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【書籍化】転生幼女は愛猫とのんびり旅をする【2巻12/10発売!】  作者: 茨木野


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63.浄化ってレベルじゃあねえ!


 ネログーマ王都へ向かう道すがら、毒蛙ポイズン・フロッグを倒しに来た。


 もっとも、ましろの斬撃(爪)でワンパンだったけども。


「でもこれで終わりじゃあないでしゅね」

『ですねー、むしろこっから本番ってかんじですよぉう』


 愛美さん、そして私が見やる先には——毒蛙によって汚された大地が広がっていた。


 地面には、毒蛙の体液が溜まっている。粘性のある紫色の液体で、こぽこぽと泡立ちながらガスを発していた。


 これが……瘴気。人体に有害なガスだ。


「ひゃぅう~……」

「……なんだか、具合がわるくなってきましたわ……」


 ヨル、そしてシュナウザーさんがその場にうずくまる。


 馬車は瘴気から離して止めている。距離があるにも関わらず、二人は体調を崩していた。直接嗅いでしまえば……具合が悪くなるどころじゃないだろう。


『やすこにゃん! こーゆーときこそ、浄化スキルですよ!』


~~~~~~

浄化

→邪悪や汚れ、呪いを取り除き、正常な状態に戻す

~~~~~~


『やすこにゃんの聖なるパワーで、瘴気をぶっとばしちゃいましょう!』

『……浄化は別にぶっ飛ばすスキルではないような……』


 貞子さだこさんに注釈を入れられる愛美さん。


『わかってますよぅ。ただノリで言ったまでですわ。さ! やすこにゃん!』

「あいっ」


 私は荷台の上に立ち、結界や治癒と同じように手を差し伸べた。


 スッ……。


「にゃむ」

「? ましろたん、なんでしゅそれ……?」


 気づけば、ましろの顔には——


『サングラスですかね』

『……いつの間に』

『スキルで取り寄せたんでしょうか? でもなんでサングラス……』


 ましろだけがサングラスをかけてたたずんでいた。

 どういうことだろう……まあ、いいか。


「浄化……!」


 そのときだった。


 きゅぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい……。


「『『へ……?』』」


 聖女わたしたちが目を丸くする。私の手の中の光が、どんどん大きくなっていく。


『ちょーいちょいちょい! なんですかこのすさまじいエネルギー量!』

「や、ちょ!? とめられにゃいでしゅぅううううう!」


 光が、ほとばしった。


 ビゴオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 ……それは、どこぞの格闘漫画の「なんちゃら波ァアアア!」のようだった。


 数々の強敵を葬り去ってきた「波ァ……!」と同じく、私の手からすさまじいエネルギー波が照射される。


 白銀の光は大地を照らし、汚れを押し流していく。


「と、とま、とまらにゃぃ~!」


 全力でやったのがまずかった。手から出るエネルギー波が止まらない。


 ……どれくらい時間が経っただろうか。


「『『目がぁ~! 目がぁ~!』』」


 ましろ以外の聖女たちが床に転がっていた。きょうれつな光を至近で浴び、完全に目をやられたらしい。


「だ、大丈夫かい、みんな……?」


 アメリアさんの声がする。姿は見えない。ああー……。


「だいじょうぶでしゅ……多分……」

「にゃ?」


『【ほらね、あたしの言ったとおりでしょ?】って、ましろ様なにも言ってないですよぉ……』

『……サングラスって、これの対策だったんですね……』


 なるほど。ましろめ、分かってたなら先に教えてくれればいいのに……。


「アメリアしゃん……外、どうなってましゅ……?」


 目がしばらく使えないので、無事なアメリアさんに聞く。


『そういえば、アメリアたんなんで無事なんですかぁ?』

「ちょうど後ろを向いていたからな。どれどれ……」


 あんな超エネルギー波をぶっ放したのだ。森がどうなってるか心配だ。前にも似たようなことがあったよね……。


「瘴気だけが無くなってるな」

「!? 森の木々は?」

「これが不思議なことに、木も地面も変わったところは見られない」


 ぼやけた視界で外を見る。……確かに、地面がえぐれてもいないし、木々も吹き飛んでいない。


「どうなってるんでしょうねこれ……?」

『浄化は攻撃スキルじゃあないですからね』

「にゃるほど……だから物理的な被害は出てないってことしゅね」


 愛美さんがうなずく(多分)。


『……十分ダメージはありますけどね』


 貞子さだこさんが目を細める。たしかに……。


「体の不調がなおりましたわ!」


 シュナウザーさんの声。良かった、毒を治せたらしい。


「…………」

「ヨル様? ヨル様ーーーーー!?」


 シュナウザーさんが騒ぐ。ヨルがどうしたんだろう。


「…………」ちーん。

「ヨルしゃぁあああああん!」


 ヨルは仰向けで泡を吹いて倒れていた。


「にゃうん」


『【馬鹿犬はあの光を直視しちゃったのね】……なるほど。動物は人間より感覚が鋭いですから、被害も大きかったんでしょうね』


 そんな……!


「ヨルしゃん、大丈夫でしゅか!」


 ゆさゆさと揺さぶる。神獣を殺したなんてシャレにならない……!


「ひゃん?」


 しばらくして、ヨルが目を覚ました。何事もなかったかのように、ましろに飛びかかる。


「しゃー!」

『【心配して損したわよ!】ですって。いちおう心配してたんですね』


 ましろは自由気ままな子だが、ヒトデナシではない。友達が倒れて、やっぱり心配していたんだろう。


「と、とにかく……浄化、せいこうでしゅね!」

『しかし……普通、浄化の射程範囲は目の前だけですが……』

『……これ、どこまで浄化したんでしょうね。とんでもない範囲を浄化してますよ』

『やすこにゃんには三人分の聖女パワーが入ってるから、出力が通常より凄かったんでしょうね。さすにゃん』



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★新連載です★



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『捨てられ聖女は万能スキル【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』

― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます これは黒幕に命を狙われるパターンですね(^_^;) 歴代の聖女はこうやって殺されたんでしょうかね? お城についたときにボッタクルゾイがなんて糾弾してくるのか?楽しみですね(読…
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