50.正体
ましろパワーで、シュナウザーさんも、愛美さんや貞子さんといった霊体の聖女の姿を見えるようになった。
アメリアさんの馬車は、順調にネログーマへと向かっている。
私の膝の上には……。
「ふにゃ~♡」
ましろがまず膝を占領してる。下顎を指でこちょこちょしてやってるのは、要求されたからだ。
「ひゃんっ! ひゃーん!」
ヨルがましろにちょっかいを出そうとする。だが牙をむいて威嚇。
『【人のリラックスタイム邪魔すんな馬鹿犬ぅ……!】だそうです。人なんですかねこの子……』
まあ普段から人様の膝やベッドを占領するので、人の意識があるのかも。神だけど。
威嚇されてもヨルは諦めず、ましろにのしかかる。
「ひゃーん!」
『【あそぼー!】だそうです。すっかり馬鹿犬キャラですねぇ~……フェンリルなのに』
どう見てもおばか子犬。でもツノ生えてるし、大きくもなれる。
「あの……」
私のそばに、お行儀よく座るシュナウザーさん。
「気になっていたのですが……ナニモノなんでしょうか?」
ついに来た。やっぱり聞かれると思った。
白い猫ちゃん、一体何者なのか、と。
「コネコさんはナニモノなんですかっ?」
「はぇ……? わたしでしゅかぁ~?」
こくこくこく、とシュナウザーさんが何度もうなずく。
……確かに不自然だ。聖女二人と仲良くして、不思議パワー持ちのケモノ(ましろ)を従えている。
じゃあお前は何者なんだ? と疑われるのは当然だった。
うかつ……。どうしよう。聖女だってことは隠したい。
「しょの……旅の調教師なんでしゅ。そして、このましろたんは……バステトっていう神獣なんでしゅ!」
ましろがすごい、ってことにしておいた。神獣を従える調教師なら筋が通る。聖女たちとも、ましろを通じて知り合ったことにすればいい。
「バステト……!? 神獣のですか!?」
さすがに知ってるか。
「ふにゃん」
ましろは膝の上でどや顔。
『【そうよ。あがめてもいいわ。あんたは特別】だそうです。シュナウザーちゃんのこと気に入ってるみたいですね』
「にゃー」
『【いい匂いするしねー】……なるほど匂いですか』
「みゃっ!」
『【ま、ヤスコにはかなわないけども!】なんでもかんでもヤスコにゃんファーストなんですねぇ』
説明で納得したのか、シュナウザーさんは姿勢を正した。
「あの、ましろ様」
「ふにゃ?」
尻尾を「?」の形に曲げるましろ。
「わたくしの呪いを、解くことは可能でしょうか?」
シュナウザーさんは呪いによって子犬姿にされている。
神獣なら解除できると思ったのだろう。
「じっしゃい、どーなんでしゅ? ましろたん」
「ふにゃ」
『【できるわ】と』
できるんだ……!
「じゃあ、やってくだしゃい」
気の毒だし、犬姿のままじゃかわいそうだ。
私だって幼女姿でちょっと嫌なのに。犬ならなおさらだろう。
「みゃ」
『【ヤスコの頼みならやってもいいけど……あたし大雑把だから、手元狂って首狩りしちゃうかも】って』
こわっ……!
「く、首狩りって……どういうこと?」
『爪で呪いを断つ……祓う技らしいですね』
なるほど、呪いの根本を切断する方式か。
『ましろさまは強大な力を持つ反面、繊細な制御は苦手。子犬ちゃんの呪いのような細かい作業は無理とのことです』
ましろの言葉を、愛美さんが翻訳してくれる。助かる。
「わたしや、愛美しゃんの力でなんとかできないんでしゅ?」
『これ、永続タイプの呪いっぽいです』
ものしり聖女の愛美さんがシュナウザーさんを見て言う。
『永続タイプだと、術者――つまり呪いをかけた本人を倒すしか解除方法がありません。治してもすぐ戻ります』
つまり浄化しても効果は一時的。
ましろなら祓えるが、失敗すれば命の危険。
……死者蘇生の力もあるけど、それを使えば目立ちすぎて、聖女バレするかもしれない。
「ごめんなしゃい。結局、ネログーマに行くまでは、呪いとけしょうもないでしゅ」
「あ、いえ! コネコさんが謝る必要ないですわ! 悪いのは呪いをかけた人物、拉致した人物らなので……」
それはそうだ。
だが、一体誰が呪いをかけたのか。ネログーマに着いたら調べねばなるまい。
獣人の国でのんびりする予定だったのに。やることがどんどん増えていく……。
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