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【書籍化】転生幼女は愛猫とのんびり旅をする【2巻12/10発売!】  作者: 茨木野


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16.力を隠しながら、女騎士と馬上旅



 女騎士アメリアさんに、街まで送って貰うことになった、寧子やすこことコネコ(偽名)。


「コネコちゃん。これから我等は、この馬に乗って、ここから一番近い街へと向かう」

「あいっ。どれくらいかかるんでしゅか?」


「馬で二日だな」

「ふちゅかぁ……!?」


 え、遠くない……?


『あっ、きょ、距離も遠いですけど、異世界の馬での移動って、現実より大変なんですよ。馬に乗ってると体力削られますし、揺れるので頻繁に休憩いりますし。そ、それと馬事態も生き物なので、ずっと同じ速度を維持して走れませんし』


 異世界の先輩である愛美さんから、色々教わる。

 なるほど……現実ように、旅はできないんだ。


「まず、ここから一日いったところに、村がある。そこで野営して、街へ向かおうと思ってる。理解できた?」


 見た目幼女なので、アメリアさんが確認のためにそう聞いてくる。優しい人だなって思う。


「あいっ」

「では……よいしょっ」


 アメリアさんが私を抱き上げて、馬に乗せる。

 その後ろにアメリアさんが座る。彼女は私を前に乗せた状態で手綱を握った。


「馬は思ったよりかなり揺れる。気持ちが悪くなったら、すぐに言うんだぞ? 休憩を取るからな」

「あいっ。ありがとぉ、ごじゃいましゅ。アメリアしゃん!」


「礼儀正しい娘だね、君は。そんな幼いのに、しっかりお礼が言えるなんて」


 私基準で、外見年齢が五歳だけど、実際の年齢はわからない。

 異世界人から見たら、私はもっと幼く見えてるのかもしれない。


「じゃあ……出発!」


 馬がちゃかぽこ……と歩き出す。

 思っていたよりも……遅い。


 自転車よりも遅いんじゃあないだろうか、これ……。

 あ、でもそうか。体の負担が掛からないように、速度を落としてくれてるんだ。ほんとにいい人……。


 でもさすがに遅すぎる。

 二日も馬上旅は、さすがにキツいな。二日も座りっぱなしだと、お尻痛くなるし。


「あの、私に気遣ってくだしゃって、ありがとうです。でも、もっとはやくして、大丈夫でしゅ」

「そうかい?」


「あい!」

「じゃあ……ちょっとだけスピードを上げるよ」


 アメリアさんは手綱をぴしゃんっ、と打つ。

「なーお」


 バッグから顔を出してる、ましろが鳴いた。

 その瞬間……。

 どっ……!


「「は、速……!!!!!!」」


 馬がものすごい早さで走り出したのだ。

 おお、馬ってこんな速く走れるんだ……。


「な、なんだこの早さ!?」

『尋常じゃあない早さですよぉお!』


 え……?

 アメリアさんも、愛美さんも驚いてる。これくらいの速度って普通じゃあないようだ。


 でも車と違ってスピードメーターがあるわけじゃあないから、具体的な早さはわからない。


「速すぎる! ストップだ!」

「みゃ」

「ヒヒヒィイイイイイイイイイイイン!」


 馬がドドドっとスピードアップする。

 ええー……どうなってるの……?


『ま、ましろ様がなんかしてます! さっき【遅い】、今は【行け】って言ってましたぁ……!』


 ましろが何かして、そのせいで馬が速く走ってる……ってこと?


「スピードを落とせ! でないとコネコちゃんが馬から落ちてしまう!」


 確かにこの速度、そして上下の揺れ、やばい。

 幼女の体(筋肉が未発達)には、この揺れはかなり体に負担が掛かってしまうだろう。


 だから、私はこっそりと、結界スキルを使う。

 私、そしてアメリアさんの体を、膜のように結界で包む。


 そして、結界の性質を低反発クッションのように変えて、衝撃を完全に吸収する。


 すると……。


「あ、あれ!? ど、どうなってるのだ……体が全く揺れない……!?」


 暴れ馬に乗ってるというのに、高級車に乗ってるかのごとく、揺れもないし音も、雑音も消えている。


『ひぇえ……すごいです。結界に、衝撃吸収、そして消音、二つの性質変化を咥えるなんてぇ……!』


 それって、何か凄いことなのだろうか……。 

 やろうと思って、できるという確信が何故かあったから、やってみただけなんだけども。

『やすこにゃん……もしかして、凄い結界術の天才かもですぅ』

「ふにゃ」


『【もしかしなくてもヤスコは天才だから】ですって』


 話しぶりから察するに、結界をここまで細かく変化させるのは、難しいことのようだ。

 

「どうなってるのだ!? う、馬がこんな早さで走ることも、こんなに乗りやすくなることも、今まで無かったのに……」


 アメリアさんが困惑してる。

 でも、馬および自分の体に訪れてる変化に、、彼女は気づいていない。


 結界は目に見えない。だから、気づけないのだ。

 でも……どうして馬はこんなに速く動けてるんだろう。


『ま、ましろ様っ。何をなさってるのですかっ?』

「なーご」


『【加護】? え、加護ってなんですかっ!?』

「うなーご。なーご」


『【あたしは月と豊穣の女神。豊穣の加護は、側にいる相手に、生命力を付与できる】……?』


 なるほど……。

 馬がいつもより元気なのは、ましろの神としての力、豊穣の加護が働いてるからなんだ。

 ましろって、すごい。


「にゃ?」

『【あたしすごいでしょぉ?】す、すごいのはわかりましたけどぉ! このままじゃ女騎士さんにバレちゃいますよぉ!』


「うにゃー?」

『【バレなきゃイカサマじゃあないんだぜ?】だからバレちゃいますってぇ! こんな派手にやっちゃあ!』


「なん?」

『【バレて何か問題でも?】聖女だってバレたら、王子に連れ戻されて、ブラック宮廷入りされちゃうんですよ、やすこにゃんがー!』


「うみゃん?」

『【あたしがぶっ倒すから心配ないさ?】いやいやだめですってばあ……! もおぉお!』


 バステト神の豊穣の加護&私の結界のおかげで、馬は数時間かからずに、目的の村へと到着した。


「信じられない……こんな速く到着できるなんて……」


 アメリアさんは馬上にて、呆然とつぶやく。

 馬で一日かかる距離を、日が暮れる前に踏破してしまったのだから、無理もない。


「どうなってるのだ……?」

「そ、その……今日は馬の調子が良かったんじゃあないでしょうかっ」

 

 苦しい言い訳だ。

 しかしましろが、猫だましスキルを使ってるため、発言に信用度がプラスに補正される。

「ま、まあ……そういう、もの……か」


 一応、アメリアさんは納得してくれたようである。

 まったくもう……。


「ましろたん。ありがとう」

「うにゃん」


「でも、もうちょっと目立たないようにしてくだしゃいね」

「にゃ」


『【時と場合によりけりね】ですって』


 猫ってほんと、気ままで、マイペースだなって、そう思ったのだった。

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★新連載です★



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『捨てられ聖女は万能スキル【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』

― 新着の感想 ―
現実より〜〜って言い方は違和感がありますね。 地球より〜や前世より〜と違ってゲームの中みたいなイメージになりました
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