13.迷いの森もサクサク進んでいく
私は■庭の外へ出た。
奈落の森の中にて。
「わっ、出れた。念じれば、空間を行き来できるみたいでしゅね」
「くあぁあ……」
ましろは眠そうだ。本当に、興味のないことには、とことん興味のないお猫さんである。
私の鞄の中に、ぴょんっ、と飛び乗って入る。
『あーあー、聞こえますかー? やすこにゃん?』
愛美さんの声が、頭の中に直接響き渡る。
「はい。きこえましゅ! そちらは、外の様子、見えてましゅか?」
『あっ、ましろ様が鞄の中に入ってしまってるので、真っ暗です。あっ、その……ご尊顔を、外に出して貰えらますと……』
ましろが仕方なく、鞄から顔を出す。
『あっ、見えました。視界良好ですよ、やすこにゃん!』
愛美さんは、現在■庭の中にいる。
なら、どうして彼女の声が聞こえるのか?
それは、ましろのスキルが発動しているからだ。
ましろのスキル【かぎしっぽ】で、ましろと愛美さんは、繋がっている状態らしい。
なので、ましろがみたものを、愛美さんも共有できるらしい。
また、ましろを介して、愛美さんの思念もおくれるようだ。
「愛美しゃんは、外にでないんでしゅか?」
『あっ、はい。わ、わたしその……ひ、ヒキニートなもので……。えへへ、お家最強。それに、外に出てもわたし、幽霊ですので』
幽霊は物理的に、外界に干渉できない(戦うなど)。
できるのは、アドバイスだ。それなら、別にリモートでも(■庭に引きこもっていても)できる。
『そっ、それでやすこにゃん。これからど、どうするんですか?』
「森の外を目指しましゅ。その後は、旅でもしようかなと」
『あっ、さ、祭壇に引きこもっても、よ、よいのでは……?』
「祭壇にいたら、バカ王子が頼って来るかもじゃないでしゅか」
愛美さんの話を聞いて、この世界の王族が、ろくでもない連中だってことは十分理解できた。
結婚はしないけど、死ぬまで働かせる、とか普通にありそうだし(実際愛美さんはそれやられたし)。
「バカ王子に捕まりたくないので、さっさとこの国を出て、以後、旅をしようかなと思ってましゅ」
『あっ、な、なるほど……。な、なら【冒険者】になることを、おすすめします』
「冒険者、でしゅか?」
『は、はい。冒険者になれば、国の行き来の際にかかる、入国料や、街に入るときの通行料がただになりますし。お、お金も稼げますし』
なるほど……。
「でも、私幼女でしゅよ?」
『あっ、ご安心を。ぼ、冒険者に年齢制限はないので』
五歳児(推定)でも、冒険者になれるということか……。
幼女であり、保護者の居ない自分にとって、冒険者になる以外に、身分を証明する手段は作れない……か。
それに、ましろや私の食費(取り寄せ鞄でのコスト)を稼ぐためには、この世界のお金が必要。
「わかりました。では、アメリアしゃんたちを、森の外へ届けたあと、街へいって冒険者を目指しましゅっ。ありがとう、愛美しゃんっ!」
愛美さんが色々教えてくれるので、とても助かる。
ましろは凄いけど、外界の情報は教えてくれないし。
『え、えへえへ~♡ やすこにゃんに感謝されました~♡』
「ふー! しゃー!」
『ひっ! 【あたしのヤスコとあんまり仲良くならない! ヤスコはあたしの一番の友達なのよ??】わ、わかってます! ましろ様がNo.1ヤスコ友達です!』
「うにゃん」
ましろが納得したようにうなずいてる。
ましろ……どうやら私を独占したいようだ。
「ましろたん……独占欲強いでしゅ」
「みゃ?」
『【当たり前でしょ、ヤスコのこと大好きだし?】ですって。あ、愛されてますね』
ましろの言葉がわかるのも、地味に助かる。
今までなんとなくでしかわからなかった言葉が、わかると、よりスムーズに意思疎通できるから。
「みーや」
『【便利な下僕が手に入ったわね】ですって。あ、はいっ。げ、下僕ですぅ~』
愛美さんなんか喜んでる……。
ちょっと変わった人だな、この人。
「さ、レッツゴーでしゅ」
「みゃ!」
私は猫+幽霊を連れて、森の中をてくてく歩き出す。
『そ、それにしても……ましろ様のスキル、べ、便利ですね』
「どういうことでしゅ?」
『え、だ、だって……この森、奈落の森はうっそうと生い茂る木々のせいで、本来なら、夜みたいに真っ暗で何も見えないはずなんですよ?』
そうなんだ……。
でも、私の目には、普通の森の中のように見える(明るく見える)。
「【鑑定】」
私はましろの目を見ながら、鑑定スキルを発動。
~~~~~~
キャッツアイ
→暗視スキルの付与された目。暗視を他者にかけることも可能
~~~~~~
「ほんとだ……ましろたん、いつの間に」
『【ヤスコが困ると思って、暗視をかけてあげてたのよ】ですって』
「ありがとう、ましろたん。それと……愛美しゃん」
『へ? どうしてわたしに?』
「私だけじゃ、気づかなかったので」
『ぬへへ……♡ どういたしまして……あっ! 調子乗ってないです、ましろ様! だから不機嫌にならないで! 目ぇ閉じたら何も見えなくなっちゃいますよぅ!』
愛美さんをあんまり褒めると、ましろが不機嫌になってしまう。
「ましろたん、一番感謝してますよ」
「うにゃん♡」
ましろのキャッツアイのおかげで、真っ暗な森の中も普通に進んでいける。
さらに、猫のひげのおかげで、最短ルートを進める。
そのうえ、ましろが木々を、爪で払ってくれるので、とても歩きやすい。
「みゃ!」
『【ゴブリンが来るわ】ですって』
「え、ましろ……敵の種類までわかるの?」
「うにゃんっ」
『【匂いで、なんとなくは】』
なるほど……。猫って人間より鋭敏な嗅覚を持つという(犬ほどではないにしろ)。
猫のひげで敵の接近、匂いで敵の種類を見分け、そしてその言葉を愛美さんが通訳してくれる……。
……あれ、結構無敵のコンボでは……?
「にゃー?」
『【雑魚を間引いてこようか?】だそうです』
「向こうはこっちに気づいてないんでしゅよね?」
「みゃっ」こくん。
「なら……ましろたんが出るまでもないでしゅ」
私は両手を合わせ、そして準備をしておく。
スタスタと歩くことしばし……。
「ゴブッ……」「グギャゴ」「ゴルルウ……」
手に棍棒を持ったゴブリンが、3体、こっちに歩いてくる。
私と一瞬目が合う……。
が。
ゴブリンは通り過ぎていく。
「うまく、機能してるみたいでしゅね。愛美しゃんから教えて貰った、【隠しの結界】」
先輩聖女である、愛美さんから、結界スキルの応用方法を、教えて貰ったのだ。
それが、隠しの結界。
まず、結界を自分の体を覆うように展開する。
そして、結界の表面に、自分の周囲の情報を投影(形態変化)。
すると、敵から見ると、私の姿は消えて見える。
ようは、結界で、光学迷彩みたいなことができるというものだ。
『すごいですよ、やすこにゃん! 隠しの結界、教えて一発でできるようになるなんて! わ、わたしは習得に凄い時間かかったのに!』
「ううん。愛美しゃんのレクチャーがあったからこそでしゅよ」
『えへへ……♡ あ、で、でも……隠しの結界も、万能じゃあないです。感覚の鋭い魔物は、ステルスを見破ってきますので』
「わりまちた。アドバイスありがとう、愛美しゃん」
……旅の仲間が増えたことで、すごく旅が楽になったな、って実感したのだった。
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