第147話「重たい妹」
「そうですか……ちなみに、どの辺が理由でそう思われましたか?」
笹川先生とは美咲以上の付き合いなので、どういう人かはだいたいわかっているつもりだ。
嫌がらせや冗談でこんなことをいたずらに言う人ではない。
本当に彼女の目から見ると、俺は危うく見えてしまうのだろう。
「白井さんのことは信頼できる御方だと思っておりますし、性格もお優しくて立派な御方だと思っているのも本当です」
俺の気を悪くしないようにか、笹川先生はそう前置きをする。
「ですが、そういう方は周りに頼られることが多く、自分でいろいろなことを抱えてしまう傾向にあると思います」
だから、人一倍負担が大きい、というような話をしたいのだろう。
ただちょっと待ってほしい。
「いえ、俺は別に……。学校で、友達いませんし……」
まぁ女子をカウントしていいのだったら、ギリギリ鈴嶺さんが友達枠になるとは思うが、男の友達はいない。
必然、頼られてパンクするほどの人が周りにいないのだ。
「白井さんの場合は、一人一人の密度が濃いと思います。心愛ちゃんはもちろん、家事も白井さんがなされているのですよね? その上……すっっっっごく重たい美咲が、白井さんにかなりの依存をしていますので」
うん、なんで急にふざけだした?
と一瞬思ったのだけど、笹川先生の表情は真剣なままだった。
冗談で言ったのかと思ったが、本気で言っていたようだ。
まぁ……美咲は間違いなく重たいだろうな。
もう慣れたからあまり気にしていないけど。
それに、かわいいし。
――とはいえ笹川先生からしてみると、元々危うく思っていた少年の彼女にかなりの依存体質な妹がなってしまったことで、俺がパンクしてしまうのではないか、と思っているのかもしれない。
今までは美咲が傍にいたから応援の気持ちしか見せていなかっただけで、懸念としてはずっと抱えていたのだろう。
「あの氷華ちゃんも、白井さんのことは頼りにしているようですからね。いざとなったら、あの子の分も白井さんが抱える可能性が高いと思っております」
美咲のことを考えていると、笹川先生は突然鈴嶺さんの名前を出してきた。
美咲の幼馴染なのだから、笹川先生は幼い鈴嶺さんの相手もしてきただろうし、気にかかっているのはわかるのだが……。
「鈴嶺さんですか……? 彼女が俺に頼るとは思えませんが……」
なんでも一人で解決しそうだし、美咲と違ってやらかしもなさそうだ。
美咲も普段はやらかさない子のはずなんだけど、鈴嶺さん関係や、今だと俺関係のことでは途端にポンコツになるからな……。
冷静な判断が出来ている時はかなり頭の回転が速いが、一度ムキになったり混乱したりすると回転速度が一気に落ちるタイプなのだろう。
「海で頼りにされていたではありませんか」







