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【書籍化】転生幼女は愛猫とのんびり旅をする【2巻12/10発売!】  作者: 茨木野


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72.買い物

 現在、雨が降らないのは、聖域にいる水神が怒っているから――らしい。


 ラッセル様は聖域へ赴き、その怒りを鎮めに行くそうだ。

 私たちはラッセル様を護衛して、聖域に向かうことになった。


「わたくしも旅に同行したいですっ」


 人間姿となったシュナウザーさんが、私にそう言ってきた。


「ええと……」

「同行したいのです!」


 場所は、私たちが使っているお部屋。

 シュナウザーさんがいきなりやってきて、頼んできたのである。


「……シュナウザーさんは、庭駆け回らないのでしゅ?」

「はい? なんですかそれ?」


 どうやら駆け回るのはラッセル様だけらしい……。

 親子って似ないものなのかな……?


「なんでもないでしゅ……。で、同行の件、ラッセルしゃまはなんと?」

「危ないから駄目と……」


 でしょうね……。

 ましろもそうだけど、神(神獣も)が怒ると、おおごとが起きる。

 雨が降らないってことは、やっぱり水神は怒っているのだろう。


 そんな相手のもとへ、可愛い我が子を連れて行こうとは思わないはずだ。


「おかあしゃんが駄目って言ってるんでしゅから、駄目でしゅ。お留守番しててくだしゃい」

「くぅーん……」

「可愛い声だしても、駄目」

「しょぼんですわ……」


 保護者がNOを出しているのだ。連れていくわけにはいかない。

 それに……。


「友達を、あぶないとこ連れてけないでしゅよ」

「! と、友達……」


 きらきら、とシュナウザーさんが目を輝かせる。あれ……?


「違うのでしゅ?」

「ううんっ。お友達っ。コネコさんとわたくしは……友達ですわ!」

「あいっ」


 シュナウザーさんが私を抱きかかえて、くるくるとその場で回る。

 端から見ると、姉が妹と遊んでいるように見えるだろう。

 しかし私は中身アラサー。実際の姉と妹の立場は逆だったりする。


「あ、しょうだ。シュナウザーしゃん。わたしたち、アイテムなどを買いたいのでしゅ。街を案内してくれましぇん?」

「いいですわっ。すぐに着替えてきますので、しばしお待ちを!」


 だっ、とシュナウザーさんが走って出て行く。

 ぶんぶんと尻尾を振りながら走る様は、なるほど、親子って感じがした。


 ほどなくして着替え終えたシュナウザーさんが戻ってきて、私たちは城下へと向かう。


「やっぱりちょっと活気がないでしゅね」

「最近水不足ですから」


 雨はもう上がっている。

 水路に水は戻りつつあるが、水位はかなり低い。


「水路に水が戻れば、観光客も増えて、また街に活気が戻ると思いますわ」

「…………」


 シュナウザーさんが、少し寂しそうな顔をする。

 多分、活気のある頃の街を思い出しているのだろう。


「……この国……しゅき?」


 ふと、そんなことを尋ねてしまった。

 シュナウザーさんは私を見て、ニコッと笑った。

 それだけで、十分だった。


 正直、私はまだこっちに来て日が浅い。

 無理矢理呼び出されたし、呼び出した奴はクソ野郎だし。


 異世界に、あんまり愛着もない。

 元の世界に戻れるなら、まあ戻るだろう(元の姿に戻れるかは不明だけど)。


 国の危機と聞いても、いまいちピンと来なかった。

(まあ冒険者として依頼を受けただけだけど)

 頑張る理由なんて、お金くらいだった。


 でも……。


「がんばりましゅ」


 と、私はシュナウザーさんに宣言する。


「だいしゅきな国を……まもってみしぇましゅよ」


 私がそう言うと、シュナウザーさんは笑顔を浮かべ、私を抱きしめてきた。


「ふにゃー!」


 と、カバンからましろが顔をのぞかせ、抗議の声を上げる。


『【あたしのヤスコよ!】ですってぇ。嫉妬丸出しかーわーいー……あいたぁ……!』


 ましろがカバンから飛び出て、愛美さんにキックをカマしていた。

 ほんっと学習しないなこの人……。


 その後、食材を買ったり、消耗していたアメリアさんの装備品を補充したりした。


「ふなー!」


 ましろが足を止めて、露天へ駆け出す。

 魚を焼いている匂いに誘われたらしい。


「お、猫ちゃん。どうだい、お魚。おいしいぞぉ?」


 と露天の店主が、ましろに魚を差し出してくる。

 ……たしかに、串に刺した魚を炭火で焼いていて、美味しそう。


「しょれくだしゃい」


 私は人数分(+ましろ)の串焼きを買った。


 近くのベンチに座って、はぐはぐと食べる。んー! ぷりぷりで美味しいっ。


「これ塩振ってないでしゅよね……? それでも、ほどよい塩みと甘い油があわさって、おいしいでしゅ!」

「我が国は海に囲まれてるから、魚がたくさんとれるんですわ」


 はぐはぐ、とシュナウザーさんも美味しそうに魚を頬張っている。


『でも雨が降らないと、どうしてこまるんです?』


 と愛美さん。


「いや、海の水のむわけにはいかないでしょ……?」


 と私が答える。


「飲み水は山から流れる川からひいてきてるんでしゅよね?」

「そうですわ。だから……雨が降らないととても困るんです」


 海水なんて飲めたもんじゃあないしね。


『ほーん……。ところで、その聖域とやらってどんなとこなんですか?』


 と愛美さんがシュナウザーさんに尋ねる。


「国の中央にある、巨大な湖ですわ。その周囲には森があって、精霊や妖精たちが暮らしてますの」

『はえー……そうなんだ。魔物もいるんでしょ?』

「いいえ、聖域の聖なる力のおかげで、魔物は寄りつきませんの」

『ほーん……。じゃあ護衛なんていらないんじゃないです??』

「そこに行くまでの森の中に、魔物はいるんで」

『なるほどー……』


「それに、聖域周囲の森は、迷いの森と呼ばれてて、攻略が難しいんですわ」

『王族でも? でも王族って水神に会いに行くんですよね? 迷子になっちゃだめなんじゃ……』

「そうなんですけど、聖域の樹木は神聖なるもの。傷つけてはいけないという決まりがあるんですわ。だから……木に印を付けるなどしてはいけないんですの」


 なるほど……。王族でも迷子になるのか……。


「森の入り口から入って、十日さまよっても、たどり着けなかったってこともあったみたいですわ。だから、お気を付けて」

「あい、あどばいしゅ、ありがとうございましゅ」


 まあ、でもその辺はあまり不安に思っていない。

 うちには優秀な仲間がいるからね。


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★新連載です★



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『捨てられ聖女は万能スキル【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』

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