48.バカ犬ぅ
フェンリルのヨル、獣人のシュナウザーさんとともに、ネログーマへと向かう。
ヨルは国の守護獣だ(こどもだけど)、速く国に……お母さんのところへ、返してあげないと。
「ふにゃん」
『【敵に囲まれてるわ】ですって! やすこにゃん!』
ましろが、猫のひげ(レーダー)で、敵の存在を教えてくれた。
アメリアさんにその旨を伝えると、馬車を止めてくれた。
「あたしが行こう」
「わたしも戦いましゅ!」
「いや、大丈夫だコネコちゃん。君の力はその……必要ない。大きすぎる力だからね」
……アメリアさんの額に汗がかいてた。思い起こされる……私のやらかしの数々。
たしかに、火遁スキルなんてこんなとこで使えないし。
「ふにゃー」
『【雑魚の相手なんてしないわー】ですって。ましろ様がそんなにやる気になってませんし、そこまで強い敵ではないのでしょうか』
なるほど……。
となると、アメリアさん一人で行った方がいいかも。
「ひゃん!」
「ん? どうしたんだい、ヨル様?」
「ひゃひゃん、ひゃん!」
ヨルの言ってることは、私には理解できない。ちら、とましろを見やる。
「ふにゃー」
『【背中にのりなー!】だそうですって』
ヨル→ましろ→愛美さんの順で、言ってることを翻訳してもらう。ややこいな……。
「ありがとう。その気持ちだけ受け取っておくよ、ヨル様」
アメリアさん大人だから、赤ちゃんフェンリルの背中には乗れない、とは言わなかったようだ。
たんっ、とアメリアさんが御者台から降りて、走って行く。
……一人で大丈夫、だよね。でも……なんだか心配だな。
「ひゃうん?」
『【子猫ちゃんも心配なん?】』
こ、こね……?
「愛美しゃん、なにその台詞……」
『だ、だってそう呼んでるんですよぉ~』
そうなんだ……。
私はヨルの頭をなでながら言う。
「うん、ちょっとだけ、心配でしゅ」
「ひゃんひゃーん!」
ぴたっ、とヨルが私の手に、鼻先を付ける。そのとき……かくんっ、と少し、力が抜ける感覚があった。
ずももももももももも……!
「って、えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー! きょ、巨大化したでしゅぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?」
目の前には、黒いおっきなもふもふフェンリル(大人)がいた……!
どうなってるのこれ……!?
「ひゃんひゃひゃん!」
『【子猫ちゃんの魔力はもらった!】』
私の魔力……?
ヨルは私の首根っこをつまんで、ひょいっ、と自分の背に乗せる。
「ひゃーん!」
『【しゅっぱーつ!】って、えええええ! やすこにゃんどこへぇええええええええええええええ!?』
ヨルが、すさまじい速さで走り出すっ。愛美さんに聞かれても、わ、わからないよ……!
ヨルはまるで迅雷のように、森の中を高速で駆けていく。
アメリアさんを、とっくに追い越す。
「な、何だ今のは!?」
「アメリアしゃんたしゅけてーーーーー!」
「コネコちゃん!?」
そしてヨルはというと、そのまま走り続ける。
なんか、目の前に……魔物っぽいのが居た……!
でも!
「ひゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」
どぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!
……雷をまとった状態で、その魔物(推定)たちを、ひき殺したのだ……!
え、え、えー……。
いや、私の見間違いかも……。速すぎたし……。魔物じゃ無かったかも……。
「ひゃひゃひゃーーーーん!」
「って、どこまでいくんでしゅー!?」
ヨルは、止まらなかった……!
まだまだ物足りないとばかりに、森中を駆けずり回る!
どーん!
どーーーーーーーーーーーーーーーーん!
どーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
……やがて、馬車へと戻ってきた。
その頃には、ぽんっ、とヨルが小さくなって、ぺたんっと横になった。
「わふん……♡」
『【大満足♡】……ですってぇ』
……な、なんだったんだよぉもお。
「ヨルしゃん……目的見失ってないでしゅ?」
「ひゃう?」
『【目的? なんだっけ?】』
見失ってる……!
ただ散歩して、満足したってかんじ。ほんっと……。
「犬でしゅね!」
「にゃう」
『【馬鹿犬ヨル……】。失礼ですけど、ましろ様の言うとおりだと思いますぅ~』
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