16.力を隠しながら、女騎士と馬上旅
女騎士アメリアさんに、街まで送って貰うことになった、寧子ことコネコ(偽名)。
「コネコちゃん。これから我等は、この馬に乗って、ここから一番近い街へと向かう」
「あいっ。どれくらいかかるんでしゅか?」
「馬で二日だな」
「ふちゅかぁ……!?」
え、遠くない……?
『あっ、きょ、距離も遠いですけど、異世界の馬での移動って、現実より大変なんですよ。馬に乗ってると体力削られますし、揺れるので頻繁に休憩いりますし。そ、それと馬事態も生き物なので、ずっと同じ速度を維持して走れませんし』
異世界の先輩である愛美さんから、色々教わる。
なるほど……現実ように、旅はできないんだ。
「まず、ここから一日いったところに、村がある。そこで野営して、街へ向かおうと思ってる。理解できた?」
見た目幼女なので、アメリアさんが確認のためにそう聞いてくる。優しい人だなって思う。
「あいっ」
「では……よいしょっ」
アメリアさんが私を抱き上げて、馬に乗せる。
その後ろにアメリアさんが座る。彼女は私を前に乗せた状態で手綱を握った。
「馬は思ったよりかなり揺れる。気持ちが悪くなったら、すぐに言うんだぞ? 休憩を取るからな」
「あいっ。ありがとぉ、ごじゃいましゅ。アメリアしゃん!」
「礼儀正しい娘だね、君は。そんな幼いのに、しっかりお礼が言えるなんて」
私基準で、外見年齢が五歳だけど、実際の年齢はわからない。
異世界人から見たら、私はもっと幼く見えてるのかもしれない。
「じゃあ……出発!」
馬がちゃかぽこ……と歩き出す。
思っていたよりも……遅い。
自転車よりも遅いんじゃあないだろうか、これ……。
あ、でもそうか。体の負担が掛からないように、速度を落としてくれてるんだ。ほんとにいい人……。
でもさすがに遅すぎる。
二日も馬上旅は、さすがにキツいな。二日も座りっぱなしだと、お尻痛くなるし。
「あの、私に気遣ってくだしゃって、ありがとうです。でも、もっとはやくして、大丈夫でしゅ」
「そうかい?」
「あい!」
「じゃあ……ちょっとだけスピードを上げるよ」
アメリアさんは手綱をぴしゃんっ、と打つ。
「なーお」
バッグから顔を出してる、ましろが鳴いた。
その瞬間……。
どっ……!
「「は、速……!!!!!!」」
馬がものすごい早さで走り出したのだ。
おお、馬ってこんな速く走れるんだ……。
「な、なんだこの早さ!?」
『尋常じゃあない早さですよぉお!』
え……?
アメリアさんも、愛美さんも驚いてる。これくらいの速度って普通じゃあないようだ。
でも車と違ってスピードメーターがあるわけじゃあないから、具体的な早さはわからない。
「速すぎる! ストップだ!」
「みゃ」
「ヒヒヒィイイイイイイイイイイイン!」
馬がドドドっとスピードアップする。
ええー……どうなってるの……?
『ま、ましろ様がなんかしてます! さっき【遅い】、今は【行け】って言ってましたぁ……!』
ましろが何かして、そのせいで馬が速く走ってる……ってこと?
「スピードを落とせ! でないとコネコちゃんが馬から落ちてしまう!」
確かにこの速度、そして上下の揺れ、やばい。
幼女の体(筋肉が未発達)には、この揺れはかなり体に負担が掛かってしまうだろう。
だから、私はこっそりと、結界スキルを使う。
私、そしてアメリアさんの体を、膜のように結界で包む。
そして、結界の性質を低反発クッションのように変えて、衝撃を完全に吸収する。
すると……。
「あ、あれ!? ど、どうなってるのだ……体が全く揺れない……!?」
暴れ馬に乗ってるというのに、高級車に乗ってるかのごとく、揺れもないし音も、雑音も消えている。
『ひぇえ……すごいです。結界に、衝撃吸収、そして消音、二つの性質変化を咥えるなんてぇ……!』
それって、何か凄いことなのだろうか……。
やろうと思って、できるという確信が何故かあったから、やってみただけなんだけども。
『やすこにゃん……もしかして、凄い結界術の天才かもですぅ』
「ふにゃ」
『【もしかしなくてもヤスコは天才だから】ですって』
話しぶりから察するに、結界をここまで細かく変化させるのは、難しいことのようだ。
「どうなってるのだ!? う、馬がこんな早さで走ることも、こんなに乗りやすくなることも、今まで無かったのに……」
アメリアさんが困惑してる。
でも、馬および自分の体に訪れてる変化に、、彼女は気づいていない。
結界は目に見えない。だから、気づけないのだ。
でも……どうして馬はこんなに速く動けてるんだろう。
『ま、ましろ様っ。何をなさってるのですかっ?』
「なーご」
『【加護】? え、加護ってなんですかっ!?』
「うなーご。なーご」
『【あたしは月と豊穣の女神。豊穣の加護は、側にいる相手に、生命力を付与できる】……?』
なるほど……。
馬がいつもより元気なのは、ましろの神としての力、豊穣の加護が働いてるからなんだ。
ましろって、すごい。
「にゃ?」
『【あたしすごいでしょぉ?】す、すごいのはわかりましたけどぉ! このままじゃ女騎士さんにバレちゃいますよぉ!』
「うにゃー?」
『【バレなきゃイカサマじゃあないんだぜ?】だからバレちゃいますってぇ! こんな派手にやっちゃあ!』
「なん?」
『【バレて何か問題でも?】聖女だってバレたら、王子に連れ戻されて、ブラック宮廷入りされちゃうんですよ、やすこにゃんがー!』
「うみゃん?」
『【あたしがぶっ倒すから心配ないさ?】いやいやだめですってばあ……! もおぉお!』
バステト神の豊穣の加護&私の結界のおかげで、馬は数時間かからずに、目的の村へと到着した。
「信じられない……こんな速く到着できるなんて……」
アメリアさんは馬上にて、呆然とつぶやく。
馬で一日かかる距離を、日が暮れる前に踏破してしまったのだから、無理もない。
「どうなってるのだ……?」
「そ、その……今日は馬の調子が良かったんじゃあないでしょうかっ」
苦しい言い訳だ。
しかしましろが、猫だましスキルを使ってるため、発言に信用度がプラスに補正される。
「ま、まあ……そういう、もの……か」
一応、アメリアさんは納得してくれたようである。
まったくもう……。
「ましろたん。ありがとう」
「うにゃん」
「でも、もうちょっと目立たないようにしてくだしゃいね」
「にゃ」
『【時と場合によりけりね】ですって』
猫ってほんと、気ままで、マイペースだなって、そう思ったのだった。
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