23.パーティ結成 、お菓子でお祝い
彼女の生い立ちについて、教えて貰った。
アメリアさんは、王様が王城のメイドに孕ませて生まれた子だったらしい。
立場上、王女ではあるものの、出生のせいで、周りからの扱いは、それはもう酷いものだったそうだ。
王族からは認められず、平民からは嫉妬され、やっかまれる。
まともな王族教育を受けさせて貰えず、住まいもボロい離れだったそうだ。
しかしアメリアさんはそんな逆境にも負けず、五歳にして騎士団入り。
そこで訓練と実践を繰り返し、21歳にして、実力だけで騎士団長にまで上り詰めたそうだ。
『そ、そんな苦労なさてたんですね……そ、尊敬しちゃう……!』
「大聖女さまにそう言っていただけで、光栄です」
微笑むアメリア王女。
「あ、あの……王女様」
「あいや、聖女様。王女はおやめくだされ。わたしは確かに王女の立場ですが、第18王女、王位継承権はありませんし、そもそもだれも、わたしが王女であることは知りませんゆえ」
「そうなんでしゅか……」
生まれを呪うこと無く、ひたすらに努力し、騎士団長にまでなったアメリアさん。
「騎士団……やめてほんとうによかったんでしゅか?」
「はい。騎士を志したのも、城で母のことを悪く言う連中を、少しでも減らしたかったからです。が……母も死んでしまいましたので。もう城でやるべきことは、ないかと」
……この上、お母さんまで死んじゃってるんだ。アメリアさん、可哀想……。
『で、でも……騎士団やめちゃったら、困るんじゃあないですか? だっ、だって、アメたん、有能な騎士団長だったんでしょう?』
「騎士は公務員です。一人居なくなっても、すぐ次の人が空いた椅子に座り、滞りなく業務は回ります」
『そ、そうですかぁ……? あなたを慕う部下とか、居たんじゃあないです?』
「はい。ありがたいことに【そこそこ】います」
『その人、騎士やめちゃいません? アメリアさんがいない騎士団なんて、意味ないとか』
ふっ……とアメリアさんが微笑む。
「わたしごときが辞めたくらいで、彼らが騎士をやめるわけがありません。絶対に」
『うーん……そ、そうですかねえ。アメたん若いし、強いし、人気者そうだから、騎士団でもファン多いような気ぃしますけどねぇ』
「はは、それはないですよ。なので、騎士団をやめても、問題ありません。気にしなくても大丈夫ですよ、聖女様」
と、アメリアさんが私を見ながら言う。
そっか……。良かった。これで、アメリアさんと、憂いなくパーティが組める。
「改めて、よろしくお願いします、聖女様」
「あ、しょ、しょの……聖女はやめてくだしゃい。バレたくないのでしゅ。今まで通りで」
「なるほど……。わかった。わたしについても、王女ではなく、普通に接して欲しい」
「あいっ。わかりました、アメリアしゃん!」
さて! と愛美さんが言う。
『じゃあ、ぱ、パーティ結成のお祝いしましょう!』
「いいでしゅね!」
アメリアさんが身内になったことだし、魔神の鞄を使っても問題ないだろう。
私は取り寄せ鞄スキルを発動。
地球のお菓子を取り寄せする。
「こ、これは……?」
「向こうの世界のお菓子でしゅ」
「な、なるほど……これが、コネコちゃんの……あ、呼び方はコネコのままでいいのか?」
「あいっ」
聖女ってバレたくないから。
私はクッキーの袋を破って、アメリアさんに渡す。
「あい、どーぞ!」
「ありがとう。……この、クッキーの表面についてる、茶色いのはなんだい?」
「チョコレートでしゅ」
「は……?」
目を点にするアメリアさん。
あれ……? どうしたんだろう。
「ちょ、チョコレート!? そ、そんな高級品を、い、いただくわけにはいかないぞ!」
「はえ……? こ、高級品……?」
「ああ。チョコレート、というか甘味は基本貴族の食べ物だ」
「『へー……』」
……って、なんで愛美さんも驚いてるんだろう。
『てへっ。き、貴族社会なんて、し、知らないので……基本ヒキニートだもので……へへっ』
そういえばそうだった……。
「こんな高いもの、いただけない」
「いいんでしゅ。食べてくだしゃい。地球じゃ、安く売ってるものでしゅので」
「そうなのか……。すごいな、コネコちゃんの居た世界は……」
アメリアさんはチョコチップクッキーを、ぱくっ、と食べる。
「!? う、美味い……!」
ばりばりばり、とアメリアさんがものすごい勢いでチョコチップクッキーを食べる。
「な、なんだこの美味しいクッキー! 甘くて、美味しすぎる……!」
「もう一枚どうでしゅか?」
「ああっ!」
アメリアさんがチョコクッキーをバリバリ食べる。
目に涙を浮かべてる……?
「ぐす……美味すぎる……こんな美味しいクッキーは、生まれて初めてだ……」
「お、おおげしゃな……」
すると愛美さんが言う。
『こ、これが大げさじゃあないんですよ。こ、こっちの世界、基本食事まずいんです。小麦粉の質も悪いですし』
なるほど……。品種改良っていう概念が、こっちにはないんだ。
それに、農薬なんてものもないだろうし。
だから、地球の食べ物を、現地人であるアメリアさんが食べて、絶賛してるわけだ。
『平民は甘味なんて高くて買えないですし。食べる機会なんてほとんどない中、現実のおいしいお菓子を食べて、感動してるんじゃあないですかね』
なるほど……。
おかしを、幸せそうに頬張るアメリアさんが、ちょっと可愛かった。
……というか、今気づいたけど、アメリアさんって私より年下なんだよね……。
若いのに、たくさん苦労してきたんだな。
「もっと、ありましゅよ」
魔神の鞄を開いて、チョコとか、マシュマロとか、いっぱい取り出す。
「!? こ、これ……まさか全部甘味なのか!?」
「はいっ。今日はパーティ結成の、お祝いでしゅ! いっぱいたべましょう!」
するとアメリアさんが涙ぐむ。
「わたし……猫神さまたちの従者となってよかった」
……ん? あれ?
「ましろの……従者?」
「え、そういうくくりではないのですか? 猫神さまがリーダーのパーティじゃ?」
な、なるほど……。確かにましろが、この中で一番格の高い存在だ。
「みゃ、みー?」
『【え、当然でしょ?】ですって』
ましろも自分がパーティリーダーだと思っていたらしい。
「み、みゃう」
『【ヤスコが友達、アメリアが信者1】。って、ええ!? わ、わたしは?』
「みー、みゃ」
『【通訳、もしくは下僕1】ひ、ひどいです……!』
あはは、と笑い合う私たち。
「そうだ、ましろ殿。パーティの名前をいかがいたしましょう。冒険者パーティは、名前を付けるのが通例なのです」
「ふみゃう」
『【ヤスコに任せるわ】ですって』
私に……?
うーん……どうしよう。
まあ、ましろのパーティって考えると……。白猫……。
『し、白猫団とか……? あいたっ、あいたっ、猫パンチやめてくださいよぉっ。【ヤスコに決めて貰うって言ったでしょう】って?』
白猫団……。なるほど。
「じゃあ、白猫で」
「みゃーーーーーう!」
『【素晴らしい名前ね!】って、わ、わたしが決めた名前とさほど変わらないような……あいた、いたたたっ、猫パンチやめてくださいよぉ!』
こうして、私、ましろ、愛美さん、アメリアさんで、パーティ【白猫】が結成されたのだった。
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