20.大鬼王を解体する
大鬼王の死骸が、村に運び込まれた。
「すげえ……」「まじで大鬼王だ……」「こんな恐ろしい魔物を倒してしまうなんて、さすがはアメリア様だ」
村人達は魔物を倒した(と誤解されてる)アメリアさんを褒めている。
アメリアさんは「いやわたしは倒してないのだが……」と言うも。
「あんな強敵を倒したのに、おごらないとは」
「とても謙虚な御方なのですね!」
「さすがは若くして騎士団長になった御方だ!」
アメリアさん……騎士団長なんだ……。
そんなにレベル高くなかったのに。(レベル21)
「それで、この死骸の処遇についてだが……」
「それはもちろん、討伐したアメリア様がお持ち帰りください! 売ればかなりのお金になるはずですし」
アメリアさんは真面目な顔で、首を横に振る。
「いや、それはできない。わたしは騎士。魔物を倒すのは、国民を守るためであって、金のためにやったのではない」
『か、かっこいいっ。物語の騎士さまみたいですねっ』
愛美さんが大興奮してる。私もかっこいいなって思う。
「大鬼王の死骸は、村のものとして処理してほしい」
「それは困りますよ! 守ってもらった上に、こんな大金……もらえないです!」
そんなに大金になるんだ、大鬼王って……。
「こちらとしても、死骸を受け取るわけには……」
ふと、アメリアさんと目が合う。どうしたんだろう……。
「やはり、大鬼王の死骸を、受け取りたいのだが、構わないだろうか?」
「それはもちろん!」
村人達が、ホッ……と安堵の息をついてる。
「しかし、急に心変わりされて、どうなされたのです」
「この死骸を、コネコちゃんにプレゼントしようと思って」
え……? わ、私に……?
「アメリア様。どうしてこの子に、死骸を渡すのです……?」
「この子は貧しい家の出身なのだ。親に捨てられ、街へ行き、そこで働くことになる」
「なんと……! それは、可哀想に……こんな小さくて、可愛い子なのに……」
村人達全員が、私に同情のまなざしを向けてくる。
親に捨てられたわけではないので、ちょっと心が痛んだ。嘘ついてすみません……。
「この子が一人で生きていく、そのための資金にしてあげたいのだ。構わないだろうか?」
「もちろん! アメリア様がそうお決めになられたのでしたら、我々は反対するきは毛頭ございません!」
アメリアさんはニコッと笑う。
「ということだ、コネコちゃん。受け取ってくれるかな?」
……本当に、優しい女性だな。この人……。
「なーう、みゃ?」
『【へぇ……ヤスコに進んで尽くすだなんて。見所あるじゃあない、この下僕?】ですって』
下僕じゃあないんだけどな……。
「いいんでしゅ?」
「もちろん」
どうしよう……でもなぁ。
『もらっておきましょう。やすこにゃん』
愛美さんが私に話しかけてくる。
『金はたくさんあって困ることがないですし。それに、元はといえばこの魔物倒したの、やすこにゃんじゃあないですか。もらっちゃいましょ?』
……愛美さんの言ってることは正しい。
それに、村人もアメリアさんも、この死骸の処理に困っていたし。
「ありがとう、アメリアしゃん。つつしんで、ちょうだいいたしましゅ」
「小さいのに、本当に礼儀正しい子だね、君は」
アメリアさんは微笑むと、私の頭をなで回す。
「さて、では解体作業に掛かろう」
「解体でしゅか?」
「ああ。この巨体をそのまま、街へ引きずっていくわけにはいかないし。それに、売るにしても、このまま提出されても、ギルドも困ってしまうからね」
アイテムボックス持ちであることは、申告してる。
でもそんなに大きな容量はない、と虚偽申告してるので、このまま収納するわけにはいかない。
「我々村人も手伝いますよ!」
「助かる。こんなに大きな魔物……解体に数日かかりそうだ」
す、数日……?
確かに、大鬼王……普通におっきいけども。
『れ、レベルの高い魔物は、肉も爪も、かなりの強度があって、ばらすのに苦労するんです』
なるほど……。
数日もとどまるのは、ちょっとな。そんな重労働を、この人達に強いるのは、気が引けるし。
「ましろ……に頼んでもやってくれないか」
私の身に危機が迫ってるわけではないから、きっとましろは動いてくれないだろう。
「みーや」
『【やれやれね】ですって』
おや……?
アメリアさんが鎧を脱いで、手にのこぎりを持つ(村人から借りたらしい)。
「では、まずは大鬼王の、この立派なツノから」
大鬼王のツノは、大樹のように太い。切り倒すのにとても苦労しそうだ。
アメリアさんがのこぎりの刃を、ツノに突き立てる。
ストンッ……。
「は?」
「「「ええええええええええ!?」」」
ツノが……豆腐のように、すとんっと軽々キレたのである。
「す、すげえ!」「あの硬そうなツノを楽々と切り倒してしまうなんて!」「さすがですアメリア様!」
村人達はどうやら、アメリアさんが軽々ツノを斬ったと思っているらしい。
「あ、いや……わたしは何も……ほんとに力なんて全然いれてないのに……どうして……?」
すると、アメリアさんの足下にましろがいた。
「ま、ましろっ? 何してるんでしゅか?」
「ふみゃ、にゃ!」
『【仕方ないわね、手伝ってやるわ!】ですって、えええ? ましろ様が!? どうして……?』
「うみゃ、にゃ!」
『【こいつ、ちょっと気に入ったし】ですって』
ましろがいつの間にか、アメリアさんのこと、気に入っていたらしい。
どうして気に入ったんだろう……。
「うーにゃっ!」
ましろが、神威鉄爪を発動。
バラララッ……! と、大鬼王を構成する、爪、ツノ、牙、皮、肉、骨……など。
綺麗に、パーツ事に解体されていた。
「「「うぉおおおお! すげええ! さすがアメリア様!」」」
どうやら周りの人たちは、アメリアさんが、解体を行ったと思ってるようだ。
「なんて剣技だ!」「おれらには早すぎて目で追えなかったぞ!」「すげえ、さすがアメリア様!」
一方で、アメリアさんは目を点にしてる。
……その視線は、足下の白猫に注がれてる。
……まずい! こんなことしたら、アメリアさんに、ましろがやったって思われちゃう。
「…………」
アメリアさんはましろをじっと見つめる。そして「なるほど……」と小さくうなずいた。
「全てに合点がいったよ」
「みゃ?」
「いや……ありがとうございます」
アメリアさんはましろの前で跪いて、深く……頭を下げる。
え、え? ど、どういうことだろう……。
「うみゃーん、みゃ!」
『【お気に入りに、してやってもいいわ!】』
ぽわ……とましろの額に、月のマークが浮かび上がる。
そのマークが、アメリアさんの手の甲にも、浮かび上がってるように、私には見えたのだった。
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