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いつか終わる世界に  作者: 作者です
練習 初級ダンジョン編
22/133

21話 登山口到着


 ラウロたちが暮らす町の近くには、用水路のもとになる川が流れていた。その先にはちょっとした山脈が広がっているので通行は難しいが、越えると帝国が所有する大平原になっている。


 町の周辺は森に囲まれており、こちら側は小さな平地の向こう、やがて海へと続く。レベリオ組はこの方面からやって来た。


 ダンジョン広場を二日ほど移動すると宿場町で、そこからさらに進めば峠の道に砦がある。


 逆方向の町門を行けば、五日から六日で教都に到着する。



 各国。現在の強みからして。


 都市同盟は主に感情神。臆病者が勇気を振り絞るからこそ、全てを救う力となる。


 勇者とは気の弱い者が選ばれると聞く。それだけ実戦投入させるのは難しいが、この加護は聖にすらない、味方全体へ魔系統特化を付属させる力を持つ。



 帝国は主に装備神。役職身分関係なく、各装備を極めし者にだけ、豪の称号が与えられる。選び方は大会でもあるのだろうか。



 教国は主に属性神を崇めているが、その中でも光に強い信仰を持っていた者たちが、光柱教と呼ばれていた。

 光土水風火。これらを全て合わせた五柱教の長が、この国を動かす者たち。



 大陸の三強国に過ぎない。


 どこかに物造りを信仰する国もあるかも知れず。


 どこかに教国と同じく属性神を信仰する、神聖なんちゃら帝国などもあるかも知れず。


 さらには時空神を崇め、ダンジョンの中に国を築いちゃった系の所もあるかも知れず。いやないか。



 でもそんな広い世界のことは、皆にはわからない。広すぎて想像できない。もう本当にわからない。


・・・

・・・


 初級ダンジョンの中には時間の目印となる、夕暮れと夜入り、そして夜明けがない。


 段々と上り坂となり、大きな岩石が目立つ。


 高低差のある崖。はじめから設置されていたという吊り橋の先。


 休みながらではあったが身軽だったこともあり、当日のうちには登山口の拠点に到着した。


 ただし上級ルートの場合は別の場所からとなっているので、岩山の周囲を移動しなくてはいけない。そこには拠点もないので、あまり挑む者はいない。



 幾つかの小屋に倉庫、広場の中心にはこれまた最初からあった井戸があり、水を汲めるようになっていた。神像だけがポツンと立ち、なんとなく寂れた風景。


 石切り場はこの拠点より少し奥地にあるようで、そこに時空紋があるらしい。中ボス(強)はここから向かうが、頂上とは違う道になっている。



 物資搬入のために倉庫隣の小屋へ向かうと、出迎えてくれたのは一人の男性。


「道中お疲れさまでした、なにもない所ですがゆっくりお休みください。こちらは探検者さんですか?」


「あっ 私協会員ですよ」


 顔を覚えられて無かったようだ、イザは証明書を見せる。


「俺らはこのオッサンの教育され係な」


「ちょっとなにそれ、仕方なくされてたのお前ら」


 いつものやり取りに呆れながらも、リヴィアちゃんはお仕事。


「突然のことですみません。できればうちの新人と彼らのガイドをお願いします」


 登山の話がでたのは六日前で、決まったのはもっと最近。


 命令書を受け取って内容を確認すれば、見知らぬ三名の新人を交互に比べ。


「そうですか。では明日は訓練と講習あたりで終わらせて、明後日の早朝にアタック開始としますか」


「予定もあるでしょうし、無理があったら言ってくださいね。もし問題がなければ、それでお願いします」


 ラウロよりも少し年上。ある程度の筋肉がついているのは、ダンジョンでは当たり前なので、中肉中背といった所か。物腰も柔らかく、話に聞いた狂人の振る舞いは今のところない。


 想像と違ったようで、アドネは口を開けていた。予想では髭がボーボーで、もっと日に焼けた肌のオッサンだったらしい。


 最近まで牢屋にいたのだから、そういった活動はしていない。


 ルチオは容姿など関係なく、少年のように目が輝いている。



 了承を得てから。


「では私は物資の搬入に行かせてもらいますね」


「はい。担当者は倉庫で見積もりをつけていると思いますので」


 軽くお辞儀をしてから、リヴィアは受付らしきこの場を後にする。



 扉が閉まるのを待ち、ここぞとばかりに。


「これからは俺の時代だーっ!」


 背を伸ばしていた。


「久しぶりっすね、元気そうでなによりです」


「恥ずかしながら戻ってまいりました」


 ルチオとアドネはさっそく。


「よろしくお願いします」


「俺も頑張っから、教育のほど頼んます」


 ラウロの時と違う。



 イザも自分の方がお姉さんなんだからと。


「私もこの度は弱音を吐かずに、頑張ろうとか思う所存であります」


 なんか変だ。


「はい。こちらこそ受け持ったからには、立派な登山家になってもらえるよう、精神誠意全身全霊でお役に立ちたいと」


 なんか変だ。


「探検者だろ。やっぱ相変わらずだな、グイドさんも」


「ラウロさんも久しぶりだね」


 少し肩を落とし。


「そうですよね、どうせ皆さん探検家ですもんね。分ってますよ、どうせ」


 いじけ始めた。


「あれか、仲間増やさんことにはどうにもならんって奴か?」


「一人で訴えても、声は届きませんので」


 ここでイザがキョロキョロしながら、話しに割って入る。


「すみません、私もリヴィアさんのお手伝いに行こうかと思います」


 リヴィアとしては登山について気になると思って残したのだろう。


「確かにそうですね。ではお願いしても良いですか?」


 はい! と元気に返事をして、倉庫に向けて出ていく。


 ルチオたちはもう少し話を聞きたいらしく。


「おっさん、俺らは良いか」


「僕も」


 構わないと言えば、再びグイドの方を見る。


 では気を取り直してといった風に、ラウロは会話を再開。


「なんでまた捕まっちまったんだ、気をつけてるって言ってただろ」


「時間が狂ってしまい、正規ルートで下山したのが間違いでした」


 山脈の方面には村や山岳信仰の集落がある。


「予定通りに帰ろうとしたのが間違いでした」


 ルチオは聞きたいことが沢山あるようで。


「もう行けなかったりすんのか、流石に睨まれてるよな」


 軽くうなずき。


「彼らが信仰してるのは標高のある山だけなので、周りのはなんとか許可も得ましたよ。ただ条件付きですがね」


 アドネはこれまでの情報から、なにか気づいたようで。


「もしかして、上級でのダンジョン活動ですか?」


 正解らしい。


「当分はここと中級で肩慣らしをさせてもらいますが」


「もともと高い山なんて無理だったし、そこら辺は仕方がないだろ」


 むしろ許可が下りたことに少し驚く。


 標高の高い山はサポートが必要。高地で身体を慣らす必要もある。


「だから設立させたいんですよ、教国登山者協会」


 ルチオは興奮気味に。


「うおー これが先人かあ!」


「いや、私の他にもかなり昔ですが居ましたよ。もう亡くなってますが、色々教わりました」


 岩山で目覚めた人はこれまでもいたらしい。


・・・

・・・


 その後、しばらく世間話をしてから、ルチオとアドネにはテントの準備をお願いする。




 ラウロとティト。そしてグイド。


 ここからが本題だった。


「でっ 今はどうなんだ?」


 正規ルートではない道を、誰から聞いたのか。


「例の犯罪者さんたちっすね」


 登頂を目指して歩いていたら、荷物をだせと囲まれた。こんな奥地まで何しにきたんだと説明を求められ、それに答えたら大笑いされ、住処まで案内されたのが切欠。


「私も同じ穴のムジナですよ、牢屋に入ってましたし。なんつって」


 罪を犯すのにもいろんな理由がある。


「まあ褒められはしないが賊つっても色々あるもんだ。犯罪であることには変らないけどよ」


 町で罪を繰り返し居場所を失った男たちが、集団を組み積み荷を奪ったり、村を襲い女を連れ去り強姦する。


「そういえば、リヴィアちゃんは知らないんだよな?」


「深い会話はしないっすからね、姉ちゃんあれで真面目だから」


 グイドを見て。


「であれか、山賊さんたちの話しっすよね。異教徒の」


 彼らは創造主と天上界を信じていない。山の神を崇めており、教国との相性は悪い。


 迫害はないが関りもなく。時代の中で少しずつ増えていく人口の中、土の属性神を信仰する村々とのあいだで、徐々に距離をとり山の奥へと隠れていく。


 集落には女もいれば子供もいる。人里から離れ、環境は想像よりもずっと厳しい。


「冬を越すために物資を奪うことだってあるらしいんで、死罪も納得の人殺しに違いないですよ彼ら」


 これが罪を犯す理由。


「相手が探検者でなくても加護持ちの場合は多いですし、身体能力の差から返り討ちというのも多いそうですが」


 二人は黙り込む。


 ティトは木窓を開き頭を少しだすと、近づきすぎて全貌の捉えられなくなった、岩山の方向を見つめ。


「一体なにが正しくて、なにが間違いなのか。わかんねえっすね」


「世知辛いな」


 山の神と土の属性神はなにが違うのか、彼らにだけ信じられる昔話などがあるのだろう。


「まっ なにを信じようが連中の勝手だ」


 自らの信仰。その切欠は心の支えだった。


 その恩に報いたいとは思うが、信じ納得させるのは自分だけでいい。



 外から景色を室内にもどす。


「しかし、また【町】での活動っすか」


 満了組あたりに敵からの護衛を頼むとしても、協会員からも同行者の希望を募ることになる。

 

「給料自体は現状で足りてんのか? 二年もあいてるし、罰金なんかもあっただろ」


「正直あまり余裕はないんですよね」


 岩山で活動するために、彼は工房との繋がりがあった。


 その縁から雪山装備の開発も頼んでいて、現状でも不満点は多いものの、修理や破損時に新品を用意する程度になっていた。


「前にも話しましたが、彼らに多少ですが冬の援助をする代わりに、私は登頂のサポートを受けています。なので元気でいてくれていると、本当に助かるんですが」


 山の神を信じている者たちの集落は、小さいと言ってもそれなりにいる。


 協会員として初級で時空神の補助をしていく活動。岩山での担当者として受け取れる増額分。


 ティトのように理解を示してくれる協会員もいるが、結局のところ直接の交流があるのは本人だけ。


 小麦の入った袋を持っていくとして、台車くらいは必要か。途中で合流するとしても、登山以外の目的で外出しなくてはいけない時もある。




 ラウロは鞄から何時もとは違う、金の入った袋を取り出す。


「まあ、お怒りは受けんだろ」


 それは騎士団時代に稼いだ金の一部。


「やったあ。これでまた一歩前進です!」


「お礼くらい言えよ」


 困った大人がここにもいた。


「すんません、俺はちょっと余裕ないんで」


「気にすんな、こっちも所詮は自己満足だよ。関わる気ないし」


 結局のところ自分は加護を受けている側の人間。


「土神の信仰村で被害がでないなら、それに越したことはないだろ」


「ティトさんには勤務日の調整とか、いつも手伝ってもらってますんで。皆さんがいなかったら、長期間の休みもとれないんですよ」


 そもそも大前提として。


「私も山登りのために援助してるだけです」


 協力者である以上は、信じる対象が違えど仲間。魔界の門が開けば心配もするが、魔物がこういった町よりも集落を目指すとは思えない。



 これまでの経緯から教国も迫害や追放の意思はなく、不干渉の方針だと思うので、時代が進み嫌な歴史を作らないことを祈りたい。


 もうここに用事はない。


「どれ、リヴィアちゃんの様子でも見てから、テントの手伝いかな」


「俺そっちやるんで、ラウロさん倉庫の方を頼んますよ」


 え、ほんとっ と浮足出しになるオッサン。


 何かを思いだし、振り返えれば。


「明日だけどよ、訓練と講習だけじゃ時間も余るから、石切り場の見学とか許可もらえませんかね?」


 グイドは時計のネジを回しながら。


「ええ。構わないと思いますよ、話は通しておきましょう」


「んじゃ、よろしくお願いしますわ」


 スキップしながら扉を開けて、外に出ていく。




 ため息交じりに。


「色々なんか損してるっすよね、あの人」


「本当にそうですよ。良い登山家になれると思うんですが、勿体ない」


 駄目だこりゃ。

このまま一気にアタック当日になると思います。


地理とかあんま詳しくなくて、変かも知れませんが、私にはこれが限界です。


あと登山ですが、動画見てすげえって感動してるだけの作者なんで、大したものは書けないと思います。私はインドアです。

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