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【書籍化】転生幼女は愛猫とのんびり旅をする【2巻12/10発売!】  作者: 茨木野


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17.ポトフを絶賛される



 途中の村に立ち寄ることになった。

 アメリアさんが王国騎士ということもあり、村人たちからは信用され、素泊まりさせてもらえることになった。


 木造の空き家を、私たちは借りてる。


「さ、食事にしよう」


 食事……。異世界の食事ってこれが初めてかもしれない。

 一体どれくらいのレベルのものがでてくるんだろう。


『あっ、あんまり期待しない方がいいですよ……文明レベル低いんで』


 と、愛美さんが忠告する。

 アメリアさんは荷物袋から、1本の棒を取り出した。

 長さは大人の手のひらくらい。紙に包まれている。


 なんだろうか、これは……?


「コネコちゃんは、携帯食料は初めてかな?」

「あい。けーたいしょくりょうってなんでしゅか?」


「騎士や冒険者達が、野営の際に食べる食事のことだ。味はいまいちだが、日持ちはする。味はいまいちだがな」


 二回も味がいまいちって言った……。

 愛美さんの発言と併せると、本当に美味しくないのだろう。


 かさ……と私は包み紙をほどく。

 ぱっと見、カロリ●メイトっぽい。


 でも色が粘土色をしている。

 粘土を細くしたような、食べ……もの……?


「いただきます」

「い、いたらきます」


 一口食べて……私の体は、拒否反応を起こした。


「うっ……おぇっ!」

「だ、大丈夫か?」

「あぃ……」


 胃酸が逆流しかけた。喉の奥にすっぱさが残る。

 なんだこれは……?


 少なくとも食料じゃあない。粘土……そう、粘土の見た目をした、粘土だ。


「…………」

「酷い味だろう?」

「あ、いえ……。その……」

「遠慮しなくていい。騎士の間でも、この携帯食料は不評なんだ。まずすぎるとな」


 アメリアさんは携帯食料をボソボソとかみ、本当にまずそうに顔をゆがめてる。

 ましろは最初から食べるそぶりを見せなかった。


「にゃあ」

『【チュール早く頂戴】ですってぇ』


 ましろの分も、アメリアさんが用意してくれたけど、愛猫は口すら付ける気がないらしい。


 こんなまずい食事を、食べるのはためらわれた。

 かといって、取り寄せ鞄で、菓子パンやおにぎり等、現代飯を取り寄せたら、目立ってしまう。


 猫だましスキルで、発言に信憑性を持たせるにしても、さすがにビニールに包まれし現代飯を見れば、オカシイと思われてしまうだろう。


 ならば。


「あの……もしよかったら、ご飯……つくりましょうか?」


 社畜時代、私は一人暮らしをしていた。

 ある程度のリアル一人暮らし技能は身についてる。


 料理を目の前で作れば、さほど怪しまれることはないだろう(飯を取り寄せるよりは)。

「いやいやいや! 料理なんてさせられるわけないだろうっ。君はまだ幼い。包丁や火なんて使わせられない!」


 うーん、常識的な人。

 現実基準で、五歳児(幼稚園児)が料理するー、なんてなったら、普通の大人なら止めて当然だ。

 さてどうするか……。


「大丈夫でしゅ。作り慣れてましゅので」


 はっ……! とアメリアさんが何かに気づいたような顔になる。


「作り慣れてる……」

「あいっ」


 私の目を、アメリアさんがしばしじっと見つめる。


「ふざけてるようには見えない。……そうか……」


 じわ、と何故かアメリアさんが目に涙をためる。


「辛かったのだな……。よしよし、可哀想に」

『こ、これ……もしかして、やすこにゃんが親から虐待を受けて、食事を作らされていたみたいに思われてそうですぅ』


 シンデレラ的な扱いの子って思われてるのかも。

 街に働きに出るみたいなこと、私から言ったし。


「わかった。だが、火と包丁を使う際は、わたしがそばで見てる。危ないと思ったら即座に料理は中断。それでいいかい?」

「あいっ」


 ということで、料理開始。

 空き家には台所があった。ただ、水は、水瓶に入れられてる。


 もちろんコンロ的サムシングはない。かまどはあるけど。

 どうしよう。かまどなんて使ったことない。

『あっ、ガスコンロ使ったらどうでしょうか?』


 と愛美さんのアドバイス。

 ガスコンロ……?

 いやさすがに、そんな現代アイテム使ったら、怪しまれるような……


「ま、魔法コンロという、ガスコンロににた魔道具ってものが、売られてはいます」


 なるほど。

 コンロににたものがあるんだ。ならそれ使えば火はクリアできる……。


 でも、私がそれ持ってて、おかしくない?


『猫だましスキルがありますし、そ、それに……故郷の村から出るとき、せ、選別で貰ったとか言えばいいかなと』

 

 なるほど。確かに、アメリアさん視点で、私は故郷の村から、追い出された可哀想な少女と思われてる。

 せっかくそう誤解して貰えてるなら……最大限、その設定を利用しよう。


「調理器具はどうする?」

「もってましゅ! アイテムボックスのなかに、入ってましゅ!」


 アイテムボックススキル自体は、珍しくはないと、愛美さんから聞いてる。

 ただし、私の持つ容量∞、収納できるサイズ無制限、のボックスは異世界聖女にしかないという。


「アイテムボックス持ちなのだな、コネコちゃんは」

「あいっ。といっても、最低ランクのアイテムボックスでしゅが」


 ということにしておく。

 ボックスから魔法コンロ、野菜、そして……封を切ったシャウエッ●ン。


 あとは包丁。ピーラー。


「うにゃーん」

「包丁については気をつけて……え、ええええ!?」


 アメリアさんが驚愕してる。

 いったい何を……って、ええ!?


 野菜の皮が全てむいてあった。そして、一口サイズに、全て切り終えてあった。


「ど、どうなってるのだ……!?」

「えーっとえーっと……」


 ましろが「ふにゃ」っと得意げに胸を張る。

『【カットしておいてあげたわよ】だそうです』


 やっぱり、ましろが尋常じゃなく速い速度で、爪で野菜を切ったようだ。

 もう、目立つようなことしないでって言ったのに……!


 ごまかさないと……。


「す、すでにあらかじめ、野菜は切って保存しておいたんです」


 苦しい言い訳だったけど、猫だましスキルのおかげで「な、なるほど……」とアメリアさんは一応信じてくれた。


「じゃ、あとは……煮込むだけです」


 水を張り、コンソメの素(取り寄せた)と野菜を入れて、煮る。

 あんまりこった料理を作ると、また怪しまれてしまう。だから、これくらいの簡単な料理にしておく。


 ほどなくして、料理が完成する。


「ポトフ完成でしゅ!」

「ポトフ……」


 借りた器に、具だくさんポトフを入れて、アメリアさんに差し出す。


「すごいぞ……コネコちゃん。君……そんなに小さいのに……こんな立派な料理を作ってしまうなんて。しかも、料理を作る手つきもよどみなかった」


 くっ……とアメリアさんが目元を手で拭う。

「さぞ、辛い思いをしてきたんだろう……」


 まあ辛い目にはあってきたけど、アメリアさんが想像してるつらさとは違う(社畜)。

 でも言うとめんどくさいので、黙っておくことにした。


「コネコちゃんが一生懸命作ってくれた料理……いただきます」


 アメリアさんがポトフを一口すする。

 

「!?」


 くわっ、と目を見開く。

 がつがつ、ごきゅごきゅっ、ごっくん!


 さっきの携帯食料のときとは違って、食べるスピードがめちゃくちゃ速かった。


「美味い……!」


 ホッ……良かった。お気に召してくれたようだ。異世界人が、地球の料理を。


「な、なんだこれは!? ほどよい塩気、ぱりっぱりのソーセージ、そして……甘い野菜。それらが渾然一体となって、口の中でうま味が広がる……! こんな美味しい料理はじめてだ!」


「おかわりいりましゅ?」


「いる!」


 アメリアさんはその後4杯もおかわりをした。

 ましろはチュールを食べて幸せそうにしていた。


「はぁ……しあわせだ……♡ 本当に美味しかった。なんだか、体に力がわいてくるような感じもするし」


 体に力がわく……?

 そのときである。


「うにゃー! みゃー!」

『【敵よー! 村に魔物が攻めてきたー!】ですって!』

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★新連載です★



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『捨てられ聖女は万能スキル【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』

― 新着の感想 ―
主人公の口調が読みにくい。 キャラ作りとしても地の文は明瞭に思考できるけど口に出すと舌足らずで良い気がする。
やっぱバステトとはいえ知能は猫レベルなのか……
主人公が成人男性ならアメリアさんヒロイン候補とかになりそうだけど、幼女だからなぁ ドブカス王子のところの騎士だから旅に付いてくるとは思えないし、街に着いたらお別れなのかな… いいキャラだからお別れは…
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