35.愚かな先王に罰を与える
テイマー聖女、貞子さんを虐げた、先王アホカイネンを、ましろは黄泉津大神で蘇生させた。
「アホカイネン! 貞子しゃんに……土下座して謝ってくだしゃい!」
アホカイネンは、勝手に貞子さんを地球から喚びだし、彼女の恋心を利用して悪事を働き、最終的にその罪を彼女にきせて処刑した。
こんな酷いことをしたのだから、謝って当然である。けど……。
「ふ、ふん! なぜそこまでせねばならぬのだ……!」
『うわぁ……こいつ開き直りやがったですぅ……自分がもう死んでるからって……』
愛美さんがあきれてる。
「わしは国王だ! その使命は国を大きく、強くすること! わしはその使命を全うしただけにすぎない! 何も悪いことなどしていない!」
「……あんたは、貞子しゃんを地球から勝手に喚びだし、利用したじゃないでしゅか」
「それの何が悪い!」
………………は?
なにが、悪いか……だって……?
「そうとも! なぜなら召喚聖女は、この世界を救済する目的で連れてこられる異人種! ならばこの世界を救うために利用して、なーにが悪いというのじゃぁ!」
開き直ったアホカイネンが、独自の理論を展開する。
「食べられるために育てられる家畜が、最後は食べられて死ぬように! 世界救済を終えた聖女を使い潰して、なーにがわるいというんじゃあ……!」
……アメリアさんも、愛美さんも、そして……多分私も。
目の前にいる人間を、まるで、ゴミを見るような目で見ていたと思う。
「聖女召喚はお手軽な世界救済道具だよなぁ! 少ないコストで、強大な力を持った、それでいてこの世界では自活できない女が連れてこられるんだからよぉ!」
「……黙れ」
……自分でも、驚くくらい、低い声が漏れた。
そこの声には、確かな怒りが混じっているのが、自分でもわかった。
だって……。
だって、貞子さんが、泣いてるから。
……確かに貞子さんは、会ったばかりの人だけど、でも……私たちと同じ境遇の、地球人。同胞だ。
悲しんでいる同胞を、私は……ほっとけない。
そんな風に、悲しませた元凶を……私は許せない。
「ましろ。もういいや。やっちゃって」
ましろが私を見る。
「こいつに、教えてあげて。自分たちが、何を敵に回したかを」
「にゃ~~~~~~~~~~~~ぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」
ましろが叫ぶと、空が……またしても暗くなる。
空に浮かぶのは、太陽ではなく……青く巨大に光る星。
『あ、あれ……月……ですかね?』
「い、いや……! 違う! 月にしては……大きすぎる……!」
天を覆う巨大な球体。それは、よく見ると……キラキラと輝いてる。
『す、水晶です! 本物の月に匹敵するほどの……いや、それ以上に巨大な! 水晶の塊ですぅううう!』
私は、水晶の月に鑑定を行う。
~~~~~~
月は無慈悲な夜の女神
→バステト神が所有する神スキルの一つ。
月を巨大な水晶へと変貌させる。
巨大水晶は太陽光を吸収、水晶内で収束→反射を繰り返しながら、超高温化レーザーに変換し、地上にいる敵を焼く
~~~~~~
『ひいぃいい! た、太陽光を超圧縮、超高温化したレーザーを放つ技みたいですぅう!』
「ふにゃぁああああああああああ!」
『【墜ちよ……!】』
巨大な青い月から、同じく青い光が、地上へと降り注ぐ。
「ぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
圧縮された超高温レーザーが、アホカイネンの体を一瞬で炭化させる。
彼が立っていた部分の地面がどんどんと解けていく。
「痛い痛い痛い痛いぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい! あついよぉおおおおおおおおおおおおおおお!」
『お、おかしいですぅ。あんなの受けたら、一瞬で消し炭になるはずなのに……生きてるなんて……』
ましろが「ふー! しゃー!」と吠える。
『【聖女の治癒スキルを! 借りたわ!】ですって』
~~~~~~
猫の手も借りる
→バステト神のスキル。ふれた相手のスキルを一時的に借り受けることができる
~~~~~~
ましろの尻尾が伸びて、私の手にまとわりついてる。
スキル【猫の手も借りる】の効果で、聖女のもつ治癒スキルをかりて、アホカイネンに施してるようだ。
『超高温レーザーを浴びながら、同時に治癒を受けてるってことですよね……。死ぬほどの苦痛を受けているのに、死ねない。なんて……惨い……』
「ふにゃああ!」
『【これが神の使いを悲しませた罰よ!】ですってぇ』
……神罰はくだされ、アホカイネンは地獄の苦しみを味わい続ける。
「これ以上苦しみたくなかったら、謝ることでしゅ!」
「はひぃい! はひぃいいいいい! 謝りますぅうううう!」
アホカイネンが情けなく叫ぶ。
「ごめんなさぁあああああい! 貞子さまぁあああああああ! 聖女さまぁあああああああ! わたくしが悪いございましたぁあああああああ!」
私は貞子さんを見やる。
「どうしましゅか?」
『……………………』
貞子さんに、アホカイネンの処遇を決めさせることにした。
一番傷ついたのは彼女の心だし。
彼女の気が済むまでやるのが、ベストだと思う。
『もう、いいです。辞めてくださいませ』
ぱっ、とレーザーが消える。
空に浮かんでいた月が消え、暗くなった空が……元に戻る。
……目の前には、大穴が空いていた。
地獄へと続いてるのではないか、というくらい、深く大きな穴が空いてる。
月は無慈悲な夜の女神によって、体を焼かれたアホカイネン。
霊体だけとなって、空に漂ってる。
『本当にすみませんでしたぁ……。わたくしが、悪うございましたぁ~……』
ぐすぐす、と泣くアホカイネン。
貞子さんは、言う。
『……もう良いです。二度と、私の前に現れないでください』
ふっ……とアホカイネンは煙のように、跡形もなく消えた。
この後彼がどうなったのかは知らない。どうでもいい。
『……ありがとう、寧子さん』
テイマー聖女、貞子さんが、こちらに近づいてきて、頭を下げてきた。
『この胸に渦巻いていた、憎しみ、悲しみが……消えました』
ましろが、アホカイネンにレーザーをぶち当て、苦しみを与え、謝罪を引き出した。
それによって、貞子さんの溜飲が下がったようだ。
「お礼なら、ましろに言ってくだしゃい」
黄泉津大神も、月は無慈悲な夜の女神も、どちらもましろの力だ。
あのアホ王を成敗してくれたのは、猫神さまだし。
『ありがとうございました、ましろさん』
「ふにゃあん、みーゃ」
『【ヤスコに、ふかーく感謝することねー】ですって。まあましろ様はやすこにゃんファーストですから、ね』
私が頼まなかったら、ここまでやってくれてなかったってことみたいだ。
すぅ……と貞子さんの体が透けていく。
『もう……未練はございませんわ。ありがとう……皆さん……』
自分を虐げた王族に、やり返したことで、貞子さんの気は晴れたようだ。
『ありがとう。お礼に、ヤスコさんに、私の力を……』
彼女が近づいてきて、私の手を握る。
そこには、一本の巻物が握られていた。
『これは、山川社稷図。テイムした魔物を、ここに封じて置くことができます。その他にも、使い道があるので、旅にご活用ください。それと、少しですが聖女スキルの経験値をおわけします……』
山川社稷図と、聖女の力を手に入れた。
私の聖女スキルのレベルが、11になった。
『これで、もう思い残すことはありませんわ……。さようなら、心優しい猫の聖女さん……』
このまままた消えようとする……。
「待ってくだしゃい!」
「ふーにゃ!」
消えかけてる貞子さんの腕に向かって、ましろが霊体の尻尾を伸ばし、くるんっ、と巻く。
瞬間、貞子さんの体が、消滅するのが……止まった。
『あれ? どうして……。私……もう未練はないのに……』
「元の世界に、帰りたくないですか?」
『!?』
愛美さんも、そうだった。
彼女も元の世界に戻りたがっていた。
「死んで、消えてしまう前に、元の世界に、もう一度帰りたいとは思いませんか?」
『やすこにゃんなら、いつか必ず! 現実へ帰る手段を見つけることができます! 逝くのは、それからでもいいじゃあないですかっ』
愛美さんが貞子さんに近づいて、その手を握る。
『い、一緒に旅をしましょうっ』
「しゃー!」
びょんっ、とましろが愛美さんに飛びかかって、頭の上に乗っかる。
てしてしてし! と猫連続パンチを喰らわせる。
『あいたたっ。【おいしいところ、ヤスコから奪うな!】ご、ごめんなさぃ~』
私は貞子さんに近づいて、見上げながら言う。
「私たちと一緒に、旅しませんか?」
貞子さんが私たちを見つめる。
「せっかく異世界にきたのに、悲しい記憶しかないで、死ぬのなんてもったいないでしゅよ。私たちと一緒に、楽しく旅しましょう!」
貞子さんは目に涙を浮かべ、そして……私の手を取り、うなずいた。
『はいっ!』
こうして、テイマーの聖女、茶臼山 貞子さんが、パーティに加わったのだった。
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