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いつか終わる世界に  作者: 作者です
上級ダンジョン【町】神像修復編
55/133

5話 上級神像修復活動 大紋章攻略 前半



 上級ダンジョン【町】


 南側で発見された神像は今のところ全部で三カ所。時空紋は一カ所だけ。

 北側で発見された神像は未だなく、時空紋は一カ所が判明している。


 二日目の午後で南側の二カ所を修復できたが、そのうち一つはすでに亀裂がうすく入っていた。



 そして三日目。


 午前中のうちに南西に残る最後の一つを修復し、拠点にもどり休憩を挟む。護衛についたのはレベリオ組だけだった。


 午後の予定は大時空紋への挑戦。目的は攻略後の神像修復なので、ヴァレオ組はどうしても参加しなくてはいけない。


 いぶし銀の面々はデボラへの報告や、最後の情報集めに出ている。


「協会員の皆さん、余力は残っていますか?」


「問題ありません。俺らはレベリオさんたちに守られて移動しただけなんで」


 彼はもともと上級で活動していたので、他の面々よりも余裕はある。



 リヴィアはアリーダに入れてもらったお茶を飲み。


「しばらく壁にそって歩いてたけど、内側なのに上がるための階段とかなかったですよね」


「この規模になると、壁の四隅とかに塔みたいなのがあるのよ。そこから上れると思うんだけど、この【町】にはないわね」


 以前、ラウロの〖足場〗に乗って見渡したこともあった。


 規模としてはもう町とは呼べないので、名称を【都市】または【都】にするか検討されていると噂話で聞いている。


「教都や城郭都市なんかは、立派な壁塔もあるけどな」


 ラファスの町壁よりも高く頑強な造り。


「外壁にはそれっぽいのもありましたよね?」


「主に木製なので、あまり強度には自信もありませんが、見張り塔のようなもんです」


 彼も戦争時はイルミロと同じく、探検者または協会戦闘員を指揮する立場にあった。



 グイドは町壁を眺めながら。


「【町】の外には何があるのでしょうか?」


 好奇心とでも言うべきか。


 ラウロはソロの時代から、モンテ経由である程度の情報は掴んでいた。


「今のここはどうか知らんけど、町壁の先は上も下も空しかないって話だぞ」


 【都】や【都市】に並ぶ新たな名称の候補。


「だからこそ、【天空都市】という訳ですか」


 初級は大地の裂け目に囲まれており、そこより先には行けない。〖足場〗などで無理に越えようとすれば、上級と同じく転移させられる。


 中級はどの方角に進んでも迷いの森。一度踏み込んでしばらく進んでしまうと、徒歩で序盤の森に戻ることはできないので、時空紋で帰還をするほかない。


 恐らくそこから先は神々も作ってはいないのだろう。強引に行けば時空の闇に漂うしかない。



 じっと壁を見つめているグイドに苦笑いを浮かべ。


「登りたいとか、言っちゃダメっすよ」


 姉はため息を一つ。

 

 受付などは接客業だし、ダンジョンでの任務中もよろしくないとは思っている。だけれど上級で活動するにあたり、喋り方に気を配る余裕はないとのことで、リヴィアも特に指摘はせず。


「転移させられなければ挑戦したいんですがね」


 壁を登るにも専用の装備は持ち込んでいない。


「人工物というのも、少し興味はあったんですが」


 真顔で言っているので、本人は本気らしい。


「あっ 人工物ではなく、神工物でしたね。なんつって」


 彼なりの冗談だったのかも知れず。


「君って奴は……頼りになるんだか、どうしようもないんだか」


 一応。直属にあたる上司がこの場にいる。


 戦えるリヴィアやティトより、ずっと平然としていた。



 皆は昼飯も摂らないが、マリカは食事に夢中だった。保存食は嫌と言うが、それでもよく食べる。


「かたい~」


 空間の腕輪が使えるので、保存状態はそこまで悪くない。


・・

・・


 午後。道中で戦闘を受け持つのは主にレベリオ組だった。



 周囲の建物は損傷が激しいので、この通路は屋根上への警戒を一段階緩められる。


 〖大地の気配〗はリヴィアとムエレの二名が使え、マリカの〖風読〗もあった。



 行く先には十体ほどの骨鬼。増援の気配もない。


「ラウロさんは神力の消費を抑えてください」


「はいよ」


 〖聖域〗だけを展開させ、回復に専念する。


 ダンジョンでの戦闘はどうしても避けれない。それでもこういった安全な経路を探りながら進む。


・・

・・


 警戒もせず、普通の町を歩くように最短距離で進むのであれば、本当はもっと早く到着もできるはず。


 一行は数時間をかけて、東遮断壁の門に到着した。


「レベリオ組もお疲れさま、帰りは余裕があれば私らも戦うから」


 ヴァレオも自分の組員を見渡し。


「準備は大丈夫ですかね。ラウロさんもすまんな、回復役をお願いしますよ」


「おう。任せてくれ、温存はしてきたからよ」


 彼の組は四名であり、その中に治癒ができる者はいない。


 さらに言えば時空の加護持ちも混ざっていた。


「お二人とも、あまり気張らずにね。課長だってあなた方なら大丈夫だと判断したわけですから、私と違ってね」


 当の本人は呑気なもの。


「なんか気が抜けちゃいます」


「グイドさん、相変わらずっすね」


 山好きは剣を抜き。


「あまり戦えませんが、自分の身くらいなら守りますよ」



 レベリオは前に出て。


「協会員にはヴァレオさんがいるので、いぶし銀の中で盾持ちの方がいれば」


 エドガルドとバッテオが盾を使う。


「頼んます」


「じゃあ僕も」


「オイラもお願いしよっかな」


 専用の神技はないが、ムエレも予備で盾は使っていた。


「お任せください」


 レベリオが〖あなたの盾〗を三名につかう。近接武器と違い、この神技には斬打突の弱中強という概念もないので、自分の一または二人称で使えるのであれば、その方がなにかと良い。

 名前で固定するといった意味で。



 ヴィレオもその様子を見て。


「じゃあ俺も先に使っときますか」


「自分も今回は盾使おうと思うっす」


「あんた大丈夫なの、慣れてない物は使わない方が良いよ」


 心に余裕もないからか、リヴィアも弟に対する言葉づかいになっていた。


「これでも練習はしたっすからね」


 グイドとの訓練は自分の鍛錬も含んでいたようだ。


「俺も頼む」


 ラウロの盾は未だに兵素材。


「では神力の消費を抑えるためにも、一人ずつ行きますよ」


 〖君の盾〗を使って行く。


「時空紋に入ったら、設置型の盾にもお願いします」


 鎧の加護者。エドガルドはリヴィアのもとまで進み。


「とくに姉さんは必要だろ、ラウロさんとヴァレオさんもこっち来てくれ」


 協会の財力。上級に挑戦してくれるのなら、相応の装備は支給してくれる。


「弟さんは軽装だから無理だな」


「失敗したっす」


 将の素材で作られた軽装だった。それでも細剣は王製で、左腕の小盾は将と王の混合。


 グイドは鎖を操作し。


「私も軽鎧ですので、よろしくお願いします」


「岩山の旦那もね、了解」


 〖あんたの鎧〗をまとう一同。


「課長、良ければ盾に攻撃するっすよ」


「やばっ、忘れるとこでした。よっしゃ、いっちょ来い」


 戦いの前に〖苦痛〗を完成させる。



 両方共に剣の加護者がいるので、アリーダはどこか手持無沙汰。マリカと一緒に少し離れた位置から。


「まさに今からって感じよね」


 ボス戦前の下準備。


「羨ましい?」


 中々〖紅〗を使う機会がない。


「今回ばかりはラウロが適任よ」


 大時空紋のボス戦はある意味だと、光属性では都合が悪い。



 ヴィレオからは〖君の盾〗


 エドガルドからは〖あんたの鎧〗


 どこかご満悦なオッサンは〖剣の紋章〗を瞳に発動させる。



 課長が面々を見渡して。


「効果が切れる前に始めるとしますか。では、いぶし銀と我々は少し距離をあけて紋章に入ってください」


 各々が位置につく。



 レベリオ組が見守る。


「頑張ってください」


「ご武運を~」


「……羨ましい」


 大時空紋が十人の足もとを照らす。


・・

・・


 ルカの時は大鬼の強化個体。そして大量の雑魚。


 鉄塊団の時は骨鬼の強化個体。単独。


 満了組の時は巨鬼の強化個体。単独。


 三回分。この情報量が多いとは言えない。


・・

・・


 四方を壁で囲まれた空間。一カ所に昇降式の扉があるので、攻略に成功すれば時空紋や神像のある部屋に行けるのだと思われる。


 もしくは攻略に参加した、いぶし銀のいる空間に続くのか。


 壁の外側は夜または闇しか見えず。それでもこの場所は明るかった。




 姿を現したのは肉鬼の強化個体。全身を王鋼の鎧でかため、大盾と大槌を左右の手に持つ。


 そいつの足もとには【聖域】が展開されていた。


 光髪の少女か、それとも古の聖者か。




 すでに本ボスとの戦いは始まっていた。


 振り落とされた大槌を、ヴァレオが神鋼の殴盾で受け止める。衝突の瞬間に〖打撃〗を発動させて押し返そうとするが、〖聖十字〗と〖盾〗の衝撃吸収をもろともせず、靴底が沈み石の敷かれた地面に亀裂を走らせる。


 リヴィアが発動させた〖飲み込む巨大盾〗により、引力が働き肉鬼が姿勢を崩した。


「援護行くっすよ!」


 〖一点突破〗の切先が装甲に刺さるが浅い。〖波〗により後退させることはできたが、肉鬼は大盾を地面に打ちつけて転倒はしなかった。


 【聖域】による防御力の増加。


 同じ神技を重ねることはできない。


「治癒するぞ」


「助かります」


 ヴァレオの身体に手を当て、活力の光により唾液を浄化する。聖属性では治癒・活力の輝きは使えない。


「〖花〗を頼む」


 リヴィアの鎧から蔓が伸びるも、まだ蕾の状態だった。肥料の雨がないので、咲くまでに少し時間が必要。

 


 グイドは認知結界により、設置型大盾と自分の存在感を消している。そしてあともう一人。


 〖土の槍〗で重さを操作しながら、肉鬼の背後より短槍を突き刺す。


 オークはリヴィアの存在に気づき、一瞬だけ後ろへ意識を移すが、その敵意はヴァレオに向けられたまま。



 課長は意図して大声を出し、〖盾の突進〗を発動させる。


「はぁぁっ!!」


 肉鬼も大盾で向かい打つ。



 両者が激突する瞬間だった。ヴァレオが突進を急停止させて横に飛んだ。


 予想していた衝撃が来ず、オークの重心が前方に傾く。


 ティトが駆け寄り側面からの〖無断〗を発動。


「〖幻〗」


 二重の衝撃が内部に浸透し、装甲も破壊した。


「姉ちゃん!」


 ティトがその場から一歩さがれば、重鎧のリヴィアが自分の盾で相手の背中を押した。


 肉鬼は姿勢を前のめりに崩す。



 将鋼の直剣による〖空刃斬〗が、オークの兜と肩当に命中。無傷だが斬撃判定はあり。


 咥刃に神力を沈ませる。


 転移するのは先ほどまでティトがいた場所。短剣の鞘と柄に神力を沈ませ、鎧の破損した部位に向け〖旧式・血刃〗で斬りつける。


 即座に方向転換。目元に風が当たらないよう手で隠しながら、〖旧式・一点突破〗で肉鬼から離れた。



 〖打撃〗の効果中でも、手痛い攻撃を受ければヘイトは薄れる。


 ヴァレオとしては、常に敵意を自分に向けさせておきたい。


 殴盾を装備しているのは左手。


 右の前腕には中型盾。持ち手を握り締め、肉鬼の大盾に〖相棒〗を喰らわせる。


「俺の防御低下より、【聖域】の方が性能は高そうですな」


 〖打撃〗なら相手も若干の衝撃を受けるようだが、〖相棒〗ではビクともせず。


「ラウロさんはしばらく離れて、瞬きせずに血刃を保ってください」


 旧式血刃の効果は回復の妨害または出血のどちらか。今は回復の妨害が優先されていた。


「任せろ」


 瞬きを耐えるなど、彼からすれば容易な事。ラウロはヴァレオの後方へと位置どる。


 グイドは設置型大盾から出て、数歩進むと認知結界を彼にまとわせる。



 肉鬼は牙を喰いしばり、大盾で課長を押し返す。仰け反った瞬間を狙い、大槌を振り下ろしてきた。


「させない」


 リヴィアが間に入り、自分の盾で大槌を防いだ。即座に〖聖十字〗を両者の隙間に展開させる。


 〖君の盾〗による衝撃の吸収。そして〖土の盾・鎧〗による重量。


「舐めるなっ!」


 押されながらも、盾でひらいた隙間より短槍を突き刺す。


 攻撃力不足で鎧を削るだけに終わったが、軽く怯ませることは出来た。


「〖血刃〗っす」


 ティトが鎧の破損部位を斬りつける。もとの傷が小さいせいか、出血の量は増えるも動きに衰えは見られず。


 彼の〖血刃〗は出血または神力の流出だから、どちらの効果にも回復の妨害はついていた。


「離れろっ! 口にためてますよ!」


 ヴァレオが気づくが間に合わず、肉鬼はティトの方を向くと、唾液の塊を吐きつけた。


「うあ゛っ!」


 〖聖壁〗が彼を守る位置に二重で展開されるが、恐らく防げるほどの強度は期待できない。そのまま相手を狙えば沈められたはず。


 だけど敵意は別の者に向けられているからか、邪魔なリヴィアを盾ごと大槌で弾き飛ばす。


 転倒しながらも。


「鼻から吸って、はやく!」


 〖残り香〗 時間の経過または意図的に花が散るとき、香りが一層に強まる。状態異常治癒(瘴気弱体)と一定回復(瘴気弱体)。鼻呼吸でなければ効果が薄い。


 アレルギー反応で鼻がつまっていた。ティトも汚いとか言ってられないので、片方を押さえて鼻水を出し、なんとか空気を取り込む。



 もう邪魔者は消えたと、肉鬼は憎きヴァレオの前に立つ。


「まいったね」


 天にかかげた盾から、〖叫び〗の銀光が広がっていく。


「立て直しますよ!」


 攻撃の起点てはなく、防御のために使うのは、劣勢な場合が多い。


 〖咆哮〗により肉鬼が仰け反った。




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