17.ポトフを絶賛される
途中の村に立ち寄ることになった。
アメリアさんが王国騎士ということもあり、村人たちからは信用され、素泊まりさせてもらえることになった。
木造の空き家を、私たちは借りてる。
「さ、食事にしよう」
食事……。異世界の食事ってこれが初めてかもしれない。
一体どれくらいのレベルのものがでてくるんだろう。
『あっ、あんまり期待しない方がいいですよ……文明レベル低いんで』
と、愛美さんが忠告する。
アメリアさんは荷物袋から、1本の棒を取り出した。
長さは大人の手のひらくらい。紙に包まれている。
なんだろうか、これは……?
「コネコちゃんは、携帯食料は初めてかな?」
「あい。けーたいしょくりょうってなんでしゅか?」
「騎士や冒険者達が、野営の際に食べる食事のことだ。味はいまいちだが、日持ちはする。味はいまいちだがな」
二回も味がいまいちって言った……。
愛美さんの発言と併せると、本当に美味しくないのだろう。
かさ……と私は包み紙をほどく。
ぱっと見、カロリ●メイトっぽい。
でも色が粘土色をしている。
粘土を細くしたような、食べ……もの……?
「いただきます」
「い、いたらきます」
一口食べて……私の体は、拒否反応を起こした。
「うっ……おぇっ!」
「だ、大丈夫か?」
「あぃ……」
胃酸が逆流しかけた。喉の奥にすっぱさが残る。
なんだこれは……?
少なくとも食料じゃあない。粘土……そう、粘土の見た目をした、粘土だ。
「…………」
「酷い味だろう?」
「あ、いえ……。その……」
「遠慮しなくていい。騎士の間でも、この携帯食料は不評なんだ。まずすぎるとな」
アメリアさんは携帯食料をボソボソとかみ、本当にまずそうに顔をゆがめてる。
ましろは最初から食べるそぶりを見せなかった。
「にゃあ」
『【チュール早く頂戴】ですってぇ』
ましろの分も、アメリアさんが用意してくれたけど、愛猫は口すら付ける気がないらしい。
こんなまずい食事を、食べるのはためらわれた。
かといって、取り寄せ鞄で、菓子パンやおにぎり等、現代飯を取り寄せたら、目立ってしまう。
猫だましスキルで、発言に信憑性を持たせるにしても、さすがにビニールに包まれし現代飯を見れば、オカシイと思われてしまうだろう。
ならば。
「あの……もしよかったら、ご飯……つくりましょうか?」
社畜時代、私は一人暮らしをしていた。
ある程度のリアル一人暮らし技能は身についてる。
料理を目の前で作れば、さほど怪しまれることはないだろう(飯を取り寄せるよりは)。
「いやいやいや! 料理なんてさせられるわけないだろうっ。君はまだ幼い。包丁や火なんて使わせられない!」
うーん、常識的な人。
現実基準で、五歳児(幼稚園児)が料理するー、なんてなったら、普通の大人なら止めて当然だ。
さてどうするか……。
「大丈夫でしゅ。作り慣れてましゅので」
はっ……! とアメリアさんが何かに気づいたような顔になる。
「作り慣れてる……」
「あいっ」
私の目を、アメリアさんがしばしじっと見つめる。
「ふざけてるようには見えない。……そうか……」
じわ、と何故かアメリアさんが目に涙をためる。
「辛かったのだな……。よしよし、可哀想に」
『こ、これ……もしかして、やすこにゃんが親から虐待を受けて、食事を作らされていたみたいに思われてそうですぅ』
シンデレラ的な扱いの子って思われてるのかも。
街に働きに出るみたいなこと、私から言ったし。
「わかった。だが、火と包丁を使う際は、わたしがそばで見てる。危ないと思ったら即座に料理は中断。それでいいかい?」
「あいっ」
ということで、料理開始。
空き家には台所があった。ただ、水は、水瓶に入れられてる。
もちろんコンロ的サムシングはない。かまどはあるけど。
どうしよう。かまどなんて使ったことない。
『あっ、ガスコンロ使ったらどうでしょうか?』
と愛美さんのアドバイス。
ガスコンロ……?
いやさすがに、そんな現代アイテム使ったら、怪しまれるような……
「ま、魔法コンロという、ガスコンロににた魔道具ってものが、売られてはいます」
なるほど。
コンロににたものがあるんだ。ならそれ使えば火はクリアできる……。
でも、私がそれ持ってて、おかしくない?
『猫だましスキルがありますし、そ、それに……故郷の村から出るとき、せ、選別で貰ったとか言えばいいかなと』
なるほど。確かに、アメリアさん視点で、私は故郷の村から、追い出された可哀想な少女と思われてる。
せっかくそう誤解して貰えてるなら……最大限、その設定を利用しよう。
「調理器具はどうする?」
「もってましゅ! アイテムボックスのなかに、入ってましゅ!」
アイテムボックススキル自体は、珍しくはないと、愛美さんから聞いてる。
ただし、私の持つ容量∞、収納できるサイズ無制限、のボックスは異世界聖女にしかないという。
「アイテムボックス持ちなのだな、コネコちゃんは」
「あいっ。といっても、最低ランクのアイテムボックスでしゅが」
ということにしておく。
ボックスから魔法コンロ、野菜、そして……封を切ったシャウエッ●ン。
あとは包丁。ピーラー。
「うにゃーん」
「包丁については気をつけて……え、ええええ!?」
アメリアさんが驚愕してる。
いったい何を……って、ええ!?
野菜の皮が全てむいてあった。そして、一口サイズに、全て切り終えてあった。
「ど、どうなってるのだ……!?」
「えーっとえーっと……」
ましろが「ふにゃ」っと得意げに胸を張る。
『【カットしておいてあげたわよ】だそうです』
やっぱり、ましろが尋常じゃなく速い速度で、爪で野菜を切ったようだ。
もう、目立つようなことしないでって言ったのに……!
ごまかさないと……。
「す、すでにあらかじめ、野菜は切って保存しておいたんです」
苦しい言い訳だったけど、猫だましスキルのおかげで「な、なるほど……」とアメリアさんは一応信じてくれた。
「じゃ、あとは……煮込むだけです」
水を張り、コンソメの素(取り寄せた)と野菜を入れて、煮る。
あんまりこった料理を作ると、また怪しまれてしまう。だから、これくらいの簡単な料理にしておく。
ほどなくして、料理が完成する。
「ポトフ完成でしゅ!」
「ポトフ……」
借りた器に、具だくさんポトフを入れて、アメリアさんに差し出す。
「すごいぞ……コネコちゃん。君……そんなに小さいのに……こんな立派な料理を作ってしまうなんて。しかも、料理を作る手つきもよどみなかった」
くっ……とアメリアさんが目元を手で拭う。
「さぞ、辛い思いをしてきたんだろう……」
まあ辛い目にはあってきたけど、アメリアさんが想像してるつらさとは違う(社畜)。
でも言うとめんどくさいので、黙っておくことにした。
「コネコちゃんが一生懸命作ってくれた料理……いただきます」
アメリアさんがポトフを一口すする。
「!?」
くわっ、と目を見開く。
がつがつ、ごきゅごきゅっ、ごっくん!
さっきの携帯食料のときとは違って、食べるスピードがめちゃくちゃ速かった。
「美味い……!」
ホッ……良かった。お気に召してくれたようだ。異世界人が、地球の料理を。
「な、なんだこれは!? ほどよい塩気、ぱりっぱりのソーセージ、そして……甘い野菜。それらが渾然一体となって、口の中でうま味が広がる……! こんな美味しい料理はじめてだ!」
「おかわりいりましゅ?」
「いる!」
アメリアさんはその後4杯もおかわりをした。
ましろはチュールを食べて幸せそうにしていた。
「はぁ……しあわせだ……♡ 本当に美味しかった。なんだか、体に力がわいてくるような感じもするし」
体に力がわく……?
そのときである。
「うにゃー! みゃー!」
『【敵よー! 村に魔物が攻めてきたー!】ですって!』
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