3話 一番槍・数対数
中央通り。
装機兵の護衛を務める中で、最前列を任されるのは第三班。
大神殿の鐘。
「こうやって知らせてくれるなら、開始の合図もいらんかったか」
「しかし決まりは決まりですので」
真面目なのがこの班の特徴。
班員は瓶の液体を地面にこぼし、靴底で摩擦を加えた。
光る白い狼煙は基本色。茶という文字の書かれた小瓶より、中身を数滴たらす。塗料ではあるけれど、宝玉とは別の素材を使っている。
十五分前後で煙は消えるとのこと。
この場には宿場町からの探検者が一組。
欲望 槍 盾 鎧 水
「あーっ 緊張してきた」
カチュアたちの役目は支援を主としているが、一番槍を決めるといった最初の仕事があった。
「やるのは僕ですけどね」
屋根上への移動手段はないが、バランスはとてもいい。
「撤退はこちらでサポートしますので、よろしく頼む」
「皆に良いとこ見せなきゃ」
宿場町の上級挑戦者は全部で四組だが、今回のイベントに参加するのは彼らだけ。
二組が予備戦力として広場で待機しており、残りの一組は参加の予定だったが、少し前に重傷者が出てしまい見送ることになった。
緊張はしているようだが、身体が強張った感じはない。
この様子なら大丈夫そうだと息をついたころ、近くでこちらを見守っていた〖土犬〗が、フィロニカの足もとを一周した。
後ろを振り返る。
第一班の灯りは火や赤光なので、〖天の光〗と比べれば若干だけど心待たない。
「装機兵が動きだしたようだ」
第三班の四名と宿場町の五名が前進を開始する。
動きだすのを待っていたかのように。いや、実際に待っていたのかも知れず。
中央通りと左右に立ち並ぶ建物の屋根上に、無数の時空紋が出現した。
「大きさから言って骨鬼か。カチュアさん」
三人一組で出現するので、ガイコツの場合は時空紋(中)で召喚される。
将鋼の短剣を投げ、〖明日はどっちだ〗を発動。回転して地面に命中するが、石畳ということもあって突き刺さりはしなかった。
それでも発動条件は満たしているので問題なし。
「今回はルーレットかあ」
実物が出現するのではなく、鎧の鎖と同じでエフェクトが短剣の上に浮かぶ。
「じゃあ黒でお願い」
矢印を弾きながら回転していく。
彼女の〖明日はどっちだ〗は熟練が高いこともあり、再挑戦が可能ではある。しかし紋章から敵が出現する前に決めなくてはいけないので、今回の場合だとチャンスは一度。
槍使いは構えを整えるも、敵よりルーレットに注目している。
赤と黒の二択。
「よしきたっ!」
矢印が指したのは黒のマス。
成功のファンファーレは鳴らないが、未だに聞こえる大神殿の鐘がその代わり。
「こういったイベントでも使えるとは、やはり便利ですね」
「まあ普段の遭遇戦より、ボス戦や今回みたいなのは効果も薄いよ」
それでも目に見えて、いくつかの時空紋が消えた。
鎧の加護者は前方に十ほどの〖滑車〗を出現させ。
「確かにあまり減らんな」
屋根上も中央通りも、両方がガイコツ兵。タイマツを持つ個体はいない。
槍使いは呼吸を整えてから、両足に銀色の光を灯す。
突(強) 打(中) 斬(弱)
「まだ発射させないでおくれよ」
〖槍の紋章〗を発動。
槍神一体 突(強) 打(強) 斬(中)
「わかってるって」
主神級と呼ばれるための目安が(極)なのだと思われる。
〖一点突破〗で骨鬼に接近。
時空紋より出現したばかりだったこともあり、回避もされなかった。
「〖魁〗」
突きが敵に命中すると〖波〗の代わりに、眩い〖魁〗の閃光があたり一面を照らす。
・戦いが始まり、一番槍を決めると発動。
効果範囲はかなり広いが、建物に光が遮られてしまうので、脇道を守る連中までは届かない。屋根上を持ち場とする連中や、最後尾を守るイルミロまでは対象とされている。
・誰も味方がいない五体以上の集団に、一人で突っ込むことで発動。
効果範囲はこの場にいる者だけ。
戦意高揚に痛み緩和。数分間、範囲内の味方に防護膜を張る。料理の神技を得ているので、通常よりも効果時間は延長されている。
「良し成功」
実を言えば彼らのリーダーはカチュアではなく、盾使いだった。
「気を抜かない!」
駆け抜けた一番槍は骨鬼の盾を貫くが、〖波〗が使えないので吹き飛ばすことが出来ない。槍は盾に刺さったまま引き抜くことができず。
別の個体がまわり込み、槍使いの脇腹に刺股を打ちつける。
逆方面より攻め役が両手剣を突き刺してきた。
こうなることは事前に想定していたので、鎧の加護者が即座に対応。
「させんよ」
〖鎧の鎖〗に物理判定はない。左右の個体だけでなく、槍使いの身体をすり抜けて、正面の守り役にも鎖は命中。
攻め役の両手剣が槍使いの軽鎧に刺さるが、〖巻き取り〗の反動により切先が鈍り、防護膜で完全に防がれる。
封じ役も〖巻き取り〗により強制移動されたので、槍使いは自由に身体を動かせるようになった。盾に突き刺さっていた自分の槍を手放す。
左右の脅威は消えた。装備の鎖より予備の槍(将)を取りだし。
「回収よろしく」
横に反れろば〖鎧の鎖〗に遮る者がなくなったので、守り役の盾が〖巻き取り〗で奪われる。
そうなれば相手はもう刺股しか持っていないので、予備の槍で沈めることは簡単だった。
三人一組は厄介だけど、鎧の神技と盾の憎悪が加われば、もう連係どころではない。
〖魁〗により皆が防護膜をまとっているので、降り注ぐ矢にも余裕をもって対応できる。
彼らの戦いをフィロニカは背後より眺めていた。
「鎧と盾の引き付けは相変わらず凶悪ですね。先代のいぶし銀を思いだす」
もう鎧の加護者は戦えないが、ヴァレオとその人物が組めば、他に攻撃が行くことは滅多になくなる。
そして剣が斬り裂き、戦棍が粉砕し、戦斧が叩き割る。
フィロニカの評価に苦笑いを浮かべ。
「私たちじゃ、ちょっと火力不足かな」
盾と鎧の加護者が引き付けた敵に、カチュアが矢を放つ。
研究を重ねた鏃を使っていたので、装甲を貫くが決定打には繋がらず。
頃合いを見て〖探さないで〗を発動し、盾持ちの背後から〖お宝ちょうだい〗の短剣を突き刺す。出現時の気配も消せていたので、完璧に装甲の隙間を狙えたが、骨鬼の赤い光を消すまでには至らなかった。
短剣をさらに押し込み、手首を捻ることで骨の繋ぎ目を破壊。
「間に合わなかった」
すでに〖お宝ちょうだい〗の有効期限が過ぎていたようだ。
手間取っている隙に別個体がカチュアを狙うも、〖盾突進〗のお陰で事なきを得る。
「いったん下がってて」
盾使いは重鎧をまとっていたが、声から察するに女性のようだ。
「ごめん、任せる」
欲望の加護にはバフやデバフを付属する神技もない。またこの組には引き付け役が二名もいるため、〖こっちみんな〗を使う機会も少なかった。
カチュアはフィロニカの近場まで戻り。
「戦闘じゃこのとおり、上級に移ってから中々活躍できないのよ」
熟練の伴った〖いつか見た夢〗は高火力だけど、これは強敵に備えて温存しておくべき神技。
「剣の加護者がいれば、また違ったかも知れませんね」
〖君の槍〗は貰っているが、武器種の違いはけっこう大きい。
「適材適所という奴だな」
「まあ稼ぎ頭は私だもんね」
【天空都市】 情報提供という枠組みで一番稼いでいるのは、間違いなく彼女たちの組だろう。
「我々も強力な個体は苦手分野だったりします」
カチュアは周囲を見渡して。
「なるほど」
十二体の〖光戦士〗は騎士鎧をまとい、盾と金棒を得物として前にでる。
十二体の〖光戦士〗は法衣を羽織り、二手に別れると屋根に向けて矢を放つ。
彼らが戦いを引き継いでくれたので、宿場町の連中もカチュアのもとに集まった。
脇道を指さして。
「それじゃ、持ち場に戻りますね。イベントだから外れ枠とかないと思うけど、欲望神はボス戦じゃ縁起悪いし」
「感謝します。数を減らしてもらっただけでも、こちらとしては大助かりだ」
水使いは〖錆の雨〗を降らせてから、灰に埋もれる仲間の槍を回収して。
「勝利の宴を楽しみに頑張るとしよう」
鎧と盾もこの場に居る者たちにバフをかけるが、残念ながら〖戦士〗には効果がないようだ。
「今日は朝まで飲み明かす予定だ」
南門の拠点には帰還紋もあるので、そのままダンジョン広場にもどるのだろう。
「狼煙でも土犬でも、指示があれば支援に来ますので」
宿場町に満了組はなくとも、彼らを筆頭に上級でも活動する徒党がある。規模は鉄塊団よりも小さいが、上位の戦力はこちらの方が大きいだろう。
強い徒党を目指すのであれば、天人菊も彼らくらいを目標にしたいところか。
「んじゃあ、僕に続けってか」
槍使いが〖一点突破〗と〖波〗で道を開き、仲間たちがその後を追う。
時刻は深夜。〖天の光〗から離れてしまえば、光源は輝く狼煙や燃える町の灯りだけ。
それぞれの武具が銀色に光り、足もとをうすく照らしていた。〖神眼〗には夜目もある。
〖土犬〗は去っていく五人を追いかけて走りだす。
九体ほどの骨鬼が、彼らを逃がすまいと意識をそちらに向けた。
中央通りの道幅はかなり広いので、〖光の戦士〗二十四体だけでは抜けられてしまう。
第三班
フィロニカ(剣・杖・騎士鎧・ローブ)
彼女のペア(剣・長棍・法衣・鎧)
〖戦士〗召喚中の女。(剣・弓・騎士鎧・軽装)
〖戦士〗召喚中の男。(剣・素手・法衣・鎧)
自分のペアに意識を向け。
「引き付け行くぞ」
「了解」
大通りに出現した全ての敵が〖後光〗に集中する。
「屋根上は無理に減らさなくて良い。法衣の戦士は弓から金棒と盾に交換、鎧をまとって左右後方の守りを固めろ」
彼らの扱う装備の鎖は、通常の品より数倍の値段がするぶん、一式の武具と防具を登録可能。
「〖光十字〗は前方の〖戦士(騎士鎧)〗に張ってくれ」
敵の集団を引き付けながらの前進。
「〖光壁〗で敵の接近を防ぎながら行くぞ」
戦士は二体一組。骨鬼は三体一組。
数の差からも膠着どころか押され気味だった。装機兵はこちらを待たずに動いているから、このままでは距離が縮まってしまう。
フィロニカは装備の鎖より、王木の杖を取りだす。その先端には赤い宝玉。
「騎士鎧の〖戦士〗は二十秒後に盾を消せ、両手持ちの武器に持ち変えて一気に押し返すぞ。十九から、八・七・六」
神布のマントをなびかせる王鋼の鎧から、黒いローブに交換。
〖光のローブ〗が徐々に力を増していき、やがて最終形態の〖輝くローブ〗へと変化。
秒読みが終わる。
「〖天の光〗防御優先」
自分のペアが〖天の光〗を停止させ、代わりにフィロニカが防御型の明かりを灯す。範囲内の敵に防御低下のデバフを付属。
「前進開始っ!」
〖日の光〗は敵との距離で威力が上がる。
「……行けるか」
〖陽の光〗もあるのだけれど、可能であれば神力の消費を押さえたい。
燃え上がる個体はいないが、装甲の隙間から煙がもれ、焦げた臭いが鼻を刺激する。しばらくすると〖光の戦士〗たちが骨鬼を押し返して進みだした。
召喚している部下の一人が、〖光壁〗と〖光十字〗を操作しながら。
「もうすぐ戦士消滅っ!」
「旧戦士は敵を無視して外に出ろ、新たな戦士は所定に位置どれ!」
フィロニカが装備を騎士鎧に戻し、〖光の戦士〗召喚に取り掛かる。持たせるのは盾だけ。
杖は反映されないので、〖日の光〗が終わるのを待って金棒に変更。
〖光戦士〗が小隊規模の五十体に迫る。この作業が一番難しいと言われているが、第三班の〖光戦士〗は完璧に交代を済ませた。
・・
・・
何体かの骨鬼を後ろに抜けさせてしまったが、減らせという命令は十分に達成している。
敵の弓兵はまだ残っているけど、大通りの敵はかなり少なくなった。
「来たぞ、新手だ」
屋根上はこれまで通り骨鬼だけ。
地上では肉鬼も混ざっている。
〖魁〗による戦意高揚と痛みの緩和は続いているも、先ほど防護膜が消えてしまった。
〖盾〗〖鎧〗は残っているので、守りに関してはまだ余裕もあった。しかし彼らは役割により、なんども装備を交換しなくてはいけない。
現在〖光の戦士〗を召喚しているのは、フィロニカとその相方。
「鎧の神技、準備」
召喚をしていない一名が法衣から鎧に交換したが、彼の背後に〖後光〗は残ったまま。
骨鬼の弓兵は斜め上ではなく、直接こちらに矢を向けていた。
〖光の鎧〗 耐久強化。秒間回復(瘴気弱体)。痛み緩和
〖輝く鎧〗 光が徐々に増していき、防御力を強化。〖天の光〗にドーム状の防護膜を発生させ、外側からの攻撃を防ぐ。ただし直接の侵入は可能。制限時間はないが、攻撃を受け続けると薄くなって消滅。
全ての〖戦士〗が〖天の光〗に入ることは出来ないので、盾を構えさせる。
矢が降り注ぐ中でも、地上の骨鬼と肉鬼は〖後光〗を目指して走り出す。
「数を減らすぞ」
王鋼の剣身。神木の鞘と神革の柄。
〖光の剣〗 抜き身の状態でしか使用不可。耐久強化。鞘に納めれば徐々に光が増していき、〖輝く剣〗に変化する。
だが敵は待ってくれず。一体の肉鬼が〖戦士〗たちを押しのけて、こちらに接近。
「自分が仕留めます」
「頼む」
名乗り出たのは〖光戦士〗がクールタイム中の女。
装備の鎖を使い、騎士鎧から軽装に交換。
「光壁を一つお貸しください」
〖足場〗に移り、一段高い位置につく。〖光壁〗と〖光強壁〗をVの形に展開させ、側面と背後を守る。
続けて軽装の神技を発動させる。
〖光の意思〗 得物が弓の場合は追尾機能を追加。
矢の先に〖光弓紋〗が浮かび、十分に引き絞ってから、〖一点〗に集中して放つ。
オークは〖後光〗に夢中だった。大盾で構えることもせず、光の線が胴体を通り抜け、背後にいた骨鬼をも貫通してから地面を焦がす。石畳に突き刺さった矢は燃えカスとなって崩れて散った。
「そのまま続けてくれ。狙うのは大型を中心に頼む」
「了解」
神製の外装に包まれた片手剣はもう、十分な光量をまとっていた。
〖輝く剣〗 斬った敵に〖光傷(回復妨害)〗を付属。鞘から払うことで、自身が召喚した〖戦士〗の剣にも同様の効果を持たせる。
敵の数が一気に増えたので、第三班の進行も止まってしまう。半数の〖戦士〗が金棒から剣になってしまったのも、大きな原因だろう。
それでも焦ることなく。
「しばらく様子見で行くぞ」
フィロニカの装備は騎士鎧と片手剣だけ。〖光傷〗の効果は盾を装備すると消えてしまう。
〖光の戦士〗は剣で斬りかかるが、骨鬼の【守り役】に防がれる。しかし盾の表面には〖光傷〗が刻まれた。
【封じ役】が回り込もうとするも、相棒の〖戦士〗が光るマントをなびかせて、そいつの間に割り込む。
逆側から【攻め役】が両手剣で狙ってきたが、ガントレットで何とかその一撃を耐える。受けた前腕の光が薄くなってしまったけれど、まだ物理判定は残っているようだ。
〖光の戦士〗は正面の【守り役】へと踏み込み、盾を片手剣で押し返してから、【攻め役】の片膝に切先を差し込む。関節部を狙ったお陰もあって、相手は姿勢を崩す。
しかし【守り役】も黙ってはいない。片手持ちの刺股で〖戦士〗の脇下を固定すれば、【攻め役】がしゃがんだ姿勢のまま、両手剣で脛を斬ってきた。
片足の光は薄く透け、物質としての存在も消えてしまい、〖光の戦士〗は転倒した。
三対二。
それぞれの場所で〖戦士〗と骨鬼が戦っている。
劣勢になるのは何時ものこと。
動いたのは召喚クールタイム中の男(剣・素手・法衣・鎧)
装備の鎖を使い金棒と盾を消して素手になる。防具は鎧から法衣に交換。
「邪魔させてもらう」
彼のペアである弓使いの〖足場〗に飛び移り、一段高い位置より飛び跳ねれば、着地と同時に〖土紋・地光撃〗が発動した。
〖光拳・輝拳〗の熟練は低くとも、こちらの神技に絞って鍛えて来たのだろう。ラウロのそれより性能は低いけど、十分な効果が発揮されていた。
地面に押さえつけられた敵に向け、ここぞとばかりに〖戦士〗たちは〖光傷〗をつけて行く。
フィロニカはこの期に装備を騎士鎧からローブにする。
〖光のローブ〗 対象は杖だけでなく、全ての光神技だった。
もうすぐ〖光の戦士〗が消える。
〖光傷〗がついた敵はかなり増えたが、防具がローブになってしまったこともあり、〖地光撃〗の効果が消えると一気に押されてしまう。
フィロニカは王革のベルトホルダーから鞘を抜き、そこに〖輝く剣〗を納める。
剣と鞘が一体になった状態のまま、夜空に向けて高く掲げた。
左手には杖。
〖極光剣〗 輝きが一点に収縮され、巨大な光の剣となる。物理判定なし。
赤宝玉は杖に填められているが、これは〖陽の光〗だけでなく、火神との合作技すべてに対応される。
輝くローブまでは至っていないが、光の量もだいぶ増えた。
振るわれた〖極光剣〗が敵と味方に関係なく、全てを薙ぎ払う。
骨鬼たちに刻まれた〖光の傷〗が、〖輝く傷〗へと変化すれば、次の瞬間にはその部位が爆散した。
「交代準備っ!」
旧〖戦士〗をそのまま前に進ませ、新〖戦士〗は所定の位置につく。
一通りの作業を終わらせたが、まだ焼ける臭いが辺りに漂っていた。
「神力の残量に余裕はあるけど、今のうちに祈りを捧げておくぞ」
もし強化個体が出現すれば、自分たちでは荷が重い。
その時はデボラたちに前へ出てもらうか、屋根上のどこか一班に増援を頼むか。
いつの間にか、〖足場〗の下に〖犬〗が身を潜めていた。
自分たちの通ってきた道を振り替えれば、茶色に輝く狼煙があがっている。
「今のとこは問題なし」
この神技は〖土狼〗と違い、小粒の石核が目の位置に二つある。
〖土犬〗が緊急事態だと判断すれば、召喚主に知らせが届く。




