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【書籍化】転生幼女は愛猫とのんびり旅をする【2巻12/10発売!】  作者: 茨木野


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81.救済



 暴走する悪霊の聖女を、わたくしたちが止めようとする。


「裂破斬!」


 アメリアさんが剣で攻撃をする。だが……すかっ、と悪霊の聖女の体をすり抜ける。

 敵は悪霊を放ち、アメリアさんを乗っ取ろうとした。


 わたくしは結界でそれを防ぐ。アメリアさんはそのすきに距離を取る。


「くっ……! やはり霊体には、物理攻撃が通じないか……!」

『キエロキエロぉおおおおおおおおおおおおおお!』


 悪霊が吹き出し、壁の外に出る。

 このままでは、悪霊に取り憑かれた人たちが暴徒となって、この町を破壊してしまう……!


「……街は任せるのじゃ! 妾が……止めてくる……!」


 ヨル様が雷撃で、悪霊の聖女を攻撃。

 そのとき、ラッセル様が言った。


『……止めるって、どうやって……』

「……仕方ない。緊急事態じゃからな。ヨル様は聖女殿をサポートしてくださいじゃ」


 ラッセル様は四つん這いになる。


「…………」

「ラッセル殿?」

「……聖女殿方、この姿を見ても怯えないでくれると助かるのじゃ」


 そして……。


「獣化……!」


 ラッセル様が叫ぶと、彼女の体が膨れ上がり、毛皮に包まれていく。


「!? ふぇ、フェンリル……!?」

「ひゃぉおん!?」


 隣で驚くヨル様と同じ、神獣フェンリルの姿へと変化したのだ。

 灰色の毛皮、そして額から伸びるのは青いツノ。


 紛れもなく、フェンリル。


『これは獣化と呼ばれる、王族だけが使える奥義ですじゃ。先祖の姿に変化できるのじゃ』

「先祖……王族の先祖は、神獣だったのだな!」


 こくん、とラッセル様がうなずき、飛び出す。

 壁をぶち破り、外へ。


 テイムした鳥の視界で、外の様子を見やる。暴徒と化した街の人たちに……。


『【獣咆哮バインド・ボイス】!』


 フェンリル固有のスキル、獣咆哮バインド・ボイスを発動。

 それを聞いた獣人たちは動けなくなる。


 ……なるほど、だからフェンリル姿になったのか。

 これなら獣人たちを傷つけず、無効化できる。


『ヨル様! こちらも!』

「アオォオオオオオオオオオオオオン!」


 獣咆哮バインド・ボイスで、悪霊の聖女の動きを止める。


 私はさっきよりも強い力で、浄化を発動させた。だが……。


『ナメルナァ……! アタイノウラミガ、コノ程度デキエルモノカァアアアアアアアアアアアア!』


 悪霊の聖女がさらに巨大な悪霊を放つ。

 結界で防ごうとするが、破られた。


 地下の壁を破壊しながら、こちらへ迫ってくる。


「撤退だ!」


 アメリアさんはヨル様の背中に跨がり、わたくしも続く。

 ヨル様は天井をぶち破って、外へ。


 王城の庭にて、わたくしたちは巨大な悪霊と相対する。


『シネシネシネ! ゼエエエエエエエエエエエエエンブ、キエテシマエエエエエエエエエエエエ!』


 悪霊がさらに集まり、巨人となっておおきな腕を振り下ろす。


 結界で防ごうとする。だが……くっ。なんて重さ……。


 ……前に、愛美さんから聞いたことがある。彼女はおしゃべりで、いろんな(無駄)知識を披露してくるのだ。


『聖女の力の源ってなんだか知ってます?』

『なんです、藪から棒に……? 知りませんけど』

『思いの力、なんですよ』

『思い……』

『ええ。強く思う気持ち、それが聖女の力となるんです。結界、浄化、治癒……全部に共通してます。ただ漫然と使うのでなく、思いを込めて使うことで何倍も強くなるんです』


 ……愛美さんの言葉が正しいのなら。

 悪霊の聖女の――いいえ、聖女さんの強さは、思いの強さ。


 これだけの力を使うのは、それだけ強い恨みがあるからだ。


「…………」


 なんて、悲しい力だろう。


『ナゼナク!?』


 ! 聖女さんが、話しかけてきた。……話が通じるかもしれない。


『わかる……から。貴方のつらさが……』

『ワカッテタマルカ!』

『いいえ……わかります。わたくしも、あなたと同じ聖女だから』


 わたくしも異世界から呼び出された存在。

 こっちに来て訳もわからず、頼れる人をやっと見つけたのに……利用され、捨てられた。


『ワカルモノカァアアアアアアアアアアアアア!』


 押しつぶされそうになる。

 その背中を……ふわり、とアメリアさんが支えてくれる。ヨル様も、わたくしたちを守ってくれていた。


 ……あの人に無くて、わたくしにあるもの。両者の違い……それは仲間がいること。


『たしかに、完全にはわかりかねます。でも……わかることはありますわ。それは……この世界がクソってことですわ!』


 悪霊の力が、少し弱まる。効いてる……!


『ほんっと、異世界ってクソですね。なんですか、異世界召喚って。ただの拉致じゃないですかっ。誰が好き好んで、こんな文明の未発達な世界に来たがるものですかっ。しかも帰る方法もないなんて、人権無視の拉致行為そのものです!』

「す、すまない……」


 アメリアさんが謝ることじゃない。


『この異世界はクソですわ。でも……! それでも……! 良いこともあります!』


 相手の力が弱まっていく。


『こっちに来て、たくさん友達ができました。毎日楽しく過ごせています。……たしかに環境はクソかもしれません。召喚した連中も同様……ですが。それでも希望はある。それに……世界はクソでも、そこに普通に暮らす人たちには罪はない!』


 ……そうだ。異世界の人たちに当たっても仕方ないのだ。


『たしかに呼び出した異世界人はいます。そいつはクソです。でも……自分の人生がクソなのは、自分のせいですわ! 復讐なんてものに囚われ、無意味なことを選択したのは……自分!』

『自分ガ悪イトイイタノカ!?』

『良い悪いの話ではありません! そんなくだらない復讐をするくらいなら、友達と楽しく旅行した方が万倍マシだと言ってるのです!』


 この人には、思いとどまって欲しい。たくさんの人を殺す前に。わたくしのように、罪を犯す前に。


 悪霊が……はじかれる。

 わたくしの思いの力が、彼女に勝ったのだ!


『ヨル様! お力をおかしください!』

「ひゃあぁん!」


 わたくしは調教師テイマー。契約したケモノを操れる。そして……神獣も。


 ヨル様に聖なる力――浄化を付与。

 寧子さんがやったように、わたくしも邪を払う。


 聖女さんの中にある闇を……払ってみせる!


『ヨル様! ゴー!』


 聖なる光を受けたヨル様は白く輝き、白銀の衣をまとったかのように光を放つ。

 すさまじい速さで突進し……悪霊をぶち抜き、聖女さんに体当たり。


 カッ……!


 すさまじい光があたりに広がる。そして……聞こえた。


『………………ありがとう』


 光が消えると、そこには何も居なかった。


 わたくしには理解できた。彼女の恨みは消え、その魂は元の世界へ還ったのだと。


 ……それでいい。わたくしや愛美さんのように、この世界にとどまる必要はない。

 故郷で人生をやり直す方がいい。


貞子さだこ殿っ、やったな……!」


 アメリアさんが笑顔を向けてくる。


 友達が居てくれたから勝てた。

 本当に……皆さんには、特に寧子さんには感謝だ。


 彼女がわたくしを救ってくれたから。

 わたくしもまた、同じ境遇の聖女を助けることができたのだから。


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