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数々の告白を振ってきた学校のマドンナに外堀を埋められました【1巻発売即重版!!】  作者: ネコクロ


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155/164

第155話「強引な手段」

「苦手なものは、苦手なんです……」


 笹川先生は震えた声でそう訴えてくる。


 まぁその気持ちはわかるんだけど……。


 年上のお姉さんに縋られるというのは、なんだかむずがゆくなる。

 放っておけないというか、庇護欲をそそられるというか……。

 普段なら、絶対にない状況だ。


 そしてそんな状況だからこそ、美咲に誤解されないように早急に手を打たねばならない。


「それでしたら、早く部屋に戻りましょう。心愛も気になりますし」


 ヤモリが怖いなら、さっさと先生の部屋に連れていったほうがいいと考えた。

 心愛に関しても、寝たらなかなか起きないとはいえ、ふと目を覚ますこともある。

 その際に笹川先生がいなかったら、不安になって泣いてしまうかもしれない。

 だから、連れていこうとしたのだけど――。


「ですが、ヤモリ……」


 美咲とは違って、笹川先生はヤモリが待ち構えるドアを通れないようだ。


「大丈夫です、何もしてきませんから」

「ドアを通ろうとした際に、落ちてくるかも……!」


 笹川先生は涙目でブンブンと首を横に振る。


 この姉妹、想像力が豊かすぎるだろ……。

 まぁ、運が悪ければそういうこともあるんだろうが……。


「大丈夫ですって」

「…………」


 よほど嫌なのか、笹川先生は動こうとしない。

 こういうところは美咲と違う――と思ったけれど、きっと関係性の違いなのだろう。

 美咲は俺が彼氏だから、おとなしく付いてきていただけであり、笹川先生から見た俺は違うから、動かないという感じの気がした。


 しかし、このままだと埒も明かないわけで――。


「失礼します」

「えっ――きゃっ!?」


 往生際が悪い笹川先生を、俺は抱きかかえた。

 いわゆる、お姫様抱っこというやつだ。


「し、白井さん、何を……!?」

「危ないので、暴れないでくださいね?」


 笹川先生は軽いのだけど、暴れられると支えられる自信はない。

 普段なら絶対にこんなことはしないが、このまま時間が経てば美咲が戻ってきてしまい、負のループになりかねないのだ。

 廊下に出すだけであれば一瞬だし、悶えている美咲はまだ戻ってこないはずなので問題はない。


「い、意外と、強引ですね……?」


 笹川先生は恥ずかしそうに頬を赤く染めながら、俺の顔を見つめてくる。


 こうでもしないと動かない人が、いったい何を言うんだ……。

 俺だって、時間に余裕があるのであれば、こんな恥ずかしくて度胸がいるようなことはしない。

 あのまま美咲が戻ってくることと、こうして強引な手段を取ることを天秤にかけただけの話だ。


「ヤモリが怖いなら目を瞑っていてください。すぐなので」

「はい……」


 今度は彼女も素直に聞いてくれて、笹川先生が目を閉じた後すぐに俺はドアをくぐって廊下に出た。

 そして、タイミング悪く美咲が脱衣所から出てくる前に、さっさと笹川先生を床に下ろす。


「ありがとうございます……」

「いえ、気にしないでください。ここからはもう大丈夫ですよね?」


 元凶となるヤモリはリビングにいるままなので、笹川先生は一人で心愛が眠る部屋へと行けるはずだ。


「はい、ご迷惑をおかけしました……」

「あはは……まぁ、困った時はお互い様なので」


 もう二度とごめんだけど――という言葉は当然呑み込んだ。

 美咲の件がなければ全然かまわないのだが、思った以上に彼女の独占欲が強くて嫉妬深いので、もう修羅場になるような出来事はごめんだった。


 まぁ……一緒に暮らす以上、避けては通れない道なのだろうけど。

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― 新着の感想 ―
連続更新は感謝しかありませんm(_ _)m 笹川先生をお姫様抱っこ!! 似たもの姉妹だから扱いが美咲ちゃんみたいですね それにしても来斗くん男前すぎます〜
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