33.闇堕ちした聖女と戦う
ゴブリンの巣穴で出会ったのは、私や愛美さんと同じ……聖女だった。
「本当に聖女であるという証拠は……?」
「【鑑定】」
~~~~~~
【名前】茶臼山 貞子
【種族】聖女(怨霊)
【レベル】ゲータ・ニィガKOろす
【HP】ゲータ・ニィガこROす
【MP】ゲータ・ニィガこROす
【攻撃】ゲータ・ニィガこROす
【防御】ゲータ・ニィガこROす
【知性】ゲータ・ニィガこROす
【素早さ】ゲータ・ニィガこROす
【加護】ゲータ・ニィガぶっ殺す
【スキル】調教、口寄せ
~~~~~~
……やっぱり、日本の名前。
私たちと同じ、召喚聖女。
しかも……ステータスから伝わってくる、強いゲータ・ニィガへの怨念。
「ど、どうしてわが国に対して、こんなにも強い恨みを抱いているのだろう……?」
『……わたしには、このかたの気持ち、わかります』
愛美さんが悲痛そうな声で言う。
……私も、気持ちがわかる。
この聖女……茶臼山 貞子さんもまた、この国の王族に、無理矢理連れてこられて、酷い目にあったんだろう。
「ふにゃあん?」
『【全員殺してしまっても構わないでしょ?】ですって。いや、いや。それは……。どうします、やすこにゃん』
愛美さんが、私に決定権を委ねてくる。
どうするか……。
この、ゲータ・ニィガに強い恨みを持つ、聖女を……。
ほっとけば、この人は多分、ゲータ・ニィガにこのゴブリンどもを向かわせる気がする。
別に、ゲータ・ニィガ王国に、義理立てる必要はない。けど……。
ノォーエツには、世紀末さんがいる。
確かに王族はクソだけど、ここに住んでいる人までクソってわけじゃあない。
だから……。
「止めましょう。あの聖女さんを」
「もとよりわたしはそのつもりだ!」
アメリアさんが剣を抜く。
わたしはましろに、お願いする。
「ましろたん、魔物を倒して。でも、あの聖女しゃんは、殺しちゃ、メッ!」
「ふにゃっ」
ましろは了承してくれたようだ。
ましろ、そして愛美さんが構える。
『殺せ! ゲータ・ニィガの人間は、ミナゴロシだ! それを邪魔するあいつらも……殺せ! 殺せぇええええええええ!』
ゴブリンの大軍が襲いかかってくる。
『数は……千や二千じゃすみませんよぉ! 少なくとも、五千はいるかと……』
「だからなんだ! ここで我等が逃げたら、魔物はノォーエツを襲う!」
アメリアさんが剣を抜いて、手近なゴブリンの首を吹き飛ばす。
「わたしは、魔物から人を守る……! 【飛燕連斬】!」
アメリアさんがまるで燕のように素早く動いて、敵に連続で斬りかかる。
一体一体の強さは、たいしたこと……ない。でも……。
『【口寄せ】ぇ……!』
聖女さんが地面に手を置いて叫ぶ。
瞬間、魔法陣が展開し、そこから大量のゴブリンが出現し、襲いかかってくる。
アメリアさんが剣でいくら倒しても、ましろが飛爪で消し飛ばしても、ゴブリンは次から次へ湧き上がってくる。
『スキル【口寄せ】とは……契約した魔物を、手元に呼び出すテイマーのスキルですぅ……』
「テイマー……」
ゲームでいうところの、魔物使いってところか。
『見たところあの人は、テイムスキルを持ってます。スキルを使用した魔物を、強制的に支配下に置きます。通常、テイムできる数に、通常なら上限があるはずです。ただ……あの聖女も、わたしたちと同様、転生ボーナスを受けてるとしたら……』
まさか、無制限にテイム&口寄せができる……とか。
『殺せ殺せ! ゲータ・ニィガにいる全てを殺せ!』
押し寄せるゴブリンの群れ。
ゴブリン王がグギャッ、と鳴くとゴブリン全員の体が光り輝く。
「裂破斬!」
アメリアさんがゴブリンの首を切断しようとする。
がきぃん!
「なっ!? 硬……! ぐああああああああああ!」
ゴブリンからの反撃を受ける、アメリアさん。
「アメリアしゃん!?」
ぶっ飛ばされたアメリアさんのもとへと駆け寄る私。
そして、傷を治癒スキルで治す。
「ありがとう……コネコちゃん。しかし、なんだ、あのゴブリン。急に強くなったぞ……?」
『恐らく、ゴブリン王のスキル、【小鬼強化】ですぅ。ゴブリンを対象にバフをかけます』
テイマー聖女さんが、契約したゴブリンを口寄せし、ゴブリン王が、彼らを強化する。
強化されたゴブリンは、Sラン冒険者である、アメリアさんに匹敵する強さを保っていた。それが、こんな大量にいる……。
野に放ったら、多分ノォーエツはおろか、ゲータ・ニィガは壊滅するだろう。
『やれぇ……! 殺せぇええええ! 私を喚んでおいて……使い捨てた……! あの【アホカイネン】の国を! 滅ぼすんだよぉおおおおおおお!』
あほ……かいねん……?
襲い来るゴブリン達。
いったん、私は結界で、アメリアさんを含めて包み込む。
ましろは一人……否、一匹で魔物をざくざく倒していってる。
「アメリアしゃん、アホカイネンって知ってましゅか?」
王国の騎士であった、アメリアさんなら……なにか知ってるはず。
「ああ、アホカイネン=フォン=ゲータ・ニィガ。先代ゲータ・ニィガ王だな」
「先代……王……」
先王。つまり、バカデカントの祖父(バカデカント父の父)。
「その人って今どこにいるんでしゅか?」
「もうとっくに死去なされておる」
「……! そう、でしゅか……」
……つまり、だ。
テイマーの聖女、茶臼山 貞子。
彼女を呼び出した人間は……もう、この世には、居ない。
でも……恐らくだけど、あの人はそのことを知らない……。
……あの人は、復讐相手がもうこの世に存在しないのに、この国に復讐しようとしようとしてる。
……なんて、むなしい。
なんて……悲しい、存在だろう。
「……ける、にゃ」
次第に、私の腹の底から、とある感情がわき上がってくる。
「ふざける……にゃああああああああああああああ!」
会ったこともない、先王アホカイネンに、私は……怒りを抱いていた。
テイマーの聖女……ううん、貞子さんを勝手に喚びだしておいて、酷いことしておいて、自分だけ先に死んだ?
じゃあ……貞子さんの悲しみは? 怒りは?
一体……どこに向ければ良い!?
不思議だ。私を喚びだし放り出した、あのバカ王子よりも、貞子さんを喚びだした王族……アホカイネンに対する怒りが、次から次へと湧き出てくるのだ。
「ふにゃああー!」
ぴょんっ、とましろが私の頭の上に乗る。
すると、体の底から、力が湧き上がってる。
『や、やすこにゃんの額に……ましろ様と同じ、月のマークが!』
私の体から、凄まじい力が湧き上がってくる。
それは体の外に、白銀の光となって、放出される。
『ましろ様には、他者を強くするバフ能力がある! アメリアたんを英雄クラスにまで強化したバフを、ただでさえ強い召喚聖女にかけたら……!』
「い、いったいどうなってしまうのだっ!」
私は結界から出る。
吹き出る白銀の魔力。
スッ……と私は右手を前に突き出す。
「【結界】」
白銀の魔力が、頭上に放出される。
それはどんどんと大きくなっていき、やがて一つの形を取る。
『つ、月だ! でっかい満月ですうぅう!』
「で、デカい……! な、なんて……デカいんだ!」
驚くアメリアさん。
一方、私は……冷静になっていた。さっきまでの激しい怒りが、まるで……誰かに、根こそぎ吸い取られてしまったかのようだ。
「うにゃぁ~~~~~~~~~~~~~~!」
『【神の鉄槌を喰らえ~~~~~~~~~~~!】』
すっ……と私は手のひらを、下に向ける。
巨大な月(といっても、本物の月と比べれば小さい)が、凄まじい勢いで、ゴブリンたちに向かって……。
「墜ちよ!」
ズドオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
結界の月がゴブリン達に向かって、凄まじい勢いで墜ちる。
その衝撃でその場に居た全てのゴブリン、およびゴブリン王は消滅。
勢いはそれだけにとどまらない。
この広間の地面に巨大な穴をあける。衝撃波は広間の壁、天井を破壊する……。
『ひぃいいいいい! か、神の怒りだぁああああああああ!』
「これが……月と豊穣の女神の加護で、強化された、聖女様の本気……す、すごい……」
……気づけば、わたしたちは荒野にいた。
どうやら私(withましろ)は、ゴブリン達を、巣穴ごと消し飛ばしてしまったようだ。
『なに……なんなの……これ……』
荒野には、テイマー聖女……貞子さんだけが残っていた。
さっきまでは強い怒りと憎しみを抱いてる様子だったけども、今は……呆然とした表情を浮かべ、目の前に居る私を見ている。
私は貞子さんのもとへと駆け出す。
「あ、待ってくれコネコちゃん!」
『あ、危ないですよぉ!』
二人の制止をふりきって、私は……貞子さんのもとへやってきた。
そして言う。
「はじめまして! 私は……黒姫 寧子! あなたと同じ……召喚聖女です!」
初めましての、挨拶を。
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