44.事情
ネログーマへの道中、魔物に襲われていた子犬たちを助けた。
でも、その子犬は……どうやら獣人らしい。
「助けていただき、ありがとうございました……!」
ぺこりと頭を下げる子犬。
改めてまじまじと見ると、茶色とグレーの混じった毛皮に覆われていて、遠目にはモップみたいな見た目だった。
「わたくし、シュナウザーと申します」
「…………にゃ、るほど……」
名は体を表すってやつだ。
『はえー、シュナウザー。見た目、まんまミニチュアシュナウザーっすもんね。名は体を表すってことですかね』
「ましろたん」
私はましろに声をかける。彼女は魔神の鞄に頭を突っ込んで……。
『あっ、あっ、やめてっ! 猫パンチやめてー!』
とりあえず、黙らせておいた。
失礼なことを言ってはいけないのである。
「シュナウザー……」
「どーしました、アメリアしゃん?」
「いや……どこかで聞いたことがある名前な気がしてな……」
ふむ。シュナウザーって、珍しい名前なのかもしれない。
「シュナウザーしゃんは、どうして犬の姿になってしまったんでしゅか?」
「ある日突然、目覚めたらこの姿になっていたんですの。……そして、誘拐されまして」
!
……誘拐!?
『……なるほど。犬の姿にしたほうが、拉致しやすいですものね』
と、貞子さんが言う。
『確かに、人間の姿のままだと運ぶの大変ですしね。やすこにゃんみたいに魔神の鞄でも使えれば別ですけど』
たしかに。愛美さんの言う通りだ。
なるほど……そういうことか。
「拉致された後は?」
「犯人によって、この場所に捨てられました。……どうやら、わたくしたちを魔物に殺させようとしたようです」
そして、そこに私たちが通りかかった――
そういうことだったらしい。




