗が浮かび上る。


 少し離れた位置より声が聞こえる。


「行きますっ!」


 天使が長棍の先を地面に叩きつけた。



 〖聖棍陣〗 聖長棍の発生。地面に光る法陣が描かれ、〖聖域〗と〖聖紋〗を強化する。


 〖聖紋〗 素早さ関係を強化。素早さに比例して攻撃力を底上げ。



 宙づり状態のまま、聖神はもう一人の相棒に語りかける。


「雷の神はいないけど」


『電光石火で終わらせろ』


 マグと〖化身〗が加速して、土煙が巻きあがったかと思えば、次の瞬間には【光の戦士】たちが弾け飛んでいく。


 その場でうずくまり、防御姿勢をとっていた二体の【岩戦士】が、〖化身〗とマグによって破壊された。


 〖無我の動〗 敵対者は自分が誰を狙っているのか、訳がわからなくなり混乱状態となる。そしていつしか自分を無くす。


・・

・・


 ゴーレムは土に帰り、戦士も光が薄れて全てを消した。


「俺まだ使ってないんだけど」


 背負い十字。


 聖神は法衣についた埃をパッパと叩き落しながら。


「大丈夫だよ、準備運動は終わったでしょ」


 いつの間にか、二人の足もとに時空紋が発生していた。


「おい」


「可愛い我が子ほど、崖から突き落とさなきゃいかんのさ」


 光髪が変になってないかなと気にしながら、神さまは良しとうなずき。


「それじゃ頑張たまえよ、私の大事な元加護者!」


 手を振りながら消えていった。


「すみません、内緒にしておくように言われてまして」


「あんたは悪かない」


 どこか諦めた感じがする。


 お辞儀と同時に古の聖者も消えた。







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