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【書籍化】転生幼女は愛猫とのんびり旅をする【2巻12/10発売!】  作者: 茨木野


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75.犬女王、肉を食う


 またも猫神(猫耳)モードの私。ましろの絶対的な力を借りて強くなった……のはいいんだけど、強すぎて困る。コントロールできるようになりたい、はぁ……。


「ところで、この青猪たちはどうしますじゃ?」

 ラッセル様が、青猪の死骸の山を見ながら言う。みんな首がちょんぱされていて、若干グロい。お子様には見せられないなぁ……。


「回収しましょう。放っておくと大地を汚してしまいましゅ」

『解体してからカバンにつっこんだほうがいいですね』

「別にカバンに入れてても腐らないでしゅよ?」

『あたしが嫌なんですよ!』


 どうやら愛美さん、死骸と一緒にカバンに入るのが嫌らしい。いやまあ、それなら外に出てけばいいのに。貞子さんと違ってお尋ね者じゃないんだから……。


「解体……」

 ましろが解体をやったことがある。猫神の力を使えば、死骸を一瞬でアイテムに替えることができる。猫神モードの私も多分できる。問題は出力だ。どれくらい力を込めるとどの程度の出力になるのかが不明だ。


「ましろたん、解体お願いできましゅ」

「な」

『【めんど】ですって……』


 やっぱりか。じゃあ、試すしかない。


 アメリアさんに手伝ってもらい、死骸の一つを持ってきてもらう。周りに誰もいないのを確認して——。


「解体……!」


 ましろの爪を用いた、解体スキルを発動。


 ズドンッ……!


「ずどんて……」


 解体スキルで出ちゃいけない音が出てるんですけど……。しかも青猪が木っ端みじんになってるんですけど……。


「検証しておいてよかったぁ〜……」


 ましろってこんな恐ろしい力をよくコントロールできるな……。特殊な訓練でも受けたのだろうか。


 何度か試して出力を調整し、まとめて一発、とは行かないものの、一体ずつ解体することは私にもできるようになった。


「聖女殿は解体までできるんですな。器用ですのぅ」

「いえまあ」


 私の力というよりは、ましろの力を横取りしているだけだ。ネコババスキル、恐るべし。


 解体した肉に、ヨルがくっついていた。


「ふぁふ〜……」

「ヨルしゃん、どいて」

「ひゃーん……」


 私はヨルを抱っこする。じたばたしている。狩猟族の血が騒ぐのだろうか。


「ヨル殿……じゅる……生肉は体に悪いです、じゃ……」

 相変わらずラッセル様、ロイヤルな面と狩猟族の面を両方持ち合わせている。黙っていれば上品なのに、内面がケモノすぎる。


「せめて焼いてくだしゃいね……」

「うむ」

「ひゃーん!」


 にっ、とラッセル様が笑う。


「気が合いますの、ヨル殿!」

「ひゃんひゃーん!」

『【おばさんもね……!】ですって……あわ、あわあわ……だめですよ! その年齢の女性に“オバサン”なんて言ったらぁ……!』


 ……そういえばラッセル様って何歳なんだろう。若々しい見た目だから二十代後半くらいかと思ったら。


「三十九歳ですじゃ」


 …………………………OH。アラフォーだった。


『アラフォーであんなことを!? 歳を……』

「ましろたん、制裁」

「しゃー!」


 ましろが愛美さんの霊体に飛びかかって制裁猫パンチを連打する。女性に年齢の話題はNGだ。


 ましろが制裁している間に、私はカバンを開けて肉などを収納する。


「手に入れたアイテムはどうしましょうか? 分け前的な」

「すべてそなたらのものでよいですじゃ」

「いいんでしゅ?」


 こちらとしては助かる(浪費家がいるので)。ラッセル様は即答で差し出してくれた。


「無論じゃ。依頼の道中に得たものは、そなたらのものでよい」

「ありがとうございじゃーましゅ!」


 ラッセル様、カバンをじーっと凝視してよだれ垂らしてるし……。


「じゅる……」

「……じゅる?」


 ラッセル様の反応が過剰だ。肉への本能的な反応が出ている。


「肉……」

「肉とな!?」


 二人とも肉に過剰反応している。駄目だ、この女王様、ケダモノすぎる。


『獣人ですから……』


 獣人だといっても、ここまで丸出しにする人は初めて見た。


「じゅる……肉……じゅるる……」

「えっと、どうぞ」


 カバンからさっき手に入れた生肉を一枚取り出す。ラッセル様とヨルが二人してよだれを垂らしている。


「肉……肉……うま……うまそう……」

「ひゃう……ひゃ、ひゃうう……ひゃうん……」


 駄目だ、この二人、既に肉に取りつかれてる……。


「火であぶりますから、待っててくだしゃいね」

「「わふ〜♡」」


 わふーって……。三十九歳でそれでいいのか。女王なのに……。


 なんだかラッセル様が面白存在に見えてきた。ロイヤルな雰囲気と獣性のギャップが強烈だ。シュナウザーさんは気づいてないのだろうか。お母さんがこんな狩猟本能丸出しの女王だってことを。


「早く、お肉をっ」

「あ、はい……。えっと、火を……」


 私には火遁というスキルがあるが、森を燃やす危険がある。威力を落として使うのも面倒だ。地球の便利グッズを使う方が早い。


 取り寄せカバンで現実世界からキャンプ用のガスバーナーを取り出す。


「肉っ、にくっ」

 ラッセル様、精神が狩猟本能に汚染され、珍しいアイテムへの興味を完全に失っている……!


 アメリアさんがバーナーを見ながら説明する。


「これは一体?」

「がすばーなーでしゅ。お湯を沸かすときや料理で使うものでしゅ」


 バーナーをセットして点火。ボッ……。


「「ひぅぅ……!」」


 ヨルはともかく、ラッセル様まで火に怯えてる。駄目だぁ。もう完全にラッセル様がケモノムーブしてる。こんな姿を国民に見せられない。


「すごいな……魔法を使わずとも火を起こせるなんて。一発で便利だ」

 アメリアさんは言いつつもラッセル様を見ないようにしている。王族の痴態を直視したくないのだろう。


「火でこうして、ナイフに突き刺して、火であぶる……」


 じゅう……と油が落ちる。ヨルたちの目がキラキラと輝く。焼き終えた肉の刺さったナイフを彼女らに向けると、二人が飛びかかってきそうだったので。


「おしゅわり!」

「「ひゃん……!」」


 二人を座らせてから差し出す。


「どうぞ……」

「「あおぉおん!」」


 ヨルとラッセル様が美味しそうに肉を頬張る。ああ、仲良しだ……。その姿はまるでケモノそのもの。王族の威厳はどこへやら。

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『捨てられ聖女は万能スキル【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』

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