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【書籍化】転生幼女は愛猫とのんびり旅をする【2巻12/10発売!】  作者: 茨木野


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56.強くなる獣人


 全ステータス向上……? む、無敵……?

「どうなってんでしゅかこれ……?」


 鑑定結果を愛美さんたちにも共有する。ぎょっと目を見開く愛美さんたち。するとアメリアさんが言った。

「あたしのときと同じではないか?」

「あ……」


 そういえば、前にアメリアさんが私の料理を食べて、めちゃくちゃバフがかかったことがあったような。

「で、でも……今回作ったのは、わたしじゃなくてアメリアしゃんでしゅ……?」

『あ、でもやすこにゃん、最後に浄化かけてましたよ?』


 た、たしかに……!

『……寧子さんが浄化をかける際に、聖女の魔力が料理に付与された。それを食べたことで、皆さんにも聖なる力が宿ったと……』


 結果、怪我は治り、元気にもなったと……。

「治癒スキル使ってないんでしゅけどね……」


 かけたのは浄化だ。怪我がどうして治癒されたのか……。

『治癒、浄化、結界……。その三つは元々一つの【聖女スキル】ですからねぇ。それぞれ独立してるけど、根っこの部分は同じなんじゃないですか?』

「にゃるほど……」


 浄化や結界にも治癒の力が混じってるかもしれない──元々同じものだから、ということらしい。


「あ、あのぉ〜」


 シュナウザーさんがこちらに近づいてくる。

「元気になったのはいいんですけど……その、話を聞いてると、コネコさん……浄化スキルを使ったって言ってませんでした?」


 …………あ!

 しまった! 私は調教師テイマーってことになっていたんだった! 浄化は聖女スキルの一つ。この世界の人なら、それは誰でも知ってることだ。……シュナウザーさんでも!

 聖女スキルは聖女にしか扱えない代物。それはすなわち……。

「ば、ばれちゃった……」


 私、黒姫くろひめ寧子やすこが聖女だってことが……!

「あのしょの、えっと……」

 ど、どうしよう……。どう言い訳しよう……。


「大丈夫です、コネコ様」

「ふぇ……? 大丈夫ってぇ?」


 シュナウザーさんはこくんとうなずいた。

「素性を隠していたのは、何か理由があるのでしょう?」

「! しょ、しょうでしゅ……!」


 聖女召喚で私を呼び出した馬鹿王子に見つからないよう、私は素性を隠して旅をしているのだ。

「深くは追求いたしませんわ」

「た、たしゅかりましゅっ!」


 よかったぁ〜……。でも、なんで追求してこないんだろう。普通気にならない……?

『助けてもらってる立場だからじゃあないですかねー。それで聞くのは失礼ちゃう? みたいなー』


 なるほど……。それと、シュナウザーさんの人柄もあるのかも。いい人っぽいし。

「ステータス向上の件は、伏せておいたほうが無難ですわ」


 とシュナウザーさんがこそっと言う。みんなはその間、カレーを食べて「うまいー!」「うまーい!」と喜んでいる。

「殿下……! このカレーすっごい美味いです!」


 と、子犬獣人さんのひとりがシュナウザーさんに言う。

「それは良かったです。冒険者であるコネコさんたちに感謝しましょう」


 聖女とばれないように、シュナウザーさんがあえて冒険者であることを強調してくれた。ほ、本当にいい人……!

「ふにゃう」

『【くぁー……おなかいっぱ〜い】いやほんと、ましろ様……。こちらがてんやわんやしてるのに、相変わらずのマイペースですね』

「ふなー?」

『【なに、ディスってるの? 食らう?】 いえいえ! 猫パンチはまじで勘弁っす! はいぃい!』


 結構たくさんカレーを作ったはずだったんだけど、あっという間に鍋は空っぽになってしまった。

 それどころか……。


「おなかすいたぁ」「なんだか物足りないよな……」という人が出てくる始末。


 ご飯が食べられるくらいに元気になったのはいいことだ。

「もーちょっと、作りましょうか?」

「そうしようか、コネコちゃん」


 アメリアさんと意見が一致する。おなかを空かせた獣人たちを放置なんてできないもの。

「くぁ……」

『【ねー、まだ出発しないのー?】いや、ほら獣人さんたちにご飯を作るって流れなんで』

「ふにゃ」

『【そいつらに優しくして何かメリットあるわけ? 時間の無駄じゃあない】いやまあ、ましろ様の言いたいことはわかりますけど、困ってる人放置するのは寝覚め悪くないです?』

「にゃむ……」

『【知らん】ええー……』


 まあ、ましろからすれば私たちのやってることは無駄に見えるのかも。そりゃそうだ。彼の興味は私にしか向いていない訳だし。

「ましろたん、もうちょっと待っててくだしゃいね」

「にゃふん」


 ましろがこくんとうなずく。そして目を閉じた。待っててくれるらしい。ごめんね、と私はましろの背中を撫でる。

「それじゃ、また花鹿とりにいきましゅ?」


 そのときだった。

 ガササッ……!

「! 花鹿でしゅ!?」

「エサのにおいを嗅ぎつけてきたか……! しかも……くっ! 数が多い!」


 複数体の花鹿が私たちを囲っていた。私はすぐに結界を展開しようとして……。

「殿下を守れー!」「うぉー!」「狩りじゃあ……!」

「「へ……?」」


 獣人さんたちが、花鹿に果敢に飛びかかったのだ……!

「駄目だ! 花鹿は獰猛な獣なのだ! 君たち一般人では……」


 アメリアさんが止める前に……。

 がぶりっ!

 ドサッ……!

「「は……?」」


 獣人さんの一人が、花鹿の首筋を噛みちぎったのだ……! えええええええ!?

 花鹿はどさりと倒れてしまう。え、え、えー!? 一撃?!

「ば、馬鹿な……ベテラン冒険者でも手こずるような相手を……一撃で……?」

「うぉー! 殿下を守れー!」「ぶっとばせー!」「てめこのやろぶっころぉおおおす!」


 獣人さんたちが次々と花鹿に襲いかかる……。絵面としてはオオカミ複数が鹿に襲いかかっている感じだ。……まあ、オオカミっていうか子犬なんだけど。

 てか、みんな……強くないっ?

『獣人は人間よりパワーがありますけど……さすがに強くなりすぎですねぇ』

『……寧子さんの力でしょうね』


 あ、ステータス向上されてるんだっけ、今……。なるほど。元々のパワーに聖女のバフが加わった結果、花鹿を一撃で倒せるくらい強くなったのか。

「恐るべし……聖女様のバフですわ……!」

「いや、あの……はい……」


 恐ろしいのは獣人さんたちの意外な好戦性だと思うんですけどね……。あんなラブリーな見た目でデカい鹿に襲いかかってるところを見ると、ちょっと怖いんですけど……。


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★新連載です★



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『捨てられ聖女は万能スキル【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』

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