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【書籍化】転生幼女は愛猫とのんびり旅をする【2巻12/10発売!】  作者: 茨木野


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23/89

23.パーティ結成 、お菓子でお祝い


 彼女の生い立ちについて、教えて貰った。

 アメリアさんは、王様が王城のメイドに孕ませて生まれた子だったらしい。


 立場上、王女ではあるものの、出生のせいで、周りからの扱いは、それはもう酷いものだったそうだ。

 王族からは認められず、平民からは嫉妬され、やっかまれる。


 まともな王族教育を受けさせて貰えず、住まいもボロい離れだったそうだ。


 しかしアメリアさんはそんな逆境にも負けず、五歳にして騎士団入り。

 そこで訓練と実践を繰り返し、21歳にして、実力だけで騎士団長にまで上り詰めたそうだ。


『そ、そんな苦労なさてたんですね……そ、尊敬しちゃう……!』

「大聖女さまにそう言っていただけで、光栄です」


 微笑むアメリア王女。


「あ、あの……王女様」

「あいや、聖女様。王女はおやめくだされ。わたしは確かに王女の立場ですが、第18王女、王位継承権はありませんし、そもそもだれも、わたしが王女であることは知りませんゆえ」


「そうなんでしゅか……」


 生まれを呪うこと無く、ひたすらに努力し、騎士団長にまでなったアメリアさん。


「騎士団……やめてほんとうによかったんでしゅか?」

「はい。騎士を志したのも、城で母のことを悪く言う連中を、少しでも減らしたかったからです。が……母も死んでしまいましたので。もう城でやるべきことは、ないかと」


 ……この上、お母さんまで死んじゃってるんだ。アメリアさん、可哀想……。


『で、でも……騎士団やめちゃったら、困るんじゃあないですか? だっ、だって、アメたん、有能な騎士団長だったんでしょう?』

「騎士は公務員です。一人居なくなっても、すぐ次の人が空いた椅子に座り、滞りなく業務は回ります」


『そ、そうですかぁ……? あなたを慕う部下とか、居たんじゃあないです?』

「はい。ありがたいことに【そこそこ】います」


『その人、騎士やめちゃいません? アメリアさんがいない騎士団なんて、意味ないとか』


 ふっ……とアメリアさんが微笑む。


「わたしごときが辞めたくらいで、彼らが騎士をやめるわけがありません。絶対に」

『うーん……そ、そうですかねえ。アメたん若いし、強いし、人気者そうだから、騎士団でもファン多いような気ぃしますけどねぇ』


「はは、それはないですよ。なので、騎士団をやめても、問題ありません。気にしなくても大丈夫ですよ、聖女様」


 と、アメリアさんが私を見ながら言う。

 そっか……。良かった。これで、アメリアさんと、憂いなくパーティが組める。


「改めて、よろしくお願いします、聖女様」

「あ、しょ、しょの……聖女はやめてくだしゃい。バレたくないのでしゅ。今まで通りで」


「なるほど……。わかった。わたしについても、王女ではなく、普通に接して欲しい」

「あいっ。わかりました、アメリアしゃん!」


 さて! と愛美さんが言う。


『じゃあ、ぱ、パーティ結成のお祝いしましょう!』

「いいでしゅね!」


 アメリアさんが身内になったことだし、魔神の鞄(トリック・バッグ)を使っても問題ないだろう。

 私は取り寄せ鞄スキルを発動。


 地球のお菓子を取り寄せする。


「こ、これは……?」

「向こうの世界のお菓子でしゅ」

「な、なるほど……これが、コネコちゃんの……あ、呼び方はコネコのままでいいのか?」


「あいっ」


 聖女ってバレたくないから。

 私はクッキーの袋を破って、アメリアさんに渡す。


「あい、どーぞ!」

「ありがとう。……この、クッキーの表面についてる、茶色いのはなんだい?」


「チョコレートでしゅ」

「は……?」


 目を点にするアメリアさん。

 あれ……? どうしたんだろう。


「ちょ、チョコレート!? そ、そんな高級品を、い、いただくわけにはいかないぞ!」

「はえ……? こ、高級品……?」


「ああ。チョコレート、というか甘味は基本貴族の食べ物だ」

「『へー……』」 


 ……って、なんで愛美さんも驚いてるんだろう。


『てへっ。き、貴族社会なんて、し、知らないので……基本ヒキニートだもので……へへっ』


 そういえばそうだった……。


「こんな高いもの、いただけない」

「いいんでしゅ。食べてくだしゃい。地球じゃ、安く売ってるものでしゅので」


「そうなのか……。すごいな、コネコちゃんの居た世界は……」


 アメリアさんはチョコチップクッキーを、ぱくっ、と食べる。


「!? う、美味い……!」


 ばりばりばり、とアメリアさんがものすごい勢いでチョコチップクッキーを食べる。


「な、なんだこの美味しいクッキー! 甘くて、美味しすぎる……!」

「もう一枚どうでしゅか?」


「ああっ!」


 アメリアさんがチョコクッキーをバリバリ食べる。

 目に涙を浮かべてる……?


「ぐす……美味すぎる……こんな美味しいクッキーは、生まれて初めてだ……」

「お、おおげしゃな……」


 すると愛美さんが言う。


『こ、これが大げさじゃあないんですよ。こ、こっちの世界、基本食事まずいんです。小麦粉の質も悪いですし』


 なるほど……。品種改良っていう概念が、こっちにはないんだ。

 それに、農薬なんてものもないだろうし。


 だから、地球の食べおかしもを、現地人であるアメリアさんが食べて、絶賛してるわけだ。


『平民は甘味なんて高くて買えないですし。食べる機会なんてほとんどない中、現実のおいしいお菓子を食べて、感動してるんじゃあないですかね』


 なるほど……。

 おかしを、幸せそうに頬張るアメリアさんが、ちょっと可愛かった。


 ……というか、今気づいたけど、アメリアさんって私より年下なんだよね……。

 若いのに、たくさん苦労してきたんだな。


「もっと、ありましゅよ」


 魔神の鞄(トリック・バッグ)を開いて、チョコとか、マシュマロとか、いっぱい取り出す。


「!? こ、これ……まさか全部甘味なのか!?」

「はいっ。今日はパーティ結成の、お祝いでしゅ! いっぱいたべましょう!」


 するとアメリアさんが涙ぐむ。


「わたし……猫神さまたちの従者となってよかった」


 ……ん? あれ?


「ましろの……従者?」

「え、そういうくくりではないのですか? 猫神さまがリーダーのパーティじゃ?」


 な、なるほど……。確かにましろが、この中で一番格の高い存在だ。


「みゃ、みー?」

『【え、当然でしょ?】ですって』


 ましろも自分がパーティリーダーだと思っていたらしい。


「み、みゃう」

『【ヤスコが友達、アメリアが信者1】。って、ええ!? わ、わたしは?』


「みー、みゃ」

『【通訳、もしくは下僕1】ひ、ひどいです……!』


 あはは、と笑い合う私たち。


「そうだ、ましろ殿。パーティの名前をいかがいたしましょう。冒険者パーティは、名前を付けるのが通例なのです」

「ふみゃう」


『【ヤスコに任せるわ】ですって』


 私に……?

 うーん……どうしよう。


 まあ、ましろのパーティって考えると……。白猫……。


『し、白猫団とか……? あいたっ、あいたっ、猫パンチやめてくださいよぉっ。【ヤスコに決めて貰うって言ったでしょう】って?』


 白猫団……。なるほど。


「じゃあ、白猫ホワイト・キャットで」

「みゃーーーーーう!」


『【素晴らしい名前ね!】って、わ、わたしが決めた名前とさほど変わらないような……あいた、いたたたっ、猫パンチやめてくださいよぉ!』


 こうして、私、ましろ、愛美さん、アメリアさんで、パーティ【白猫ホワイト・キャット】が結成されたのだった。




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★新連載です★



↓タイトル押すと作品サイトに飛びます↓



『捨てられ聖女は万能スキル【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』

― 新着の感想 ―
クズの遺伝子持ってるのに奇跡的にいい人に育ったんだなアメリア
まぁマシロがリーダーなのは仕方ない。 何しろレベル無限大という概念的存在なのだから、今後は腕っぷしで解決出来るクエストなら、ドラゴンや魔王討伐どころか、宇宙怪獣や銀河皇帝軍とか超巨大恒星型宇宙生命体と…
え?そこは「猫神様と下僕たち」じゃないの???
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