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いつか終わる世界に  作者: 作者です
上級ダンジョン【天空都市】内壁突破作戦編
60/133

3話 一番槍・数対数



 中央通り。


 装機兵の護衛を務める中で、最前列を任されるのは第三班。


大神殿の鐘。


「こうやって知らせてくれるなら、開始の合図もいらんかったか」


「しかし決まりは決まりですので」


 真面目なのがこの班の特徴。


 班員は瓶の液体を地面にこぼし、靴底で摩擦を加えた。


 光る白い狼煙は基本色。茶という文字の書かれた小瓶より、中身を数滴たらす。塗料ではあるけれど、宝玉とは別の素材を使っている。


 十五分前後で煙は消えるとのこと。



 この場には宿場町からの探検者が一組。


 欲望 槍 盾 鎧 水


「あーっ 緊張してきた」


 カチュアたちの役目は支援を主としているが、一番槍を決めるといった最初の仕事があった。


「やるのは僕ですけどね」


 屋根上への移動手段はないが、バランスはとてもいい。


「撤退はこちらでサポートしますので、よろしく頼む」


(みんな)に良いとこ見せなきゃ」


 宿場町の上級挑戦者は全部で四組だが、今回のイベントに参加するのは彼らだけ。


 二組が予備戦力として広場で待機しており、残りの一組は参加の予定だったが、少し前に重傷者が出てしまい見送ることになった。


 緊張はしているようだが、身体が強張った感じはない。



 この様子なら大丈夫そうだと息をついたころ、近くでこちらを見守っていた〖土犬〗が、フィロニカの足もとを一周した。


 後ろを振り返る。


 第一班の灯りは火や赤光なので、〖天の光〗と比べれば若干だけど心待たない。


「装機兵が動きだしたようだ」


 第三班の四名と宿場町の五名が前進を開始する。




 動きだすのを待っていたかのように。いや、実際に待っていたのかも知れず。


 中央通りと左右に立ち並ぶ建物の屋根上に、無数の時空紋が出現した。


「大きさから言って骨鬼か。カチュアさん」


 三人一組で出現するので、ガイコツの場合は時空紋(中)で召喚される。

 

 将鋼の短剣を投げ、〖明日はどっちだ〗を発動。回転して地面に命中するが、石畳ということもあって突き刺さりはしなかった。


 それでも発動条件は満たしているので問題なし。


「今回はルーレットかあ」


 実物が出現するのではなく、鎧の鎖と同じでエフェクトが短剣の上に浮かぶ。


「じゃあ黒でお願い」


 矢印を弾きながら回転していく。


 彼女の〖明日はどっちだ〗は熟練が高いこともあり、再挑戦が可能ではある。しかし紋章から敵が出現する前に決めなくてはいけないので、今回の場合だとチャンスは一度。


 槍使いは構えを整えるも、敵よりルーレットに注目している。


 赤と黒の二択。


「よしきたっ!」


 矢印が指したのは黒のマス。



 成功のファンファーレは鳴らないが、未だに聞こえる大神殿の鐘がその代わり。


「こういったイベントでも使えるとは、やはり便利ですね」


「まあ普段の遭遇戦より、ボス戦や今回みたいなのは効果も薄いよ」


 それでも目に見えて、いくつかの時空紋が消えた。



 鎧の加護者は前方に十ほどの〖滑車〗を出現させ。


「確かにあまり減らんな」


 屋根上も中央通りも、両方がガイコツ兵。タイマツを持つ個体はいない。


 槍使いは呼吸を整えてから、両足に銀色の光を灯す。


 突(強) 打(中) 斬(弱)


「まだ発射させないでおくれよ」


 〖槍の紋章〗を発動。


 槍神一体 突(強) 打(強) 斬(中) 


「わかってるって」


 主神級と呼ばれるための目安が(極)なのだと思われる。


〖一点突破〗で骨鬼に接近。


 時空紋より出現したばかりだったこともあり、回避もされなかった。


「〖(さきがけ)〗」


 突きが敵に命中すると〖波〗の代わりに、眩い〖魁〗の閃光があたり一面を照らす。


 ・戦いが始まり、一番槍を決めると発動。

 効果範囲はかなり広いが、建物に光が遮られてしまうので、脇道を守る連中までは届かない。屋根上を持ち場とする連中や、最後尾を守るイルミロまでは対象とされている。


 ・誰も味方がいない五体以上の集団に、一人で突っ込むことで発動。

 効果範囲はこの場にいる者だけ。


 戦意高揚に痛み緩和。数分間、範囲内の味方に防護膜を張る。料理の神技を得ているので、通常よりも効果時間は延長されている。


「良し成功」


 実を言えば彼らのリーダーはカチュアではなく、盾使いだった。


「気を抜かない!」


 駆け抜けた一番槍は骨鬼の盾を貫くが、〖波〗が使えないので吹き飛ばすことが出来ない。槍は盾に刺さったまま引き抜くことができず。


 別の個体がまわり込み、槍使いの脇腹に刺股を打ちつける。


 逆方面より攻め役が両手剣を突き刺してきた。



 こうなることは事前に想定していたので、鎧の加護者が即座に対応。


「させんよ」


 〖鎧の鎖〗に物理判定はない。左右の個体だけでなく、槍使いの身体をすり抜けて、正面の守り役にも鎖は命中。


 攻め役の両手剣が槍使いの軽鎧に刺さるが、〖巻き取り〗の反動により切先が鈍り、防護膜で完全に防がれる。


 封じ役も〖巻き取り〗により強制移動されたので、槍使いは自由に身体を動かせるようになった。盾に突き刺さっていた自分の槍を手放す。


 左右の脅威は消えた。装備の鎖より予備の槍(将)を取りだし。


「回収よろしく」


 横に反れろば〖鎧の鎖〗に遮る者がなくなったので、守り役の盾が〖巻き取り〗で奪われる。

 そうなれば相手はもう刺股しか持っていないので、予備の槍で沈めることは簡単だった。



 三人一組は厄介だけど、鎧の神技と盾の憎悪が加われば、もう連係どころではない。


 〖魁〗により皆が防護膜をまとっているので、降り注ぐ矢にも余裕をもって対応できる。



 彼らの戦いをフィロニカは背後より眺めていた。 


「鎧と盾の引き付けは相変わらず凶悪ですね。先代のいぶし銀を思いだす」


 もう鎧の加護者は戦えないが、ヴァレオとその人物が組めば、他に攻撃が行くことは滅多になくなる。


 そして剣が斬り裂き、戦棍(メイス)が粉砕し、戦斧が叩き割る。



 フィロニカの評価に苦笑いを浮かべ。


「私たちじゃ、ちょっと火力不足かな」


 盾と鎧の加護者が引き付けた敵に、カチュアが矢を放つ。


 研究を重ねた鏃を使っていたので、装甲を貫くが決定打には繋がらず。


 頃合いを見て〖探さないで〗を発動し、盾持ちの背後から〖お宝ちょうだい〗の短剣を突き刺す。出現時の気配も消せていたので、完璧に装甲の隙間を狙えたが、骨鬼の赤い光を消すまでには至らなかった。


 短剣をさらに押し込み、手首を捻ることで骨の繋ぎ目を破壊。


「間に合わなかった」


 すでに〖お宝ちょうだい〗の有効期限が過ぎていたようだ。


 手間取っている隙に別個体がカチュアを狙うも、〖盾突進〗のお陰で事なきを得る。


「いったん下がってて」


 盾使いは重鎧をまとっていたが、声から察するに女性のようだ。


「ごめん、任せる」


 欲望の加護にはバフやデバフを付属する神技もない。またこの組には引き付け役が二名もいるため、〖こっちみんな〗を使う機会も少なかった。



 カチュアはフィロニカの近場まで戻り。


「戦闘じゃこのとおり、上級に移ってから中々活躍できないのよ」


 熟練の伴った〖いつか見た夢〗は高火力だけど、これは強敵に備えて温存しておくべき神技。


「剣の加護者がいれば、また違ったかも知れませんね」


 〖君の槍〗は貰っているが、武器種の違いはけっこう大きい。


「適材適所という奴だな」


「まあ稼ぎ頭は私だもんね」


 【天空都市】 情報提供という枠組みで一番稼いでいるのは、間違いなく彼女たちの組だろう。


「我々も強力な個体は苦手分野だったりします」


 カチュアは周囲を見渡して。


「なるほど」


 十二体の〖光戦士〗は騎士鎧をまとい、盾と金棒を得物として前にでる。


 十二体の〖光戦士〗は法衣を羽織り、二手に別れると屋根に向けて矢を放つ。



 彼らが戦いを引き継いでくれたので、宿場町の連中もカチュアのもとに集まった。


 脇道を指さして。


「それじゃ、持ち場に戻りますね。イベントだから外れ枠とかないと思うけど、欲望神はボス戦じゃ縁起悪いし」


「感謝します。数を減らしてもらっただけでも、こちらとしては大助かりだ」


 水使いは〖錆の雨〗を降らせてから、灰に埋もれる仲間の槍を回収して。


「勝利の宴を楽しみに頑張るとしよう」


 鎧と盾もこの場に居る者たちにバフをかけるが、残念ながら〖戦士〗には効果がないようだ。


「今日は朝まで飲み明かす予定だ」


 南門の拠点には帰還紋もあるので、そのままダンジョン広場にもどるのだろう。


「狼煙でも土犬でも、指示があれば支援に来ますので」


 宿場町に満了組はなくとも、彼らを筆頭に上級でも活動する徒党がある。規模は鉄塊団よりも小さいが、上位の戦力はこちらの方が大きいだろう。


 強い徒党を目指すのであれば、天人菊も彼らくらいを目標にしたいところか。


「んじゃあ、僕に続けってか」


 槍使いが〖一点突破〗と〖波〗で道を開き、仲間たちがその後を追う。



 時刻は深夜。〖天の光〗から離れてしまえば、光源は輝く狼煙や燃える町の灯りだけ。


 それぞれの武具が銀色に光り、足もとをうすく照らしていた。〖神眼〗には夜目もある。


 〖土犬〗は去っていく五人を追いかけて走りだす。


 九体ほどの骨鬼が、彼らを逃がすまいと意識をそちらに向けた。


 中央通りの道幅はかなり広いので、〖光の戦士〗二十四体だけでは抜けられてしまう。



 第三班


 フィロニカ(剣・杖・騎士鎧・ローブ)


 彼女のペア(剣・長棍・法衣・鎧)



 〖戦士〗召喚中の女。(剣・弓・騎士鎧・軽装)


 〖戦士〗召喚中の男。(剣・素手・法衣・鎧)



 自分のペアに意識を向け。


「引き付け行くぞ」


「了解」


 大通りに出現した全ての敵が〖後光〗に集中する。


「屋根上は無理に減らさなくて良い。法衣の戦士は弓から金棒と盾に交換、鎧をまとって左右後方の守りを固めろ」


 彼らの扱う装備の鎖は、通常の品より数倍の値段がするぶん、一式の武具と防具を登録可能。


「〖光十字〗は前方の〖戦士(騎士鎧)〗に張ってくれ」


 敵の集団を引き付けながらの前進。


「〖光壁〗で敵の接近を防ぎながら行くぞ」


 戦士は二体一組。骨鬼は三体一組。


 数の差からも膠着どころか押され気味だった。装機兵はこちらを待たずに動いているから、このままでは距離が縮まってしまう。



 フィロニカは装備の鎖より、王木の杖を取りだす。その先端には赤い宝玉。


「騎士鎧の〖戦士〗は二十秒後に盾を消せ、両手持ちの武器に持ち変えて一気に押し返すぞ。十九から、八・七・六」


 神布のマントをなびかせる王鋼の鎧から、黒いローブに交換。


 〖光のローブ〗が徐々に力を増していき、やがて最終形態の〖輝くローブ〗へと変化。



 秒読みが終わる。


「〖天の光〗防御優先」


 自分のペアが〖天の光〗を停止させ、代わりにフィロニカが防御型の明かりを灯す。範囲内の敵に防御低下のデバフを付属。


「前進開始っ!」


 〖日の光〗は敵との距離で威力が上がる。


「……行けるか」


 〖陽の光〗もあるのだけれど、可能であれば神力の消費を押さえたい。


 燃え上がる個体はいないが、装甲の隙間から煙がもれ、焦げた臭いが鼻を刺激する。しばらくすると〖光の戦士〗たちが骨鬼を押し返して進みだした。



 召喚している部下の一人が、〖光壁〗と〖光十字〗を操作しながら。


「もうすぐ戦士消滅っ!」


「旧戦士は敵を無視して外に出ろ、新たな戦士は所定に位置どれ!」


 フィロニカが装備を騎士鎧に戻し、〖光の戦士〗召喚に取り掛かる。持たせるのは盾だけ。


 杖は反映されないので、〖日の光〗が終わるのを待って金棒に変更。


 〖光戦士〗が小隊規模の五十体に迫る。この作業が一番難しいと言われているが、第三班の〖光戦士〗は完璧に交代を済ませた。


・・

・・


 何体かの骨鬼を後ろに抜けさせてしまったが、減らせという命令は十分に達成している。


 敵の弓兵はまだ残っているけど、大通りの敵はかなり少なくなった。


「来たぞ、新手だ」


 屋根上はこれまで通り骨鬼だけ。


 地上では肉鬼も混ざっている。


 〖魁〗による戦意高揚と痛みの緩和は続いているも、先ほど防護膜が消えてしまった。


 〖盾〗〖鎧〗は残っているので、守りに関してはまだ余裕もあった。しかし彼らは役割により、なんども装備を交換しなくてはいけない。



 現在〖光の戦士〗を召喚しているのは、フィロニカとその相方。

 

「鎧の神技、準備」


 召喚をしていない一名が法衣から鎧に交換したが、彼の背後に〖後光〗は残ったまま。


 骨鬼の弓兵は斜め上ではなく、直接こちらに矢を向けていた。



 〖光の鎧〗 耐久強化。秒間回復(瘴気弱体)。痛み緩和


 〖輝く鎧〗 光が徐々に増していき、防御力を強化。〖天の光〗にドーム状の防護膜を発生させ、外側からの攻撃を防ぐ。ただし直接の侵入は可能。制限時間はないが、攻撃を受け続けると薄くなって消滅。



 全ての〖戦士〗が〖天の光〗に入ることは出来ないので、盾を構えさせる。


 矢が降り注ぐ中でも、地上の骨鬼と肉鬼は〖後光〗を目指して走り出す。


「数を減らすぞ」


 王鋼の剣身。神木の鞘と神革の柄。



 〖光の剣〗 抜き身の状態でしか使用不可。耐久強化。鞘に納めれば徐々に光が増していき、〖輝く剣〗に変化する。



 だが敵は待ってくれず。一体の肉鬼が〖戦士〗たちを押しのけて、こちらに接近。


「自分が仕留めます」


「頼む」


 名乗り出たのは〖光戦士〗がクールタイム中の女。


 装備の鎖を使い、騎士鎧から軽装に交換。


「光壁を一つお貸しください」


 〖足場〗に移り、一段高い位置につく。〖光壁〗と〖光強壁〗をVの形に展開させ、側面と背後を守る。


 続けて軽装の神技を発動させる。



 〖光の意思〗 得物が弓の場合は追尾機能を追加。



 矢の先に〖光弓紋〗が浮かび、十分に引き絞ってから、〖一点〗に集中して放つ。


 オークは〖後光〗に夢中だった。大盾で構えることもせず、光の線が胴体を通り抜け、背後にいた骨鬼をも貫通してから地面を焦がす。石畳に突き刺さった矢は燃えカスとなって崩れて散った。


「そのまま続けてくれ。狙うのは大型を中心に頼む」


「了解」


 神製の外装に包まれた片手剣はもう、十分な光量をまとっていた。



 〖輝く剣〗 斬った敵に〖光傷(回復妨害)〗を付属。鞘から払うことで、自身が召喚した〖戦士〗の剣にも同様の効果を持たせる。



 敵の数が一気に増えたので、第三班の進行も止まってしまう。半数の〖戦士〗が金棒から剣になってしまったのも、大きな原因だろう。


 それでも焦ることなく。


「しばらく様子見で行くぞ」


 フィロニカの装備は騎士鎧と片手剣だけ。〖光傷〗の効果は盾を装備すると消えてしまう。



 〖光の戦士〗は剣で斬りかかるが、骨鬼の【守り役】に防がれる。しかし盾の表面には〖光傷〗が刻まれた。


 【封じ役】が回り込もうとするも、相棒の〖戦士〗が光るマントをなびかせて、そいつの間に割り込む。


 逆側から【攻め役】が両手剣で狙ってきたが、ガントレットで何とかその一撃を耐える。受けた前腕の光が薄くなってしまったけれど、まだ物理判定は残っているようだ。


 〖光の戦士〗は正面の【守り役】へと踏み込み、盾を片手剣で押し返してから、【攻め役】の片膝に切先を差し込む。関節部を狙ったお陰もあって、相手は姿勢を崩す。


 しかし【守り役】も黙ってはいない。片手持ちの刺股で〖戦士〗の脇下を固定すれば、【攻め役】がしゃがんだ姿勢のまま、両手剣で脛を斬ってきた。

 片足の光は薄く透け、物質としての存在も消えてしまい、〖光の戦士〗は転倒した。



 三対二。


 それぞれの場所で〖戦士〗と骨鬼が戦っている。


 劣勢になるのは何時ものこと。



 動いたのは召喚クールタイム中の男(剣・素手・法衣・鎧)


 装備の鎖を使い金棒と盾を消して素手になる。防具は鎧から法衣に交換。


「邪魔させてもらう」


 彼のペアである弓使いの〖足場〗に飛び移り、一段高い位置より飛び跳ねれば、着地と同時に〖土紋・地光撃〗が発動した。


 〖光拳・輝拳〗の熟練は低くとも、こちらの神技に絞って鍛えて来たのだろう。ラウロのそれより性能は低いけど、十分な効果が発揮されていた。


 地面に押さえつけられた敵に向け、ここぞとばかりに〖戦士〗たちは〖光傷〗をつけて行く。



 フィロニカはこの期に装備を騎士鎧からローブにする。


 〖光のローブ〗 対象は杖だけでなく、全ての光神技だった。


 もうすぐ〖光の戦士〗が消える。


 〖光傷〗がついた敵はかなり増えたが、防具がローブになってしまったこともあり、〖地光撃〗の効果が消えると一気に押されてしまう。


 フィロニカは王革のベルトホルダーから鞘を抜き、そこに〖輝く剣〗を納める。


 剣と鞘が一体になった状態のまま、夜空に向けて高く掲げた。


 左手には杖。



 〖極光剣〗 輝きが一点に収縮され、巨大な光の剣となる。物理判定なし。



 赤宝玉は杖に()められているが、これは〖陽の光〗だけでなく、火神との合作技すべてに対応される。


 輝くローブまでは至っていないが、光の量もだいぶ増えた。



 振るわれた〖極光剣〗が敵と味方に関係なく、全てを薙ぎ払う。


 骨鬼たちに刻まれた〖光の傷〗が、〖輝く傷〗へと変化すれば、次の瞬間にはその部位が爆散した。


「交代準備っ!」


 旧〖戦士〗をそのまま前に進ませ、新〖戦士〗は所定の位置につく。



 一通りの作業を終わらせたが、まだ焼ける臭いが辺りに漂っていた。


「神力の残量に余裕はあるけど、今のうちに祈りを捧げておくぞ」


 もし強化個体が出現すれば、自分たちでは荷が重い。


 その時はデボラたちに前へ出てもらうか、屋根上のどこか一班に増援を頼むか。



 いつの間にか、〖足場〗の下に〖犬〗が身を潜めていた。


 自分たちの通ってきた道を振り替えれば、茶色に輝く狼煙があがっている。


「今のとこは問題なし」


 この神技は〖土狼〗と違い、小粒の石核が目の位置に二つある。


 〖土犬〗が緊急事態だと判断すれば、召喚主に知らせが届く。



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