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いつか終わる世界に  作者: 作者です
中級ダンジョン編
34/133

2話 徒党の始まり

 中級ダンジョンに存在する最初の関門。


 住処や拠点は開拓地周辺の森に複数存在しており、一定期間で更新される。


 ゴブリンの住処。

 攻略難度は低いが、ボスを倒してもコンパスが出現する確率は低い。

 また迷いの森に入れば敵も強くなるため、こちらで条件を満たすのは順正されていない。



 オークの拠点。難易度としては適正であり、ここを攻略できれば迷いの森も行けるだろうと認知されいた。

 配下としてゴブリンも従えている。


 拠点や住処。


 木の柵で囲われ、土・木・葉で造られた歪な家が立ち並ぶ村。実際の小鬼や肉鬼はこういったものを作らない。

 放棄された隧道や採掘場のような場所。

 廃墟の砦。


・・

・・


 今まさに。そんなオークの拠点に攻め入ろうとする一団が、近場の時空神像で休憩をとっていた。すでに偵察も終えており、一通りの準備も済んでいる。


 敵側のゴブリンも拠点の周りを徘徊しており、大人数で移動していると襲ってこずに逃げ、存在をオークたちに知らせてしまう場合がある。

 そのため予め集合場所を決めておき、それまでは六人以上で行動しないよう情報を得ていた。


 拠点討伐。今回協会に依頼したのはルチオ率いる四名。


 それを受けたのは、槍の主神から加護を授かった、モニカという女性が率いる四名。



 依頼に対する手数料はルチオ。


 コンパスはルチオ。


 ボスの素材はモニカ。


 雑魚から得られる素材は半々。


 宝箱があった場合はモニカ。


 これで互いに納得し、契約は完了した。


「ルチオ組はもう一回挑戦してるんだよね?」


「まあな。つっても協力組との実力差がありすぎてよ、後ろついて回ってた感じだぜ、俺ら」


 レベリオ組。彼らの望みはコンパスで、それ以外はすべてルチオたちの報酬。


 エルダは前回の中ボス戦を思いだし。


「もうなんかあれよ。中級で活動するってより、上級に向けての調整って感じだった」


 サラはそんな組に所属する可能性もあったが、やはりこちらにして良かったと思いながら。


「冬になる前後には解放されるらしいよぉ。ここの大ボスは無視して、そのまま【町】に行くのかなぁ」


 モニカ組の前衛。すこし臆病そうな青年はルチオたちを見渡して。


「でも羨ましいよ。こっちは上位組の知り合いなんていないし」


 火の眷属神(剣・鎧)


「僕らの教育係知ってるでしょ、そこからの繋がりだよ」


 アドネたちよりも少し上か。孤児院の繋がりで、ラウロとも面識があるようだ。



 ローブをまとい杖を前におく女の子は、一層に膝を抱えたのち仏頂面で。


「ていうか光と欲望がいる時点でずるい」


「ボクは君が羨やましいよ」


 モニカはこの中ではサラと同年代か。


「トゥルカ。それは神さまに失礼じゃない?」


「うっ ごめん」


 ニヤっと笑いながら。


「怒られてやんの」


「ゾーエ、あんたも良くない。私たちだって一応バランスは取れてるでしょ」


 火の主神(杖・剣・鎧・ロープ) 


 ふんっ とそっぽを向き。


「回復が心持たない」


 卑屈な青年が一人、ボソッとつぶやく。


「悪かったな」


 土の眷属神(軽装・杖)


 普段からエルダはアドネの背中や肩を叩き、励ましている姿をよく見かけるが、基本的に落ち込んでいる人物にはそうしたくなるようで。


「でも眠者の木ってあれだよね、ここの大ボスじゃない。熟練が上がればすごく強くなるんでしょ?」


 ゴーレムというよりは、精霊や妖精と表現した方が良いか。


 岩土が主 ゴーレム。

 草木花が主 精霊または妖精。迷いの森はオーク・ゴブリンだけでなく、この系統が敵対生物として出現する。


「でもあの森は陰気臭いと聞いた」


 ゾーエは嫌味が好きらしい。若く見えるがトゥルカよりお姉さん。



 眠者の木は赤子のような存在が眠っており、熟練が上がるほどに歳を重ねる。赤子期・成人期・老人期。


 最初は眠者の洞がある普通の木だが、最後は椅子のような形状に幹が変化するそうだ。


 迷いの森はけっこう薄気味悪い。そんな場所の大ボスだから、この精霊に良い印象を持っている者は少ない。


「良いだろ別に」

 

 サラは苦笑いを浮かべていた。


「でも私ら徴兵あるしねぇ」


 陰気臭さを一層に漂わせながら。


「光じゃなくて良かった……本当に良かった」


 年代はモニカ寄りか。



 ルチオはこれから協力する四名を見渡し。


「モニカさんたちオークと戦ったことはあるんだよな?」


 情報交換はすでに終わっている。もとより初級の頃から面識もあり、群れの中ボスを攻略する時も何度か協力していた。


「前回はそのために迷いの森近くまで行ったからね、私たち」


 ダンジョンは命もかかっているので、事前に色んな組について評判などを調べておくのも重要。

 今回のオーク戦も初級での群れボスも、色んな探検組との面識を持つことが目的とされているのではないか。魔界の進行に対する備えとして。


「僕らゴブリンの方はまだ行ったことないけど、ボスって練習ダンジョンよりも弱いんだっけ?」


 試練は加護を持たない者と教育係だけで行われるが、練習であればそういった決まりはない。


 彼の体格はルチオに近いが、雰囲気はアドネっぽい。


「取り巻きは多いけど、練習の方がずっと強かったよ。どっちかっていうとね、ボクたち大空洞の方が苦戦したくらいなんだ」


 ゾーエは土の加護者を指さし。


「こいつ神像帰りした」


 陰キャは鋭い眼光で少女を威圧し。


「お前なに、俺のこと好きなの? 当たり強くない?」


 というか彼は三白眼で、本当に凶悪な顔面だった。


「嫌いではない。反応面白い、その返答もキモくて良い。好き」


「えっ あ、そう」


 こういう返しには弱い。


「可愛い。ヤコポ素敵」


「男に向かってやめろよ。そんなんじゃねえよ、へへ」


 純情な男心を弄ばれた事にも気づかず、やがて影を呼ぶ者として成り果てる。だが深淵の底からも這いあがるだろう、心は何時だって紡がれていくのだから。



 モニカは過去を思い出しながら。


「恥ずかしいんだけどね、私そこまで新人ってわけじゃないんだ」


 練習は飛ばして初級から活動する者たちもいた。彼女は一度解散をしてから、この組を立ち上げたようだ。


 サラと同年代とすれば、もう加護を受けてからそれなりの月日は過ぎている。


「言い方が間違ってるかもだけど、あれは本当に良いボスよ。練習だから油断してたのもあったけど、それって情報を集めてなかった私の落ち度だし」


トゥルカがルチオたちより上なので、練習に挑戦していたのは二年ほど前か。


「でも勝てたんだろ?」


「自害されちゃったんだよね。それに関しては、この子が聞き込んでくれたんだけど、本来は私がすべきことだった」


 未だに照れている漆黒の混沌(ヤコポ)は放置して、ゾーエは当時を思い返し。


「でもそんな余裕なかった」


 アドネを見つめ。


「だから無理して狙わなくて良い」


 評判の悪い組の場合、ここで切れる者もいる。お前らの報酬にならないから手抜きしたんだろと。


「そう言ってもらうと助かるよ」


 ラストアタック。


「隙あれば狙って。私のお金でご褒美も上げる」


 このくらいで良いかと、指で金額を提示した。


 ルチオは苦笑いで。


「したたかなだな。逞しいっつうかよ」


「私これでも商会の娘」


 誇りに思っているようで、無い胸を張っている。反応を示したのはエルダ。


「どこ? 私でも知ってるかな?」


 父の仕事関係かも知れず。


「……この町にはない。産まれ違うし」


 支部や繋がりのある商会などはないのだろうか。


 モニカは困り顔で。


「せめて私を通してから交渉すること。頼りないけど、一応これでもリーダーだからね」


「まあ俺らも光の加護持ちいなかったら、もっと苦戦してたわな」


「僕なんてお腹刺されてたしね」


 エルダとサラを交互に見て。


「ずるい。私たち引き付け役もいない」


 それでも確かなことは一つ。今の彼女らは評判が良い。


 レベリオ組は別として、ルチオたちが今まで協力してきた探検組の中では一番だった。


「モニカ組は好き。だからできれば考えて欲しい」


 言ったそばからと呆れ顔で。


「私からそれとなく話を振るって言ったでしょ。今から本番なのに、話がこじれたらどうするの?」


 商会の娘。気持ちが先に出てしまうあたり、まだ未熟とも思えるが。


「ごめん」


「まあでも徒党組むのは良いかもな」


 探検団という呼び名もあるが、なぜかこちらの方が浸透していた。



 この町で最も有名なのは、デボラという女性が受け持つ組織。


「都市同盟から来た人たちが加わってくれるなら、満了組にも一目置かれる」


「さすがにそれは難しいよ。僕たちと実力差ありすぎるしさ」


 もし所属していたのなら、彼らは教国に来ただろうか。徒党に加わるということは、それだけ町や都市に根ずく場合が多い。


 今はどうか解らないが、おそらく当時のレベリオ組はまだ、【迷宮】を諦めてはいなかった。


 エルダはいつか来るその日を思って。


「レベリオさんたちがどうかは別として、私たちで徒党を組むなら良いんじゃないかな」


「私も反対はしないよぉ」


 魔界の進行が始まれば、彼女たちは参加できない。


「ルチオが良いなら僕も乗るよ」


 立ち位置としては、組の中でアドネに近いのだろう。


「そういう決め事はモニカさんに任せてるから、まあ良いかな。あっ でも」


 レベリオ組。トゥルカは仲間たちの顔を見てから、発言を思いとどまる。


 この場にいる全員が二人に注目する。


「活動方針やら目的で検討しねえといけねえから、すぐには無理だろ」


「そうね。今はオーク戦に集中しましょ」


 これまでの付き合いで、正直いえばもうある程度の答えも出ているが、この場のノリで決めるもんじゃない。


 ルチオにいたっては単純だ。彼が見ているのは立場や名声ではない。より高く、より上に挑戦したい。


 気質としては誰かさんよりも、ずっと英雄に向いている。


「ん? なんの話してんだ」


 一人置いてきぼりのヤコポ。



 ルチオは空気を読まない。いや、読めない。


「そういえば知ってるか? 俺らも練習ボスに挑戦してから知ったんだけどよ」


 練習ダンジョンのボスが強いなら、なにか対策があるのではと疑問に思わなくてはいけない。


 この後。協力組の面々は悶絶することになる。


・・・

・・・


 モニカはなんとか心情を落ち着けると。


「ちょっとルチオ君。今から中ボス戦なのに、出鼻挫いちゃだめでしょ」


 ゾーエは苦虫を嚙み潰した顔で。


「お金を渋った私の責任」


 トゥルカは乾いた喉を潤してから。


「情報ってやっぱ大切だ」


 神像帰りをしたヤコポにいたっては。


「……」


 すでに走馬灯のような幻想(ファンタスマゴリア)に溺れている。





ちなみにヤコポは中二病ではありません。作者の方が中二病残ってます。


というかファンタジーとか書くうえで、中二病って大本ですよね。


あと新キャラ四人を一斉にかんがえるのは死ぬかと思いました。



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