表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつか終わる世界に  作者: 作者です
上級ダンジョン【町】初挑戦編
49/133

8話 上級【町】初挑戦 挑戦者たち


 二人が時空紋に消えてから、少ししてイージリオの代わりに第三班の班長が方針を決める。


 全員が揃っている第八班。


「門が開いたら、貴方たちは南門に向かってもらえるか。報酬については後ほどになるが」


 彼らはそれぞれに顔を見合い。


「わかった」


 カチェリと自班の仲間に目を向け。


「各紋章の記録を取りたい。申し訳ないが手伝ってもらえるか?」


「あいあいさー」


 残りはこの場に残りルカを待つ。


 欲望の〖神眼〗は熟練が高ければ壁も透視できるが、道中でカチェリはそれを発見できていない。


 三班班長は懐中時計を取りだし。


「今から三十分過ぎても戻らなければ神像帰りをしたとして、私たちもイージリオから情報を得て、小紋章に再挑戦する」


 彼が失敗したとなれば、どこか近場の神像に飛ばれる。


 決断は必要だ。


「ルカさん……隊長は大丈夫でしょうか」


「なんとも言えんな。師匠はアホみたいに強いけど、さすがに無敵じゃないし」


 本体なら別だろうが、今の肉体は人間だった。



 ボスコは大紋章を眺め。


「隊長みたいな探検者は舵取りできるのがいれば、もっと本領を発揮できるんだがよ」


 レベリオは過去を思い返し。


「そうですね」


 暴走を止められる者。


「まあ俺らとは潜り抜けた死線の数も違うだろうし、神像帰りしても自力でなんとかできるだろ。師匠が化け物であることには違わんさ」


「だな」


 あなた達がそれを言いますかと、レベリオが苦笑いを浮かべていたら、一通りの指示を済ませた三班班長がこちらに来て。


「すまなかったな。うちの馬鹿が」


「気にすんな。俺としても良い練習になったからよ、フィロニカさんも大変だな」


 満了組に移りはしたが、彼女は第三騎士団の同期でもあった。


「普通に探検者をやれていれば、あそこまでの変人にはならなかったと思うんだが」


「イージリオ殿の年代じゃ、次で予備軍も終わりだろ。そしたらちっとは落ち着くんじゃないか」


 民に優しい教国ではあるけど、光の加護者にだけは厳しいと言われており、実際にそうでもあった。だけど五十代になれば予備軍も免除もされる。


「だと良いがな」


 魔界の門が開いてから、八年から一二年が警戒期とされており、四十代前半の彼であれば解放は近い。


 ボスコは瓦礫片で地面に落書きをしながら。


「ありがたいじゃん、何時もああやって面倒ごと率先してくれっし」


「ですが立場というものがありますので」


 対処をさせられた三班長を気づかえるあたり、レベリオも好青年と言える。


「それで信頼を勝ち取って今の地位にいるんだが、あの様だ」


 化けの皮はもう完全に剥がれていた。



 お馬さんの絵を描きながら。


「少し種類は違うけど、隊長と同じタイプの探検者だったわけよ」


 ただ素材と報酬を求めていただけで、そのために暴走しがち。


 

 落書きを続けるボスコにため息をつき、班長はモンテのことを思い。


「お前もな」


 突撃探検隊。第一班を除けば最強の戦力だが、この班には厄介なのが二人いる。


「僕は意図的だもん、やる時はやる男さ」


「余計質が悪いだろ」


 彼の性質は騎士団時代から変わらず。なんど厳しい罰を与えられても、へらへらしていた。


「お前が残ると知った時は驚きましたよ」


 国を守る。民を守る。柱の教えを守る。


 徴兵期間を経て、騎士道精神に目覚めたのだと、尊敬の目を向けられる連中。


「だってそっちの方が一目置かれて格好良いじゃん。モテるし」


 実態などはこんなものだ。



 レベリオはゴブリンと小紋章を交互に眺め。


「それでも情報なしで挑戦してくれたのは、確かな事実になりますから、望む素材が出ると良いですね」


 神鋼の素材は鉄鉱石ではなく、必ず鉄塊で出現する。


「まあもし出たとしても、たぶんかなり小さいんじゃないか」


 鉄塊にも大中小と違いがあった。


・・

・・


 十分ほどが経過した。


 門が開き、第八班は一足早く南門へ出発。


「ごめんなさい。うん、本当に反省してます。たぶん」


「たぶんってなんだ。お前という奴は、デボラさんに報告しますからね」


 王布(中)がボスの素材で、それ以外の雑魚数体は将だったらしい。


「始末書は任せてください、僕あれもう得意分野かも知れません。でも報酬と素材は渡しません。うん駄目、絶対」


 騎士団であれば没収の可能性が高い。それでもここは満了組。


「それは私が決めることではない」


 今回の素材だけでも、売れば一カ月は贅沢な暮らしができる。彼の場合は全てを神素材に回すと思うが。



 資産を預けられる施設は幾つかある。


 ・探検者協会 限度額が決まっており、新人のうちはこちらを利用することが多い。手数料は安い。


 ・民間の預かり所 役所からの個人証明が必須。さらに四桁の番号を登録し、それを提示された用紙に記入できなければ、借りた倉庫へは入れない。


 独自に護衛を雇っているが、もし窃盗などがあれば、いくらか返ってくる。手数料を年ごとに払い、数年滞れば倉庫内の品は売却される契約。子供などに相続も可能。


 ・教会 死亡後は国に寄付される。どういった予算に回されるかも、本人の希望があれば適応される。


 ラウロとレベリオは落書きに夢中なボスコを残し、門の向こう側を眺めていた。


「小紋だけか」


「南門を開ける場合は、東遮断壁に行けということですね」


 二人が門の前に立っていると、後ろから肩を叩かれ。


「おめえさん方から受けた恩義、あっしは忘れやせんぜ」


 エロい服装の女がニコニコしていた。追加の報酬が楽しみで仕方ないらしい。


「先導すんのか?」


「光の神技に索敵ってないじゃんよ」


 ここには光以外の加護者もいる。


「ボスコきゅん嫌いじゃないけど、なんか憎まれ口叩かれそうだし、ありがとって伝えといてくんなせえ」


「次会う時はよ、本人にその呼び方は止めとけよ」


「お気をつけて」


 すでにお供する五名は門より先に進んでいた。


「イケメン殿とラウロっちも気をつけてね」


「できれば俺もな」


「僕もイケメン殿はちょっと」


 ニヤリと笑い。


「では二つ名を授けよう。これからは[頭痕の双具][穿つ盾]と名乗るが良い」


「ラウロっちで頼む」


「僕も以前のままでお願いします」


 ちぇ と残念そうな顔をしながらも。


「じゃあまたいつか、ダンジョンで会いましょう」


 手を振りながら、待ってくれていた五名のもとへ向かう。


「変な奴だったな」


「これからは拠点などでも顔を合わすでしょう。宿場町に関する情報も得たい所です」


 ラファスの方が規模は大きいが、そこの探検者も上級攻略の貴重な戦力だった。


・・

・・


 イージリオが叱られていると、時空紋から大量の素材を抱えた爺が出現した。


「死ぬかと思ったわ」


 すでに傷は癒えているが、彼の全身は赤く染まる。


 〖治癒の光・輝き〗があったとしても、〖天の輝光〗は筋肉特化なので回復は苦手分野。



 いつの間にか落書きを終えていたボスコが駆け寄り。


「隊長のうっかりさん」


 血剤を渡す。


「上級の罠を舐めてた。さすがに反省しなきゃ」


 イージリオを叱るのは一時中断し、フィロニカもルカのもとへ向かう。


 シスターと並ぶ二大巨頭とまで呼ばれる英雄らしいので、彼女もそこまで強くは言えないようだ。


 二班班長が欲とすれば、ボスコは虚偽。


「師匠は素だからな、注意したとこで意味ないんだよ」


「本人は真剣ですからね」


 見張りをしている満了組を見渡してから、隣のラウロへと視線を移し。


「実際のところ、ラウロさんは予備軍を断れるのですか?」


 光の加護者には厳しい教国。


 特別扱いされる者を満了組はどう思うのか。


「醜態をさらしたお陰もあって、当初は変に気づかわれてたからな」


 教会からの脱走と協会への手続き。


 居残組として彼が尽力した事実は変化せず。フィロニカを含め、選ばれし者の苦労を目にしてきた連中もいた。

 

「まあ文句を言われても、俺は騎士団にも予備軍にも戻らんよ」


 探検者。


・・

・・


 門が閉まり、再び小紋章への挑戦が開始される。


 イージリオが名乗りを上げたが却下され、別の者が彼からの情報を得て時空紋に乗る。


 小紋章の戦いは一対一ではなく、敵は五体だったとのこと。そのため選ばれたのは三班の騎士鎧。


 召喚するのが十体弱であれば、〖光の戦士〗も消費やクールタイムは大分抑えられる。



 ルカは弱っているので、ごめんなさいと挑戦者の身体を撫でまわしていた。


「筋肉神の祝福がありますように」


「えっ? ああ、拳術神さまのことか」


 以前、本人に聞いたが違うらしい。彼が崇めるのは自分で考えた空想上の神さまとのこと。


 異教徒になるのだろうか。そこら辺は下手なことを言えないと、ルカも理解はしているようで、拳術神だと皆には言っている。



 騎士鎧が紋章に消えれば、ルカは記録係に大紋章での戦いを聞かれているが。


「鬼さんがドーンて来て、他の鬼さんはドキュンって、もう嫌になっちゃう」


 すこし可哀そうになってくる。


「ちょっとボスコ来てもらえるか」


「僕に任せたまえ」


 隊長に対しては協力的で、嫌がることもなく通訳として参加する。


 


 今はレベリオと二人。


 会話もなくしばらく隊長らの様子を眺めていたが。


「無粋な質問になりますが。アドネ君とエルダさんは、やはりお付き合いされているのですか」


「まあ端から見ればそうなるんじゃないか」


 空を見上げ。


「ルチオ君はどうなんでしょうか」


「さすがに気づいてるだろ」


 苦笑いを浮かべ。


「僕は気づかなかったんですよね、大怪我をするまで二人がそういう関係だって」


 かつてではなく、今も仲間ではある。


「ダンジョンに夢中でして。恥ずかしながらそういったものには疎く」


「お前だってモテそうだろ」


 爽やかなイケメン。性格も真面目で思いやりもある。


「全てにおいてダンジョンが最優先なので、すぐに振られちゃんですよね」


「なるほど」


 ラウロがイージリオの誘いを断っていたのを見て、なにか思うことでもあったのだろう。


「お前。上級始まってから、本当に楽しそうだったもんな」


 時が過ぎれば生き方も変化する。


 ダンジョン攻略が最重要だった。水も欲望もそれは同じ。


 【迷宮】再挑戦に向けて努力を重ねていたが、仲間の意欲が自分とズレていることに気づかず。


「ショックでした」


 レベリオにとって。


「仲間のこと大事に思ってたのは上辺だけで、けっきょくダンジョンしか考えてなかったのかも知れません」


「じゃあもう迷宮は諦めたのか?」


 沈黙。


「攻略ってのはなにも最前線だけじゃないだろ。補佐とかお願いしても良いんじゃね、水と欲望なら薬を用意してもらったり、それ売った金を一部こちらの資金に回してもらうとかでもよ」


「ラウロさんを都市同盟に誘うのは無理ですよね」


 血塗れの聖者。


「この先どうなるかなんてわからんけど、お前まだ二十代前半だろ。水使いを育てたり、優秀な人材を引き入れたり、焦らず準備進めろよ」


「こちらで育てた人材を、都市同盟に連れて行くことは可能でしょうか」


 レベリオはうつむき考え込む。


「交渉だな。まあ神職との付き合いはあるから、なんなら紹介しても良いぞ」


 気乗りはしないが仲間のためだ。今は教都に出向いているが、ラファスの中央教会には土の柱教長もいたりする。


「お金だけでなく、僕らが用意できる交渉材料」


 なにかが動きだす。


「アリーダとマリカが南門で待ってるから、早く合流せんとな」


 国を越えてまで、レベリオと行動を共にしてくれた仲間。


「そうですね」


 顔を上げた彼の瞳には、意志の光が灯っていた。







本当は年末まで描く予定だったんですが、自分が適当なプロットしか作らないので、ズレが。


そこら辺は次の章で描きたいと思います。


それでは、ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ