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【書籍化】転生幼女は愛猫とのんびり旅をする【2巻12/10発売!】  作者: 茨木野


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エピローグ



 最高神さまに力を貰った私たちは、ノォーエツへと戻ってきた。

 私、愛美さん、貞子さん、そして……アメリアさんの女四人がぞろぞろと歩いてる。


 ……列の一番後ろを歩く、貞子さんが、足を止める。


「どうしたんでしゅか?」

「……わたくし、やっぱりこのパーティに入るの、やめようかなと」


「えー!? どうしてですか~? 皆で楽しく旅をしましょーよー!」


 愛美さんがそういう。私も、アメリアさんも同意見だ。

 せっかく仲良くなったのだから、皆で旅したい。


「でも……わたくし、絶対に皆さんに迷惑かけちゃいますし……」


 と、やけに確信を持って、そういう貞子さん。


「サッちゃん大丈夫だよ! 迷惑なんてかからんて。なにせ、わたしをはじめとした、すんごいメンツがこのパーティにそろってますからね! 何かトラブっても、余裕っしょぉ!」

 

 まあ、そうなんだけど……。

 なんだろう。私の胸に、モヤモヤのようなものを覚える。


「ふなーお」

「え?【おまえがしきるな】ですって。ままま、いいじゃーないですか~。わたしはこのパーティの、ムードメーカーなんで!」


 確かにそうだけど、それを自称するのはどうなんだろうか……。


「てかてか、サッちゃんは何を気にしてるんですかぁ?」

「……わたくしが、その……あまりよろしくない存在なので」


「聖女だからってこと? だーいじょぶだいじょぶ! そーゆーならわたしもやすこにゃんも聖女ですし! 皆で隠せば怖くないってねー」


 愛美さんが先に進んでいってしまう。

 貞子さんは、いったい何を気にしてるんだろう……?


 聖女ってこと……?

 でも……なんか違うような……。


「へいへい! みんな! 街の中にはいりますよーう!」


 ノォーエツの門番の前に、愛美さんが立っている。

 あの人、身分証明書ないのに、どうやって入ろうとしたんだろうか……。


 まあ、私たちギルド証持ちが、身分を証明すれば良いみたいだけども。

 

「いきましょ、貞子しゃん」

「……は、はい」


 私たちが門番さんの前へとやってくる。

 お年寄りの、門番さんだ。


「おお、珍しい。女性の四人旅ですかの?」

「そーなんです! ここには補給と、あとギルド証を作りにっ」


 ああ、そうか。愛美さんと、貞子さんの分のギルド証を作らないと。

 この後冒険者ギルドにいかないとなぁ……と。

 

 のんきに思っていた、そのときだ。


「きぃいえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」


 ……お、おじいさん門番が、大声を上げて、腰を抜かしたのだ。


「ふぇ? な、なんですかぁ?」

「あ、あばばば……あ、あ、お、お、おまえは! さ、【災禍の聖女】ぉ!」


 災禍の……聖女……?

 おじいさん門番が指さす先に居るのは……貞子さだこさん。


 あ!?

 そ、そういうことかっ。


 貞子さんは、テイマーの力で、魔物操り、人を襲わせていた。

 そして処刑されたといっていた。


 貞子さんが活躍していた時期は、先王の時代。

 貞子さんが死んで、まだ……そこまで時間が経っていない。

 

 ……つまり、この時代において、貞子さんを覚えてる人がいる!


「あば、あばば、ばか、バカな! 災禍の聖女は、しょ、処刑されたはず!? ななな、なのにどどどど、どうしてぇええええええええええええ!」


 ……なるほど、貞子さんはこの事態を、恐れていたんだ!


「貞子しゃん! はしりましゅよ!」


 私は貞子さんの手を引いて、街の中へと走り出す。


 愛美さん、アメリアさんも後から着いてくる。

 ……人気の無い、路地裏へと移動。


「はあ……はあ……あぶなかったですぅ~……」


 ぐったりとその場にしゃがみ込む、愛美さん。


「……ごめんなさい。こうなることが、予想できていたので」

「そーゆーことは早く言ってくださいよぉ……あいたたっ」


 ましろが愛美さんに猫パンチ食らわせていた。


「ふにゃ!」

「【言ってたでしょうがっ】た、確かにそうですけどぉ……」


「しゃー!?」

「【おまえが話し合いするまえに勝手に街に入ったのがいけないんでしょ!?】お、おっしゃるとおりでぇ~……」


 貞子さんが深々頭を下げる。


「……本当に、ご迷惑をおかけしてすみません。やっぱりわたくし……パーティを離れます」


 ……そんなの、やだ。せっかく仲良くなれたのに。

 そうだ!


「貞子しゃん、手ぇ貸してくだしゃい」

「手……?」


 私は貞子さんの手を握る。

 ……彼女の肉体は、最高神さまが作った、結界を変形させたもの。


 ならば。

 ぐにゃり……と貞子さんの姿が変化する。


 髪の色は、紫色へ。

 髪の毛はサラサラになって、おでこを出す。

 基本は髪を変えただけ。でも……わぁ!


「やっぱり! 貞子しゃん、ちょー美人でしゅね!」


 本当は顔の形も変えた方がいいかと想った。

 けど、髪型変えるだけで、まったくの別人になっている。これなら、だれも災禍の大聖女だって、気づかないだろう。


「すごいです、寧子やすこさん……。結界にくたいを変えて、変装させてしまうなんて」

「っぱやすこにゃんは結界術の天才ですぅ~!」


 よし、一応オッケーかな。


「これで旅、できましゅよっ」

「……ありがとう、寧子やすこさん」


 きゅっ、と美人になった貞子さんが、私を抱きしめる。

 おっぱい……おっきいな……。


「これでもう大丈夫ですね! 今後は騒ぎを起こさないように、注意すること。いいですね、サッちゃん」


「ふしゃー!」

「【おまえも気をつけろよ!】ですって。おほほ、だーいじょうぶですよぅ。わたしは、騒ぎなんて起こしませんって、絶対、100%、確実に!」


 ……本当だろうか。

 アメリアさんも私もジト目になる。


「まじまじ。だって、サッちゃんと違って、わたしが活躍していた時代は、だいぶ昔! わたしのことを覚えてる人はゼロですよぅ!」


 ……まあ、そうか。

 今回みたいな事態には、ならないか……。


「そんなことより! わたしとサッちゃんの冒険者登録サクッとしちゃいましょ?」


 冒険者登録は、偽名でできる。

 貞子さんは顔を変えてるので、あとは名前を変えれば、ギルドに登録できるはず。


 私たちは冒険者ギルドへと移動する。

 中は、ざわついていた。


「おい聞いたか?」「ああ、災禍の大聖女が、どうやらいたらしいぜ?」「まじかよ……とんでもなく恐ろしい女なんだろ?」


 ……どうやらもう、災禍の大聖女の噂は広まってるようだ。

 早いところ、冒険者登録を済ませ、買い物をし、街を出る必要があるな。


「ひゃっはー! 帰ってきたかぁい、お嬢ちゃん!」

「あ、世紀末しゃん」


 モヒカンで巨漢の先輩冒険者、世紀末さんが話しかけてきた。


「薬草は拾ってこれたかぁ? 帰りが遅いから心配したぜえ?」

「あ、しょうだった」


 私たち、薬草拾いクエストの途中だったんだ。


「ご心配おかけして、申し訳ないでしゅ。無事拾えました」

「おお! そりゃあよかった! 無事に仕事を終えられてベリーグーだぜええい!」


 うーん、いい人。

 世紀末さんと別れた私は、受付へと向かう。

 薬草を、受付に納品。


「素晴らしいです。こんなたくさん薬草を集めるなんて! 初日でここまで集められたのは、あなたが初めてですよっ!」


 と、めちゃくちゃ褒められた。

 そして、報酬を貰った後、受付嬢さんに言う。


「あの、新しく冒険者になりたい人たちがいるんでしゅけど」

「はいはいはーい!」


 愛美さんが手を上げる。貞子さんも小さく手を上げる。


「了解しました。念のため聞きますが、以前冒険者だったことはありますか?」


 あ、そういえば私たちが登録するときにも、聞かれたっけ。


「……わ、わたくしはないです」

「わたしも無かったですよぉ!」


 そうですか、と受付嬢さんがうなずく。


「念のため、お調べしますので、こちらの魔道具に手を載せてください」


 タブPCみたいな魔道具を出してきた。


「この魔道具には、冒険者となったかたの魔力が登録されております。以前ギルド登録されたかたなら、反応があるはずなので」


 ……あれ?


「私たちのとき、そんなの調べなかったですよ?」

「申し訳ありません。ついこないだ、二重登録が発覚した事例がありまして。ギルド本部から、以前の登録を確認するように、通達があったのです」


 私たちが登録した後に、そういう事件があったから、ちゃんと事前に登録が無いか確認したいってことらしい。


「なーんですかそのアホなひとは~? 自分が冒険者に登録したことを、忘れるとか、とんだお間抜けさんもいたものですねえ。ぷぷぷー」


「愛美しゃん、あまりそう言うこと言わないほうがいいでしゅよ。自分だって同じことしゅるかもしれないんでしゅし」


「わ、わたしは大丈夫でーす。そーんなお間抜けなことしませーん」


 ぺたり、と愛美さんが魔道具に手を置いて、魔力を流す。


 びーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!


「ふぁ!?」


 え、エラー音性が流れた……。え?

 ま、まさか……。


「し、失礼します。登録……ありますね……って!? こ、ここ、この名前はぁ……!?」


 ……なんだろう。とても、嫌な予感がする……。


「さ、サクダイラ・アイミ……さま!? え、えええ!? 嘘!? あ、あの……伝説の!? 沈黙の大聖女さまぁあああああああああ!?」


 ……愛美さんの、バカぁ……!

 この人、大昔にも、ギルドに登録してたのではないか……!


 愛美さんは、いにしえの時代に、困っている人たちを助け、沈黙の大聖女としてとても有名なのだ。


 確かに、この世界に、愛美さんが生きていたときのことを、覚えてる人は居ない。

 でも……彼女の名前、そして何をなしたか、その伝説は……残っている。


 ……そして、ギルドに登録してたとなると……。


「え、ええ!? な、なんで亡くなられた沈黙の大聖女さまが……え、ええ!?」


 私は……愛美さんの手を引いて、ギルドから逃げる。


「世紀末しゃん! さよなら!」


 もうここには居られない……!

 私たちは急いで、ギルドから出て行こうとする。


「お、おい待てよ!」「沈黙の大聖女さまがなんでここに!?」「話を聞かせてくれぇえい!」


 わ……! とギルドの皆さんが、私たちに詰め寄ってくる。

 が。


 ガシィイイ……!


「世紀末しゃん!」


 世紀末さんが、両腕を広げて、ギルドの人たちを受け止める。


「じゃあなぁお嬢ちゃん! 達者でくらせよぉ! ひゃっはー!」


 ……ああ、ほんと。

 この人は最後の最後まで、いい人だ!


「ありがとぉ! またどこかで!」


 私たちは逃げる。まるで、犯罪者のように、ドタバタと走りながら街を抜ける。


「ああもぉ! 愛美しゃんのバカー!」

「ふしゃー!」

「ひぅう! ごめんなさぁああああああああああい!」


 ノォーエツの街から逃げる私たち。

 隣を走るましろが、「ふにゃあ」と鳴いた。

「【ヤスコ楽しそうね】ですってぇ……」


 楽しそう……?

 私は自分の口元に手を当てる。……ああ、確かに、私は笑っている。


 なんでかな? って想って……すぐに気づいた。


 愛美さん、貞子さん、アメリアさん……。そして、ましろ。

 仲間が、いるからだ。


 ……ここへ来る前、私はひとりぼっちだった。愛猫しか、友達が居ない。そんな暗くて辛い日々だった。


 ……でも、異世界に来て、私にはたくさんの仲間ができた。

 私はこれからも、楽しく、気ままに、この人達と旅をしよう。


 そう……私たちの冒険は、まだまだ、始まったばかりなのだ。

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★新連載です★



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『捨てられ聖女は万能スキル【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』

― 新着の感想 ―
ゲータ・ニィガは碌な事をしませんねぇー…。一度は滅んでを繰り返しますし
いつも楽しく読んでます! パーティーには1人はトラブルメーカーは必要ですね(笑) 水戸○門なら八兵衛! 相棒なら陣川さんとか! ヤスコちゃん本人が楽しそうだし良いよね〜 せっかく肉体も復活した…
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