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いつか終わる世界に  作者: 作者です
いつか終わる世界に
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13話 いつか終わる世界に③



 〖救済の光〗 超広範囲の魔物に対し、引き寄せ効果あり。また光耐性低下のデバフを付与する。


 〖騎士道〗 神力の消費量減少。三人の召喚とは別枠で、〖戦士〗を任意に出現させることが可能。ただしそこまで多くは呼び出せず。


 〖聖者の行進〗 神力の消費量減少。別枠で召喚された〖戦士〗に限り、魔系統特化を付与する。


 どうしても大量の魔物と戦うことになるため、こちらも〖召喚〗が要となってくる。もし天上具を用意できていれば、三人にも魔系統特化をつけれたかも知れない。



 空からの〖光〗で照らされても、森中は枝葉に遮られて未だに暗い。


 ラウロの持ち場は地上へと変更されていた。


「なんやかんや言ってよ、前回に比べりゃずっと楽だ」


 骨鬼が剣を振り下ろすよりも一手早く踏み込み、相手の骨指に〖拳打〗を打ちつけ、膝蹴りで股関節を破壊する。


 頭上より複数の槍が叩きつけられたが、靴底を地面に叩きつけながら姿勢を低くとり、前方の骨鬼を盾とした。


 その頃には自分の〖手勢〗が槍持ちの数体を灰に戻してくれている。


「前はこいつらも居なかったし」


 〖聖拳士〗を召喚するには非戦闘員の協力が不可欠。



 現在、召喚を受け持っているのはボスコだった。〖光壁〗の足場に乗り、敵の矢を〖盾〗で防ぎながら、自分の〖戦士〗にも意識を向けている。


「それは分かってんだがよ、俺も召喚の天上具もらいたかった」


 〖傭兵〗はモンテにしか扱えないと理解するが、〖指揮官の法衣〗であれば自分にも使えるのではないか。


「熟練はギリギリ足りてると思うんだがな、さすがにぶっつけ本番じゃ厳しいぞ」


 〖眩い盾〗と〖回転十字盾〗は比較的序盤で入手できる素材ということか。


 〖聖音の錫杖〗は〖壁〗との関係が深いので、それを得意としている彼に貸し出されたのだろう。



 このように会話をしているが、ボスコは木上から弓で攻撃をされまくっていたりする。


 フィエロの〖弓〗はクールタイムも終わっていたが、使われたのは遠く前方を塞いでいた数体の巨鬼だったので、未だ多くの弓兵が残っていた。


 〖光十字の盾〗は〖我が盾〗とは違い、守る範囲を広げてはくれないので、民族衣装の骨鬼が相手だと普通に隙間を狙ってくる。


 〖盾〗で威力も弱められ、〖鎧〗で耐久も強化されているため、今の所はなんとかなっているが。


「〖鎧〗の防護膜も、けっこう薄くなってきたな」


 なんとか姿勢を低くして、時折〖壁〗も使いながら防いでいく。


 ボスコにはラウロとは違い、治癒神技を使えば全てを忘れるといった性質はなく、あるのは痛みに対する慣れだけ。



 まだ時間的に周囲はうす暗く、瘴気により隠された【矢】を判別するのは難しい。


 ボスコは全身の感覚を研ぎ澄ませながら。


「〖聖紋〗を使ってくれ!」


 回復型なので素早さ関係はそこまで強化されず。


 〖天の輝光〗で筋力を底上げする。


 両側の盾が邪魔で手を重ねるのも難しいが、ボスコは〖輝拳〗を発動させていた。


 筋力に比例して素早さと動体視力の強化。




 もしこちらが高所より自分を狙う立場だとすれば、どういったタイミングが最適なのか。


 〖輝く鎧〗の防護膜が薄くなり、〖光十字盾〗がクールタイムに入ったこの瞬間。


 右後方の木上より迫る【矢】を、〖光十字〗と〖光強壁〗で弾く。


「フィエロ頼む!」


 ボスコが叫ぶよりも前に、矢が〖一点分離〗を通過した。


 〖光の意思〗による追尾は天使並に熟練が強化されている。



 モンテはその方向に一瞬だけ意識を向け。


「やったか?」


「……」


 一まとめに天使とされていても、その実力には差がある。


 グレースは本来だと天上界に導かれるほどの資格がなく、その成長速度は確かに遅かった。


 〖神誕創造〗でつくられた神の魂にも、得意不得意があったりする。


 彼女の場合は二足の草鞋といった理由も含まれているが、眷属神と同等の時間を生きてきた。


 なによりも天使の中には条件さえ満たせば、主神級に迫る者も確認されている。



 モンテはこれまでの付き合いで何となく空気を悟ったのか。


「少なくとも手傷は負わせたってとこか」


 筋肉でギョ族と会話するのもいるのだから、これくらいは可能なのかも知れない。


 ちゃんと声に出すべきだとは思うけれど。



 厄介な奴を片付けられたと一息つきたいところだが。


「町の魔物が後ろから来るぞ。本当に二百体で良かったのか?」


 召喚の受け持ちがボスコになってから、進軍速度は見てわかるほどに遅くなっていた。


「たくさん召喚した所で、時間が過ぎりゃ消えちまうだろ」


 あと十数分。


 モンテは〖戦旗〗から片腕を離すと、〖装備空間〗より杖を取りだして〖ローブ〗をまとう。


「ラウロ! 少しずつこっちに魔物を誘いこんでくれっ!」


「了解!」


 右から迫る小鬼の短剣を叩き落し、左から突いてくる骨鬼の槍を一歩さがりながら避け、〖肘打〗を鳩尾(みぞおち)へと減り込ませる。


 すでに〖聖拳士〗はこちらの指示で攻勢を緩めており、少しずつ左右に別れながら魔物を内側へと招き入れていた。


 その場に残っていたラウロは集中して攻撃にさらされるので、前方より槍を叩き下ろされるも、腕をつかんだゴブリンをそのまま振り回して払う。


 〖聖壁〗で安全を確保してから、ゆっくりと後退していく。



 専用の〖像〗を入手したからか、以前よりも自分の命令を理解して実行しているような気がする。単に熟練があがっただけかも知れないが。


 ただフィエロの〖戦士〗と違い、組み分けをされていないため、複雑すぎる内容は難しい。



 〖ローブ〗の光が強まるのを待ちながら杖を掲げ。


「見てみろ。また降ってきやがった」


 頭上に輝く〖救済の光〗で確認しづらいが、空には無数の雪が舞っていた。


 ラウロは唾を飲み込むと。


「【時止の雪】だ。こりゃ神技の頃からあったな」


 時を止める。厄介な神技ではあるが、厄介だからこそ天上界も対策は怠っていない。


「なるべく〖聖域〗の中に〖戦士〗と〖拳士〗を避難させてくれ」


 〖天の光〗でも良いが、〖聖域〗に比べて範囲が狭い。



 ラウロは魔物たちを引きつけながら。


「神技の時よりも範囲が広いな、ラファスまで届いてなけりゃ良いんだけど」


「今は俺らに夢中だから、その隙に対策を広めてくれるだろ」


 ほぼ全ての属性が時空との合作で神技をつくっている。


 何度も使えば少しずつ時空の神力は混ざっていき、各属性の合作神技を発動中はより影響も受けにくくなる。


 炎の近くにいれば雪の影響は弱まり、水は時間への耐性があった。


 ただ加護者よりも、召喚神技への影響が問題となっている。



 ボスコはしかめっ面で。


「確かにこの状態になってみりゃ、あんま沢山召喚しなくて良かったかもな」


 〖聖域〗へと間に合わなかった〖戦士〗の一部が動きを止め、無抵抗のまま魔物にやられていく。


「杖を使うから、それと同時に進軍を再開するぞ。ラウロはこまめに聖域を使ってくれ!」


 〖戦旗〗と一緒に使えば〖輝く太陽〗になってしまうので、この場では〖杖〗だけで発動させる。


 これも天上具だからか、名称が少し変化していた。


 〖日の光〗から〖陽の輝き〗へと。


「進めっ!」


 火力だけでなく、照らす時間が通常時よりも延長されているので、この間にできるだけ距離を稼ぐ。


 迫って来る骨鬼の矢も〖陽の輝き〗により焼け落ちていくので、ボスコには若干の余裕が生まれていた。


「確か【時止の雪】はそんな長く降らないんだよな?」


「そう願いたいけどよ、〖終わらぬ冬の外套〗って天上具が、瘴気で変質してないことを祈っとけ」


 これまでラウロが使った〖聖域〗は来た道に残っているが、森中にまでは広がっていない。


 左右から迫る敵を防ぐとしても、これまでよりも狭い範囲で〖戦士〗を動かす必要があった。


 あと少しすればボスコの〖召喚〗が終わる。



 そうなると〖騎士道〗から発生する別枠に頼らなくてはいけない。


 モンテとフィエロの〖輝戦士〗が二十から三十のあいだ。


 ボスコの〖光戦士〗が十前後。


 残っている〖聖拳士〗も五十ほどか。


「ボスコの戦士が停止したら、いったん進軍を止めるぞ」


 フィエロの〖召喚〗が復活するまで耐え忍ぶ。


 今は〖陽の輝き〗が終わるまで、可能なだけ距離を稼ぐ。


・・

・・


 戦士消滅まであと数分。


 モンテは危険を承知でラウロを動かす。



 〔気功〕の練り込みが終わるのを待ち。


「あんま深入りしなくて良いぞ!」


 浮かぶ〖足場〗から放った〖夕暮の剣〗が、〖戦士〗と戦っていた小鬼の上腕をかすめ、〖夜入〗からの〖無月〗で転移する。


 ゴブリンはそのまま〖戦士〗に任せ、魔物を切り払いながら駆け抜けていく。


 〖聖域〗から出れば即座に〖剣〗で手の平を斬り、〖暮夜〗を発動させると〖無月・迫〗でラウロは森中へと消えた。


 背負い十字・聖なる化身は光ってしまうので、〖暮夜〗との相性は悪いから今は発動させていない。




 〖聖域〗で暗がりを照らせば、〖剣〗にまとわりついた闇が形を強め、黒い〖空刃斬〗が小鬼と骨鬼を両断する。


 魔系統特化は拳にしか対応してないが、〖救済〗からくる光耐性低下は聖にも影響する。


 〖儂の短剣〗を構え、〖旧式・一点突破〗で群がる数体ごと突き抜ければ、〖波〗でそのまま吹き飛ばした。


 転がった魔物を飛び越えて〖聖域〗から脱出すれば、強化された〖無月〗で転移する。


 新たに〖聖域〗を展開させた瞬間だった。



 草むらに隠れて身を潜めていたのだろう。


 小さな二体の影がラウロの足もとを通り抜ければ、両側の足から血が飛び散った。


「ゴブリンか」


 〖聖紋〗で毒抜きをしながら、振り向いた先にいたのは骨鬼だった。


 その服装は市民が着ているもの。


 【ダガー】から放たれた鋭い突きを〖暮夜〗の鍔と根本で受け止め、続けざまに〖兵鋼の短剣改〗で相手の首を狙うが、こちらの〖前腕〗を握り止められる。


「戦場を間違えてんな」


 たぶん暗殺者の類か。


 最初に駆け抜けた二体の小鬼は木の幹に飛び移ると、それを足場にして一気にラウロへと迫ってきた。



 〖古の聖者〗 本人が自身の〖像〗とリンク状態でなくては発動不可。

 

 天上具 〖グレースの法衣鎧〗 鎧と法衣で枠が多いのか、大まかな追加要素は二つ。


 うち一つは通常召喚とは別で、小出し召喚が可能となる。



 出現した〖聖者〗は一体の小鬼を〖聖長棍〗で地面に叩きつけると、そのまま一度だけ得物を回転させ、〖聖域〗に〖法陣〗を展開させて消えた。


 〖法衣鎧〗の装甲が薄い位置を狙い、小鬼が通り抜けざまに斬りかかってくるも、下丹田から〔硬気〕を巡らせる。


 毒を受けたが、まだ回復特化の〖聖紋〗は続いている。


 骨鬼とラウロは未だ微動だにせず、互いに向き合ったまま。


「掴んでて良いのか?」


 専用の〖像〗を得たことで、〖聖痕〗が骨の前腕を浸食していく。


 骨鬼に痛覚はなくともそれは聖なる痕。〖短剣〗が首骨へと捻じり込まれる。



 【小鬼】は即座に向きを返して斬りかかるが、〖化身〗が〖聖十紋時〗と〖聖強壁〗で防ぐ。


 そちらを無視したまま、ラウロは〖一点突破〗を発動させ、起き上がろうとしていた別個体の胸を貫く。


 〖化身〗が合流しようと向かってくる。


 【小鬼】は短剣を握り直し、〖聖強壁〗を迂回してこちらへと駆けてきた。


 〖空刃斬〗が実体のない〖化身〗を通り抜け、【ゴブリン】の首を切断しようと宙を駆けるが、そのまま転がって回避する。


 勢いを止めることなく起き上がれば、低い姿勢を維持しながらラウロへと接近。


 邪魔されると予測していたのだろう。〖壁〗が出現するより先に斜め前へと進路を変更し、踏み込むと同時にラウロへと飛びかかる。


 〖儂の短剣〗は装備の鎖に戻されていた。


 【刃】は届かず。


 開かれた大きな手が顔面を鷲づかむ。


 中丹田に蓄えていた〔闘気〕が〔解放〕され、三割ほどを消費しながらも小鬼の頭部が砕け散る。



 まだ〔解放〕が終わるまで猶予があった。


 ラウロは森中を突き抜け、道を塞ぐ魔物を粉砕しながら、逆側の森へと足を進めた。



 〔循環〕の〔硬気〕では、〔解放〕の〔闘気〕に耐えきれず、骨が軋むも今は秒間回復で耐え忍ぶ。


「いったん離れてくれ」


 回復型の〖化身〗は合身を解く。


 合身中はラウロがアホみたいな動きをしても、〖化身〗が取り残されることはない。


 〖聖なる鎧〗には痛みの緩和があるけれど、〖聖痕〗状態だと痛いものは痛い。



 少し離れた位置より声が聞こえる。


「戦鬼が来やがった、すぐ戻ってこい!!」


 小鬼と骨鬼に囲まれながら、舌打ちを一つ残し。


「……まじかよ」


 枝葉に遮られることなく、なぜか【雪】は森の中にも降り続けていた。 


 





記入する場所が思いつかず、こちらにて失礼します。


天上具について


さらば友よ(発動条件の緩和) 勇気の紋章(恐怖の紋章の緩和) 炎人・翼 いつか見た夢 大地の巨像(腕は別) あと風読の発生神技を考えてるんですが、このあたりが今の天上界だとまだ用意できないかな。


燃え尽きる魂はたぶん天上具が変化した神技なので別枠。


それ以外の神技でも、やっぱ理を捻じ曲げるほど、深い階層の素材が必要になるんだと思います。



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