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いつか終わる世界に  作者: 作者です
練習 初級ダンジョン編
16/133

15話 レベリオ組との合わせ



 訓練をしていた二人は少しの休憩。その間はアリーダにお願いし、〖君の剣〗の感触を確かめさせてもらう。まだエルダは〖お前の鎧〗を習得していないので、実質初の体験だった。


 爺の教えを思いだしながら、素振りを数かい。


「試し斬り用の藁束とかもありますよ」


 レベリオの提案を受け訓練小屋に行き、さっそく小銭を払って使わせてもらう。


 〖私の剣〗 刃が銀色に光る。斬撃強化(強)。打撃強化(中)。突刺し強化(弱)。油の付着による切れ味の低下を防ぎ、刃こぼれしないよう耐久も強化される。


 主神または眷属神によって、斬打突の強弱に変化がある。


 そして〖君の剣〗は、これと同じ効果を付属してくれる。



 なんどか藁束を意識しながら素振り。


「よし、行くか」


 姿勢は浅めの半身。右上に構え、右足を出しながら左下に振るが、次手に備えて軽め。


 切断された藁束が落ちる前に、刃を返すことなくそのまま上部を斬る。


 二手目は失敗し、食い込んだまま途中で止まった。


「それやるなら片刃に限る。両刃でも返した方が斬りやすいと思うわよ」


 彼女の加護は斬る方が得意なので、得物は白銀の半曲刀。戦闘中に打撃が必要と感じた時は、武器を変更したり専用の神技を使う。


「こんな感じかしら」


 藁束はないが、動作で示してくれる。


「でっ どう、神技の感触は?」


「最初は良かった。次はたんに俺の技術不足だ」


 アリーダの剣筋を真似て何度か振る。


「こういった単なる素振りでも、空気を斬るときの手応えが違う気がするな」


 剣と言うのは平なので、下手に斬ると空気抵抗を受けやすい。


 斬撃を意識するなら尚のこと。戦いの中で常に最良の一振りなどできない。


「なんつうか、導いてくれるな」


 剣身一体。


「そう言ってもらえると、素直に嬉しいわね。そこらへんは私の熟練に寄るところが大きいと思う」


 斬る動作。叩きつける動作。突く動作。補正はかかるが、本人の鍛錬は必須。



 もう一度、刃を返すことなく二連の斬り。


 この切り口が使えるかどうか、なんども試行錯誤していく。その繰り返しも大切なんだと教わった。


 とりあえず素の状態での確認は終える。


 〖聖拳〗を発動させてから、刃の返し有無の動作を繰り返す。意味があるのかないのか。


「受けたげる」


「すまん」


 互いに構える。アリーダは自分の右上段に合わせて、剣を腰の下に落してくれていた。


「ではっ」


 左下への斬り下げは一歩さがられ回避。ラウロは左足を出しながら、手首はそのままに、先ほどよりも角度を浅く斬り上げる。


 刃と刃が重なり音が鳴る。止められた。


 左足を気持ち後ろにさげ、片手剣を自分の脇に戻す。


「骨で止まった場合は、すぐに引くでも良い。切断する必要なんてないもの」


「もう一度良いか?」


 いつの間にか本来の目的を忘れていた。



 戦いは色んな感情が入り混じるものだが、殺し合ってくれる相手があってこそ。常に敵を想像し、敵を思う。


 殺気や臭いに空気など、合わせられるものは複数あるが、心合わせが一番難しい。そして一番強力な〔合わせ〕だと教わる。


 剣での稽古が続き、普段の癖で〔合わせ〕をしてしまう。


「……」


 片刃の剣を弾いたら、しばらく呆然とこちらの剣を眺めていたが。


「すまん、ってどうした」


「あれ、私どうして」


 頬に雫がつたう。


「ごめん、やるじゃない」


 手で拭うと、本人も良く分からない様子で、もう少し休むと離れていく。


 ラウロは首を傾げながらも、まあいいかと〖君の剣〗の感触を確かめる。


・・・

・・・


 動作訓練を終えると、ラウロとマリカは互いの前腕を絡めていた。決して友情や愛情が生まれたのではなく。


「これでないと難しくてな」


「ラウロさんの役得ぅ~」


 両手の前腕どうしを持つ。


「なんつうかな。実際に戦ってみると、何となく理由もわかる」


 自分の神力を少しと、他者の神力を大量に消費する。


 足もとに小さな聖紋が出現。ラウロはマリカの手を離し、一歩さがる。


 聖小紋の上部に光が集まり、それが人の形を成す。


「これが光の拳士ですか」


 身体の光よりも、両腕の光が大きい。レベリオは興味深そうに、手を伸ばす。


「まだ触れないでくれ」


「わかりました」


 触られると気づかれる。


「んじゃ続けるぞ」


 位置をずらし、再びマリカと手を握る。次にレベリオ。


 その間もアリーダはボーっとしていたが、順番が回ってくれば意識を切り替えた様子。



 全部で六体を召喚した。


「じゃあ、お前らは敵役な」


 うなずくこともなく、聖拳士たちは四人から距離をとる。


「では僕らも位置につきましょう」


 隊列。


 前衛はレベリオとアリーダ。


 ラウロは引き付け役の背後に位置取り、マリカはその斜め後ろ。だが今回この二人は参戦せず。


 


 レベリオの鎧(王鋼・王革・将鋼)。守るには重さも必要とのこと。


 レベリオの盾(神鋼・将鋼・王木・将革)。大きさは中型で、形は逆三角。


 レベリオの短剣(王鋼)。鍔の形状からして、守りに特化したもの。刃はついていない打撃専用。


「では失礼して」


〖我が盾〗〖貴様が盾〗を発動。 守る意思を示せば、銀色の光が広がり、物理判定を得て防御範囲が大きくなる。自身の防御強化。衝撃吸収。


 断魔装具。彼は鎧の神技を持たないが、神力を沈めることで、少しだけ鎧としての質が上がるらしい。


「じゃあ私も」


 レベリオの短剣は刃がついてないが、〖君の剣〗による効果は得ているようだ。


 アリーダはいつもの革鎧(兵鋼・兵革)に、片刃の片手剣(神鋼・王革・神木)。左前腕には小型の盾(王木・王鋼・王革)。



 ラウロは咳ばらいを一つ。


「準備は良いな」


 二人はうなずく。


「攻撃開始」


 合図を受けて、六体の拳士が前腕を輝かせる。〖聖拳〗


 レベリオは〖我が盾の呼び声〗を発動。


 短剣で盾を叩く。その音色により、敵対者を呼び寄せる。



 一体の拳士がアリーダに向けて拳打を放つが、盾で難なく弾き返した。


「呼び声は利かないわね」


 相手を確かめるように、片手剣で首元を狙うが、拳士はそれを前腕で受け止めた。


「固い」


 神技や断魔装具の力を使わなくても、もう少し本気を出せば、〖私の剣〗だけでも斬れるかも知れない。


 足払いをしようと、左で蹴った瞬間に理解する。実体がなく、空ぶったせいで姿勢が崩れた。


「やられた」


 レベリオが即座に対応。


 〖我が盾の突進〗命中した敵に銀の光がまといつき、防御力を低下。敵意を強く向けられる。


「物理判定があるのは腕だけか」


 突撃を受けたが転倒はせず、両前腕だけが吹っ飛び、それ以外の部位は消えた。地面に落ちた前腕は浮かびあがり、再び聖拳士となる。銀色の光をまとっているので、今回は引付が利くらしい。



 敵はまだ六体のまま。そのうち二体がレベリオに接近。


 守短剣で一体の拳打を受け、もう一体は盾で殴りつける。


 〖我が盾の打撃〗 装甲の内部に打撃浸透。防御力低下。敵意を強く向けられる。デバフを受けた敵は銀色に光る。


「物理判定があるって、そこが弱点じゃない?」


 レベリオが短剣で受けた方の前腕をアリーダが切断する。まだ片腕が残っているが、その拳士は消滅した。


「なるほど」


 気づかれたかと、ラウロは苦笑いで頭を掻いている。


「ちょっと僕だと攻撃力不足かな」


 もう一度、盾で打撃を与えてみたが、両手でガードされ、腕だけが吹き飛び壊れない。


 レベリオの攻撃神技はラウロに似ている。


〖聖拳〗から〖破魔の拳〗

〖我が盾〗から〖我が盾の苦痛〗


「任せてっ」


 彼が吹き飛ばした光る前腕に駆け寄り、復活する前に処分する。地面に落ちているため、切断は難しいと判断。


無断(むだち)〗剣に斬を捨てさせる代わりに、打を強化。


 片刃の剣を地面に叩きつけ、前腕を破壊。


「断装具つかってんの?」


「あっ」


 盾に神力を沈ませることで、盾の神技を全て強化。



 残りの聖拳士は四体。


 レベリオは前にでて、短剣で拳士の打撃を受け止めながら、自分の盾角で殴りつける。

 〖我が盾の打撃〗でも、前腕の破壊に成功した。


 別の個体が殴りかかってきたが、防御の意思を込めたことで、〖我が盾〗が銀光の範囲を広めて防ぐ。


 ここまでくれば、もう勝敗は決したと言って良いだろう。


・・・

・・・


 全ての聖拳士を撃破した所で、ラウロは二人のもとに向かい。


「どうだった?」


「あんたが言う通り、消費の割には弱いわね」


 聖拳を持ってはいるが、ラウロのように破魔の拳を実現させるまでは耐えられない。そもそもできるのか不明。


「ですが、魔系統特化なんですよね?」


「そうだな。拳打の威力は魔物ならけっこう上がるぞ」


 マリカはフムフムと考える仕草をとって。


「魔物って頭よくないし、腕が弱点なんて気づけないんじゃないかな~」


「小型や中型ならそんなもんだ。でも大型になると違ってくる」


 納得いったのか、アリーダは片手剣を消し、装備の鎖から大剣(将鋼)を出現させた。


「これで横から叩き斬れば、確かに一発ね」


「そういうことだ」


 ダンジョン内での使い道はないか、利用できそうなボスは居ないか。


「意識の共有とかはできるんですか?」


 ゴーレムは種類にもよるが、可能との話を聞いたことがある。索敵専用の小型など。


「それができればもっと活用してるな」


 できることとできないこと。


「レベリオさんの指示に従えって命令はできるぞ。ただ基本的に簡単なのしか理解できん」


 大きい敵は避けて戦え、小さいのだけを狙え。


「なるほど。弓とか持たせることは?」


「拳一筋だったりする」


 少し何かが足りない神技。それが聖なる拳士だった。


「もっと燃費良ければ、かなり有効だったわよね。これ」


「そうだね。少なくともダンジョンでは、活用できる機会も限られてきそうかな」


 マリカは手を上げると。


「私も戦ってみた~い」


「じゃあ今度は俺と組んでみるか」


 こうして連係の調整は進んでいく。


 〖君の剣〗による効果か、アリーダのように確実な切断はできなかったが、何度か成功して嬉しかった。


 マリカは〖風矢の友〗と言う神技で無数の矢を空中に浮かせ、〖風矢の連射〗で自分の放った矢と同じ位置に、五本の友を連続で打ち込む。


 威力の違いに少し虚しくなった。


・・・

・・・


 ルチオたちの結果も気になるが、今日は自分の今後にも関わるので、彼らにはそのまま帰ってもらう予定となっている。


 最後に森中で敵対生物となんどか戦闘もしてみた。


 

 レベリオが集めた敵はマリカの神技で殲滅。強い個体が混じっている場合はアリーダが受け持つ。


 強力な一体であれば、レベリオが引き付けアリーダとマリカが攻撃。


 聖十字の発動範囲は狭いが、ラウロが離れてもその場に残るので、走り回ればなんとかなる。しかし光十字に比べるとやはり時間がかかる。利点は一人に対して四方にも展開でき、レベリオの反応が凄かった。


 あとこの神技は他よりも熟練が数段高いので、そこはすごく評価された。聖十紋時は残念ながら自分専用。


 聖域でも十分な回復量があるので、雑魚相手であれば余裕。状態異常や精神汚染・圧迫の見極めに関しては課題。

 回復役の経験がないので、サラよりずっと下手だと感じている。


 アドネと同じく、必要時は前にでる中衛的な位置。でも開拓地周辺の敵であれば、マリカとアイーダの攻撃力が高すぎて、加わる前に終わってしまう。


 これならもっと奥でも行ける。三人はそう判断したが、〖君の剣〗は今のところ活かせていない。




 


ルチオが空間の腕輪に苦戦しているように、アドネはコート(将革)を借りてますが、まだ装備に神力を沈ませるのが上手くできません。

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