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【書籍化】転生幼女は愛猫とのんびり旅をする【2巻12/10発売!】  作者: 茨木野


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49.痛い子



 ヨル、でっかくなって、大暴走しちゃった……。


「ふー! しゃー!」


 馬車の中にて。

 ましろが、てしてしてし! とヨルの頭を猫パンチしていた。


『【あんた! うちの! ヤスコに! 何危ないことしてんのよぉ!】と、怒り心頭のましろ様ですね』


 愛美さんが、ましろの言葉を翻訳している。危ないこと……つまりは、私を乗っけて大暴走したことだろう。

 ほんと、危なかった。危うく振り落とされるとこだったし……よく無事だったな……。


「ひゃうん? ひゃんひゃん!」


『【どうしたの? あそぼあそぼ!】ですって……アホ犬丸出しですぅ』


『……しょぅがないですよ。ましろちゃんより、幼いみたいですし』


 貞子さんの言うとおりだ。赤ん坊なのだから仕方ない。仕方ないけど……。


「加減してほしいでしゅ」


「ひゃん!」


『【あそぼ!】だそうです……かまって欲しいみたいですね』


 ヨルが私の膝の上に足をのっけて、ぶんぶんぶん! と尻尾を振っていた。……遊んで、か。赤ちゃんなのに親から引き離されてるんだよね、この子。そう思うと不憫に思えてきた。


「何してあしゅぶ?」


「ひゃん!」


『【遊ぼ!】ですってぇ。やすこにゃんにお任せなのでは?』


 といっても遊具みたいなものなんてないしなぁ。

 あ、そうだ。私は両手を広げる。


「結界」


 私の目の前に、野球ボール状の結界が出現する。


「そーれぃ」


 私は結界ボールを転がしてあげる。するとヨルは「ひゃぁ~~~~~~~~~~~~~~~~♡」と嬉しそうに追いかけた。

 ボールに追いつくと、かじかじと夢中でかじっている。


「とってこーい」


「ひゃん!」


 ぴゅーん、とヨルがボールを加えて、私のもとへやってきた。

 よしよし、良い子。と私はヨルの頭をなでる。


「うにゃー!!!!!!!!」


 ぺしーん! とましろがヨルに猫パンチした。


「ど、どうしたんでしゅか、ましろたん?」


「しゃー!」


『【あたしのヤスコに、なーになでなでしてもらってんの!? 誰の許可とってるの!?】焼きもち焼いてるみたいですねー、かわいい~』


 ああ、なるほど……。ましろもかまって欲しいわけか。

 私はもう一つ、ボールを作り出す。


「ほら、ましろたん。ボールでしゅよ~」


 ころん、とましろの前に結界ボールを転がす。


「にゃふん」


『【こんなん赤ん坊のおもちゃでしょ?】って、言いながら、ましろ様ていていしてますねー』


 ましろがボールを腕で転がしている。お気に召してくれたようだ。


「ひゃん!」


 一方でヨルはボール投げを所望。私はボールを軽く転がす。

 ヨルがそれを追いかけていく。へ、平和だ……。


『それにしても、やすこにゃんはたいしたものですね』


 と、愛美さんが感心したようにつぶやく。


「どーゆーことでしゅか?」


『前にも言ったかもですが、結界の形態変化ってかなりの高等テクなんですよ。しかも、結界の場合は小さくするほど難易度が跳ね上がる。それこそボールにするなんて、ちょームズい』


 へえ……そうだったんだ。さすが愛美さん、先輩聖女なだけあって物知りである。


『……それにわたくし気になったんですが』


 と貞子さだこさんが言う。


『……結界って構築に魔力が必要でしたよね? 寧子やすこさん、結界いっぱい使ってるのに、全然疲れてる様子がないのが気になりました』


 たしかに結界構築、維持には魔力がいるなら、もうかなり消費しててもおかしくないのに。全然疲れてない。


『神と契約してるから、魔力量も半端ないんでしょうねー。さすがやすこにゃん!』


「にゃるほど……」


 と、そこで気付いた。シュナウザーさんが、こちらをじっと見つめているのである。


「どーしました?」


「あ、いえ……」


 ……? シュナウザーさんが、気まずそうに目をそらす。


「ち、小さい子は……よくしますもんね……。だ、だから変じゃあないですわ……」


「変……?」


「ああ、いえ! なんでもありませんの!」


 ……? どうしたんだろう。小さい子はよくするとか言ってるし……。


「どうおもいましゅ? 愛美しゃん、貞子しゃん」


「……!?」


 びくぅう! とシュナウザーさんが身体をこわばらせる。


『そですねー、車酔いとかです? あたしも現実世界にいたころはよくしてましたし!』


「なるほど……車酔いでしゅか……」


「っ!?」


 びくびくぅ! とシュナウザーさんがまた身体をこわばらせていた。あれぇ……? なに怖がってるんだろう……。あ!


「ああっ! も、もしかして……シュナウザーしゃん、愛美しゃんたち見えてない!?」


 そうだった! 愛美さんたち、霊体だったんだ!(本体は魔神の鞄の中)。

 え、つまりそれって……。シュナウザーさんから見たら、私、虚空に話しかけるやばい女に見えていたってこと……?

 それは、びびるよね!


「ご、ごめんなしゃい! シュナウザーしゃん! あのその、実は旅の仲間がいるんでしゅ!」


「そ、そうなんですわね……あはは、わ、わたくしも小さいときは居ましたよ……あはは……」


 この人、私がイマジナリーフレンドと遊んでいるって思ってる!?

 いい年した女なのに、私……! いやでも見た目幼女だった!


「えーっとえーっと……ほんとなんでしゅ。ま、ましろたーん!」


 ヨルをてしてし、と猫パンチしてるましろに、私は言う。


「愛美しゃんにしてるように、パスを、シュナウザーしゃんにもつないであげて!」


「ふにゃ」


『【めんど】だそうです』


 ああもうほんと猫! 気まぐれなんだからっ。

 私が痛い子って思われるの、すごい嫌だ。でもそれ以上に、シュナウザーさんを怖がらせたくないのである。


「ほーら、ゴロゴロゴロゴロ」


 ましろのご機嫌をとるため、顎下を指でなでる。


「にゃふん♡ にゃー♡」


『【このあたしがぁ♡ こんなことで言うこときくわけないんだからねぇ♡】って言いながら、霊糸のばしてますね』


 ましろの尻尾が伸びていき、くるん、とシュナウザーの足に巻き付く。


「! ゆ、幽霊ぃ!?」


 霊体だけで外に出ている愛美さんと貞子さだこさんが、見えるようになったようだ。


『ども! 聖女愛美です☆ やすこにゃんの友達1号!』


『……聖女貞子です。寧子さんのお友達です』


 二人が霊体で挨拶をする。


「す、すごいですわ……! ヤスコさんって……幽霊とお友達だったんですね!」


 シュナウザーさんが近付いてきて、尻尾ぶんぶんしている。


「さっきまでごめんなさいですわ! 幽霊と話す痛い子だと思ってましたの!」


 ああ、やっぱりそうだったんだ……。


『やすこにゃんは痛い子じゃあないですよっ。こう見えても凄い幼女なんですからねっ。えっへん』


「しゃー!」


『【おまえがなんで得意げなのか!】ですって? いやそれはほら、自慢の友達ってことですよぉ~』


「ふにゃ」


 ならよし、とばかりにましろがうなずいている。そこにヨルがのしかかる。


「しゃー! ふしゃー!」


「ひゃんひゃーん♡」


 ……いつの間にか、賑やかになっていたなって、改めて思ったのだった。

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『捨てられ聖女は万能スキル【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』

― 新着の感想 ―
一応妖精やら精霊やら要る世界なんだから、イマジナリーフレンドじゃなくてそっちの可能性考えてやれよなと。
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