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婚約者と親友に裏切られた伯爵令嬢は侯爵令息に溺愛される  作者: Karamimi


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第50話:俺はなんてバカなんだ~ローイン視点~

※少し遡ります。

 不安で押しつぶされそうな気持を必死に抑え、進んでいく。するとバロン殿が


「馬車が停まった。もしかして、目的地に着いたのか?とにかく急ぎましょう」


 そう言ったのだ。どうやら馬車が停まった様だ。ここで少しでも距離を縮めようと、さらに馬を飛ばす。ただ…


「おかしいな、馬車はこの森の中を指している。こんなところで停まるだなんて。とにかく行ってみましょう」


 よくわからないが、馬車は森の中で停まっている様だ。もしかして野宿でもするつもりなのか?訳が分からず、馬車のところまで向かう。すると、森の中に停まっている馬車を見つけた。


 急いで駆け寄る。


「どうしてここに?」


 御者と思われる男が、真っ青な顔をして立っていた。すると


「お前は誰だ!家の御者はどこにいるのだ?マーガレットはどこにいる?」


 剣をスッと引き抜き、男の喉元に突き付けるバロン殿。怒りがにじみ出ている。


「お…お許しを。私はただ、ジェファーソン殿に頼まれただけです。あなた様の家の御者は、学院の外にある森に拘束しております。マーガレット様は…その…馬車から飛び降りて逃げ出してしまわれたので、私もどこにいるか分かりません」


「どういう事だ!マーガレット嬢が馬車から飛び降りただと?なぜそのような事を」


 あり得ない、馬車は結構なスピードが出ている。そんな場所から飛び降りたら、無傷ではいられないはずだ。最悪命の危険だってある。一体どうして…


「どうしてマーガレットは馬車から飛び降りたんだ?答えろ!」


「ひぃぃぃい、ジェファーソン様が嫌だったのではないでしょうか?彼は伯爵家の馬車を乗っ取ると、馬車の中に大きな箱を準備して、そこに隠れておりましたから…私は本当に彼に雇われただけです。どうかお許しを」


 殺気立っているバロン殿に怖気づいたのか、ペラペラと話す男。


「どうやらマーガレット嬢は、ジェファーソン殿に誘拐されたのだな。そんな中、逃げる為に必死だったのだろう。ローイン、急いで彼女を探そう。それから、ジェファーソン殿も。多分彼は、逃げたマーガレット嬢を探しているだろうし…」


 父上の言う通り、マーガレット嬢が心配だ。早く彼女を探さないと!


「マーガレット嬢、マーガレット嬢」


 大きな声で彼女を呼ぶが、返事はない。一体どこにいるのだろう。


 まさか馬車から飛び降りるだなんて…


 俺は本当にバカだ。マーガレット嬢は、ジェファーソン殿を嫌っていた。彼女は何度もはっきりとジェファーソン殿に“あなたとやり直すつもりはない!”と伝えていたのに…


 それなのに俺は、マーガレット嬢がジェファーソン殿と逃げたと、ありもしない事を考えて。俺は一体、マーガレット嬢の何を見て来たのだろう…


 情けなくて涙が込みあげてくる。


 ふと地面を見ると、血痕が付いていた。この血は、もしかして…


 その血痕はずっと続いている。もしかして、マーガレット嬢の血痕か?一気に血の気が引くのを感じた。これほどまでに出血しているとなると、マーガレット嬢の命が危ない。


 必死に血痕を頼りに進んでいく。


「マーガレット嬢!マーガレット嬢!」


 必死に彼女の名前を呼んだ。すると


「ロー…イン様…」


 かすかにマーガレット嬢の声が聞こえる。でも、姿が見えない。一体どこにいるんだ?再び名前を呼ぶと、草むらの奥から声が。ここか!


 草をかき分けると、血だらけで倒れているマーガレット嬢の姿が。動けないのかぐったりしている。かなり酷い怪我だ。


 早く医者に見せないと、本当に彼女の命が危ない。すぐにマーガレット嬢を抱きかかえた。ボロボロのマーガレット嬢を見たら、涙が溢れだす。俺がもっとしっかりしていたら、こんな事にはならなかったのに。


 俺が彼女を守ると決めたのに、それなのに俺は…


 涙を流す俺に笑顔が見たいと呟いたマーガレット嬢。その瞳は、既に覚悟を決めているように見えた。さらに


「ローイン…様…愛しています…どうか…お幸せに…なって…」


 そう呟くと、マーガレット嬢は最後にニコリとほほ笑み、そのままゆっくり瞳を閉じたのだ。今なんて言った?愛しているだと?


 彼女の最後セリフが、俺への愛の告白だなんて…涙が出るほど嬉しい言葉、でも、こんな時に言うだなんて…


「マーガレット嬢?どうして目を閉じるのだい?嫌だ、逝かないでくれ…」


 ピクリとも動かない彼女を抱きかかえ、走りだす。早く医者に見せないと!


 急いでバロン殿の元に戻ると、父上や馬車で来ていた伯爵家の人間、俺の執事の姿も。


「マーガレット嬢が…すぐに医者に見せないと、彼女が…」


 ぐったりとしたマーガレット嬢を抱きかかえ、必死に皆に訴えた。


「マーガレット、なんて事だ。とにかく馬車に乗せて、近くの村まで急ごう」


「お嬢様、なんてお姿に…」


 急いで馬車に乗り込み、村を目指す。ぐったりとしているマーガレット嬢。心臓はまだ動いている。大丈夫だ。でも、このままだと本当に彼女が…


 頼む、早く村についてくれ。

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