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いつか終わる世界に  作者: 作者です
外伝 誰がための我が道か
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誓いの日

こちらは同時投稿の一話目になります。






 歴史は勝者がつくるというのなら。


 うす暗いその場所で、ただ在り続ける。


 一人では何もできない。


 それでも求め続けた自分は固執した。


 罰の道を歩き続けたその果てに。


 神よ。


 かつての罪が許されたという訳ではないのだろう。


 魂は繰り返す。


 似た生き方を。


 なんどもなんども。


 ならば我々生きとし生ける者は皆、宿命という罰の道を背負っているのではないか。


・・・

・・・


 魔界の門が開くよりも前の時代。


 人々は戦争を繰り返し、繁栄した国もあれば衰退した国もある。


 侵略により滅んだ国は一つや二つではない。




 領土に海はないが、山河の利点を生かし、他国と同盟を結びながら情勢を維持してきた国が存在した。


 大国の侵略により長年の積み重ねは瞬く間に崩れ、もうその国名は地図から消えている。


 そこはかつて都だった場所。





 蠢く民衆。その中央には斬首台が設置されていた。


 忠義の名のもとに最後まで抵抗した者たちは、政治上の暴力主義者として次々に処刑されていく。


 あいつは奴らに手を貸した。嘘か誠かも判別されぬまま、流れ作業で頭がバケツの中に落ちて行く。



 民衆の中に埋もれる少年が一人。


 背丈が足りず。男が彼の両脇を掴み持ち上げる。


「……見たくない」


「お前以外に誰が見届けてやれる」


 三十代ほどと思われる男女が、斬首台に上げられていた。


「今日この日を、この光景を忘れるな。憎しみを糧に何時の日か、必ずや我らが祖国を」


 反逆者たちが王家の血だと崇めているのは、実際のところ王族とも言えない分家も分家。



 少年は自分を持ち上げる男に意識を向け。


「俺に剣を教えてくれ」


 子供の身で放り出されるよりは、まだ面倒を見てくれる大人がいるだけマシだ。


「……」


 一人でも生き抜けるだけの力をつけなくては。


「読み書きを教えてくれ」


「今は集中しろ」


 こいつらと何時までも行動を共にすれば、そのうち自分も斬首台に送られる。


 三年。いや、二年でこの地から離れなければ。


・・

・・


 広場に面する建物の露台は、高貴な連中の見物席。


 少女が一人。豪華な椅子の手すりに肘を乗せて頬杖をつく。腕の立つ使い手であれば、そこは弓矢でも十分に狙える位置にあった。


 警備も手薄。


 その虚ろな眼差しは何を捉えているのか。


 恐らく有力者の子供。


 この娘が此処に来るとの情報が入り、交渉材料にするため捕らえようと計画を練ったが、全てが罠だったようで多くの人間が御縄となった。



 斬首台。


 静電気が全身の毛を逆立てるような緊張が走る。


 背中を押さえつけられた男女を見つめながら、少年は声にならない言葉でつぶやく。


「なにが忠義だ」


 貧しくても良かった。


 どこかに身を隠しながら、ひっそりと暮らすような、惨めな日々でも構わなかった。



 男は絶望にうつむいたまま身動き一つとれず。

 女は正面の見物席を見あげ、呪詛めいた言葉を吐き捨てる。



 両者ともに、少年の姿を探そうともせず。



 拳の中で爪が突き刺さる。


 彼はこの日、存在するかも不明な何かに誓った。



 自分は長く生きられないだろう。


 それでも最後まで足掻いて、生き抜くことに執着すると。


 


三話の予定です。


すでに執筆は終わっています。一話と二話は同時に投稿したいと思います。


三話はまだ見直しが残ってますので、明日に投稿したいです。

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