42.救いを求める声
【書籍化お知らせ】
本作、書籍化が決まりました!
ありがとうございます!
7/10発売です!
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https://books.tugikuru.jp/20250608-36135/
私とアメリアさん(with 聖女ズ&ましろ)は、獣人国ネログーマへ向かっていた。
獣人たちの暮らす、平和な場所らしい。
「獣人しゃんかぁ~。どんなんでしょうねぇ~」
膝の上にいるましろに話しかける。
「にゃふん」
『【どーでもいいわ】ですってぇ』
愛美さんがましろ語を翻訳してくれる。
魂で繋がっているので、言葉がわかるのだそうだ。すごい。
「獣人しゃん……ぜったい可愛いんだろうなぁ~……」
生で見たことはないけど、アニメだと人間の姿に犬や猫の耳がついてたりして……。
「うふふ、絶対かわいい~」
「しゃーっ!」
『【ヤスコ、アタシ以外に可愛いって言うの禁止!】ですって』
……焼きもちを焼いてるらしい。ましろたん、可愛い。
「もちろん、ましろたんが一番かーいーですよぉ~♡」
「みゃん♡」
『【ま、とーぜんね♡】ですってぇ。なんという自信過剰……あっ、パンチ禁止! 猫パンチ禁止! 目を狙わないで目をぉぉ!』
とまあ、そんな感じで愉快に旅をしていたわけなんだけど──
途中から、空模様が本格的に怪しくなってきた。
「なんか……ずっと雨、降ってないでしゅか?」
「うむ……」
外套を着たアメリアさんが、空を仰いで眉をひそめる。
「おかしいな。時期的に雨が降るはずではないんだが……」
『確かに。ネログーマには雨季がありますが、今はそれとは外れてるはずです』
昔、旅していたことのある愛美さんも頷く。
状況が変わった可能性もあるけど──違和感を覚えるふたりが言うなら、きっと何かあるのだ。
『……あの、寧子さん』
ふと見ると、私の隣に、霊体状態の貞子さんが現れていた。
「貞子しゃん、霊体になれるんでしゅか?」
『ええ。幽体離脱を覚えました。霊体でいた期間が長かったからでしょうね』
「しゅごい……」
私にはできないスキルを、またひとつ持っていた……。
「それで、どうしたんでしゅか?」
『使い魔を先行させて偵察しました。この先の森で、魔物同士の縄張り争いが起きているようです』
確かに、進行方向の先に深い森がある。
街道はその森を突っ切る形になっていた。
『そのまま突っ込むのは危険ですぅ』
「私もそう思う。引き返すか、争いが収まるのを待つのが無難だな」
うーん……どうしようか、と考えたそのときだった。
【助けて……! 誰かぁ……!】
──はっきりと、私の耳に、助けを求める声が届いた。
「……今の、なに?」
『? 何か聞こえましたか?』
貞子さんもアメリアさんも首をかしげている。
唯一、ましろだけが、こくん、と頷いた。
「ましろたん、聞こえましたよね?」
『うにゃ、にゃーん』
『【聞こえたわ。たぶんあたしが拾った声を、ヤスコが共有したのよ】ですって』
共有……?
『従魔は五感を共有できるんですよぉ』
なるほど……。
ましろは猫(猫の神様だけど)だから、人間よりずっと耳がいい。
そのましろが聞いた声が、従魔契約している私にも届いた──というわけだ。
「どうする?」
「助けを求めてる人がいて、ほっとけないでしゅ!」
「私も同意見だ。行こう……!」
私たちは、森の奥へと向かうのだった。




