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いつか終わる世界に  作者: 作者です
いつか終わる世界に
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19話 友よ



 〖輝く太陽〗は訓練場周辺だけでなく、ラファスの魔物にも手傷を負わせていた。


 だが救済の光がなくなれば、その方面に引き寄せられていた敵は、また町中を目指すのではと危惧される。



 内壁の上。訓練場の方面を確認していたミウッチャは、安堵の息をつき。


「シスターさんたちが、なんとか喰い止めてくれてるみたいだね」


 町中に戻ってくる魔物は予想していたよりも少なかった。



 先ほどまで救済の光が輝いていた位置を眺め。


「ボスコ君が言ってたこと、本当なのかな?」


 一応対象の所在地が分かるよう、自分の指揮下に入れてはいるが、普段の様子を知っているためか想像もできず。


 空を見上げれば、まだ〖さらば友よ〗の紋章は輝いていた。


・・

・・


 覚醒した者は歴史に名を残すことが多い。


 定めを背負った魂ほど、神技や覚醒技は熟練が速く進み、人間でありながら天使ほどに高められる存在もいる。


 いつか終わる世界だからこそ、〖神誕創造〗だけでなく、英雄を勧誘するのはこういった点があるからだろう。




 傷を負った魔物の動きは鈍く、脱落四人組も十分に戦えていた。


 〖風刃〗と〖伸〗で迫ってくる敵の足止めをしてから、〖一点突破〗でボロボロの装甲を突き破り、〖波〗で後方の複数体を吹き飛ばす。


 転倒した敵には剣使いが対応。


 〖波〗を逃れた何体かの魔物に〖鎖〗を放ち、〖滑車〗を〖巻き取って〗引き寄せれば、水使いと協力して〖得物〗を叩きつける。


「セレナ、その調子だよ!」


 彼女が前にでて戦うようになり、この探検組は形が整い、一段と実力を上げている。


「うん」


 褒められて嬉しい。


 失敗して落ち込んでいる自分を慰めて欲しい。



 脳裏に過る、そんな思考を振り払う。


 可哀そうな自分。


 いつも被害者な自分。


 悪いのは別の誰かで、できないことの言い訳をする。



 誰かがなんとかしてくれるのは子供の時代だけだ。


 もう自分のことは自分でするしかない。


 この現状に陥っているのは自分の所為だ。


 いつまでも悲劇のヒロインだと酔いしれて見っともない。


 悪いのは誰かじゃない。


 自分だ。



 肉鬼の大槌を避けてから、〖折れた槍〗を突き刺す。


 側面から骨鬼が突いてきたが、〖短剣〗の〖無断〗で叩き落す。


「前に出過ぎだ!」


 ルチオが〖地炎撃〗で周囲の敵を封じ、アドネの矢が彼女を狙う数体を片付ける。


 肉鬼の肩に〖光翼〗が刺さり、〖日の光〗で照らされろば、その隙にセレナは距離をとった。


「すみません」


 仲間たちが駆け寄って態勢を整える。


「気負いすぎちゃ駄目だよ」


「うん」


 神技のクールタイムが終わるのを待つ。



 水使いが肩を叩き。


「僕らが求める動きはできてるんだ、それ以上は望んでないよ」


 エルダは沢山の〖鎖〗を放つが、自分のもとへ〖巻き取る〗のは対応できる数だけ。



 一人善がりにならないよう、できることをやるのだと、何度もモニカに教わってきた。


 誰かが自分を助けてくれる。


 それでいい。


 返せるように頑張らなくてはいけない。



 でもこれだけは譲らない。


「私の罪は」


 お前だけのものだと、あの男が脳裏でささやく。


 全身の肌が痺れ、毛が逆立つ感覚がした。



 これからしばらくの後。訓練場だけでなく、教都方面外壁のすぐ近くに【門】が出現する。


 そんな絶望の中だった。ラファスの上空が雷雲に覆われ、〖勇気と友情の紋章〗に〖雷〗がまとわりつく。



 新たな時代が到来した。


 後の世で、教国の勇者と呼ばれる英雄の誕生だった。


・・

・・


 強い風が吹く。


 取り残されたその場所で、役目を終えた英雄は、血塗れとなって〖聖域〗の中で倒れていた。



 〖戦士〗の熟練が上がれば、呼び出せる量が増える。


 使い古された法衣に神力を沈めても、個体の強さに変化はないが、それでも一体ごとの消費量を抑えることができた。


 〖召喚〗したのは百五十体ほど。


 これ以上は今後を考えれば、神力を温存しておきたい。



 戦鬼の突進に合わせ、前列の〖戦士〗たちに〖光十字〗を展開させたが、このままでは押し切られる。



 響き渡るウォークライに顔を歪めながら。


「うるせえんだよ」


 装備を大型から中型盾に切り替えると、〖光壁〗の足場から飛び跳ね、着地と同時に〖地光撃〗を発動。


「お前がボスか」


 上からの圧力をものともせず、一体のオークがボスコへと戦棍を振り下ろすも、それを〖中型盾〗で受け止める。


 〖光十字〗が物理判定を得て回転すれば、神官の得物を横に弾く。


 装備の鎖から武器を出して相手を突けば、他の〖戦士〗も左右から片手槍を刺す。


 しかし横からの攻撃が戦神の書に当たりかけたことで、神官は歯を喰いしばり、握りしめた戦棍で〖戦士〗ごとボスコを吹き飛ばした。



 他の戦士が受け止めてくれたが、神官はそのままボスコへと距離を詰め、戦棍を振り下ろしてきた。


 〖光十字〗と二重の〖光強壁〗で受け止めれば、うち一つが破壊されるもなんとか凌ぎ切る。



 空間の歪みより〖影爪〗が出現し、背後から戦鬼を斬り裂いた。


「なんだよお前、味方してくれんの」


 治癒したとはいえ、かなりの重症だった。ラウロやルカが特殊なだけで、もう満足に動ける状態ではないはずだ。


 それでも有難い。



 ボスコは周囲を見渡し。


「くそっ もどかしいな」


 盾と槍を装備していては〖拳〗の神技が使えない。だけど〖戦士〗にはこれら武具が反映される。



 隊列を組んだ骨鬼の矢が降り注ぐ。それを〖輝く鎧〗の防護膜で防いでいるが、守れるのは〖天光〗の範囲内だけ。


「ラウロっ!」


 喧騒の中で呼びかけるが、相手は倒れたままピクリとも動かず。


 そもそも打たれ強いラウロがこうなっている時点で、もう戦えない可能性がある。



 〖戦士〗たちはオークの対応だけで精一杯だった。


 小鬼が戦いの隙間を掻い潜り、〖天の光〗に進入してくる。


 ボスコは〖求光〗と〖呼び声〗で意識を自分に向けさせ、盾と槍で小鬼どもを捌く。


・・

・・


 戦況は最悪だった。


 〖召喚〗の効果時間を待たずして、もうその数は半分ほどに減っていた。


 オークの打撃を〖回転十字盾〗で弾き、左右から突っ込んでくる小鬼は〖眩い盾〗で怯ませる。


 一歩さがり、〖十字盾〗を戦鬼に向けて構えると、物質化した〖光十字〗が回転しながら放たれ、相手の首を抉って血飛沫が舞う。


 即座に装備を短剣に切り替えると、怯んでいた一方の小鬼を殺すが、残るもう一体がボスコの膝裏に得物を突き刺す。


「ざけんな」


 振り向きながら〖盾〗を小鬼の頭部に叩きつけた。


 傷は〖聖域〗で完全に治癒できるが、毒を何とかしなくてはいけないため、〖活力の光〗を膝裏に当てる。


 瘴気の魔物から受けたので完全には回復しないが、〖天の輝き〗を使うにはもう少し様子を見たい。



 次々と〖戦士〗は魔物に倒されていき、ボスコへと一体また一体と迫ってくる。


 〖輝く鎧〗も終わろうとしていた。


「犬っ そいつを頼む」


 ボスコは装備を〖法衣〗へと切り替え、盾と短剣を装備の鎖に戻す。


 背中に〖後光〗を発生させ。


「少しだけでいい、俺も守ってくれっ!」


 両手を合わせたまま動かず。



 押し寄せる魔物が〖影の爪〗に引き裂かれるが、倒れない戦鬼もいた。


 ボスコは両手を合わせたまま、身体を横に反らせてオークの斬撃を回避する。


 手首を返して振られた横薙ぎも屈んで避た。


 すぐさま後ろに飛びさがったが、上空より矢が降り注ぐ。


 宙に浮かせた〖光強壁〗で自分の身を守った。



 戦鬼の横を通り過ぎた数体の骨鬼が、一斉に槍で突いてきたけれど、そちらも〖壁〗で防ぐ。


「どうすりゃ良いんだ」


 左右から別の個体が回り込んできたが、そちらは〖影爪〗が斬り裂いてくれた。



 次の瞬間だった。


 飛びかかりながらの斬撃がボスコの〖光強壁〗を叩き割った。


 寸前で〖光十紋時〗が割り込む。


 合わせていた手に隙間をつくり、大剣を両手の平で挟み止める。



 大剣が【瘴気】に覆われた。


 咄嗟の判断で相手の得物を左に反らしたが、間に合わずボスコの横を通り抜けた。


 大量の血が灰だらけの地面に降り注ぐ。



 〖天からの光〗が〖輝き〗に変化し、残った右腕の〖輝く拳〗がオークの脇腹に減り込んだ。


 特攻隊長は顔を歪めるが、振り下ろした大剣を握りしめ、未だ傷の完治していない左肩に柄尻を叩きつける。



 吹き飛ばされたボスコは右手と右膝で〖壁〗に着地すると、そのまま姿勢を整えて身体を発射させ、相手の横っ面に〖拳〗を叩きつける。


 兜の側面は粉砕し、オークは灰へと帰った。


「……誰か」


 ラウロと犬の方を確認する。


「誰か、いないのか」


 骨鬼の攻撃を握り止めたが、続けて別の個体が槍で突いてくる。


 握っていた槍を動かして受け止めれば、肘で一体を沈黙させ、蹴りでもう一体を遠ざける。


 背後から小鬼が迫るも〖光強壁〗で動きを止め、それを消すと同時に〖拳〗で顔面を粉砕した。


 隙を見て〖血剤〗を口に含み、降り注ぐ矢を動体視力と反射神経で見極めながら、近づいてきた敵を片手と両足で捌く。




 神官と特攻隊長を倒したことで、戦鬼の士気はだいぶ下がっていた。


 それでも敵の数は減らず。


 ついに〖拳〗の輝きが弱まっていく。


 これまで急所だけは避けてきたが、数か所に矢が刺さっていた。


「……マジかよ」


 邪魔をするなと、大鬼が魔物どもを押しのけ、ボスコの眼前へと立つ。


「くそっ」


 灰の大地に〖聖なる紋章〗が浮かび上がる。



 オーガの金棒が振り下ろされた瞬間だった。


 〖光十字〗と〖光強壁〗が出現し、接触と同時に〖聖音〗を響かせれば、〖輝く壁〗がその攻撃を受け止めた。


 〖輝十字の壁〗は眩い光と共に弾け、オーガ越しに背後の魔物どもを灰に帰す。



 だがその大鬼は輝きを突き破り、ボスコに体当たりを仕掛けてきた。


 後ろに飛び退き、着地と共に〖聖音〗を響かせる。

 

 〖輝く壁〗だけで、〖輝十紋時〗は間に合わず。


 けれど〖爪〗がオーガの頑強な皮膚を抉った。



 重症を負っても大鬼は怯まず、金棒を高く振りかぶる。


 朦朧とする意識のなかで。


「燃えろ」


 錫杖をその場に落していた。


 〖光の拳〗をオーガの腹部へと打ちつけるが、もう力は入っておらず、相手は金棒を持ち上げたままボスコを見下ろす。


「燃えろって」


 油だと言うのなら。



 頭の中に緑色の実をつけた木が浮かぶ。


 油だからといって、燃えるのだろうか。


 いや違う。


 燃やすのは油じゃない。


「紅蓮の……炎よ」


 光る拳に火が灯った。


 沈黙していた大鬼が、危険を察知して【鉄塊の金棒】を振り下ろすが、左肩から噴き出た〖炎〗がその一撃を受け止めた。


「この身と共に、燃え上がれ」


 〖後光〗など関係ない。


 動きを止めていた魔物たちが、本能で何かを察知したのか、一斉にボスコへと走り出す。


「もっとだ……もっと」


 灰になった大鬼の先。


 幾多の魔物を睨みつければ、その全てが燃えていく。


 ボスコの瞳が赤く光っていた。


「……なっ」


 漂っていた瘴気が、彼の身体へと集まる。



 天上の刻印もないのに、【瘴気】が炎を汚染していく。


「なんだよ、これ」


 冷や汗が止まらず、吐き気を催し、両膝をついてその場にうずくまる。


 それはまるで病のように、ボスコの肉体を蝕む。


「だれっ か」


 続く一言を口には出さず。


 声には出せず。



 魔物たちは動揺していた。


 その【炎〗に。


 


 空間が歪み、そこから一体の小鬼が姿を現した。


 外套は焼け爛れ、決して軽くはない傷を負っていた。


「あっ アニ……キ?」


 小鬼は周囲を見渡すと、すぐさま【遮断結界】を張り、覚束ない足取りでこちらに近づく。


 うずくまったままボスコは動かない。


「おっ、おで」


「……ボルガか」


 薄れゆく意識のなか、なぜかその名が浮かんだ。



 小鬼は目を見開くと、何かを思いだしたのか、外套に手を突っ込む。


「あっ アニ…キに届けっ るよう言わ……れた」


 なにかを探しているようだが見つからず。


「だ、駄目だ。お…で、忘れちまって。伝えなきゃ……いけねえ、こと」


 誰かからアニキへと。


 だがそれは、もう終わった世界での話だった。



 ボスコはうずくまりながら、一方に指を向けると。


「あいつを、安全なとこに」


 ボロボロの犬が横たわりながらも、こちらを見つめていた。


「わっ わかった」


 ボルガと呼ばれた小鬼は、ボスコを引きずって犬のもとへ向かう。


「俺はいい」


「いっ イヤ……だ」


 この場にいる全員が、もう限界の状態だった。


・・

・・


 【転移】で連れて来られたのは、どこか森中の花畑。


 小鬼が此処にも【遮断結界】を張ると、それを見届けたのち、犬は瞼を閉じる。



 小鬼はボスコをその場から動かし、木の幹へ寄りかからせる。


「あいつは……生きてるのか?」


「いま、見て…くっ る」


 ラウロと犬の様子を見に、ゴブリンはその場から離れた。


・・

・・


 意識を取りもどせば、そこは見覚えのある花畑だった。


「起きたか」


「……ボスコ」


 目に映ったのは、赤と黒の【炎〗に焼かれている男。


 その傍らには、心配そうに相手を見つめている小さき者の姿。



 ラウロはなんとか身体を起こすと、動かない足を一歩ずつボスコへと運んでいく。


「お前、大丈夫なのか」


 片腕を失っていた。


「俺に近づくな」


「なんでだよ」


 小柄な男は下を向いたまま。


「救われた世界には、もうお前の居場所はない」


 なぜそんなことを知っているのか。


「救うたびにお前は去り、何処かで眠りにつく」


 その情報をどこで得たのか。


「新たな滅びを感じれば目覚め、そこに降臨するの繰り返しだ」


「お前、なんのことを言ってんだ」


 燃える掌を見つめながら。


「あいつの目的は、お前をそういう存在にすることなんだよ」


 もう助からないと理解しているからこそ、彼は最後の力を振り絞る。


「お前がそこまでする義理なんてない」


 残った右手の拳を握りしめ。


「こんなのは選択とは違う。そうせざるを得ない状況に、無理やり持ってかれてるんだ」


 しばしの沈黙。


「苦しければ叫べばいい。辛けりゃ泣けばいい。助けて欲しけりゃ名前を呼べばいい」


 ラウロはボスコを睨みつけ。


「そう俺に教えたのはお前だろ」


 不思議な炎に焼かれているのなら。



 ボスコはラウロを見ようともせず。


「こんな世界、どうなったって良いじゃねえか」


 呼吸が上手くできないが、ボスコは無理やりに声をだす。


「もし、それが罪だっていうなら。どうせ今さらだ、俺がそそのかしたってことにすりゃ良い」


 世界を裏切れと、かつて裏切者の代名詞となった者が言う。


「……お前な」


 ラウロの声はもう聞こえていないようだ。


 言いたい事だけを伝えるために、ボスコは顔を上げ。


「あの娘と……生きるんだろ」


 どう返すべきなのか。


 考えて考えて、最後にラウロは決める。


「……わかった」


 ボスコは薄く笑うと、力尽きて顔を落とす。


「אדוני, אני」


 なにか聞きなれない言語を呟いたのち、小鬼の手を一度だけ握り返してから、ボスコはこと切れた。



 季節的に本当はありえない。それでも彼がみたこの場面は、確かに花畑だった。


 背後から語り掛けられる。


『いつか終わる世界に、変わらぬ日々を』


 振り向くことなく、ボスコを見つめたまま。


「わかってる。せめて安堵で死なせてやりたかった」


『死際に後悔した内容が、来世へと反映される』


 救いとなり得た者に、世界を裏切らせた。


『英雄や聖人。または勇者へと、その立場を強要するようになる』


「どちらにせよ、こいつ……このままじゃ、輪廻へも行けないだろ」


 ラウロは小鬼の許可をもらってから、その場で屈む。


 ボスコの亡骸に触れた瞬間だった。


 赤い炎だけが聖人へと燃え移る。



 その魂に残ったのは黒い炎のみ。


 油の宿命は終わり、魔の宿命が始まった。



 ラウロはボスコに腕を回し、両手で抱かえると立ち上がる。


 小鬼を見下ろして。


「お前も来るか?」


 ボルガは少し悩んでから、犬を抱かえている主を見る。


『長い間、世話になったな。すまないことをした、もう充分だ』


 肉体は癒えようと、その精神は限界を迎えていたのだろう。


 魔神は犬を花畑に戻し、瘴気に縛られないよう、その場から離れる。


『目的は終えた。あとはただ……耐え忍ぶのみ』


 空間の闇に消えていく。


【早くて二百。長くとも三百年だ】


「わかった」


 垂れ下がっていたボスコの右腕に、小鬼は自分の手を繋ぐ。


「んじゃ、行くか」


 相手のうなづきを確認すれば、〖聖なる足場〗を階段状に展開させながら、空へと上っていく。


・・

・・


 この魔物が意識を保っているのは、魔神の加護者だからなのか。


 アニキに何かを知らせなくてはいけない。そんな使命があったからか。


 もしそうだとすれば、果たされてしまった今。

 

「怖くはないか」


「おで……アニキ、一緒いる」


 どういう関係なのかはよく分からないが、ゴブリン繋がりで知り合いだとは感じていた。


「そうか。んじゃ、こいつのこと頼むな」


 小鬼はボスコの腕を強く握りしめた。




 高く昇るほど、【雪雲】には隙間が生じて、そこから〖太陽の光』が射し込み大地を照らす。


 〖雷雲〗に守られていたラファスの人々だけでなく、広場へと避難していた者たちも動きを止め、皆がその光景に息を呑んだ。



 かつて光の神として〖創造〗していた幼子に、創造主は〖勇気〗の言霊を宿した。


 爺が孤独の中で造りだした、〖夜明・刃〗が色となる。


 古き時空が聖なる光に油の火を灯す。


 今ここに新たな属性が誕生した。



 〖退魔が時〗 天上界が召喚専用の空間となり、神々は一時的に始源の理から外れ、地上へと降臨できる。



 後の世で彼はこう呼ばれることになる。


 救世主ラウロ。


 何処かの戦場で、一人の女性がその光景を見あげていた。







ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。


最後に幻想水滸伝風というか、一人一人のその後の人生を数行で語って、ちょっとしたエピローグを添えて終わりにしたいと思います。

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