表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者と親友に裏切られた伯爵令嬢は侯爵令息に溺愛される  作者: Karamimi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/55

第51話:絶対に彼女を失いたくない~ローイン視点~

 村に着くと、医者が集められすぐに治療を行った。


 ただ…


「申し訳ございませんが、この村ではこれ以上の医療は出来ません」


 そう言われてしまったのだ。


「それじゃあ、すぐに王都に連れて帰ろう。悪いが君たちも王都まで来てくれないか?褒美ならいくらでも出す。頼む」


 必死にバロン殿が医者たちに訴えている。


「王都に行くのは構いませんが、王都までは馬車で5時間かかります。それまでまずお命が持たないでしょう。持って1~2時間が限度かと…」


「そんな…それじゃあ、マーガレットは…」


 真っ青な顔でバロン殿がその場に座り込んだ。


「お嬢様!!!」


 マーガレット嬢の専属メイドが、彼女に抱き着き号泣している。


 嫌だ…彼女を失うだなんて…絶対に嫌だ…


「頼む、金ならいくらでも払う。だから、どうかマーガレット嬢を助けてくれ。君は医者なのだろう?頼む…」


 必死に医者に頼み込む。俺の命を使っても構わない。だからせめて、彼女だけは助けて欲しい。やっと彼女の気持ちを聞けたのに、このまま失うだなんて、絶対に嫌だ…


 もし彼女を失ったら俺はもう…


「止めなさい、ローイン。とにかくこれからどうするか考えよう」


「考えている時間なんてありません。このままだとマーガレット嬢は…」


 その時だった。俺のポケットに入っている通信機が、ずっとなっている事に気が付いたのだ。通信機を見ると…ノエルからだ。待てよ、ノエルならきっと…


 急いで通信機をオンにする。


 “やっと出たね、マーガレット嬢が居なくなったと聞いて、心配…”


「ノエル、頼む。助けてくれ。マーガレット嬢があの男から逃げるために、馬車から飛び降り大けがを負ったんだ。村では治療が出来ない。彼女は持ってあと1~2時間くらいらしい。ノエル、助けてくれ。ノエルの家の飛行船を使わせてくれ…」


 王族だけが所有する飛行船を使えば、マーガレット嬢は助かるかもしれないのだ。


 “分かったよ、すぐに飛行船で向かう。それで場所は…”


「頼む、ノエル、助けてくれ」


 “だから場所はどこだい?て、今のローインじゃあ話にならない。誰か近くにいないのかい?”


「ノエル、頼む…」


「ノエル殿下ですか?場所はディーナス村です。飛行船が着陸しやすいよう、灯りをともしておきます。どうかよろしくお願いします」


 泣きじゃくって話にならない俺から通信機を奪うと、父上がノエルに伝えていた。


 “わかりました。すぐに向かいます。30分以内には向かうと、ローインに伝えて下さい。それではこれで”


「ローイン、落ち着け。ノエル殿下が30分以内には来てくれる様だ。きっと王宮医師団も来るだろう。持つべきものは友達だな」


 俺の肩を抱き、父上が呟いた。


 ただ…どんどん顔色が悪くなっていくマーガレット嬢。必死に応急処置を医師が施している。


「マーガレット嬢、今ノエルが迎えに来てくれる。だから、どうか頑張ってくれ!」


 彼女の手を握り、必死に訴える。温かくて柔らかい手…


 ふとマーガレット嬢の最後の言葉が脳裏によぎる。


 “ローイン…様…愛しています…どうか…お幸せに…なって…”


「マーガレット嬢、いいや、マーガレット。俺も君を心から愛している。一緒に幸せになろう。だから、どうか俺を残して逝かないでくれ…」


 必死にマーガレットに話しかける。やっと心が通じ合ったのに、このまま永遠の別れなんて考えられない。


「ノエルはまだ来ないのか?あいつ、一体何をやっているのだろう」


 もう随分と時間が経ったような気がする。このままでは本当にマーガレットが…


「まだノエル殿下と通信を切ってから、10分もたっていない。それからさっき、ジェファーソン殿が見つかったらしい。ただ…」


 ジェファーソン!名前を聞いただけで、虫唾が走る。あの男のせいで、マーガレットは…


 マーガレットにもしものことがあったら、俺は絶対にあいつを許さない!八つ裂きにしてもたらないくらいだ!


 ただ今は…


 そっとマーガレットを見つめる。再び彼女の手を握り、何度も何度も声をかける。頼む、どうか持ってくれ!


 その時だった。


 爆音が響き渡る。この音は…


 急いで外に出ると、飛行船がゆっくりと降りてくる。やっと来たか!飛行船が着陸するや否や、ノエルが下りて来た。


「ローイン、大丈夫…ではなさそうだね。それでマーガレット嬢は?」


「ノエル、やっと来てくれたか。こっちだ。頼む、早くマーガレットを!」


「分かっている。皆、すぐにマーガレット嬢の治療にあたってくれ」


 続々と医師たちが機材を持って降りて来た。さらに


「ローイン、大丈夫か?かなりやつれている様だが。それで、マーガレット嬢は…」


「王太子殿下も来てくださったのですか?マーガレットは…」


 血だらけのマーガレットの姿を思い出した瞬間、涙が込みあげてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ