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【書籍化】転生幼女は愛猫とのんびり旅をする【2巻12/10発売!】  作者: 茨木野


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59.壊れた橋

 私たちはゲータ・ニィガと、獣人国ネログーマの国境付近までやってきた。


 ……けれど。


「これは……やばいでしゅね」

「そうだな……」


 国境付近には、幅広い川が流れていた。

 そして、この川には大きな橋が架かっていた……らしい。


「橋が崩れちゃってましゅね」


 橋の半ばにぽっかりと穴が開き、歩いて渡れる状態ではなくなっていた。

 近くでは渡れずに困り果てている人たちが大勢いる。


 アメリアさんが彼らから話を聞いてきてくれた。


「どうやら数日前、突然の大雨で川が増水し、そのせいで橋が壊れてしまったようだ」


 ……数日前?


「そんなに大雨ふりましたかね……」


 私たちはゲータ・ニィガを出てからずっとネログーマを目指していた。

 もしそんな大雨が降っていたなら、気付かないはずがない。


『こりゃあ事件のにおいですな』


 と愛美さんが言う。


「事件? どういうことでしゅ?」

『てへ♡ 言ってみただけです……あっあっ! 痛い痛いですましろ様ぁ……!』


 ましろが愛美さんに猫パンチを食らわせていた。

 ――余計なこと言って、私に心配をかけるな。そんな感じの制裁だろう。

 止めはしない。実際、余計な一言だったから。


 ……大雨については情報が少なすぎる。今は置いておこう。


 問題は、この橋をどうするかだ。


 川は広く、泳いで渡ることも不可能ではない。

 けれど、まだ増水している。下手をすれば流されて命を落としかねない。


「ヨルしゃんにおっきくなってもらって、私たちを背に乗せ、ジャンプしゅる……」

「その方法で我々【は】、渡れるだろうな」


 問題は、他の人たち。そして今後、この橋を渡る人々だ。


 彼らを見捨てるのは、なんだか気が引けた。

 しかも、こちらにはこの国の王女・シュナウザーさんもいる。


 彼女は何も言わず黙っていた。

 ヨルがぺろりと口もとを舐める。

 ――シュナウザーさんがこの事態を憂えているのは、きっとその証拠だ。


 けれど口に出さない。

 自分に解決する力がないから。

 私たちに迷惑をかけまいと、そうしているのだろう。


 本当に優しい王女様だ。


 ……助ける義理があるかと言われれば、ない。

 でも、問題を放置して自分たちだけ進むのは、胸にひっかかる。


「大丈夫でしゅ、なんとか……しましゅ!」

「! いいんですか……?」

「あいっ!」


 シュナウザーさんが目に涙を浮かべ、何度も頭を下げてくる。

 やっぱり心の底では、この橋をどうにかしたいと願っていたのだ。


 よし、頑張ろう。


『実際、どうしましょうか。手っ取り早いのは橋を修復することですが……。修復魔法も修復スキルも、こちらにはありませんよ?』


 聖女3、剣士1のパーティ。

 (今思うと、だいぶ偏ってるな……)


 修復スキルなんて凄い能力を持つ人間は、当然いない。

 自分たちの手札で、クリアするしかない。


 自分の手札……まずは。


「愛美しゃん、たとえば……治癒スキルで壊れたものって直せないでしょうか?」


 治癒スキル。

 人を直せるなら、物だって直せそうな気がする。


『できないですねぇ。治癒は生物の細胞を活性化させて元に戻すスキル。非生物は対象外です』


 ……橋は当然、非生物だ。無理か。


「貞子しゃんの調教師テイマースキルで、魔物を操り工事させるとか……?」


 マンパワーなら修復も早そうだ。


『命令はできますが、魔物たちに建築の知識がなければ直せません。我々にもありませんし……』


 うーん。そっか。


 私の手札は……火遁とか、ましろの飛爪ひそうとか。

 ……壊すほうばっかり!


 壊すのが得意な聖女ってどうなんだろう……。


『時間遡行なんて魔法もありますけど、魔法使いはいませんしね』


 時間を巻き戻せば修復できる。

 けれど、そんな大規模な魔法を使えるわけがない。


「なう?」


 ましろが首をかしげてくる。

 ……死者すら蘇らせるましろの力を使えば――駄目だ。


 あれは負担が大きすぎる。

 友達を苦しめてまで解決するのは、嫌だ。


「ふにゃーにゃ?」

『【何悩んでるの……?】だそうです』


 愛美さんが説明してくれる。

 まあ、多分ましろは理解してない。興味ないから。


「ふなーう」

『【今のヤスコなら、複数の聖女スキルを組み合わせられるんじゃない?】ですって』

「複数の……聖女スキル?」


 どういうことだ……?


「ふにゃ、にゃーう、な~~~~う」

『【あたしの育ての親も聖女だったわ。結界と浄化を組み合わせて呪いを解いたり、治癒と浄化を同時に使って怪我と病気を一気に治したりしてた】とのこと』


 ……なるほど。

 聖女スキルは組み合わせて使えるのか。


「しょんなことできるでしょうか」

「にゃ」

『【やすこは奴隷と調教師から聖女としての経験値を引き継いでるし、いけるでしょ】……あ、奴隷ってもしかして私のことですか? ……すみません、そうですね! 奴隷ですぅう!』


 ……そうか。私は聖女として三人分の力を持っている。

 だから、もっと強く、複雑なスキルの使い方ができるはず。


「あにょ……解決方法を思いつきました」

「! 本当ですのっ!?」


 シュナウザーさんが目を輝かせる。


「はい。でも……割と派手なことをしましゅ。それは我々の本意ではありましぇん」


 できれば国に存在を知られたくない。

 ここで大規模な奇跡を起こせば、「あの銀髪の幼女は誰だ!?」と騒ぎになる。


「だから……協力してほしいんでしゅ」

「協力?」

「あい。シュナウザーしゃんにも、それと……愛美しゃんたちにも」


 これは私ひとりではできない。


「無論ですわ!」

『お、仲間と協力して困難に立ち向かうやつですね! 王道少年漫画的展開! もちろん協力しますよ~!』

『……わずかでも、あなたのためにできるなら』


 よし。協力は得た。

 あとは、作戦を実行するだけだ。

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★新連載です★



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『捨てられ聖女は万能スキル【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』

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