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【書籍化】転生幼女は愛猫とのんびり旅をする【2巻12/10発売!】  作者: 茨木野


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66.広範囲治癒は神獣パワー


 私は猫神モードで飛爪ひそうを使った──。

 結果、毒蛙の群れも、獣人さんたちも、驚愕してしまった。

 獣人さんたちは完全に戦意喪失している。怖い思いをさせてしまって申し訳ない……。


「今のうちだ、バセンジー殿!」

「あ、ああ……!」


 騎士二人が飛び出して、毒蛙のもとへ向かう。


「せやぁ……!」

「だりゃぁ……!」


 二人が剣を振るう。毒蛙は、私の飛爪で恐慌状態になっているらしく、無反応だ。


『でもそのうち、回復して襲ってきますね。その前にささっと倒さないと』

「でしゅね……」


 でも私、火力高すぎるからなぁ。ましろは我関せずと顔を舐めている。やる気が感じられない……。


「ひゃひゃひゃん! ひゃーん!」

 ふがふが、とヨルが鼻息を荒くしている。


『【あそぼあぼあそぼー!】だそうです。完全に犬ムーブなんだよなぁ〜』


 ……ふむ。もしかしたら、上手くいくかもしれない。


「ヨルしゃん。あしょびましょう」

「ひゃーん!」


『【なにしてあそぶのー!?】だ、そうですが……』


 私は毒蛙を指さす。


「あのカエルしゃんの首を、いーっぱい、とってこーい! してきてくだしゃい!」


『えー……フリスビーの「とってこーい」的な? いやいや、そんな猟奇的な遊びしないでしょ』


「ひゃうーん!」


『するんかい!!!!!!』


 ヨルは大人モードになると走り出す。毒蛙に飛びついて、首筋に噛みつき、ぶちぶちと引きちぎる。


「ひぅ……ぐろいでしゅね……」


『命令しておいて……。てゆーか、ヨル様平気そうですね。あのカエル、体から毒を分泌してるんですよね』


 何も対策しなかったら、カエルに噛みついた時点で毒を浴び、瀕死になっていただろう。

 でも大丈夫。


「ヨルしゃんに、あらかじめ浄化をかけておいたんで」

『浄化をあらかじめかける?』


「あい。波ぁ……!をしたときに気づいたんでしゅ。浄化をしたあと、しばらく魔物が寄りついてないって」


 そこから、浄化がしばらく残るんじゃないかと思ったのだ。


「浄化をかけたことで、しばらく毒が無効化されてるんでしゅ」

『なるほどー、だから毒蛙を噛んでも、毒によるダメージを受けてないってことですねー』


 愛美さんが感心したようにつぶやく。


『しかし次から次へと、よく聖女スキルの応用を思いつきますね。頭やわらかすぎません?』

「まあ、お手本がないんで……なんとなーく、できるかなーって思ったことをやってみてるんで」


『なるほど。他の聖女は召喚主から、召喚時に教育を受けます。そこで先入観を植え付けられてしまう。結果、この世界の者は想定した範囲内でしかスキルを使えなくなる……』


 貞子さんの分析に、愛美さんが「たしかにー」とうなずく。


『やすこにゃんの場合は、現地で教育を受ける前に追い出されてしまったからねー。我々より自由な発想ができるのは当然かも』


 浄化付与をしたヨルが、カエルたちをちぎっては投げ、ちぎっては投げする。

 どさどさ、とカエルの首が積み上がる。グロい……。


 ほどなくして、カエルの大群は居なくなった。


「任務完了。おちゅかれしゃまでしゅ、ヨルしゃん」

「ひゃーんひゃん!」


『【まんぞく〜】だそうです。暴れ回ったことが、ストレス発散になったんでしょう……って、寝ちゃった』


 ぷひー、ぷひー、と寝息を立てるヨル。遊んで寝て、まるで動物だ。いや、動物なんだけど(神獣だけども)。


「ふにゃーにゃ」


『【馬鹿犬ここに極まれりね。神獣としての矜持はないのかしらね】って、ましろ様も結構神獣としての矜持を感じられない時ありま……せんよ! ええ、普段から神獣ばりばりでてますから』 


 ましろが鼻を鳴らす。相変わらずプライドの高い猫だ。


「魔物は倒したし、次は治療でしゅね」

 けが人を放置するのはよくない。この人たちはシュナウザーさんの国の民だから。


「コネコちゃん、かなりの人が毒と魔物の攻撃で負傷してる。時間が経つと死んでしまう可能性がある。どうする?」

 とアメリアさん。アイディアは一つあるが、大きなことをしないといけない。聖女だとバレたくない……。


「そこで、ヨルしゃん。また出番でしゅ!」

「ぷひー、ぷひー」

「ああ、寝てましゅ! おきてくだしゃーい!」


 ヨルを抱き上げ、かくんかくんと揺らす。ヨルはよだれを垂らし熟睡していた。起きない……。


『いやまって、やすこにゃん。ワンチャン、このままでもいけるかも!』

「まじでしゅ?」

『まじまじ。ほら、ヨル様って毛皮が黒いじゃん? 目も黒いじゃん? だから遠くからだと寝てるかどうかわからないって!』


 なるほど……。貞子さんも同意する。二人が言うなら大丈夫だろう、多分。


 私はヨルを抱えて移動する。


「ヨルしゃんが、みなしゃんを、直してくれるしょーでしゅっ!」


 ヨルを掲げる。さながらライオンキングの一幕のようだ。本人はぐーすか寝ているが。


 獣人さんたちの注目がヨルへ集まる。


「ヨルしゃん、おねがいしましゅ!」


 ヨルを掲げたまま、私は聖女スキルを発動する。

 瞬間、周囲に結界が広がる。ドーム状の結界が負傷者たちを覆い隠す。

 そして結界内部に緑色の光が満ちる。


「す、すごい!」「怪我が治っていくぞ!」「おれもだ! すげえ……!」


 結界の範囲内にいる人たちの怪我が一斉に治癒されていく。よし、うまくいった。


『なるほど……結界と治癒の重ねがけですね!』

『端を修復したときのように、結界内部の空間を怪我する前まで戻すことで、広範囲の治療が可能になると。すごいです』


 修復の応用以外にも、こんな使い方ができるのではと試した結果、成功したのだ。仕上げはこれから。


「神獣しゃま……ばんじゃい!」


 ヨルが奇跡の力で怪我を治したということにする。


「皆さん、神獣様に感謝しましょう!」

 とシュナウザーさんも、私の思惑に乗ってくれる。


「うぉーー! 神獣様ー!」「神獣さまばんざーい!」


 皆にばんざいされる中、ヨルは鼻提灯を作りながら、ぐーすか寝ているのだった。


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★新連載です★



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『捨てられ聖女は万能スキル【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』

― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます 伝説ってのは美化されるモノですからねぇ
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