6話 上級神像修復活動 大紋章攻略 後半
大紋章戦はどちらが本ボスに当たるのか決まっていない。
いぶし銀が転移させられた空間は、ヴァレオたちの飛ばされた場所と同じく、四方が壁に囲まれた広場で一方には扉が存在していた。
エドガルドは得物であるメイスを握りしめ。
「おい、これ天の光じゃないよな?」
空間の中心にはオークの像があり、そこから広範囲に【聖域】が展開されている。
リーダーは周囲を見渡すが、まだ敵はいない。
「うん、やばいね。早く壊さないと」
地面に手をつけていたムエレは、その場から立ち上がり。
「気配あり。情報通り壁上とオーク像の周りだ」
前回の大紋章戦。いぶし銀は本ボス側だった。
ミウッチャは鯉口を切り、腰を捻りながら刀身を空気にさらす。
「私らのやることは変わんない。手筈通りさ」
「おうよ」
王杖にできる限りの神力を沈ませてから、土の紋章より〖岩亀〗を召喚。まだ苔は生えておらず。
「コルネッタ。オイラの愛馬、一緒にどうだい?」
「キザったれたこと言ってんじゃないよ。さすがに亀じゃ絵にならんね、あたしゃ白馬をご所望だ」
そう悪態をつきながらも、慣れた動作で甲羅にしがみつく。
軽装の神技〖繋がる心〗を発動。
「浮かべ」
〖岩亀〗は頭部とヒレを崩し、地面スレスレに浮かびあがる。
土犬と違い意識や映像の共有はできないので、声にだして指示をする。
「五秒後にあっちの壁に移動を始めとくれ」
視線を仲間の一人に移し。
「エルガルド」
「わかった。あとエドガルドだからな」
軽装から鎧に交換。
「〖あんた達の鎧〗」
ムエレの背中には盾が取り付けられており、まさに亀の甲羅みたいになっている。装備の鎖で別空間に移されていても、〖あなたの盾〗は効力を失っていなかった。
「振り落とされんでくれ」
「私がそうなるんじゃ、お前にゃ耐えられんだろ」
身体能力はコルネッタの方が高い。秒数が経過し、〖岩亀〗は動き出した。
戦場に沢山の時空紋が出現。
オークの像を守るように肉鬼の集団が姿を現す。その外側にはゴブリンの群れ。
壁上のガイコツたちが一斉に矢を放った。
「小鬼は突っ込んでくるようだな」
「敵味方関係なく、相変わらず容赦ないよね」
エドガルドとバッテオは〖盾〗と〖鎧〗で矢を防ぐ。数体のゴブリンが急所に当たって倒れたが、連中も防具はまとっており、勢いを落とさずに迫ってくる。
空間の腕輪から瓶をだし。
「天の光より、断然範囲が広いや」
〖錆の雨〗 実際に錆びる訳ではないが、雨が降っている間だけ、鉄製品の性能が劣化。
ミウッチャは守りの姿勢を作らなかったので矢に命中するが、〖あんたの鎧〗により無傷と言って良い。
兜や肩当てが気持ち邪魔だから上段は諦め、八相の構えでゴブリンに意識を向ける。
小指で刀の柄尻を固定。
「〖黎明・剣〗」
放たれた〖空刃斬〗はラウロよりも鋭かったが、装甲に傷がつくだけ。
神鋼の刀身と王製の拵え。その打刀には、まだ神力が薄くしか沈められておらず。
どれほどの量で斬れるのかを、何度か〖空刃斬〗を使いながら調節していく。
「こんなもんかな。二人とも得物を剣にして」
「あいよ」
装備の鎖を使い、打撃武器から得物を剣に変更。
〖おめぇさん方の剣〗を二人に使う。
ミウッチャは呼吸を整え。
「〖真昼・影〗」
刃で斬り裂いた空間の中から、黒い触手が一つ這い出ると伸びていき、迫ってくる小鬼の足首をつかみ取る。
この影に物理判定はない。拘束位置が足の場合は歩行阻害。
「鎖をお願い」
「了解」
エドガルドの前方に大量の滑車が出現し、それが一気に放たれる。
回避もされ全てが命中したわけではないが、十体以上の小鬼と繋がった。
「巻き取りはいくつだ?」
「触手が当たったのだけ」
指示された個体だけに〖巻き取り〗を発動。
引き寄せにより、伸びきっていた黒い触手も緩むが、小鬼の片足は拘束されたまま。
刀の刃が小鬼の胴体を斬るも、その傷は意図的に浅い。傷口から空間の歪みが発生し、新たな触手が闇の中より姿を現した。
「二体ちょうだい」
〖巻き取り〗によって引き寄せられたうちの一体に新たな触手が伸び、それが小鬼の手首を拘束した。
対象が腕の場合は握力の低下。
「バッテオ」
「わかった」
新たな触手に掴まった小鬼の武器を叩き落すと、続けざまの一振りで相手の腹を斬った。するとその傷口より再び触手が出てきたが、今度は他には飛び移らず、同じ個体の足首に伸びる。
〖真昼〗の影は斬撃で連鎖するが、どの部位を拘束するかはランダム。同じ個体の場合もあれば、他を狙うこともある。
拘束されなかった個体は、ミウッチャが切り捨てる。
小鬼の群れは、もうそこまで迫っていた。
「さがれ、引きつけるぞ!」
エドガルドが滑車を追加で発射させてから、十数体を一気に引き寄せる。
〖巻き取り〗の反動による一瞬の鈍りはあったが、ゴブリンたちはすぐさま体制を整えた。〖剣〗と〖盾〗で小鬼の攻撃を退け、〖鎧〗で我が身を守る。
〖鎧の鎖〗は本人に敵意を向けさせるわけではなく、物理的に自分から離れられなくしているだけ。一度に〖巻き取った〗数が多いせいか、エドガルドから距離をとれる個体もいた。
他の二人にも攻撃をしてくるが、一定の間隔で〖巻き取り〗をするので、そのたびに姿勢を崩される。
バッテオは小鬼の攻撃を〖盾〗で防ぎ、その胴体を斬るが、【聖域】の防御強化により傷は浅い。
「矢が来るっ エルガルド!」
【聖域】はこちらの防御力も奪う。
「分かってる。あとエドガルドだって!」
効果が切れる前に〖あんたらの鎧〗を発動。
ミウッチャは二人よりも防御が薄い。
「毒もらった」
水の加護者は小鬼の短槍を〖あなたの盾〗で受け止めるが、背後から別個体が迫っていた。
「ちょっと待って」
「大丈夫だ、そいつは俺と繋がってる!」
〖巻き取り〗により背後の小鬼は転倒する。
バッテオは装備の鎖を操作して剣を戻すと、空間の腕輪から二つの瓶を取りだす。
〖薬草の雨〗を降らし、〖解毒薬〗を〖噴射〗する。
「ありがと」
ミウッチャは前方から斬りつけてきた小鬼の剣を弾き、側面から突いてきた別個体を短槍ごと両断した。
「来るよっ 身構えて!」
矢が降ってきたので、〖鎧〗と〖剣〗で身を守った。
像の近場からオークたちは動かない。
すでに小鬼とは乱戦になっているが、〖鎖〗と〖影〗があちこちに伸び、とんでもない絵ずらだった。
「足もとに気をつけて!」
触手に拘束された個体は、灰に帰ることができないようだ。
影が増えるほどに神力を消費していく。
・・
・・
戦闘が始まってすぐ、壁へと向かった二人。
ムエレは甲羅にしがみ付きながら、矢の雨を掻い潜る。
「ひぇー」
「しっかりしなさいよ!」
まだ〖鎧〗は効果中なので、何発か当たったが問題ない。ムエレにいたっては背中に〖盾〗を背負っていた。
壁の目前で〖岩亀〗は停止して着地する。
地面には石が敷かれているが、土に通ずる属性であれば、ゴーレムからすればあまり関係ない。性質を変化させ、ヒレと頭をつくりだす。
「さっさと降りなって」
「うへぇ」
甲羅よりずり落される。
「ちょっとはこの子も熟練上げた方が良いんじゃない?」
胴体をそのままに浮かぶことも出来るようになる。
「一つに集中させるのが基本なんだって」
高度を上げるとなれば、そのぶん浮かべる秒数も減ってしまう。
頭上より矢が降ってくるも、〖岩亀〗を盾にさせてもらいながら、しばらくこの場で待機。
装備の鎖から弓を取りだし、こちらからも反撃をするが位置取りが悪い。
甲羅は岩なので、それなりの強度もある。矢が刺さり多少の亀裂もみられるが、まだ余裕はあった。
再び浮けるだけの時間は経過しただろう。
「そろそろ良いか。守ってくれよ」
〖あんたの鎧〗もずっとは続かない。
「わかった」
ムエレは鎧から軽装へ交換。〖繋がる心〗を発動。
甲羅に飛び乗り、〖岩亀〗を浮上させる。
壁の上では骨鬼たちがこちらに矢を向けていた。
「突進」
振り落とされないよう気をつけながら、衝撃に備える。
凹凸を破壊してから五体ほどの敵を吹き飛ばし、〖岩亀〗は壁上で停止する。
骨鬼たちは弓を投げ捨て、鞘から片手剣を抜く。
もう消耗していたので、数体が甲羅を突き刺せば、〖岩亀〗はすこし粘ったが崩れてしまった。
ふと壁の外側を眺め。
「こりゃ夜じゃないな」
気配を感じられない。暗闇だけの底なし沼。
「おーい、ボーっとすんなー」
「分かってるって。反撃開始だ」
王木の杖にできる限りの神力を沈めてから、うすく苔むす二体の戦士を召喚した。岩製の大盾と大剣を持つ。
巨鬼ほどではないが、大鬼や肉鬼と同等の大きさ。
「お前は命大事に。お前はガンガン行こうぜ」
了承の動作はないが、心は繋がっている。
両方の石核が壊されない限り、二体は動きを止めない。
岩製の鎧は破損すると修復されないが、内側には土がつまっており、こちらの補充と凝固は可能。
「俺らは構わんで良いさ、そっち方面から蹴散らしていけ」
骨鬼たちが〖岩鎧の戦士〗に攻撃を加えるが、大したダメージもない。
歩くたびに足場が陥没していくが、気にすることもなく戦士は大剣を叩きつけ、骨を砕き破片を散らす。
必要な指示は終えた。
「んじゃ、俺らも戦わんとな」
〖岩戦士〗が進むのとは逆の方向からも、ガイコツ共は弓で二人を狙っている。
放たれた矢をコルネッタが戦槌で撃ち落とし、〖鎧〗で弾く。
「もう鎧の効果が切れる、早く装備変えて!」
〖あなたの盾〗も銀光を失っていた。
ムエレは軽装から鎧に戻し、片手持ちの戦槌と盾を構えた。
〖土の鎧〗と〖土の打武器〗を発動。
コルネッタの前に出て、〖花の鎧〗を発動。
「オイラの亀さん再召喚まで、まだけっこう必要だな」
「私らも蹴散らしてくよ」
〖貴方・私の戦槌〗で武具を強化してから、〖一点突破〗で敵との距離を詰める。
打撃武器にもかかわらず、両手持ちの戦槌で突く。
敵の骨鬼は弓兵なので軽鎧だったのが幸いし、沈められはしなかったが防具の破損には成功。
〖波〗も発生したが、ティトやアリーダのそれと比べれば、効果も範囲も今一つ。
ほとんど機能しない〖一点突破〗の目的は、攻撃でなく防御にあった。
近場の骨鬼が味方もろとも矢を放つが、銀光の防護膜により鎧が傷つく程度だった。
ここまでは【聖域】も届いていない。
両手持ちの戦槌で一体ずつ確実に破壊しながら進んでいったが。
「やってくれるね」
前列は片膝を床につけて弓を構え、後列は立ったまま矢をこちらに向ける。まだ整列が完成していないようだが、もう時間の問題だった。
「ムエレ協力して」
「おっ やるか? 二人の協同作業ってか!」
「うるさい」
コルネッタは得物を変更する。
新たに出現させたのは、今まで持っていたのと同じ、王木と将鋼の戦槌だった。
違いがあるとすれば、長い柄の先から鎖が伸びており、一度それを宙で遊ばせてから、ムエレのもとへ放る。
相手が鎖を掴んだのを確認すると、コルネッタは〖一点突破〗で骨鬼の列に接近。
今回は突きではなく横からの薙ぎ払い。
〖無断・巨〗 銀光が物理判定を得て巨大化。この神技は武器の重量に比例される。
タイミングを見計らい、ムエレが掴んでいた鎖に〖土の打武器〗を発動させた。
突撃による勢いと、神力混血による肉体強化。
重さを増した巨大な銀光のハンマーが、壁上の凹凸ごと骨鬼どもを粉砕する。
・・
・・
肉鬼の像を破壊するまでは、ゴブリンもオークも時間の経過で一定数補充されていく。
それでも戦局は動いていた。
「もう矢は心配ないかな」
最初に接触した小鬼たちはもうほとんど残っていないが、連鎖が連鎖を呼んでオークの集団や増援にまで、触手の影は届いていた。
「バッテオ、エルガルド。そろそろ決めよっか」
ミウッチャは装備の鎖を操作して、防具を鎧から軽装へと交換。
腰のベルトに差していた鞘に左手を添え、親指と人差し指のあいだに峰を滑らせてから刀を納める。
「お前ら、わざと間違えてるだろ」
「エルガルド、最後のひと踏ん張りだね」
これから使う神技の発動条件。刃を鞘に納めた状態で一定秒間経過。
丸腰になった彼女に向けてオークやゴブリンが狙いを絞るが、〖鎧の鎖〗がそれを許さない。
大型は行動を阻害するが、引き寄せは出来ないので、そちらはバッテオが対応する。しかし二人だけでは攻撃を反らしきれず、ミウッチャの正面より肉鬼が大剣を振り落としてきた。
精神集中。
柄を逆手に持ち、鞘から抜いて柄尻を大剣の刃に打ち込む。真っ直ぐに伝わった衝撃が、〖雨〗で劣化した剣身を二つに割る。
ゴブリンが側面から突いてきたので、半分抜かれた刀身を鞘に戻しながら一歩さがって躱す。通り抜けてすぐに〖鎖〗が当たり、その小鬼はエドガルドのもとへ〖巻き取られた〗
まだ大剣を折られた肉鬼が残っている。
左右の手で鞘と柄を握ったまま、姿勢を低くとりながら、すり足で一歩進む。潜り込むようにオークの股下へと入り、肩で担ぐように上半身を起こせば、その巨体はバランスを崩して転倒した。
片足に触手がまとわり付いていたので、歩行阻害により体幹がぶれていたのだと思われる。
深呼吸を一つ。
周囲に張り巡っている触手の中から、良さげな物を選択。
死亡したゴブリンとオークを繋ぐ黒い線。
「ミウッチャ後ろだ!」
転ばされた肉鬼が立ち上がり、彼女の背後に迫っていた。しかし全神経が触手に向けられているので、その声は届かず。
〖鎖〗が命中するも、大型だから〖巻き取り〗に引き寄せは発動しない。
柄を握り直し、構えを整え、刀にできる限りの神力を沈ませる。
喧騒の中で、ぽつりと声が周囲に響く。
「〖黄昏・斬〗」
鞘から抜きながらの一振り。
黒い触手の影を断つ。
次の瞬間だった。背後にいたオークの足首から青い血が噴き出す。
その個体だけじゃない。
触手に繋がれた全ての四肢を対象として、ここら一帯が青い血に染まる。
〖黎明・剣〗の熟練は低くても、神鋼の打刀がそれを補う。
痛みに呻く鬼たちの地獄絵図。
【聖域】の中心に【聖紋】が出現。
〖剣の紋章〗が瞳から手の甲へと移動。
脇構えの姿勢をつくり、肉鬼の像を睨む。
黎明を停止させ、〖あたすの剣〗を発動。
〖一点突破〗で距離を詰め、〖無断〗からの〖幻〗でオークの像を粉砕した。
・・
・・
協会組は今も戦いを続けている。
【聖域】はラウロのそれとは違い、防御も回復も両立されていた。バランス型。
まだ回復は何とかできるが、この硬さだけは厄介極まりない。
心の焦りを沈めるために、ティトは乾いた喉の底から声をだす。
「凪」
発動に失敗。
ベルトのホルダーから精神安定剤を取りだして、苦笑いを浮かべながら喉を潤した。
「本末転倒っすね」
得たばかりであるこの神技には、精神安定の効果があった。
もともと苦手分野としても、〖無断〗がここまで通らないのは始めての経験。
劣勢の中で本ボスと対峙するのは、引き付け役のヴァレオ。
肉鬼の大槌を中型の〖盾〗と〖聖十字〗で受け止め、殴盾からの〖相棒〗を相手の大盾に叩きつけるが、威力が不足しているようでビクともしない。
「まだっ!」
中盾の〖打撃〗で大槌をはじき返す。防御低下のデバフ。
ティトは細剣を構え。
「〖凪〗」
正式には〖僕の剣・凪〗
心を落ち着かせて集中力を高め、見切りの勘を強化。この状態でだけ発生する神技があった。
「〖風刃斬〗」
空刃斬と似た神技だが、皮膚に傷を負わせられたなら、そこから血刃を発生させることも可能。
狙ったのは鎧の破損した部位。
「やった!」
始めて攻撃が通り、オークの表情が強張る。
生じた隙を逃がさず、ヴァレオは〖突進〗でさらに相手の姿勢を崩させた。
「ラウロさん!」
〖無月〗による転移で背後に出現。
その瞳には古き〖剣の紋章〗
打撃(弱)からの〖旧式・無断〗を背当てに叩きつける。
手応えあり。
設置大盾に隠れていたグイドが叫ぶ。
「皆さん、【聖域】が消えてます!」
ラウロは後ろにさがり、即座に〖聖域〗を展開させる。
活路が開く。
ヴァレオもオークから距離をとり。
「終わらせましょう。すこし準備をしますから、時間を稼いでくれ!」
【聖域】が〖聖域〗に変化しただけでも、この場の空気は一変していた。
肉鬼は醜い顔を一層に歪ませるが、敵意は課長に向いたままだった。
こんな時こそ、サブの引き付け役が踏ん張るとき。
「任せろ」
装備の鎖を使い法衣をまとう。だが威光の発動が間に合わず、肉鬼はヴァレオのもとに足を進める。
「俺が仕掛けるっす!」
ティトは細剣をかまえ、〖一点突破〗を発動させた。
側面からの接近に気づき、すぐさま肉鬼は大盾を構える。
「〖風波〗」
一点突破で通り抜けた後に突風が吹き、その周囲にいた敵は姿勢を崩す。
突きを避けられる。または意図して命中させなかった際に発動。
着地と同時。
「姉ちゃん!」
予期せぬ〖風波〗により仰け反った肉鬼を、設置型大盾が吸引する。
「こっちからも」
リヴィアは前腕に装着した盾を敵に向けた。
〖飲み込む盾〗と〖飲み込む巨大盾〗 両方の射線が肉鬼を中心に交差した。
重力と引力の檻に閉じ込められた巨体を見て。
「威光は必要なさそうだな」
ラウロは兵鋼の短剣改を装備の鎖にもどし、左腕に〖聖拳〗をまとわせた。
階段状の〖足場〗を設置してから駆け上がり、高い位置から拳を地面に叩きこむ。〖土紋・地聖撃〗が肉鬼の動きをさらに封じる。
先代いぶし銀の最高火力。
左右の盾は別々に痛みを蓄積させている。
殴盾は〖復讐〗を発動させ、右腕の中型盾が〖苦痛〗の光を灯す。
中型盾は〖復讐〗を発動させ、左手の殴盾が〖苦痛〗の輝きを灯す。
オークの強化個体は唾液をまき散らしながら抵抗するが、身動き一つできなかった。
扉が持ち上がり、ひび割れた神像と時空紋が姿をさらす。
そこには戦いを終えた、二代目いぶし銀がいた。
ルカの時はいぶし銀のとこにあった像の代わりに本ボスが出現していました。また【聖域】ではなく【天の光】でした。
【天の光】は範囲が【聖域】よりも狭いので、本ボスから離れろば〖天の光〗も使えますが、〖聖域〗は範囲が広く重なってしまうので、戦場となった空間の中では使えません。
天の光は使い手と一緒に動きますので、同じ神技が重なった場合は、熟練が高い方が優先されます。
人間では天使や神にはとても敵わないので、その手法は難しいです。
あと天上界に聖属性は二名しかいないので、場合によってはラウロが挑戦しても〖天の光〗になるかも。
盾について、ちょっとややこしいんですが。
〖打撃〗 〖突進〗 〖相棒〗
これら神技は中盾でも殴盾でも共有されております。クール時間なども。
〖俺の盾〗は中盾も殴盾も別々に発動されており、それぞれが〖苦痛〗をためています。
なので〖苦痛〗から発動する〖叫び・咆哮〗〖復讐〗は共有されておりません。
エルガルドに関しては、作者が名前を間違えまくったので、あえてこうしました。あとカチェリとカチュアも。
七話は完成しましたので明日に投稿予約をしました。その先の内壁突破作戦は時間がかかると思います。
何話くらい必要になるか検討がついてませんので、長ければ次章として投稿したいと思います。




