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いつか終わる世界に  作者: 作者です
継承
25/133

1話 いつかの花畑にて

 どこか遠く。


 今はなき遠いどこか。



 山奥の田舎なので、外国どころか国内の情報すら入ってこない村。


 たまに若者が戦争に連れてかれることもあるが、戦死じゃなくても田舎が嫌で、そのまま帰ってこない人もいる。



 そこは山の中腹にある花畑で、見下ろせば麓に故郷の村があった。


 少年は拾った枝を剣がわりに。


「えいっ やあっ!」


 覚醒者のごっこ遊び。



 以前お父さんに聞かせてもらった話。


 神に愛されし者が力をもらうこともあるが、覚醒者はそれとは違う。


 天上界や加護とは関係なしに、生きる中で力に目覚めし者。



 加護者のごっこ遊びをする日もあるが、今日は覚醒者だ。


「我が名はエバン、いざ勝負っ!」


 剣の道に人生を捧げれば、その者にはいつしか剣の力が。


 誰かを守りたいと誓えば、盾や鎧の力が。


 この身を焦がそうと、何かを成し遂げたいと願えば火の力が。



 先代より続く国の方針に従い、統一した先の理想像もなく、ただ戦火を求め続ければ。やがて自らを戒める罰の力を。


 誰から授けられるのかは不明。


 神託すらなく、いつの間にか宿っていたのを覚醒者と呼ぶ。




 少年が棒切れを振り回していると、一緒に遊びに来ていたお姉さんが。


「エバンちょっと来て」


「なにー?」


 枝を投げ捨てれば、大好きなお姉さんのもとまで駆けていく。

 

「はい、これ」


「うわぁ すげえな、これ姉ちゃんが作ったのか?」


 花の首飾りをかけてもらう。


「俺もつくるっ」


 覚醒者遊びはもう良いらしい。


「じゃあお花を集めよっか」


「わかった!」


 お姉さんにあげて喜ばれたい。


・・・

・・・


 少年は予想以上に不器用だった。


 途中でお姉さんが手伝おうとしても、俺が自分で作るんだと聞かない。だけど作り方の説明だけでは中々に難しい。


「……」


 泣きべそをかいているが、諦めない少年。


「また今度、一緒につくろっか」


「やだっ!」


 まだ五歳前後の幼児。納得いかず不貞腐れる。


「姉ちゃんにあげるんだもん」


「そっかぁ」


 少年の頭をなでる。


「お礼をしてくれることよりもね、お礼をしたいって頑張ってくれたことの方が、私すっごく嬉しいな」


 作りかけの花飾りを見つめたまま、少年は返事をしない。


「今日は帰ろ。おねえちゃん、そろそろお家の手伝いしなきゃ」


「でも、ちゃんと形にしたい」


 強く握り締めたせいで、制作途中の首飾りがグシャっとつぶれる。


「どんなに頑張っても、相手に伝わらないことだってあるけどね」


 小さな両手に自分の手をそえて。


「エバンが頑張ったことは、ちゃんと伝わってるよ」


「……うん」


 そのまま手を引かれて立ち上がる。


「帰ろっか」


「うん」


 やっとこさ少年をなだめ、麓の村を見れば。


「あれなに?」


 向こうの山々が黒い霧のようなものに覆われていた。少年はただの疑問としての口調だったが。


「なに……あれ」


 得体の知れない物への恐怖が含まれる。


「どうしよ」


 ここから見ればゆっくりだが、かなりの速度で麓の村に迫っている。



 村を見下ろせば、何人かがすでに気づいているようだ。そのまま逃げだす者もいれば、家族を探している者も。


「行かなきゃ」


 姉の慌てた様子は少年にも伝わったようで。


「かけっこするの?」


 見下ろせば、まだ五歳前後の子供。


 一緒に行くのは危険なのではないか。


 でも


「行こっ」


 彼女もまだ成人前の子供だった。




 これから数時間後。


 天上界から神々と天使たちが降臨し、この山奥は長い激戦の地へと変化する。



12時に続けて投稿予定です

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