99.
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
「…………」
ぽんぽこさんは、ピクリとも動かない。
完全に呼吸も止めている(ように見える)。
地面にへばりつくその姿は、まるで道端に落ちた粗大ゴミのようだ。
「起きるでしゅ。もう勝負はついたでしゅよ」
私がつま先でツンツンと脇腹を突いても、反応はない。
ふにふにとした狸の感触が返ってくるが、これも全部、幻術による錯覚だ。
(……なるほど)
私は彼女の浅ましい思考を読み取った。
『審判がいない以上、本人が口頭で「参りました」と言わない限り、敗北は確定しない』。
あるいは、『死人に口なし。死体は負けを認めないから、引き分けである』。
そんな子供のような屁理屈を盾に、現実逃避を決め込んでいるのだ。
「……汚い大人でしゅね」
私は心底呆れた。
けれど、そんな茶番に付き合ってあげるほど、私は暇じゃないし優しくもない。
「まあいいでしゅ。死んでいるなら、仕方ないでしゅね」
私はわざとらしく大きな声で呟き、自分のカバンをごそごそと探った。
取り出したのは、一台のスマートフォン。
愛美が昔使っていたやつを、お古としてもらったものだ。
「死体放置はよくないでしゅから、埋葬してあげるでしゅ。……デジタル社会の闇に」
「!?」
狸の映像が、ビクリとノイズのように震えた。
「この可愛らしい狸の姿……これも幻術で見せているだけで、実体はただの『ジャージ姿のお姉さん』でしゅよね?」
私はニヤリと笑い、カメラアプリを起動してレンズを向ける。
やっぱりだ。幻術は目を誤魔化す術。カメラには、映る。
「せっかくでしゅから、『公園で死んだふりをして負けを認めない残念なジャージ女』のありのままの姿を、ネットにばら撒いてあげるでしゅ」
「んぐっ……!」
狸が苦悶の声を漏らす。
デジタルタトゥーの恐怖は、現代人には効果てきめんだ。
「さあ、撮るでしゅよー。ハイ、チー……」
私がシャッターボタンに指をかけた、その瞬間。
「やめろぉぉぉぉぉぉっ!!」
ガバッ!!
死体(仮)が、バネ仕掛けのように跳ね起きた。
同時に狸の幻影が解除され、中から涙目で髪の毛ボサボサのジャージ女――ぽんぽこさんの実体が現れる。
「ネットはやめろ! 一生残るんだぞ! お嫁に行けなくなったらどうすんだ! 鬼かお前はぁっ!」
「あ、生き返った」
「うぐぬぬぬぬ……っ!」
ぽんぽこさんは涙目で私を睨みつけ、悔しそうに拳を震わせる。
しかし、結界を破られ、幻術のタネも割られ、精神的にも追い詰められた今、彼女に戦う力は残っていない。
彼女はしばらく「うー」とか「あー」とか唸っていたが、やがてガックリと項垂れ、地面に座り込んだ。
「わーったよ! 負けでいいよっ、もー!」
捨て台詞のように吐き捨てる。
態度は悪いが、ようやくその口から敗北宣言を引きずり出したのだった。
(……まあ、ここ異世界なんで、ネットなんて繋がらないんでしゅけどね)
私は愛美のお古のスマホをカバンにしまいながら、心の中で舌を出した。
チョロくて助かった。
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