第152話「かわいい彼女」
二度目というのもあり、俺は足に踏ん張りを利かせて美咲を抱き留める。
そして、ずれ落ちそうになっていたバスタオルを手で止めて、なんとか美咲の裸体が晒されるのを防いだ。
……うん、本当なら止めないほうが俺にとっておいしい展開なのだろうけど、さすがに見逃すことはできない。
それでも、押し付けられている女性らしいある一部分が、いつも以上に柔らかく感じるのだし。
「ヤモリ苦手なのか……?」
「爬虫類が苦手……」
美咲は俺にギュッと抱き着いてきながら、体と同じように声も震わせて答えた。
俺から見ればかわいらしい赤ちゃんでしかなくても、美咲や笹川先生からしたら恐怖の対象なのだろう。
人によって感じ方は違うのだから、それも仕方がない。
「大丈夫だから安心して」
現在の彼女は怒りも忘れて怯えているので、俺は優しく抱きしめながら美咲の頭を撫でる。
ほんのりと水気を帯びている髪を撫でることは今までなかったため、不思議な感覚を抱く。
普段からサラサラとして撫でやすい髪だけど、水気によっていつも以上に撫でやすい。
とりあえず、美咲の怒りが逸れてよかった。
「髪濡れたままだと風邪ひくし、髪自体にも良くないから乾かしておいで」
俺は心愛に言うように優しい口調を意識して、笑顔で美咲に促す。
内心では、バスタオルで隠されていない太ももや肩が目の毒状態なので、さっさと服を着てほしかった。
何より、彼女の姉が傍で見ているというのに、この姿でくっついていられるのは困るのだ。
「ヤモリ……」
しかし美咲は、涙目で俺の顔を見上げてくる。
どうやら、ドアの上で待ち構えているというか、単純に貼りついているだけのヤモリが怖くて戻れないらしい。
多くの生徒に告白をされてきたあの学校のマドンナの、赤ちゃんヤモリに怯える姿なんて誰が想像できるんだろうか?
本当に、親しくなってからいろんな一面を見せてくれている。
「脱衣所まで連れて行くよ」
このままでいさせるわけにはいかない俺は、付き添って脱衣所に向かうことにした。
本音を言えば笹川先生にお願いしたいところではあるが、彼女も美咲と同じくらい怯えていたので、多分ヤモリがいる状態ではドアから出られないだろう。
変なことをしていないか疑われないように、美咲を脱衣所に連れて行ったらすぐにリビングへ戻ろうと思った。
「うん、ありがと……」
美咲は嬉しそうにお礼を言ってくると、体を預けてきた。
甘えたくなったようなのだけど、今から脱衣所に行こうと言っていたことを理解していないのだろうか?
とりあえず、バスタオル一枚の状態で甘えてくるのは心臓に悪いからやめてくれ、と俺は思うのだった。







