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【書籍化】転生幼女は愛猫とのんびり旅をする【2巻12/10発売!】  作者: 茨木野


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55.聖女カレー



 アメリアさんが料理を完成させた。


『ふぃ~。ちゅかれた~』


 霊体状態の愛美さんが、汗を拭いながら言う。……霊体って汗かくんだろうか。


「愛美しゃん、貞子しゃん、治療お疲れしゃまでしゅ」


 二人は霊体状態で治癒スキルを使い、怪我している獣人たちを治してくれていたのだ。


『……重傷者を優先的に治しましたので、まだ軽傷者の治療は終わってないです』

『つっても、応急処置は済ませてるんで、まあ今は大丈夫かなぁって』


 なるほど……。よく見ると、たしかにさっきよりも大勢の子犬たちがそこにいた。


『アジトにめがっさ閉じ込められてましたよー。これは大規模な拉致事件ですな』


 ましろがフフンと鼻を鳴らしている。どうやら私がいない間に檻を壊してくれていたらしい。ちゃんと仕事はしてくれる猫ちゃんである。偉い偉い。


「とりあえず、おなかしゅいてるでしょうし、ご飯にしましょう」


 みんな目に見えてガリガリだった。


「お願いします。話を聞いたところ、みな何日もまともに食事にありつけてないようですし」


 やっぱり食事が最優先だ。私たちは手分けしてカレーを器に分けていく。


『ふと思ったんですが、子犬になった獣人にタマネギって大丈夫なんでしょうかね?』

『……そういえばタマネギ中毒とか、あるみたいですね』


 人間は食べられても動物ペットが食べられないものはある。だから……。


「大丈夫でしゅ! えいっ、【浄化】!」


 アメリアさんが作ったカレーに、私が浄化スキルをかける。


 手のひらから出た光が粒子となって、鍋に降りかかった。


「これで……中毒物質を浄化しましたでしゅ!」


『いやそれ大丈夫なんですか……?』

「鑑定!」


~~~~~~

・聖女カレー

→誰でも美味しく食べられるカレー。

栄養満点。聖なる力も満点。

~~~~~~


 誰でも美味しく食べられるとあるので、大丈夫……だと思う。


『って、ああ! ヨル様が顔を鍋につっこんでます!?』


 ヨルがペロペロとカレーを舐めている。アメリアさんが慌てて抱きかかえた。


 ぺロリ、とヨルが自分の口の周りを舌で舐める。鑑定では食べられることが保証されているが、味はどうだろうか……。


「どうでしゅか?」

「う~~~~~~~……」

「う?」

「ひゃぁあああああああん!」


 ヨルが両腕を上げて吠える。ぶんぶんぶん! と短い尻尾が残像を作る勢いで揺れていた。


『【おいC】だそうです』


 体調も問題なさそうだ。フェンリルでOKなら他の獣人さんたちも食べられるだろう。


「ふにゃー! しゃー!」

『【ちょ、あたしにも食べさせなさいよ! はやくー!】だそうで……。ましろ様、まずはおなか空かせてる獣人たちが優先ですよ』

「しゃー!」

『【仕方ないわね! サンドバッグ殴って空腹を紛らわせるわ】って、もしかしてそのサンドバッグって……あっあっあっ、聖女! あたしは聖女なんですよ!』

「うにゃー!」


 ましろはサンドバッグ愛美さんとじゃれていた。愛美さんは霊体で実体がなく、カレーを小分けする手伝いができない。だから、ましろの相手をしてもらうしかない。お願いします。


 私はアメリアさんと一緒にカレーを器に分ける。シュナウザーさんと貞子さんは列の整理をしていた。


「はい、どーじょでしゅ!」


 カレーを注いで獣人さんの前に差し出す。


「な、なんですかこれは……一体……かいだことない香り……」


 獣人さんは未知なる食べ物に躊躇している。無理もない。こんな茶色い液体の食べ物は異世界こっちにはないだろう。


 するとシュナウザーさんが前に出る。


「わたくしが先に食べますわ!」

「! わかりましゅた」


 毒味役を買って出たようだ。毒はないんだけど。


「王女殿下……大丈夫かしら……」

「あんなの食べられるの……?」


 王女シュナウザーさんの動向を、獣人さんたちが見守っている。その中でシュナウザーさんがぺろり、とカレーを舐めた。


「う……!」

「「「う?」」」

「美味いですわぁ……!」


 ぶんぶんぶん! とさっきのヨルと同じように尻尾を振る。


「こんな美味しいもの初めてですわ!」


 がつがつと夢中で食べ進める。


「殿下、なんともなさそうだ……」

「殿下に毒味なんてさせてしまい、恥ずかしいわ……」

「お、おれも食うぞ!」


 他の獣人さんたちも食事を口にする。


「んほー! うまい!」

「なんだこれはっ!」

「スパイスがきいててちょーおいしいー!」


 長い監禁生活で疲弊していたはずなのに、一口食べると暗く沈んだ表情に光が差した。


 みんな美味しそうに、がつがつとカレーを食べている。お口に合ったようでよかった。


「なんだか身体が軽くなった気ぃするな」

「ああ、さっきまで凄いだるかったのに!」

「ぅおおおお! みなぎってきたぁああああああああ!」


 ……あれ? 食べ終わった獣人さんたちが遠吠えしている……?


 さっきまでボロボロだったのに、今は毛並みがつやつやで、痩せ細っていた体も元通りになっている……!


 それだけではない。


「身体の痛みが消えた!?」

「すんげえ……! まったく痛くねえよ!」

「見て、さっきまで足がいたかったのに、ほら……!」


 子供らしき獣人が、ぐるぐると元気に走り回っている。あ、あれ……?


 いくら食事をしたからといって、さすがにここまで元気になるのはおかしいのでは……。


「か、鑑定!」


 シュナウザーさんを鑑定してみる。


~~~~~~

シュナウザー・ネログーマ

【状態】

全ステータス向上、無敵(一時的)

~~~~~~


 ……はいぃ?

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★新連載です★



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『捨てられ聖女は万能スキル【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』

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